コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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こちら藤沢家四兄妹
日時: 2014/10/27 23:29
名前: 和泉 (ID: l5ljCTqN)

初投稿です。
よろしくお願いします。


☆special thanks☆

ちゅちゅんがちゅんさま

冬の雫さま

紫桜さま

猫又様

はるたさま

八田 きいちさま

夕衣さま

波架さま

また、読んでくださっている皆様。


☆目次☆

日常編 

>>1 >>3 >>5 >>7 >>10 >>11 >>14 >>18 >>19
>>22 >>23

夏祭り編

>>26 >>27 >>28 >>31 >>32 >>33 >>34 >>37
>>45 >>47

長男過去編

>>55 >>58 >>61 >>63 >>65 >>68 >>71 >>73
>>77 >>78 >>79 >>84

双子お使い編

>>86 >>89 >>90 >>92 >>93 >>96

次女誘拐編

>>100 >>102 >>103 >>104 >>105 >>107 >>108 >>109
>>111

長女デート編

>>112 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120

長男長女の文化祭編

>>122 >>123 >>124 >>129 >>131 >>132 >>133 >>134
>>135 >>136 >>137 >>140 >>141 >>146 >>147 >>148
>>149 >>150 >>154

佐々木杏奈の独白

>>157 >>158 >>159 >>163

同級生と藤沢家編

>>164 >>165

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Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.70 )
日時: 2013/08/18 08:02
名前: 和泉 (ID: BdPlSccL)  


はるたさん

コメントありがとうございます!!

面白いと言っていただけて、本当に嬉しいです。

藤沢家はドタバタホームコメディ狙ってたんですが、
いつのまにやらシリアスになってしまいました。


和泉もコメントはまだしたことありませんが、
はるたさんの小説好きでずっと読んでます。

またコメントしに行きます。


これからも、もし暇があったら藤沢家読みに来てやってください。

更新頑張ります!!

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.71 )
日時: 2013/08/18 08:46
名前: 和泉 (ID: BdPlSccL)  


♯27 「長男と神様とさいごのさようなら」


両親が死んだのは、俺の六歳の誕生日だった。


俺と両親はその日、ドライブがてら車で海岸沿いを走って、俺の誕生日プレゼントにゲームを買いにいく予定だった。

「夏!!海、綺麗だろ」

「うん、すごく綺麗!」

「見れてよかったね」

あの日の些細な会話が、10年たっても耳にこびりついて剥がれない。

両親の笑顔はもう、おぼろげにしか思い出せないのに。

あの日、六歳の俺は体を乗り出すようにして窓から海を眺めていた。



そして、それが起きたのはほんの一瞬だった。



「危ないっっっっっ!!!!!」

父親の金切り声が聞こえた。
それと同時に車が大きく揺れ、体が窓に押し付けられた。

上か下かもわからない。
ぐるぐると、まるでミキサーにかけられたような揺れと轟音が続いた。

本当の恐怖に直面すると、人は悲鳴すら出ないらしい。

しばらくして、揺れが止まった。
そっと目を開けて周りを見ると、車の天井がすぐ近くにあった。

ひしゃげているんだ、とすぐにはわからなかった。

「夏、夏、大丈夫…?」

俺の隣に座っていた母親が、かすれて今にも消えそうな声で俺を呼ぶ。

全身の痛みに耐えて、ゆっくりと目をあける。

最初に見えたのは、赤く染まった母親の服だった。

「よかった、いきてた」

母親はそう言って、するりと俺の顔を撫でた。

「夏、お母さんがおしてあげるから、窓から出れる?」

「お母さんは?」

お母さんは、どうするの。

俺の問いに、母親は優しく笑った。


「あとから必ずいくから」


そう言って、母親は開いていたパワーウィンドウから俺の体を押し出した。

近くにいた大人が、俺の体を受け取ってくれた。

次は、お母さんだ。

俺が手を伸ばした瞬間。

「危ない、引火する!!」

「今すぐ車から離れろ!!」

たくさんの大人が、叫ぶ声がした。
なにをいっているの。

お母さんが、まだ、そこにいる。
お父さんだって、そこにいる。

いきたくない。

いきたくない!!


大人が俺を抱き抱えて走る。
見るな、かなにかを叫んでいた気がする。


だけど、目の端にはしっかりとうつっていた。


赤い、赤い炎が。



海の青と炎の赤。
母さんの声と父さんの悲鳴。
体の痛みと胸の痛み。


それが、俺の誕生日の記憶。

俺の10年前の誕生日の記憶だ。


Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.72 )
日時: 2013/08/18 11:24
名前: 紫桜 (ID: nWfEVdwx)

辛すぎる・・・。
夏さん、笑わないのが分かりました。

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.73 )
日時: 2013/08/18 17:52
名前: 和泉 (ID: EUGuRcEV)  


#29 「長男と神様とさいごのさようなら 2」


次に目をさましたときに見えたのは、白い天井だった。
窓の向こうに目をやると、そこにはただ青い青い海があった。


ここはきっと病院で、あの事故の日からきっと長い時間がたっていて。


考え出す頭のもっと奥の方で、俺は勝手に答えを出していた。


この世界には、もうお父さんとお母さんはいない。

どこを探したって、会えない。

だって、ふたりは。


「夏くん!?目が覚めたの!?」

俺の思考が止まる。
ばさりと何かが落ちる音がしてゆっくりとそちらを振り向くと、
そこにいたのは花束を落としたまだ若い男性と女性。


そう、その二人が涼子さんと要さんだった。


涼子さんと要さんは俺の両親の高校時代からの友人で、
物心ついたときにはもう俺のそばにいた。

よく我が家にも遊びに来ていた二人は、
両親を亡くした今、一番信頼できる大人だった。


「かなめさん、りょーこさん」

「夏くん!!夏くん、夏くん!!!」

涼子さんがぎゅっと俺を抱き締めてくれた。

「涼子さん、ナースコール。
目が覚めたなら医者に言わないと!」

あわてふためく要さんをよそ目に、涼子さんは俺を抱き締めたまま離さなかった。


そのあと、要さんが呼んだらしく医者が来て、いろんな話をした。

わかったのは、俺がもう少し入院しなくちゃいけないことと、
あの事故の日から、もう一週間が立っていること。
両親の葬式は、もうすんだということ。
事故は、物陰から飛び出してきた男の子を避けたせいで起きたこと。
男の子は無事だったと言うこと。


ふたりは死んだんだな、と。
空っぽの頭に氷を無理矢理詰め込まれたような、感覚がとまらなくて。

涙は乾いたみたいに出なかった。

『あとから必ずいくから。』

うそつき。

お母さんのうそつき。

俺は、今ひとりぼっちじゃないか。


違う。
あの日、俺の誕生日プレゼントを買いにいかなきゃよかったんだ。

お母さんの手を、離さなきゃよかったんだ。

俺が、悪かったのだ。



泣けないまま、時間は過ぎた。
気づいたらもう秋になっていて、
それでも涼子さんと要さん以外の大人が俺の見舞いに来ることはなかった。


後から知ったことだけれど、
そのとき父方の祖父母と母方の祖父母は、
俺を引き取るか引き取らないかでもめていたらしい。
見舞いにも来なかったのは、それがきっかけで引き取るはめになりたくないから。

息子と娘を亡くした辛さで、
生き残った孫に愛情を注ぐ余裕がなかったのかもしれない。

俺にはどうでもよかったけど。



俺のリハビリも続いた。
打ち込むものがなく、必死でやった結果少しずつ体は動くようになっていた。

リハビリの面倒を見てくれたのも、やっぱり涼子さんと要さんだった。


「ずいぶんしっかりと歩けるようになったね」

「……ありがとうございます」

「いいのいいの、そんなの。
退院も近いね、これは」


秋ももう半ばになっていただろうか。
涼子さんがふわりと笑った。

「先生も、夏くんにびっくりしてたよ。
治りが早いって。

神様が、きっと夏くんに味方してくれてるんだね」

そう言って、俺の頭をなでた涼子さん。
だけど俺は

「神様?」

その言葉が、なぜかひっかかった。


「…………いない」

「え?」

「神様なんていない!!!」


事故に遭って、二ヶ月がたとうとしていた。

俺は生まれてはじめて、涼子さんに八つ当たりをした。


神様なんていない。
神様なんて、いるわけない。
いたらお父さんは死ななかった。
お母さんは今ここにいた。
神様なんて。
両親を守ってくれなかった神様なんて。

「神様なんてだいっきらいだ!!」

叫んだ俺を、涼子さんは思いきり抱き締めた。

「神様はいるよ」

「いない、いないよ!!」

「いるの!!
いるから、夏くんは今ここにいるの!!
夏くんに生きろって、神様がいってるんだよ」

嘘だ、そんなの嘘だ。

いくらでも叫べた。
暴れることができた。

それをしなかったのは、涼子さんも震えていたからだ。

そして、そのとき初めて気がついた。


俺が両親を亡くした、ということは。
涼子さんたちにとっても、
高校時代からの大事な友人を亡くしたということなんだって。


俺と同じように、傷ついてないわけないんだって。


「ねえ、夏くん。
うちの子にならない?」

俺を抱き締めて、震える声で涼子さんが問うた。

「藤沢夏に、なりませんか」

あなたの祖父母の許可はとってあるの。
あとはあなたの意思だけよ。

そう繋げて、涼子さんは泣き笑いの顔で言った。


「夏くんが神様を信じられるようになるまで、
私が一緒にいてあげる」


信じられるわけないよ。

信じられるようになるよ。

小さな声で繰り返した。
その声はどんどんかすれていって。


俺はその日、事故から二ヶ月目にして初めて涙を流した。


そして、それと同じ日。

俺は藤沢夏になったのだ。


今でも誕生日は嫌いだ。
夏が嫌いだ。
神様が嫌いだ。

だけど、少しずつ時間を重ねて、リカに出会ってヒロとアヤを知った。

誕生日は俺にとって幸せな日にはきっと一生ならない。
どれだけ幸せだって、幸せじゃない記憶が付きまとうから。


それでも。


少しずつ進む勇気を持てたのは、きっと藤沢家のおかげなんだ。

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.74 )
日時: 2013/08/18 17:54
名前: 和泉 (ID: EUGuRcEV)  


紫桜さん

重くてごめんなさい。

しばらくちょっと重いです。


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