二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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東方崩壊譚
日時: 2018/06/27 23:03
名前: 彩都 (ID: J1W6A8bP)

 少年は博霊神社で目覚め、何を思い、幻想卿を崩壊させるか──

 始めましての方は始めまして、何度も彩都の作品を読んでいる方は有難う御座います。
 彩都(サイト)と申します。
 もう九作目ですよ、九作目! まぁ、一ヶ月一回更新が多いですねぇ……
 まぁ、今回は『東方PROJECT』という原作者『ZUN』さんの三次創作となっております。
 何故二次創作じゃないかって? それは秘密です☆
 そんな話は置いといて、今回の物語は『幻想入りした少年が幻想卿諸共破壊する迄のお話』で御座います。
 基本的に口調や喋り方は原作通りですが、間違っている部分があれば普通にコメントで説明してくれれば幸いです。
 自分も原作(体験版のみですが)は少しだけ経験していますが、それでも新発見は多いです。
 とまぁ、ここら辺でお話は止めまして、それでは、本編どうぞ!

 目次

『東方崩壊譚』第一章 第一話
本編
>>1-15
後書
>>16

『東方崩壊譚』第二章 第二話
本編
>>16-46
後書
>>47

『東方崩壊譚』第三章 第三話
本編
>>48-62
後書
>>63

『東方崩壊譚』第四章 第四話
本編
>>64-78
後書
>>79

『東方崩壊譚』第五章 第五話
本編
>>80-94
後書
>>95

『東方崩壊譚』第六章 第六話
本編
>>96-110
後書
>>111

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Re: 東方崩壊譚 ( No.89 )
日時: 2018/02/28 21:50
名前: 彩都 (ID: ???)  

「それじゃあ、一つ目の質問、『貴女の名前は何ですか?』」
 そう言って、はたては、メモ帳のような物を取り出し、ペンも取り出す
、自分は仕方ないので、回答する事にした。
「……華扇(かおう)、たった三文字だ」
「成程、それじゃあ、漢字は?」
「漢字? 漢字は書けないから無理」
「えっ? それじゃあ何で自分の名前を知っているのよ?」
「えーと、紫、八雲紫が教えてくれた」
 自分が少し悩みながら説明すると、『八雲紫!?』と大声で叫ぶ、一体何なんだ? 自分はそう思いながらはたてに言う。
「な、何……? そんなに大声になる事?」
「そ、そりゃそうじゃない! 八雲紫ってこの『幻想郷の賢者』なのよ! それを呼び捨てだなんて……!」
「そ、そこなのか……」
 自分はそう呟いて、息を吐く、中々に面倒な質問責めだ。
「成程ねぇ、アンタの名前の制作者は八雲紫っと……それじゃあ二つ目の質問、『貴女の『程度の能力』は何ですか?』」
「……『程度の能力』……?」
 自分がそう言うと、はたてが説明する。
「そう、私達は『程度の能力』を使用して生活しているの、博麗の巫女なら『空を飛ぶ程度の能力』、とかね? 私の場合、『念写をする程度の能力』だけど……ってか、アンタ、右手で弾幕を消していたじゃない、『弾幕を消す程度の能力』って事?」
「いや、違うけど」
 自分ははたてに『程度の能力』の説明を受けた後、はたての発言に即座に否定する。
「違うの? それじゃあ、どんな『程度の能力』なのよ?」
「い、いや、『程度の能力』という枠に当てはまらないんだけど……僕の能力は『元に戻す』能力、右手で触れたが最後、『元に戻す』事が出来る不思議な能力さ」
「……へぇ、少し面白い能力ね? って、少し前に言っていた気がするわね、それで? 今迄『どんなモノ』を『右手で戻してきた』の?」
「ん? そうだなぁ、魔理沙の『マスタースパーク』とやら、他にはフランドール、レミリアの暴走とか……?」
「えっ? どういう事? あの吸血鬼姉妹がまた暴れたって事?」
「ま、まぁ、そう言う事になるのかな?」
 はたての発言に返答する自分、するとはたてが自分に小声で近づいてきた。
「それでそれで? その『元に戻す』能力に弱点ってあるの? 流石に記事にはしないからさぁ?」
「…………」
 自分ははたての発言に無言になる、会って数時間の相手に能力の説明をしてもいいのか……? まぁ、見た目だけでは悪そうにも見えないし、一応、ちょっとした弱点でも教えるか、自分はそう思い、はたてに返答する。
「……大まかに言えば、『死んだモノ』は『元に戻す』事は出来ないね、『死んだモノ』と言っても、『生命を絶たれた』モノ、『生命を絶たされた』モノ、『自殺をした』モノ、『精神的に死んだ』モノ、『概念として死んだ』モノとかも含まれるかもしれない、色々と解釈は自由だけど……前に人喰妖怪に食べられ、死んだ人に触れて、能力を使用したけど、生き返らなかったね、だからこの能力は基本的に『暴れたモノを正常に戻』したり、『弾幕を元に戻』したり、っていう使い方しかしないね」
 自分の説明を受けて、はたては『へぇ』みたいな表情をしていた。
「中々に面白い内容ねぇ、少し哲学っぽく感じたわ」
「へぇ、そうかい、それは嬉しいね」
 自分はそう言って、椅子に座って、溜息を吐く、そしてはたてに言う。
「それで? まだ話を続けるのか? ……いや、質問か」
 自分の発言を聞いて、はたてがハッ! とする。
「あっ! わ、忘れてた……それじゃあ、三つ目の質問! 『好きな男性のタイプは何ですか!?』」
「……はぁ、男性? 何を言っているんだ? 僕が男性を好きになるとでも?」
「へっ? てっきり、おませさんな博麗の巫女だと思ったんだけど……違った? まだ男には興味ない?」
 そう言うはたてに対し、自分は静かに言う。
「ひ、一つだけ質問するよ?」
「えぇ、いいわよ?」
「僕の事、性別はどっちとして見ている?」
「へっ? そんなの簡単じゃない、『女の子』でしょ? 博麗の巫女の格好をしているしさぁ?」
「…………」
 成程、はたて、君は『僕の事を女だと見ていた』って事か……自分はそう思いながら、その場で溜息を吐いて、はたてに正体を明かす。
「はたて、ごめんね? 僕は華扇、性別は『男』だ」
「……えっ?」
 驚いた表情で自分を見つめるはたて、すると厨房の奥の店員が、『料理出来ましたー!』と叫ぶ。
「えっ……? アンタ、男なの?」
「うん、れっきとした男ですよ? 博麗の巫女の格好の理由は『服がない』からです、だって博麗神社って女子ばっかの神社らしいしさ? 無いみたいなんだよ、神主の服装ってのが……」
「ま、マジ……?」
 焦るはたては自分から離れ、厨房の店員から料理を受け取って、自分の前に料理を置いて食べ始めるが、口の前で箸を離してしまい、料理を食べる事が出来なかった。
 そ、そこ迄衝撃なのか……? 自分はそう思いながら、腹が減ったので、椅子に座って、料理を食べる事を考える、自分は『いただきます』をして、料理を食べ始める──
 そして自分はご飯を食べて、ご飯を食べた後に文の部屋へと戻る──も、もう、起きている……よなぁ……? いや、起きていてくれ──

Re: 東方崩壊譚 ( No.90 )
日時: 2018/03/07 21:34
名前: 彩都 (ID: ???)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第五章 第五話 体で支払う天狗世界

CHAPTER 3 暴風少女

 僕は料理を食べ終わった後、お皿を流し台に置いて、店を出ようとする、するとはたてが『待って!』と言うので、店の出入り口で立ち止まる。
「……何だよはたて?」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ……も、もう少し取材を……質問を……」
「無理、僕だって忙しいんだ」
「だ、だからって……!」
「無理なモノは無理、まずは文の所に向かわなくては、はたての事はその次だ」
「文、ですって……?」
 自分が文の事を言うと、はたては自分を睨みながら言う。
「アンタ……文に何をされたの?」
「えっ? いや、文には何もされていないけど……」
「嘘おっしゃい! 博麗の巫女を誘拐するって事は『それ程迄にヤバい状況に陥っている』って事よ! 絶対アンタ、何かされたわね? 話しなさい? 私が手伝ってあげるから」
「い、いや、手伝わなくても良いよ……? 元はといえば、自分が悪いんだし……」
「いいえ! 流石にそれは可笑しいわ! こんな幼い少女……じゃなかった、少年を誘拐するだなんて! よし! 華扇と言ったわね!? 手伝ってあげるから文の場所に案内して!」
「え、えぇっ……? 何か面倒な事になったなぁ……」
 自分はそう言いながら、はたてに文の住居を教える事にした──まぁ、自分も文の所に向かうから、一緒に向かうんだけど──

「それでねぇ? 私は誘拐された文を助けたって訳よぉ!」
「へ、へぇ……そうなんですか……」
 歩きながら、自分ははたての口から発せられる文の過去をぺらぺらと喋る、実際はどうかは分からないが、こう言うのは『凄いッスねぇ!』とか、『カッコいいッス!』とか言っておけば、相手は煽(おだ)てられ、いい気分になるから、案外楽だ。
「それでねそれでね! 文はどう言ったと思う!? 泣きながら、『有難うございますぅ、姫海棠様ぁ!』って! いやぁ、あん時は面白かったわ
ぁ! 『文の鼻を挫いてやったわ!』って!」
「へぇ、それは凄いッスねぇ」
「でしょー! それで一躍私は有名人の仲間入りよ! 更に文から『姫海棠さん! はたてさん!』だなんて言われて、嬉しかったわぁ!」
「へぇ、それはカッコいいッスねぇ」
「でしょー! いやぁ……あん時が自分にとって、人生で一番輝いていた時なのかなぁ……と思うと……何だか悲しくなる……」
 ……んっ? 何? 何なのこの空気? あれっ? 最初は凄い話だったけど、今になって急に暗い話に転向? 何で? 何があった? はたての過去に何があった!? 自分はそう思いながら、はたてを確認し、冷や汗を流す、はたては頭を垂れて、暗い雰囲気を醸し出していた。
「あーあ……何であぁなっちゃったんだろうなぁ……あーあ……」
「え、えーと……はたてさん? 差し支えなければ、その話を聞かせていただけません──」
 自分がそう言うと、はたてが『ねぇねぇ』と言って、自分の発言を斬る。
「は、はい? 何でしょうか?」
 自分がそう言うと、はたては建物の一室を指指して、自分に言う。
「ねぇ、あそこが、文の家でしょう?」
「えっ……?」
 はたての指の方向を見る、するとそこは文の家だった、と、という事はもう文の家の真近くに来ていた、という事か……自分はそう判断して、文の家迄階段を上る。
 自分が階段を上っていると、踊り場から宙に浮くはたてから声が発せられる。
「ねぇ、博麗の巫女なんだから、宙に浮けばぁ?」
「えっ……?」
 自分は目の前の光景に目を疑った、えっ……? はたてが……宙に浮いている……? 自分はそう思いながら、はたてに言う。
「え、えーと……何で……宙に浮けるの……?」
「えっ? そんなの簡単じゃない、私は鴉天狗だから、天狗が宙に浮けないとか、笑えるじゃない?」
 そ、そうか……鴉天狗だから、宙に浮けるのか……自分ははたての発言を受けて、最初に出会った時の事を理解した、あぁ、だから宙に浮いていたのか、と。
「ってか、『貴男』、一応博麗の巫女よね? 男だけど? 宙に浮けないの?」
「えっ? あぁー……うん、宙に浮けないね、まず、宙の浮き方さえ知らないのに……」
「あら? まだ習っていなかったの? あの外来人である東風谷早苗でさえ浮ける、というのに……」
「そ、そうなんだ……」
 自分ははたての発言に適当に返答する、うるせぇなぁ、浮きたいって衝動が起きねぇっての。
「でも、階段で移動するのって大変じゃない? だから私がアンタの体を掴んで、移動しても良いけど?」
「い、いや、僕は良いよ、階段でも動けるし」
「でも、私が待たないといけないじゃない?」
「仕方ないじゃん? 人間なんだし僕は? 君みたいに宙に浮けないし、そこ迄万能じゃない」
「い、いや、それはそうなんだけど……あぁ、もうじれったい! 良いから私に抱き締められなさい!!」
「えっ? えぇっ!?」
 踊り場に侵入し、自分の胴体を掴むはたて、そして自分の胴体を掴んだまま、はたては踊り場を出て、上昇する、そして何時の間にか文の家の前迄移動していた。
 は、早いなぁ……自分はそう思いながら、踊り場から侵入し、床に足をつけられる、そして自分は文の家の玄関を開けて、文の家の中に入る──文、もう起きているかなぁ……?

Re: 東方崩壊譚 ( No.91 )
日時: 2018/03/14 21:12
名前: 彩都 (ID: AtgNBmF5)  

 そして文の家の中に入って、自分は靴を脱ぎ、ゆっくりと侵入していく、勿論はたても靴を脱いで、文の家の中に侵入する。
 ぜ、全然寝息が聞こえない……という事は起きているのかなぁ? と判断する自分、そして文が寝ている場所に到着し、文を確認する、すると『文は布団の中でまだ寝て』いた。
「…………」
「…………」
 さっさと起きろよこの野郎……! 自分がそう思いながら、怒りを露わにすると、『うぅーん……』と言って、文が寝返りを打った。
 これで起きるだろう、自分はそう思いながら、文を見つめる、するとはたてが自分に小声で言う。
「ね、ねぇ、文、起きてるの?」
「さ、さぁ? まだ起きていないんじゃあ……?」
 自分とはたてがそんな会話をすると、文が自分達の会話に気付いて、声を出した。
「誰ですかぁ……?」
 文は寝起きの声でそう言う、あっ、やっと起きた、自分がそう思って、安堵した、はたても『やっと起きたか』と呟いて、腕を組んで安堵する。
 そして文が布団の中で体をもぞもぞと動かしながら、起き上がった。
「おはよう、文……!?」
「えぇ、お早うございます、華扇くん……」
 文が起き上がって、自分を見た、その時、自分ははっきりと確認出来た、『文の瞳が赤かった』事を……!
「あ、文……!?」
 文の瞳が赤い事を確認しながら、自分は静かに息を吐く、そして文に不思議そうに言う。
「あ、文……そう言えば……君の目は『充血していた』かなぁ?」
「……えぇっ? いきなり何の事なんですかぁ……?」
 眠たそうに自分に返答する文、文は近くの鏡を確認して、自身の目を確認する、すると『あっか!?』と叫んだ。
「か、華扇くん!? 何なんですかこの赤い目は!? って、はたて!? ど、どうして此処に……!?」
「えっ? あ、あぁ……この華扇ってのを運んだから──」
 はたてが言うも、文が左手で玄関を指指しながら呟く。
「はたて、まさか華扇くんを記事にする為に……許しません!!」
 文の発言を聞いた自分、はたては『何時の間にか外に飛ばされて』いた、そしてゆっくり、否、『高速で自分の体は落ちて』いく。
「!? !? !?」
 不思議に思って、自分は下を確認する、下は『地面』である! も、もしもこんな高い所から落ちたら……諏訪子、神奈子の時より酷い事になるぞ!? 気絶……だけじゃ物足りないだろう! 自分はそう思いながら『どうする!? どうする!?』と、考えていた、すると急に『落ちるスピードが遅くなった』、否、『落下が停止』したのだ、ど、どうして落下が止まったんだ……!? そう思っていると、聞き慣れた声が聞こえた。
「うー……落ちているのを掴むのは結構体力がいるわねぇ……!」
 聞き慣れた声、それははたてだった、そしてはたては自分を地面に置いて、安堵する。
「はぁはぁ……まさか案外速攻でバレるとは……流石文、凄いわね……」
「違う違う! あれは色々な意味で違う!」
 叫ぶ自分に対し、はたてが首を傾げる。
「はぁ? どう言う事なの? 説明がないから分からないわ」
「え、えーと……大まかに言えば、『文は操られている』、もしくは『暴走している』んだよ! レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレットの時と一緒だ! 僕が戦って理解している!」
「そ、そうなの……? でも、どうして文は暴走とかしているの?」
「知るかよ!? そんなの……『文に何かをした存在』に聞かないといけない! ってか、もしも文以外に被害があるのなら……『この幻想郷に異変が起きた』って事になるんだよ! 今はまだ、レミリア、フランドール、ルーミア、アリス、文だけれど、これ以上被害が増えるのなら、『異変』になるかもしれない……!」
 自分がそう言うと、はたては目を輝かせて自分に言う。
「それならスクープね! 最高じゃない! さぁ、華扇、さっさと倒しちゃいましょう!」
「バカ! 逆に君が文みたいになるかもしれないんだぞ!?」
 自分がそう言うと、はたては『マジで!?』みたいな表情をしていた。
「うっそぉ? それなら記事にならないじゃぁん?」
「記事になるならないの問題じゃないんだけどね!?」
「そうなんですか、『私を倒したら華扇くんの記事と共に私の暴走した記事が出てしまう』のですか、それなら、『阻止しないといけませんね』ぇ?」
「!?」
「!?」
 不意に聞こえた声、その声の方に振り向くと、『何時もの格好の文』が自分達を上から見ていた、嘘だろ!? 自分とはたての会話は『文を着替えさせて、自分達の後ろで待機させてしまう程の時間を作っていた』って事か!? 自分がそう思っていると、文は自分の頭、はたての頭を片手で掴んで自分とはたてを睨む。
「ふむ、私の今を記事にされるのは困りますねぇ……」
 そう呟く文に対し、自分は頭の痛みを抱えながら『チャンスだ!』と思う。
「文、君は間違いを犯した、まず一つ目は『僕の頭を掴んだ』事だ、二つ目は『君が僕の頭を掴んだが故に僕の能力が容易に発動出来る事』だぁぁぁ!!」
 自分はそう言って、右手で能力を発動し、文の腕に触ろうとした、だが
自分が文の腕に触れる前に文は自分ごと横に投げて、自身の腕から自分を『離した』のだ。
 まさか、そういう回避をするとは……自分は鈍痛を受ける体を動かそうとせず、痛みを引くのを待った──

Re: 東方崩壊譚 ( No.92 )
日時: 2018/03/21 21:40
名前: 彩都 (ID: gKP4noKB)  

 ……痛い、自分はそう思いながら、はたての頭を掴む文を確認する。
 一体どう能力を発動しようか? まず、正攻法じゃ無理だ、あの素早い行動で避けられる、じゃあ文に抱き締めて能力を発動? でも、文は天狗、妖怪だ、僕みたいな存在とは違い、『力が強い』、だから逆に『胴体を抱き締められて、内蔵ごとぶっ壊しそう』だ。
 なので『自分の考え』じゃあ、文に触れて能力を発動する事は不可能! だからはたての力を借りたい! だが、今のこの状況で、はたてに力を借りる等そもそもが出来ない。
 自分はそう考えながら、気絶しているように思わせる為に静かに呼吸をする。
「……はたて? 華扇くんと私の事、記事にしないで下さいね?」
「な、何でよ……わ、私は文より先に情報を手に入れて記事にするわ!」
「だから止めて下さいって? 私にもプライバシーがあるんですから?」
 そう言って文は自分とは逆方向にはたてを投げて、両手を身軽にした。
 そして文は静かに自分の方に向かってきて、自身の胸倉を掴む。
「……分かっているんですよ? 『起きている』事位?」
「!? ま、まさかバレていたとは……」
 自分はそう呟いて、右手で胸倉を掴んでいる手を掴む為に目を開けた。
 すると『自分の胸倉を掴んでいるのは文の手ではなかった』のだ。
 文は空中で右手を伸ばして、『掴んでいる振り』をしているだけだった。
「……!?」
「あら? 気付かなかったんですか? 私の能力は『風を操る程度の能力』ですよ? そして『貴方の能力は分かって』いる、だから貴方への能力の対処は『貴方の手が届かない範囲に存在すればいい』事……そう、『言葉通り、手が届かない場所』に!!」
「くっ……!」
 自分は怒りを露わにしながら、『風の手』を見つめる、何もない場所、空間なのに、『捕まれている感覚がする』というのは他人から見たら多少滑稽に感じるだろう、だが、今はそんな事、どうでも良い。
 その前にこの『風の手』をどう逃げるかが問題である、簡単に言ってしまえば、この『風の手』から自分は逃げる事が出来ない。
 だから、少しでもこの『風の手』の範囲内から『範囲外』に移動しなければならない。
 自分はそう考えながら、静かに息を吸い、文に言う。
「文……どうして、どうして僕を傷つけるの? だって昨日、あんなに自分を着せかえ人形にして楽しんでいたじゃないか……あの文は偽物なの?」
「…………」
 無言のまま文は自分を見つめ、『黙れ』と一言。
「お前には関係がない、それは『昨日の私』であって、『今の自分、今日の自分ではない』のです、だから『昨日の私』なんて忘れな──」
「忘れられないよ」
 文の言葉を切る自分、そして自分は静かに言葉を続ける。
「だって……『昨日の文』も、『今の文、今日の文』も、全部全部、『一つの文』じゃないか!? まるで、『昨日の私と今日の私は別人だ』って言っているようなもんじゃないか!」
「黙れ……黙れ黙れ! お前には関係がないだろう!? ……あぁ、段々と腹が立ってきた、はたてより貴方を先に殺害します、その方がいいでしょう」
「あ、文……じゃあ、さ、最後に一つだけ、最後に一つだけ、言ってもいいかなぁ……?」
 そう言う自分に対し、首を傾げる文、そして自分が静かに言葉を発す。
「文……昨日の君とは楽しかった、今迄の君とは楽しかった、でも、『今の君は、とてもつまらない』ね」
 冷酷に発言する自分に対し、文は目を細めた状態から一気に目を見開いた。
「何だその発言は? 逆にこっちが言いたい位ですね、それじゃあ、最期の言葉も終了した事でしょう? だから、私も最期の言葉を貴方にぶつけます、『さよ』」
 文の発言中に『背後から丸太を持ったはたてが、文の頭を丸太で薙いだ』、そして文は一気に横へと吹き飛んだ。
「はぁはぁ……文ぁ、なぁに、『私』の事を忘れているのぉ? 私だって、『此処に存在している』のよ!? 忘れられちゃあ困るわねぇ!?」
「あ、有難うはたて……あー、君が背後で丸太を探しているのを発見して、良い丸太を見つけるのに、結構な時間稼ぎをさせられたよ?」
「アハハ……でも、何とか間に合ったわね、まるで紙一重って奴ぅ?」
「多分そうかもしれないねぇ? でも……『文はどうなった』んだい?」
 自分は胸倉を確認しながら、はたてと会話をする、もう『風の手』はないな、と判断し、安心する。
 すると、遠くから、砂埃を舞わせながら、文が自分達の目の前に現れる。
「あー危なかったぁ? 急いで暴風を自分の方に向けたから大丈夫だったけど……少しだけ丸太の重みを経験しちゃったなぁ? はたて? この借りは絶対に返しますね?」
「いやぁ? 返さなくてもいいんだけどなぁ?」
 はたてはそう言って、不敵な笑みを浮かべる、そして自分が言う。
「文……今から君を救う、そこで静かに待ってろよ?」
「アハハ? 少年は面白い事を言うなぁ? 『待てと言われて待つアホは居ない』でしょう?」
 文はそう言って、その場で空中浮遊しながら自分とはたての方に向かってくる──はたては丸太を持って、構える、自分は眉間に皺を寄せながら、右手を前に出した──

Re: 東方崩壊譚 ( No.93 )
日時: 2018/03/28 21:51
名前: 彩都 (ID: YzSzOpCz)  

 自分達の方へ向かってくる文を見ながら、自分は静かに口の中の唾液を飲み込んだ。
 自分の隣には丸太を持ったはたてが居る、そして自分は『何を持っていない』、武器一つ、ない、あるのは衣類のみ。
 だから、『必然的に自分の方に向かってくるのは分かっていた』、そう『分かっていた、振りをしていた』だけだった。
『文は自分の方ではなく、はたての方に向かい、右手を伸ばし、はたての胸倉を掴んで』いた、更にはたては自分と同じように『風の手』に胸倉を捕まれて、身動きが取れなくなっていた、そしてはたては手の力を失い、両手から丸太を離した。
「これで貴方はもう私を攻撃する事は出来ませんよ……? 『風で貴方を掴んでいる以上、貴方は風の呪縛を解く以外で私の風から逃げる事は出来ない』ので」
「ぐっ……あぁっ……!」
 呻くはたてに対し、『自分は何も出来ないのか?』と考える、すると少し不思議な事を思った、それは『何で『風の手』で掴んでいるのに、片手を前に出している』のか? と言う事だった。
 普通『風の手』で掴んでいるのなら、『片手なんか前に出さなくても良い』筈なのに……どうしてだ? 自分はそう思いながら、首を傾げる。
 すると、『とある事』を思いつき、『まさか……』と考える。
 そして、自分は今さっき思いついた、『とある事』の実行に移った。
「ぐっ……うぉぉ!!」
 自分ははたてが落とした丸太を掴もうと腕で抱き締めるように丸太を持とうとするが、『あまりにも重過ぎて、持つ事が出来な』かった。
 くそっ……万事休すだ……自分がそう考えると、ふと、文が自分に話しかける。
「……どうしたんですか? 丸太を持とうとして?」
「んー? そんなの文には関係ないだろう?」
「……そうですか」
 文はそう言って、『左手を前に出して』自分の胸倉を『風の手』で掴んだ。
「これでお互いを捕捉しました、私は貴方達を傷つけたくない、だからはたては記事の消去をお願いします」
「は、はぁ!? ふ、巫山戯んじゃないわよ……! それは新聞記者として、絶対に行いたくない!」
「……そうですか、それでは、さっさと貴方を殺害しましょうか、殺害すれば貴方はもう『記事を書く事すら出来ない』ですし」
「そ、それだけは厭……!」
「死ぬか記事を消去するかのどちらかですよ?」
 そう発言する文を見て、自分はその場凌ぎで笑う。
「アハハ、アハハハハハハ!」
「……何が可笑しい、そこのガキ?」
「可笑しいって? そりゃそうだろ? あっ、もしかして、『自分で自分を追いつめている』って事、文は分からないのかなぁ?」
 自分はそう言って、胸倉を指指す、そして言葉を発言する。
「『文が『風の手』で僕を掴んだ』、それが丸太を持つ前に行おうとした行動なんだよ」
「は、はぁ……? な、何を言っているんですか? 貴方……?」
「そんなの簡単だろう? 『今、この状況から離れる方法』だよ?」
 自分はそう言って、はたてを見つめ、発言する。
「はたて! 新聞記者ならカメラを持っているだろ!?」
「えっ!? え、えぇ……一応は……」
「じゃあ、『文に一個、使える記事でもある』でしょ? それを一個渡してあげなよ?」
「は、はぁ!? な、何言ってんのアンタ!? アンタも文側に堕ちたの!?」
「おいおい? 僕はそう言っていないぞ? 『使える記事』って、『文本人が関わった記事でもいい』と言っているんだ、例えば……『文が不利になる記事』とかね!」
「えっ!? ……って、それを脅しに!?」
 はたての発言を受け、自分は静かに頷く。
「あぁ! そう! 文! 今、はたては『文が不利になる記事』を持っている! もしもこのままその記事を文字に、紙に移されたくなければ、僕とはたてを解放しろ! そうしたらはたては『文が不利になる記事』を消すって!」
 自分はそう言って、文の反応を見る、そして文が静かに言う。
「……フフフ、もしもそれが『脅し』だとしたら、『どんな記事』なんでしょうねぇ? 『私が不利になる記事』だなんて……中々ないですよぉ?」
「えっ? ないの? じゃあ、『昨日僕を襲った事』もないってか? 実は昨日、はたてと話をして、『文が僕を襲うか?』って記事を作ろうって話をしたんだ、そして君は僕を押し倒し、文が着ているその服を着させた……もしも『僕を脱がしている場面を『激写! 射命丸文、人里の幼子を襲う!!』みたいな記事』にして、新聞に載せたら……どうなるかなぁ?」
 自分がそう言うと、文とはたては驚いていた。
「なっ……!? 本当ですかはたて!?」
「い、いや! 私は知りませんけど!?」
「まぁ、知らないのも無理はない、だって、『はたてはお酒を飲んでいた』からねぇ? そりゃ昨日の事なんか、忘れているよねぇ……! と言う事で、もしもその記事が公にされたくないのなら、急いで僕達を解放しろ、いいか?」
「……くっ、それじゃあ……『はたてのカメラを壊せばいい』んです! そう、『はたて』ごと!!」
 文はそう言って、右手を上に上げ、手の平の上に大きな『風の球』を作り上げていく、はたてはその場で落ち、地面に着く。
「はたて! 今だ! 文のお腹に丸太を投げろ!!」
「えっ!? え、えぇ!」
 はたては頷いて、足下の丸太を投げる、文はその攻撃を察し、『甘いですよ! そんなもの、避ければいい!』と大声を荒げる。
「おいおい? 『それ』は無理だぜ? だって、『左手で自分を掴んでいる』からね? もしも避けるなら……『僕を離さないといけない』んだ! だから君が『僕の胸倉を掴んだ瞬間から勝負は決まっていた』んだ!」
「なっ……じゃあ、左手を離せばいい事!!」
 そう言う文に対し、自分は静かに返答する。
「無理だぜ文? こんな……『剛速球のような丸太を避ける』なんて、幾ら文でも不可能だ」
 自分の発言を受け、『く、くっそぉ……!』と言い、文の腹部に太い丸太がぶつかる。丸太の威力で吹き飛ぶ文、それと同時に自分も吹き飛ぶ。
 矢張り、『そうなっていた』か……よかった、自分の考えが当たっていて……途中で文は手を離し、自分は空中に放り出される、だが、自分を追っていたはたてに掴まれ、何とか地面に落下する事は防いだ──


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