コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- こちら藤沢家四兄妹
- 日時: 2014/10/27 23:29
- 名前: 和泉 (ID: l5ljCTqN)
初投稿です。
よろしくお願いします。
☆special thanks☆
ちゅちゅんがちゅんさま
冬の雫さま
紫桜さま
猫又様
はるたさま
八田 きいちさま
夕衣さま
波架さま
また、読んでくださっている皆様。
☆目次☆
日常編
>>1 >>3 >>5 >>7 >>10 >>11 >>14 >>18 >>19
>>22 >>23
夏祭り編
>>26 >>27 >>28 >>31 >>32 >>33 >>34 >>37
>>45 >>47
長男過去編
>>55 >>58 >>61 >>63 >>65 >>68 >>71 >>73
>>77 >>78 >>79 >>84
双子お使い編
>>86 >>89 >>90 >>92 >>93 >>96
次女誘拐編
>>100 >>102 >>103 >>104 >>105 >>107 >>108 >>109
>>111
長女デート編
>>112 >>114 >>117 >>118 >>119 >>120
長男長女の文化祭編
>>122 >>123 >>124 >>129 >>131 >>132 >>133 >>134
>>135 >>136 >>137 >>140 >>141 >>146 >>147 >>148
>>149 >>150 >>154
佐々木杏奈の独白
>>157 >>158 >>159 >>163
同級生と藤沢家編
>>164 >>165
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- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.105 )
- 日時: 2013/08/28 19:48
- 名前: 和泉 (ID: Kwou2MmU)
♯42 「長男と藤沢家の次女救出大作戦」
「よくわかんない。ちゃんと事情を説明して、リカちゃん」
真っ白になってフリーズした俺を動かしたのは、後ろに立っていた浩二だった。
真っ青になったリカは、うまく頭が回らないらしい。
リカに変わって事情を話してくれたのは唯一冷静だった日下部くんだった。
川原で少し目を話した隙に———。
黒いベンツが———。
アヤと同じ顔の女がアヤを車に———。
ぐるぐると巡った言葉は、凍りついた俺をとかしていった。
あたしのものよ、返してもらうわ。
女が残したという言葉に頭に血が上る。
アヤは誰のもんでもねぇよ!!
ぐっと拳を握りしめた俺のうしろで、冷静に言葉を紡いだのは佐々木だった。
「リカちゃん、確かにその女はアヤと同じ顔だったんですね」
いまだに青白いリカの顔をのぞきこんで確かめる。
「はい」
「で、あたしのものよ、返してもらうわ。
そう叫んだんですね」
リカがうなずく。
ひっかかりますね、とうつむいた佐々木の横で、浩二がパッと顔をあげた。
おそらく、その女は。
浩二はそっと推測を言葉にのせる。
「その女は、アヤちゃんをひまわりの家に捨てた実の母親である可能性が高い。」
「………っ」
リカが息を飲む。
娘を捨てた母親が。
今さら誘拐までして何を。
言葉にならない悲鳴が聞こえてきそうだ。
そして、さっと佐々木の方を確認した。
そういえば、佐々木には俺、藤沢家の秘密を話していない。
俺たちは、血が繋がっていないんだって。
だけど佐々木はちょっと困ったように微笑んだ。
「イチコーの女子の間では結構有名な話です。
すいませんが、知ってますよ」
知っていたのか。
おそらく発信源は祭りの時のあの女子生徒たちだろう。
安心すればいいのか落ち込めばいいのかわからない。
複雑な顔をする俺とリカをよそに、浩二は話を続けた。
「たぶん、あたしのものよって言った分には、アヤちゃんが女に傷つけられたり
命を奪われたりは簡単にはされない、と思う。
傷つける気なら、顔を見たリカちゃんも一緒に連れ去るのが自然だ。
そうしなかったなら、アヤちゃんが傷つけられることはそうそうないんじゃないかな。
それに、車は女が運転していた訳じゃなかったんだろ。
だれかが女に協力しているんだ。
かなりの金持ちと見た方がいいんじゃないか」
リカの顔は青ざめたままだ。
「警察に」
リカが慌てたようにつぶやく。
けれど、浩二はゆるく首を振った。
「相手がアヤちゃんの母親なら、アヤちゃんをさらったのには何か理由があるはずだ。
こっちになにかアクションを起こしてくるかもしれない。
警察に連絡をする前に、俺たちで調べられることは調べてみよう」
こくり、とリカがうなずいた。
少し、目に力が戻っている。
そんなリカに目をやってから、佐々木はこちらを見つめた。
「藤沢くん、アヤちゃんはどういう経緯で藤沢家にひきとられてきましたか?」
「え」
「大事なことです、答えてください」
問い詰めるような声に押されて、俺は口を開いた。
「ひまわりの家っていう、孤児院からひきとられてきたけど」
そう返すと、佐々木はひとつうなずいてこう言った。
「じゃあ、ひまわりの家に連絡してください」
「は!?」
「女がアヤちゃんの今の居場所を知る手段なんて限られています。
一番確実なのは自分が娘を捨てたひまわりの家に行って、母親だってなのることでしょう。
とりあえず可能性の高いとこから攻めましょう」
うまくいけば母親の連絡先くらい掴めるかもしれません。
そう繋げた佐々木の声を最後まで聞かずに、俺はリビングに走った。
電話帳で、隣町にあるひまわりの家の住所と電話番号を探す。
「ナツ兄、あたしお母さんとお父さんに知らせてくる」
リカがそう叫んだ。
それにうなずいて返す。
日下部くんもそれに続いた。
「ナツさん、俺はあのベンツに見覚えある人がいないか探してきます。」
「頼んだ」
「じゃあ私と金井くんは、犯人からの電話を待ちます。
気兼ねせずにひまわりの家にいってください」
「ありがとう」
アヤ、今助けにいくからな。
小さく呟いた声は形にならずに消えた。
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.106 )
- 日時: 2013/08/28 20:24
- 名前: 八田 きいち。 ◆8HAMY6FOAU (ID: 6ux8t0L6)
アヤちゃん!!
双子ちゃんの片割れがぁぁぁああっ!!
ま、待ってろ!俺が助けにっ…あぁぁぁあ!次元の壁がぁぁぁ!!
ここは、ナツくんたちにお任せしなければぁぁぁ!!
もう楽しみすぎてヤバイですーーーー!!
更新頑張ってください。
お邪魔しました。
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.107 )
- 日時: 2013/08/30 22:12
- 名前: 和泉 (ID: zPUpNUPC)
♯43 「長男と藤沢家の次女救出大作戦 2」
父さんには案外あっさりと連絡がついた。
いつものヘタレはどこへやら、ひたすらに低い声で「今すぐ帰る」と連絡があった。
母さんは母さんで、ふらつく体を無理やり起こしてまで
自分もひまわりの家に行こうとし、リカになだめられていた。
俺はというと母さんと浩二、佐々木を留守番にし、
リカと共に現在ひまわりの家の前に立っている。
ひまわりの家に一度電話はかけたものの留守電だった。
それなら隣町なんだしちょっといってくるわ、ということで今に至る。
父さんが帰宅するのを待っていられるほど残念ながら俺たちは悠長じゃない。
自転車で30分ほど。
そこに、ひまわりの家はあった。
グラウンドのある、白い建物がひとつ立っている。
ここが、アヤとヒロが三歳までを過ごした場所。
そう思うと、少しだけ緊張してしまった。
俺はリカにうなずいて白い建物のチャイムを鳴らす。
「はい」
しばらくして若い女性の声がこたえた。
その声に跳ねるように返事をする。
「こ、こんばんは。夜分に失礼します。
俺、藤沢夏と言います。
二年前ここにいた「アヤ」という名前の女の子について話があるのですが。」
緊張しながらつっかえつっかえ話す。
すると、アヤ、の名前を出したとたんにブツッと通信が切れた。
無視する気か、こいつ。
顔をしかめたリカがもう一度チャイムを鳴らそうと指を伸ばしたとき。
がちゃり、と目の前のドアが開いた。
年は30半ばだろうか。
ひとりの女性がドアを開け、どうぞ、と俺たちを招き入れた。
中に入り、廊下を歩くと近くの部屋から小さな子供たちの笑い声がした。
少し歩いて、廊下の突き当たりの部屋にはいる。
椅子をすすめられたので、黙って着席した。
「綺ちゃんについて聞きたい、との話ですが」
女性が話を切り出す。
それにうなずいたのはリカだった。
「私たちは二年前、藤沢家にヒロくんとアヤちゃんを引き取りました。
最近、そのことをここに聞きに来た方はいませんでしたか?」
「……ええ、ひとり」
女性が首をかしげながらそう答える。
「綺ちゃんの実の母親だと名乗る方が、ひとりいらっしゃいました」
——————ビンゴ。
リカと視線をあわせて、うなずきあう。
「立花紫乃さん、という方で一目綺ちゃんを見たい、と。
もう引き取られたと伝えると、遠目から見るだけで構わないから、
綺ちゃんの今の居場所を教えてくれないかと。」
立花紫乃。
頭の中でその名前を繰り返す。
「それで、教えたんですか」
リカの問いに女性がうなずく。
俺とリカの気持ちを一言で表すなら、やってくれやがったなこの女、である。
「なにかあったんですか」
おおいにありましたとも。
守秘義務ってもんを知らないのかこいつ。
呆れた目で女性を眺めていると、リカがぽつりと尋ねた。
「その女の人は、他になにか言っていませんでしたか」
「他に?」
女性が訝しげにリカに問い返す。
それにリカはゆっくりと広角をあげた。
「例えば、アヤを捨てた理由、とか」
女性が凍りつく。
「言っていたんですね。聞かせていただけますか」
「ですが、簡単に話していいような内容じゃ」
「大事なことなんです」
リカが畳み掛けた。
「大事な妹のことなんです。教えてください」
ため息をついた女性が、アヤの母親について語り出したのはそのすぐあとのことだった。
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.108 )
- 日時: 2013/08/30 22:16
- 名前: 和泉 (ID: kI4KFa7C)
♯44 「長男と藤沢家の次女救出大作戦 3」
女性の話を聞き終えて、俺とリカは自転車をこいで帰路をたどった。
「これではっきりしたな」
「何が」
自転車をこぎながら、リカに言う。
「犯人の目的。
犯人は立花紫乃で間違いない。
はっきりしたのは立花紫乃がなんでアヤをさらったのかと、アヤに身の危険があるかどうか」
そういうと、
「ざっくり言うと、アヤが傷つけられたり殺されたりする可能性は皆無ね」
リカが静かに言った。
「そして計画性も皆無だわ」
立花紫乃がアヤを捨てた理由。
そこから導きだされた答えは、立花紫乃はもとから計画を練って
アヤを誘拐したわけじゃなかったということ。
立花紫乃はほんとうに、遠目からアヤを見るだけでよかったし、そのつもりだったのだろう。
突発的にやってしまった誘拐、それが一番しっくり来る。
「大人って、勝手ね」
大人って勝手だわ。
自分に納得させるようにリカが繰り返した。
「捨てたくせに、愛してるなんて」
ただの独りよがりよ。
呟いた言葉は、夜の闇に溶けて沈んだ。
家について中にはいると、父さんがもう家に着いていたらしい。
ひょっこりとキッチンから顔を覗かせた。
「お帰り父さん。浩二と佐々木は?」
「ただいま。あの二人ならさっき帰ったよ」
帰ったのか、そう考えながらうなずいて返すと、リビングのソファに横たわっていた母さんも体を起こした。
「母さん!?無茶すんなよ、寝てろって!」
慌てて駆け寄ると、
「娘の一大事にのんきに寝てられる母親なんかいないわ。
なっちゃん、なにかわかった?」
いつものふわふわさもかききえた静かな声で、母さんが問うた。
目が完全に据わっている。
そのようすに若干怯えながら、俺はそれに淡々と答えた。
「おそらく犯人の名前は立花紫乃。
アヤの実の母親。
住所と電話番号もわかった。
誘拐した理由は—————」
ひまわりの家でわかったこと。
全てを語り終えて、母さんと父さんを見る。
母さんの顔はひどく歪んでいて、父さんの顔も似たようなものだった。
「そうね、じゃあかなめくん。車を出してくれる?」
聞き終えた母さんは、静かな声のまま父さんに指示を出した。
「了解」
父さんがぱっと立ち上がってガレージへとかけていく。
「なっちゃんは悪いけど、私の車イスを持ってきてもらえるー?
りっちゃんは、家の戸締まり。
立花紫乃さんの家まで、案内よろしくね」
「え、」
何をする気だ。
硬直して母さんを見ると、
「みんなで、アヤを迎えにいきましょう」
ずいぶんとお世話になったようだから。
そう言って、母さんがふわりと微笑んだ。
その姿に、俺とリカは息を飲む。
やばい、母さんがキレているぞ、と。
- Re: こちら藤沢家四兄妹 ( No.109 )
- 日時: 2013/08/30 22:19
- 名前: 和泉 (ID: mt9AeZa7)
♯45 「次女とほんとのお母さんの話」
私、アヤが連れていかれたのは、大きなマンションのなかのお部屋だった。
香水の香りがする部屋の中に、女の人に抱き抱えられてはいる。
すると、
「話が違うじゃないか!?」
中にいた男の人が驚いたような顔で叫んだ。
「あたしの娘よ」
女の人は私を抱き締めたまま返す。
「でも戸籍上はこの子は藤沢家の子どもだろう!!
だいたい、見るだけだと言ったから協力したんだ。
誘拐なんて冗談じゃない!!」
「あたしが、あたしの娘を連れてきて何が悪いの。
あたしは、この子を愛しているわ」
愛しているのに、すてたの?
よくわからないことを言うなぁ、
そう思いながら私は女の人と男の人が言い争うのを見ていた。
車の中で、一人言のように女の人が語った言葉を思い出す。
女の人。
名前は、立花紫乃さんというらしい。
立花紫乃さんには愛していた男性がいた。
私はその男性との間に生まれた子どもなのだという。
問題は、その男性がかなりのお金持ちだったこと。
そして、その男性にはすでに家族がいたということだ。
私が生まれたことで彼の家族に浮気がばれ、
男性に別れを告げられることを恐れた立花紫乃さんは、ひまわりの家に私を捨てた。
しかし、私を捨ててから男性との関係は少しずつ悪化し、
この間別れを告げられた。
そして別れを切り出された立花紫乃さんは、男性に条件を出した。
「あなたとの娘にもう一度会いたい。
あなたと私の娘がどこにいて、どんな生活をしているのか知りたい。
それを知るために協力してくれ」
そうすれば別れてやる、と。
男性は立花紫乃さんの条件を飲んだ。
男性の協力のもと立花紫乃さんは私の居場所を探し出した。
そして男性ではないある人の協力により、川原で遊ぶ私に接近することができた。
「どうして、私をつれていこうとするの?」
そう聞くと、
「寂しくなっちゃったのかもね。
幸せそうにわらってるあなたを見て、あなたを取り返したくなっちゃったの」
そう笑って返された。
立花紫乃さんが語った話の半分以上は、私にはわからなかった。
ただひとつ。
この人はひどく自分勝手な理由で私を捨て、
また自分勝手に私を家族から引き剥がそうとしてるんだってことはわかった。
ぼんやりと、男の人と女の人が言い争うのを眺めていた。
部屋のすみっこに座り込んだまま、もう長い時間も過ぎた。
一時間、二時間、それもよくわからなくなってきた。
すると、突然。
「アヤちゃん、あたしのところへ帰っておいで」
そう言って、立花紫乃さんが私の肩をつかんだ。
それにひっと息を飲む。
「やめろ、紫乃!!」
「だってあなたはあたしの娘じゃない。
あたしがお腹を痛めて生んだ娘じゃない。
血の繋がってない親元にいるより、あたしのとこにいる方が幸せに決まってる!!」
「紫乃!!」
怖い、怖い。
このひとが、怖い。
肩をつかむ手に力が入る。
いたい、いたいよ。
「ほら、言ってごらん。
あたしをお母さんだって」
いいたくない。
だって、私のお母さんは。
『おかえりなさい』
そう言って笑ってくれた、あの人だけだから。
「…………だ」
「え?」
「いやだ!!」
思いきり叫ぶ。
助けて、助けてよ。
ヒロ、ナツ兄、リカ姉、お父さん、お母さん。
女の人の顔色が変わる。
ぎゅっと、固く目を閉じた。
その瞬間。
ピ————ンポ————ン!!!!
間の抜けたチャイム音がなった。
それと同時にドアが開く音も。
なんだなんだ、よくわからずに目を白黒させる男の人と立花紫乃さん。
でもね、私は知ってる。
とん、とん、とん。
ぎっ、ぎっ、ぎっ。
軽い足音となにかを押す音。
聞きなれた、音。
そして。
「ヒーロー参上!!」
やっぱり、現れたのは私のヒーローだった。
「リカ姉!!お母さん!!」
リカ姉に車イスを押されて、お母さんが部屋に入ってきた。
「忘れてもらったらこまるなぁ」
そう言いながら、ヒロを抱いたお父さん、それにナツ兄も顔を出す。
車イスに乗ったお母さんは、いつもの数倍優しい笑顔で微笑んだ。
「私の大事な大事な娘、返してもらうわね」
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