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こちら藤沢家四兄妹
日時: 2014/10/27 23:29
名前: 和泉 (ID: l5ljCTqN)

初投稿です。
よろしくお願いします。


☆special thanks☆

ちゅちゅんがちゅんさま

冬の雫さま

紫桜さま

猫又様

はるたさま

八田 きいちさま

夕衣さま

波架さま

また、読んでくださっている皆様。


☆目次☆

日常編 

>>1 >>3 >>5 >>7 >>10 >>11 >>14 >>18 >>19
>>22 >>23

夏祭り編

>>26 >>27 >>28 >>31 >>32 >>33 >>34 >>37
>>45 >>47

長男過去編

>>55 >>58 >>61 >>63 >>65 >>68 >>71 >>73
>>77 >>78 >>79 >>84

双子お使い編

>>86 >>89 >>90 >>92 >>93 >>96

次女誘拐編

>>100 >>102 >>103 >>104 >>105 >>107 >>108 >>109
>>111

長女デート編

>>112 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120

長男長女の文化祭編

>>122 >>123 >>124 >>129 >>131 >>132 >>133 >>134
>>135 >>136 >>137 >>140 >>141 >>146 >>147 >>148
>>149 >>150 >>154

佐々木杏奈の独白

>>157 >>158 >>159 >>163

同級生と藤沢家編

>>164 >>165

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Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.65 )
日時: 2013/08/17 14:02
名前: 和泉 (ID: qrMs7cjz)  


♯25 「長女と長男とかなしい誕生日」


ナツ兄の名前を漢字で書くと、藤沢夏。
夏に生まれたから、夏。

安直なネーミングだよね、と、小学六年生だったナツ兄は笑っていた。


8月11日、あたしたちはナツ兄が生まれたことを感謝し、
ナツ兄は自分が生まれたことを呪う。



ナツ兄は10年前、六歳の誕生日に事故で両親を亡くした。
8月11日はナツ兄の誕生日でもあり、ナツ兄の両親の命日でもある。

あたしが藤沢家に引き取られてもう五年と半年がたつけれど、
毎年ナツ兄は誕生日に、お母さんとお父さんにつれられて、三人で墓参りにいく。

あたしは毎年留守番だ。

いきたい、と言ったことはない。
そこはあたしが踏み込んじゃいけない場所だとわかっているつもりだから。

黙って三人の帰りを待ちながら、ナツ兄の誕生日パーティーの準備をしている。

去年から、それにヒロとアヤも加わった。


誕生日の日、墓参りから帰ってきたナツ兄は、絶対に笑わない。

笑わないまま、消えた表情のまま、ケーキを食べていたナツ兄の姿は、
アヤの記憶にも刻まれていたらしかった。


しあわせだけど、しあわせじゃないんだ。


そんな言葉をナツ兄が、いつあの子達に残したのかは、あたしも知らない。



淡々と、日下部に事情を話した。
藤沢家の秘密も、ナツ兄のことも。

アヤがあそこまで話してしまったなら、もう隠しても無駄だ。
変に誤解される方が嫌だ。
感情を交えずに事務的に話すあたしの顔を、
日下部は笑いもせずにじっと見ていた。


「そうなんだ。だいたいわかった。
じゃあ、ちょっとだけいい?」

話終えると、日下部が真面目な顔のままあたしに尋ねる。
なんでもどうぞ、とうなずくと、日下部はアヤに向き直った。

「アヤちゃん、ごめんね。
俺は知らなかったとはいえ、無神経なこと言った。
嫌な思いさせてごめん」

だけどね、と。
ちょっときつい口調に日下部が切り替えた。

「そんな家庭の事情を簡単に人に話しちゃダメだ。
今は俺だったからよかったけど、そんなこと簡単に人に話すもんじゃない。
これからは気を付けるんだよ」

アヤは静かに、うなずいた。
あたしが言いたかったことをとられてしまった。

養子、血が繋がってない。
そのことを気にする人は、割りとこの世界に多い。
身を守るためには、黙っていた方がいい。

「あとね、自分たちを他人だって言ったよね。
俺はそれは違うと思うよ。
だって、ちゃんと家族の顔してるから」

「家族の顔?」

「そう。
アヤちゃん、藤沢さんとよく似た笑い方をしてる。
血は繋がってないにしろ、他の部分でちゃんと繋がってる。
他人なんかじゃない」


産みの親より育ての親って、よく言ったもんだよね。

そう言って、日下部は笑った。


「君たちは、ちゃんと家族だよ」


その優しさに、あたしまで泣いてしまいそうだと思った。

家族だよって、誰かに認めてもらえることがこんなに嬉しいなんて知らなかった。

日下部の顔が見れなくてうつむくと、さらに予想外の言葉が降ってきた。

「明日さ、お願いして墓参りについていきなよ」

「え」

「踏み込んじゃいけないとか決めつけないで、踏み込んでみなよ。
でさ、お礼言っておいで。
ナツさんを、生んでくれてありがとうって」


やさしい、ひとだ。

日下部は、やさしいひとだ。
あたしが今までできなかったことを、簡単に提示して背を押してくれる。

いってくる、とうなずいた。
明日はきっといい誕生日にしてみせる。


日下部は柔らかく微笑んでいた。

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.66 )
日時: 2013/08/17 14:22
名前: 冬の雫 (ID: JxRurJ5z)

泣…ける………(T ^ T)
というか泣きました…………。

「君たちは、ちゃんと家族だよ」って……

やっぱ音弥くんかっこいいーーー(*≧艸≦)

続き楽しみです!

更新頑張ってくださいね(*ノ∀ノ)

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.67 )
日時: 2013/08/17 16:37
名前: 和泉 (ID: 60TA9nBF)  


冬の雫さん

コメントありがとうございます!!

読んでくださったこと、とってもとっても嬉しいです。

音弥くん、ようやく男らしくなってきたかな?
とか、ちょっと親みたいなこと考えてます(笑)


次からは長男のターンです!!

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.68 )
日時: 2013/08/17 22:06
名前: 和泉 (ID: ZsfIQqc0)  


♯26 「長男と同級生と親友と」


いろいろつっこみたいことはある。
ここは公立高校なのに、なんで土曜日まで講習で埋めなきゃいけないんだとか、
しかも午前と午後両方とか鬼かよ、とか。


でも一番突っ込みたいのは。


「なにしてんだよお前ら」

「おいしいです藤沢くん。」

「やっぱお前料理上手いなー。この卵焼き絶品だわ」

「むむ。それは聞き捨てなりません。
私にも一切れください。」

「いいよー」

「よくねぇよ。人の話聞いてるかてめえら。」

『聞いてないですよ?』


何故昼休みに、さも当たり前のように
佐々木杏奈が俺と一緒に弁当食ってるのか。

今日一番の疑問である。

佐々木の隣には、俺の親友である金井浩二がいる。

浩二は、俺の小学校からの友人だ。
社交的で明るく、独自の情報網を持っている。
あだ名は情報屋。
言い方や態度は軽いが、頭のいい男だと思う。

そんな浩二がパクパクと食っているのは、自分が買ってきたカツサンドではなく
俺が俺のために作った弁当だ。

佐々木も一切躊躇することなく箸を伸ばしている。


「まだ浩二ならわかるんだ。なんで佐々木がいる」

「あら。差別はいけませんよ、藤沢くん。」

「なにが差別だ当たり前の疑問だろうが。
そして俺のハンバーグ返せ」

慌てて佐々木が掠め取ろうとしていたハンバーグを死守。
弁当のメインがなくなるだろうがお前ら。

すると、浩二がニヤリと笑った。

「佐々木さん、俺が呼んだの。一緒に飯食おうって」

「なんでだよ」

「魔除けみたいなもんだな。
おっと。言い方悪くてごめん、佐々木さん」

「いえ。その通りですから。」


魔除け?
首をかしげていると。


「ここ数日、お前にしつこくひっついていた女子グループ。
最近来ないだろ?」

ふっと夏祭りの日のことが頭をよぎって顔が歪むが、考えてみたら確かにそうだ。

「確かに」

うなずくと、またニヤリと浩二が笑った。

「どーも聞いたところによると、佐々木さんがやらかしてくれたんだよな?」

「え」

「私は常識を教えてさしあげただけです」

平然とした顔で、佐々木は自分の弁当のおかずを口に放り込んだ。

「何が常識を教えてさしあげた、だよ。
あいつら完全にお前にびびってたぞ。
お前のこと、魔女だって言ってたし」

佐々木。
魔女だと呼ばれて怯えられるほどの、一体なにをやつらにしたんだ!!

しかし佐々木はほほえんで一言。

「あら、いい気味……っと、すいません、本音が」

「佐々木さんっていっそ清々しいよね。
もう尊敬するくらい、腹の底の黒さを隠そうとしないよね」

「ふふ。
まあ、私は女子の力でもやろうと思えば人の一人は絞め落とせると
教えてさしあげただけですので」


怖いよ佐々木さん。
俺がびびりそうだよ佐々木さん。

「まあ、とりあえず女子たちは佐々木に怯えてる。
だから佐々木が近くにいりゃ、そう簡単にはよってこれない」

だから魔除けか。

「私も、一緒にお弁当食べるような友達はいませんから。
藤沢くんや金井くんが一緒に食べてくれるなら、それはそれで嬉しいんです。」


だから魔除けでもなんでもいいです。
そう言って、佐々木は穏やかに笑った。


それにしても。

「佐々木はあいつらになにをされたんだ?」

「え?」

「佐々木が誰かをびびらせたってことは、本気でキレたんだろ。
本気でキレるような、なにをされたんだ?」

佐々木はぱちくりと目を瞬かせたあと、そうですね、と小さく呟いた。

「私が大事にしているものを侮辱して、傷つけたので。壊される前に私が壊しました」

それはひどく、危うい言葉のように感じた。




お昼を食べ終え、佐々木さんが席に戻ったあと。

「忘れるとこだったわ。
誕生日、おめでとさん」

そう言って、浩二に黒い紙袋を渡された。
誕生日プレゼントだという。


そういえば、明日は俺の誕生日だ。

幸せで、不幸せな誕生日だ。

小さく苦笑すれば、ぽん、と頭を叩かれた。
小学校からの友人の浩二は、藤沢家の秘密も俺の誕生日のことも知っている。


無理するなよ。


ぶっきらぼうに、軽く渡された言葉は、
今日一番の優しい言葉だった。

Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.69 )
日時: 2013/08/18 00:28
名前: はるた (ID: ikU9JQfk)

初めまして、はるたと申します。
和泉さんの小説がとっても面白かったので、コメントさしてもらいました!

ナツ兄が、めっちゃかっこいいです!
家族っていいな、とものすごく感じました!

更新、がんばってください!


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