二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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東方崩壊譚
日時: 2018/06/27 23:03
名前: 彩都 (ID: J1W6A8bP)

 少年は博霊神社で目覚め、何を思い、幻想卿を崩壊させるか──

 始めましての方は始めまして、何度も彩都の作品を読んでいる方は有難う御座います。
 彩都(サイト)と申します。
 もう九作目ですよ、九作目! まぁ、一ヶ月一回更新が多いですねぇ……
 まぁ、今回は『東方PROJECT』という原作者『ZUN』さんの三次創作となっております。
 何故二次創作じゃないかって? それは秘密です☆
 そんな話は置いといて、今回の物語は『幻想入りした少年が幻想卿諸共破壊する迄のお話』で御座います。
 基本的に口調や喋り方は原作通りですが、間違っている部分があれば普通にコメントで説明してくれれば幸いです。
 自分も原作(体験版のみですが)は少しだけ経験していますが、それでも新発見は多いです。
 とまぁ、ここら辺でお話は止めまして、それでは、本編どうぞ!

 目次

『東方崩壊譚』第一章 第一話
本編
>>1-15
後書
>>16

『東方崩壊譚』第二章 第二話
本編
>>16-46
後書
>>47

『東方崩壊譚』第三章 第三話
本編
>>48-62
後書
>>63

『東方崩壊譚』第四章 第四話
本編
>>64-78
後書
>>79

『東方崩壊譚』第五章 第五話
本編
>>80-94
後書
>>95

『東方崩壊譚』第六章 第六話
本編
>>96-110
後書
>>111

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Re: 東方崩壊譚 ( No.34 )
日時: 2017/04/16 22:32
名前: 彩都 (ID: ???)  

 早苗と諏訪子は体を洗った後、僕が入っている湯船に入ってきた、諏訪子、僕、早苗と言った、順番で入っている。
「お風呂は良いねぇ、そう思わない、早苗?」
 諏訪子がそう言うと早苗が頷く。
「そうですねぇ……気持ち良いですねぇ」
「いや、それもそうなんだけど……僕はもう出たいんだけどなぁ?」
 そう言いながら僕は手で、顔を仰ぐ、熱くて熱くて仕方ない──
「男なのに根性が無いねぇ、もっと耐えないと……」
 諏訪子はそう言って、肩迄浸かる、流石神様、僕より体力がある……
「それで、華扇? 何で男なのに、早苗を襲わないんだい?」
 諏訪子の突然に問いに僕はいきなり吹き出してしまった。
「なっ、何を言っているの!? 僕はただ単に力を付ける為に此処に来ただけであって、早苗を襲うとか考えてないよ! 逆に毎夜毎夜、二人に襲われそうで、僕が怖いんだけど!?」
 僕がそう言うと諏訪子が言う。
「そうか、抱き枕はダメなのか……」
「無断で入ってこなければいいよ、毎回朝に驚くのはゴメンだからね──」
 僕がそう言うと諏訪子が呆れる。
「何それ? 申告制?」
「まぁ、それになるかな……? とりあえず、僕は守谷神社で力を付けて、霊夢や魔理沙を助けられる男になりたいだけなんだよ、たったそれだけなんだよ、それ以外に欲は無いからね──いや、食欲はあるか」
 僕がそう言うと、諏訪子は呆れた様に言う。
「全く──それなら安心だ、明日も特訓を頑張りなよ?」
 諏訪子はそう言って、湯船から出る、僕はタオルが張り付いた諏訪子の背中を見続ける事しか出来なかった──
 そして湯船には僕と早苗が残った──

 無言のまま、僕と早苗は湯船に浸かっている、うーん、もう出ようかなぁ? と考えた時だ、不意に早苗が喋った。
「懐かしいですねぇ、他人とお風呂に入るなんて──」
「……えっ? どういう事?」
 僕はそのまま上がろうとしていた体を戻し、もう一度湯船に浸かった。
「懐かしいんですよ、華扇ちゃんみたいな他人と一緒にお風呂に入る事が──私、元々、華扇ちゃんと同じ、『外の世界』の住人って事は覚えてます? その時が懐かしいなぁって……銭湯とか、もう行っていないなぁ」
 そう呟く早苗に対し、僕は何時の間にか言葉を発していた。
「早苗は、早苗は『元の世界』に戻りたい、とは考えないのかい?」
 僕の、僕の言葉に早苗は不思議そうな顔をした後、柔らかな笑顔を作って僕に答えた。
「そうですねぇ、では逆に、華扇ちゃんは『『元の世界』に戻りたい』ですか?」
「そりゃ、記憶を取り戻したら、『外の世界』に戻りたいよ、僕はどうやって幻想郷に来て、どうやって『外の世界』に戻ればいいんだろう? それさえ分かればいいんだけどね──」
 と、僕が早苗に言った後、早苗は優しく僕に言った。
「それは──『今の華扇ちゃん』の答え、ですよね? では逆に、『過去の華扇ちゃん』は、『幻想郷に来たがっていた』、と言う事かもしれませんよ? 『記憶を失う前迄は幻想郷に来たがった、そんな華扇ちゃんを誰かが幻想郷に連れてきた、そして『外の世界』の記憶を消して、この幻想郷で生活させようとした』、とも考えられるんです、そんな可能性もありませんかね?」
 …………的確、そんな発言に聞こえた、確かにその可能性も拭えないな。
 そう思いながら自分の右手に拳を作る──少しでも、少しでも早く『元の世界』に戻らなければ、そう思いながら僕は湯船を出た。
「さぁ、僕はもう上がるよ、早苗、また、こんな会話をしようね?」
「そうですね──あっ、華扇ちゃん、一緒に寝る約束、忘れないで下さいね?」
 念には念を、そう言うかの様に早苗は僕に一緒に寝る事を強く言う、僕は呆れながら呟く。
「忘れる訳ないって……流石にね」

 その後、僕は風呂から出て、体を拭く、そして居間に向かって、正座で待機する、ふむ、のんびり待とう、そう思った時だった、何時の間にか早苗が出てきて、料理を居間に出してきた、あれっ? 早苗って僕より後に出たよね? どういう事? 幾ら何でも早苗の行動は早くないか? と早苗に驚きながら、晩ご飯が始まった、うん、今日も晩御飯は美味いなぁ。

「あぁ、そっか、僕は今日、一つの布団で二人と一緒に寝るんだったな……あぁ、あんな口約束とか、『言えば一緒に寝る』とか言わなきゃよかった……」
 僕はそう呟いてから、頭を抱える、すると僕の寝室をノックする音が聞こえた、あぁ、もうダメだ! と思って、僕は襖を引いた、すると神奈子が目の前に、その隣には、早苗が冷や汗を掻きながら笑っている。
「えっと……二人共どうしたの?」
 僕がそう言うと、神奈子が言う。
「何で諏訪子、早苗がお前と一緒に寝て、私がお前と寝ていないんだ? 不公平だろう? だから一緒に寝かせてくれ、後早苗が襲われては困るからな、早苗の為だからな!」
「私は大丈夫です、と言ったんですが……一応、落ち着かせる為に、三人で寝ません?」
 早苗がそう言うと、僕は頷く。
「い、良いよ、じゃあ三人で寝ようか?」
「そっ、そうですね!」
 僕の言葉に早苗が頷く、これで万事解決したか? 僕はそう思いながら神奈子、僕、早苗の川の字で寝る事にした──うぅっ、早く寝たいけど、神奈子の気が怖くて寝れない……

Re: 東方崩壊譚 ( No.35 )
日時: 2017/04/16 22:34
名前: 彩都 (ID: ???)  

 翌朝──
「う……寝れなかった、怖い気を放つなぁ、神奈子は……と言っても神様だから怖くないといけないんだけど──」
 僕はそう言いながら、風呂掃除をする、ブラシでお風呂場の湯船を洗っている所だ。
「華扇ちゃーん! もう終わりましたー?」
 不意に早苗の声が聞こえ、自分は後ろに置いてあった石鹸で足を滑らしてしまい、そのまま湯船の中ですっ転んでしまった。
「いったぁ!? 何でこんな所に石鹸置いているんだよ、僕!?」
 僕の大声が響いたのか、外で掃除をしていた早苗がお風呂場に来る。
「どうしたんですか……?」
 早苗は僕の格好を見て、顔を赤くしている、僕は自分の格好を見る、僕の格好は、水に濡れており、所々濡れている、胸や下半身が濡れている。
「あーあ、濡れちゃった……まぁ、多分だけど、右手で『元に戻』せるからいっか」
 僕は湯船から立ち上がって、石鹸を手に取り、湯船から出す、これで滑って転ぶ事は無いだろう、僕はそう思いながら風呂掃除を開始する。
「心配しないで、どうせ僕の失敗だしね、アハハ……」
 僕がそう言うと、早苗が心配する。
「そ、そうですか……それでは、私は外で掃除をしているので、終わったら呼んで下さいね、それでは」
 早苗がお風呂場から離れる、そして僕はお風呂場の掃除を再開した──

「ふぅ、終わった終わった」
 僕がおでこの汗を拭う、すると諏訪子が現れた。
「ほう、綺麗にしたねぇ、人里の女の子より、綺麗に出来ているんじゃない?」
「流石に僕は人里の女性よりかは汚いですよ、矢張り女性の方が綺麗にしやすいんじゃないですか? 体も柔らかいし」
「そうかねぇ? ねぇ、神奈子ー?」
 諏訪子の呼び出しに神奈子が現れた、神奈子は僕が掃除したお風呂場を見て、呟く様に言葉を紡ぐ。
「うん、綺麗にはなっているんじゃないか? まぁ、あまり風呂掃除をした事が無さそうだし、初心者にしては綺麗なんじゃないか?」
「二人して……」
 僕が肩を落とすと諏訪子が言う。
「二柱だけどね」
「うぅっ、言い直さなくても良いじゃないか……」
 僕は心の中で泣きながらお風呂場を出る──さぁ、早苗に掃除完了を伝えないと。

「凄いですねぇ、華扇ちゃんは」
「そんな、僕より綺麗な人はいるよ、探せば、の話だけど」
 早苗に誉められながら、僕は否定する、別にそこ迄綺麗な掃除ではないだろうに──そう思いながら僕は食後のお茶を飲む、あぁ、早く強くなりたい、だけど今の自分は神奈子、諏訪子共々戦ってくれない、だから特訓はお預けになっているのだ、早く特訓して強くなって、霊夢、魔理沙に勝ちたいなぁ、僕は、溜息を吐きながら項垂れる。
「華扇ちゃん」
 すると突然早苗が僕の髪を触りながら問いかける。
「華扇ちゃんの髪は綺麗ですねぇ、本当、女性みたいですよ?」
「生憎性別は男なんでね、どう足掻いても、女性にはなれません」
「まぁ、そうなんですけど──」
 僕の否定の言葉に、早苗は肯定する、すると早苗が僕に言った。
「華扇ちゃん、少し私と戦いません? 神奈子様、諏訪子様よりかは弱いですけど、どうです?」
 今、何と言った? 戦いませんってか? 何とも嬉しい言葉に僕は早苗に喜々となって言う。
「良いのかい!? よし、戦おう!久しぶりの戦いにドキドキするよ!」
「……華扇ちゃんは本当、戦いが好きなんですね」
 寂しそうに明苗は僕に言う、どういう事だ? 僕は不思議そうに思いながらも早苗に言う。
「そりゃそうだ、僕は霊夢や魔理沙よりも強くなって、僕を幻想郷に連れてきた奴を倒して、僕は『元の世界』に戻るんだ、その為にはもっと強くならないと!」
「それも良いですけど、『何時頃戻るか、分かる』んですか? もしかして、『何時か『元の世界』に戻ろう』とか考えていませんか?」
 ゆらぁり、と早苗はゆっくり立ち上がって、僕に言う。
「そんな甘い考えで、『元の世界』に戻ろうなんて、考えていませんよね? もしも考えているのなら──」
 大幣を取り出して、僕に突き刺す様に指す。
「本気で戦います、私は『『元の世界』なんか戻りたくない』、と思わせます──」
 早苗の低い声に驚く僕、女性ってこんなに怖い声が出せたっけ? 違う、そんな事を考えている場合ではない、早く返答しないともっと怖い──! そう思いながら僕は早苗に返答する。
「……違う、僕は『一刻も早く『元の世界』に戻りたい』一心だよ、たったそれだけだよ、『何時か戻ろう』なんて考えていない、『早い段階で『元の世界』に戻りたい』、単純にそれだけだよ」
 僕がそういうと、早苗は何時もの音程に変わる。
「そうですよねっ! もしも『何時か『元の世界』に戻ろう』なんて考えを言うなら、この場で弾幕を撃っていましたよっ!」
「怖っ! 何気に怖っ!」
 僕は早苗の恐怖を感じた、その返答だけしなくて良かった、そう思いながら深呼吸をする。
「それじゃあ、戦いましょうか? と言っても、華扇ちゃんの言う『特訓』なんですけどね──」
 早苗がそういうと、僕は安心する。
「良かった、戦うっていうから、魔理沙の魔法での巨大攻撃とか思ったよ──あの魔法は死にそうだったよ」
 僕がそういうと、笑いながら早苗が言う。
「えっ? 死ぬかもしれないですよ? そんな『特訓』です!」
「……え?」
 まさか守谷神社で一番怖いのは──早苗? 僕はそう思いながら、守谷神社最後の神、東風谷早苗と特訓する──生きてると良いなぁ、と僕は思いながら、苦笑する──

Re: 東方崩壊譚 ( No.36 )
日時: 2017/04/16 22:37
名前: 彩都 (ID: ???)  

「まだまだっ! ですよ!」
 早苗はそう言いながら僕に弾幕を撃っていく、僕は避けては右手で、『元に戻』しての繰り返しだ。
「そんなのでは霊夢さんや魔理沙さんを守れませんよ!」
 早苗は弾幕の撃つ量を増やしていく、初めて段幕を避けるけど、中々難しいぞ!? そう思いながら右手で早苗の弾幕を消していく、すると急に視界がぐらつき、その場で、膝を着いてしまう。
「ハァハァ……何だ、この感覚は?」
 そう呟いてから、立ち上がろうとするが、足がふらついて、中々立てない。
「どうしたんですか? こんな所で降りるんですか? 霊夢さんや魔理沙さんを守れませんよ?」
「いや、そんなの分かっているけど、何だか目の前が揺れる……?」
 僕は揺れながら、自分の右手で、この状態を『元に戻』そうとしたが、『能力が発動出来ない』のだ、僕は不思議に思いながらも、自分の右手を見つめる。
「えっ? 何で『能力が発動出来ない』んだ? 不思議だな、どうして?」
 その瞬間、一気に視界がぐわんっと動きだし、僕はその場で倒れてしまった。
「えっ? 華扇ちゃん? 華扇ちゃーん!?」
 突然の出来事で、早苗は戸惑っている、僕はその場でゆっくりと息をしていた──

「…………ん? 此処は?」
 布団の中にいた僕は目覚めた、そして座り込んで、周りを確認する、周りには、泣いている早苗と、早苗をあやす諏訪子、そして手を組んで、胡座をしている神奈子だった。
「ん? 目覚めたか、おい、早苗、華扇が目覚めたぞ?」
「えっ? 本当ですか!?」
 僕の起床に対し、早苗が大きな声で驚く、一体どうしたのだろう?
「早苗はてっきり、自分の弾幕で、華扇が死んだ、と勘違いをしていたんだよ、まぁ、無事でなによりだよ」
 早苗をあやしていた諏訪子が淡々と説明する、説明の内容に、僕は呆れる。
「死んでなんか無いよ、霊夢や魔理沙に勝つ迄僕は生きるよ、だから早苗も泣くのを止めろよ? ほら、証拠に生きているでしょ?」
 僕がそう言って、手を広げ、元気な証拠を見せる、すると僕を強く抱きしめて、早苗が僕の胸で泣く、何だろう、僕の立場が逆な気がしてきたが、今は放っておこう。
「さぁ、僕も起きた事だ、特訓の続きを──」
「何を言っているんだ、華扇、お前は隠れて特訓をしたな、だから博麗の方に戻る迄特訓は禁止だ、お前の体の事も考えての配慮だ、少しは自分の体の事も考えろ」
 神奈子が僕に向かってそう言うと、僕は驚く。
「えっ? 僕は特訓が出来ない? 霊夢の所に戻る迄?」
「あぁ、そうだ、お前は自分の体の事をよく考えずに行動をしている、少しは自分の体の事も考えたらどうだ?」
「だけど、僕は早く強くならないといけないんだ! 休憩して、立ち止まって、待機している場合じゃない! 体に鞭打って行動しなくちゃならないんだ! だから体を動かさないと……」
「いい加減にしろ! 強くなる!? 巫山戯るのも大概にしろ! お前は早苗の弾幕を受けて、その後倒れたんだぞ、つまり、『早苗の弾幕に耐えられない程、自分が弱くなっている』という証拠だ! 少しは頭を冷やせ!」
「頭を冷やした結果がこれだ! 僕は早急に強くならないといけない! それが今の状態、『弱くなっていても僕は強くならないといけない』んだ! だからもっと特訓しないといけないんだ!」
 僕と神奈子の言い合いに、呆れて、諏訪子が一人呟く。
「全く、少しは引いたらどうなんだい? これじゃあ頑固と頑固の押し合いじゃないか、頭を冷やすのは華扇のみじゃなくて、神奈子もだねぇ……」
 諏訪子の呟きの後、僕と神奈子は睨み合う、そして二人共そっぽを向く。
 早苗は移動して、諏訪子に頭を撫でられながら、あやされる──

「全くだよ、神奈子は分かっていない、僕はたまたま倒れただけ、逆にお腹がが減って、倒れたかもしれない、だから能力が使用出来なかっただけかもしれないのに」
 僕は縁側で、月を見ながら諏訪子と会話する、諏訪子は『うんうん、そうだねぇ、だけど神奈子だって、華扇が死んで欲しくないからそう言っているだけかもしれないねぇ』と相槌を打つ。
「いや、そうかもしれないけどさぁ? 少し大き過ぎるよ……僕だってある程度は理解している、だからもう少しは特訓出来る筈なのに……」
 僕はそう言って、近くにあった団子を手に取り、一口、口の中に入れる。
「うーん、やっぱり華扇は分かっていないんだ、まぁ、良いか」
 諏訪子は独り言の様に言って、団子を一口、口の中に入れる。
「でも、不思議だよなぁ、お腹も減っていないのに、突然右手の能力が使えなくなって、その後鼻血が出るなんて……」
「まぁ、そんな時もあるさ、さぁ、もう寝ようかねぇ?」
 諏訪子がそう言って、その場で立ち上がる、そして僕に言う。
「『あまり能力に過信し過ぎない』事、過信し過ぎると、何れ、自分の能力に泣く事になる、華扇の能力は『右手』にしか宿っていないんだから……」
「過信、ねぇ……」
 僕は自分の右手を見ながら考える、過信し過ぎてはないと思うけどなぁ……? そして僕はその場で立ち上がり、一人ごちる。
「いい加減、寝ないとなぁ……」
 僕はそう言って、寝室に向かう、今日は添い寝が無いようだ、ホッと安心する僕、僕はそのまま布団の中に潜り込んで、睡眠を取る──お休みなさい。

Re: 東方崩壊譚 ( No.37 )
日時: 2017/05/14 21:47
名前: 彩都 (ID: hxRY1n6u)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第二章 第二話 守谷神社と二柱の神

CHAPTER 5 ルーミア、人里襲撃

「……ん? もう朝か」
 そう思い、僕は起きる、すると、右手の方が暖かかった、どうしてだろう? と思い、右を見る、すると早苗が寝ていた。
「……今日もか」
 僕はそう呟いてから、寝室を出た。
 全く、勝手に入り込んできて……何で一緒に寝たがるんだろう? と思いながら今に辿り着く、すると縁側に文と神奈子が会話をしていた。
「おや、君は華扇、でしたっけ?」
「あっ、うん」
「それは良かった、お久しぶり、華扇くん」
「文、確かにお久しぶりだね、確か霊夢の神社以来だったかな?」
「確かそう記憶しています、が、何で貴方はこんな余所の神社にいるんです? 華扇くん、君は確か博麗神社の人間だった筈だ、いや、人間か分からないけれど──」
 自分は文と会話して、何故博麗の人間が守谷に居るのかを問われる。
「簡単に言えば特訓、かな? 少しでも強くなって、早く『外の世界』に行きたいからね」
「成程、ですが中々難しいですよ、その道は──私は強くはお勧めしませんけれど──」
「生憎、キツい道を登りたがるもんだ、男って言うのは」
「あら、そうですか──」
「んで、新聞屋、今日はどんな新聞なんだ?」
 僕と文の会話に割って入る神奈子、すると文は可愛い笑顔で神奈子に言う。
「そうですねぇ、一大紙面の事を話せば、『人里襲撃事件』ですね、全く、どういう事件かと思いますよね? だったら新聞を買って確認して下さいな」
「流石天狗、ちゃっかりしている部分もある」
「それ程でもないですよ、ちゃんと隅々迄読んで下さいね? 小さな情報だって見て欲しいですから」
「分かった分かった、買うからそこ迄言わないでくれ」
「有難う御座います」
「全く……天狗ってのは口も達者なのかい? 鴉天狗だから、少し経ったらすぐ忘れる、だからバカだとは思っていたが」
「そうですか? 生憎事件とかの記事はメモを取っているので安心です、相当昔の神様、貴方こそ目的があって、立ち上がったらその目的を忘れた、なんて事は無いですよね?」
「あ、ある訳がないだろう、仮に神様なんだぞ、忘れる事はそもそもない」
「あら、そうですか、それは安心しました」
「何処に安心しているんだ、何処に」
 文と神奈子の言い合い、何とか終わった様だ、自分は神奈子の隣に座って、『人里襲撃事件』の記事を見る。
『人里襲撃事件』、それはとある一家の事件から始まった。
 そのとある一家は、夫婦共々体を食べられて死んでおり(死因は失血死と見られる)、その家の息子でさえ、体を食べられて死んでいた、更に生まれたての赤ん坊も食べられており、人喰妖怪が一家を襲った、と見られる。
 ……何て惨い事件なんだ、食べられた、と言う部分を考えると、少し吐き気がする……
「何というか、凄い事件だな、どうやって襲ったんだろうな?」
「さぁ? 流石にその妖怪に聞いて下さいよ、というより、妖怪がしたか、人間がしたか、なんてそもそも分かっていませんけどね」
「だろうなぁ、この記事を読んだだけで犯人なんか見つかりもしない」
「でしょうね、もしも犯人側が分かったら驚きますよ」
 神奈子と文が会話している中、僕は『何か』に躓いていた、そう、『人喰妖怪』という部分に──

「今日は人里に行こう」
 僕はそう言って、守谷神社から徒歩で人里へと向かう為に玄関で靴を履く。
「なるべく早く帰ってくるんですよ!」
「はいはい、分かったよ、それじゃあ行ってくる」
 僕は玄関で叫ぶ早苗を背に守谷神社を離れた──そんな僕の背中を神奈子はずっと見続けていた──
「まずは情報収集だな、どんな小さい事件もこういう情報収集で案外簡単に解決するって思うんだよな、うん」
 独り言を呟いて、僕は欠伸をする、流石に独り言がバレていなければいいが──そう思いながらゆっくりと人里に向かっていく。
「人里、人が居るから、案外大きいんだよなぁ、来た場所を暗記しないとなぁ」
 僕はそう言って、守谷神社から来た道を思い出す、まず、このお店が僕が来た方の人里の入り口にあたるんだから……よし、何とか覚えた、これで迷わずに帰れるだろう。
 僕はそう思い、『人里襲撃事件』の現場へと向かう──

「ふむ、矢張り団子は美味しいですねぇ」
「……何やっているの、文?」
 僕は団子屋で焼き目が付いた白色団子を食べる文と遭遇した、文は団子を一口、口の中に入れて、咀嚼した後、僕に向かって言う。
「何って、団子を食べているんですよ、団子を……ずっと新聞のネタ探しだと疲れますからねぇ──華扇くんもどうです? 団子?」
「団子? いいのか、だったら頂くよ」
 僕はそう言って、団子が載っている皿から御手洗団子を取って、口の中に運ぶ。
「あっ! それ、私のお気に入り!」
「ほう、この団子が文にとってのお気に入りね、案外美味しいじゃないか、茶色いタレにかかっているから、醤油味、もしくは甘くない、と思っていたが、案外甘いね、美味しい」
「そりゃあそうでしょうよ、此処の団子屋は特に美味しいんですから、それはそうと、華扇くん? 何で人里なんかに?」
 流石新聞屋、そういう所は気になるのか、そう思いながら僕は文の問いに答える。
「なぁに、少し人里に『用』があっただけだよ、その『用』は文、君を見つけた時点で少しは終わったけどねぇ?」
 自分がそう言うと、妖艶な笑みを浮かべる文、さぁ、さっさと『情報』を貰おう。

Re: 東方崩壊譚 ( No.38 )
日時: 2017/05/14 21:50
名前: 彩都 (ID: hxRY1n6u)  

「へぇ、私に『用』、ですか、気になりますねぇ──」
 文は三色団子に手をつけて、僕に向かってにやにやしながら言う。
「その『用』とは何でしょう? 場合によっては、請求する場合もありますよ?」
「……請求? 何を?」
 僕が不思議がると文はほくそ笑む様に笑う、一体何なんだろう?
「そうですねぇ、もしも、もしもの話ですよ? 華扇くんの『用』に対して、私が『『不利、もしくは不利益、と感じた場合』、私はこの場を去ります』、ですが逆に『『不利、もしくは不利益と感じなかった場合』はこの場に居続けて、話を聞きます』、どうです? 華扇くんの『用』に応じて私はそういう態度を取ります、いいですか? 華扇くん?」
「……中々に賭事だね、生憎僕の中では、『後者』だと思っているよ、思っているだけで、文にとっては『前者』かもしれない──」
 僕が文に向かってそう言うと、文は腕を組んで頷く。
「そうです、自分の考えでは、大丈夫、と感じますが、相手によっては、不都合、不合理だと思いますもんねぇ?」
 そう言って、文は三色団子の串をぺろぺろと舐める。
「だからこそ、僕は言う」
「へぇ、そうですか、その心意気、嫌いではありませんよ?」
 僕がそう言うと、優しい笑顔になって、文は言う。
「さぁ、華扇くん、何でも言ってみなさい、『不利、もしくは不利益と感じる』か、『不利、もしくは不利益と感じない』か? 華扇くんの言葉は!?」
 文はそう言って、ペンを僕の口に近づけて僕が喋るのを待つ。
「…………」
 僕は深呼吸をしてから真顔で文に言った。
「『人里襲撃事件』の場所を案内して欲しい」
 プルプル、プルプルと文の唇が震えている、そして文は大声で笑い、自分の太股を叩く。
「あはははははは! アーッハッハッハッハッハッハッ!! 何なんですかそれ! いやぁ、面白いですねぇ、面白いから『逃げる』という行為でさえ放棄していましたよ! 何が真顔で『『人里襲撃事件』の場所を案内して欲しい』ですか! 末代でも語れる笑い話ですよ!」
 文に盛大に笑われて、怒らない僕ではない、こんなに笑われるのが腹が立つのか、僕はそう思いながら文の居る団子屋を離れる。
「そうかいそうかい、笑われるのか、だったら一人で探した方が早い様だねぇ、御手洗団子の代金はその笑い話として受け取ってくれ」
 僕が目を瞑りながら早足で移動する、そんな僕を見ながら文は僕の歩みを止めようとする。
「まぁまぁ、待って下さいよ、華扇くん、まだ『不利、もしくは不利益と感じる』か、『不利、もしくは不利益と感じない』か? って話は終わってませんよ?」
「その話は僕の中では終わった話だよ、文の笑い話でね!」
 僕はそう言って、前へ前へと進んでいく、だが文は僕を止める為に言葉を紡ぐ。
「まぁまぁ、落ち着いて下さいよ、ねっ? 私の話を聞いてからでも?」
「落ち着けない、あんなに笑い話にさせられて腹が立たない人間、妖怪は居ないと思う」
「君は一応は人間でしょう?」
「まだ分からない、人間の皮を被った妖怪かもしれない、もしくは人間の形の妖怪とかね?」
「うーん、どうも妖怪には見えないんですよねぇ、妖怪の癖に弱い、弱過ぎますから」
 僕の言葉に文が返答する、そして僕が文に言う。
「はぁ、分かったよ、文の不利不利益の話を聞いたら急いで『人里襲撃事件』の場所に行くからさぁ」
 僕がそう言うと、文は安心して、溜息を吐く。
「はぁ、やっと収まってくれましたか……分かりました、不利不利益の話でしたね? それは、『感じません』、案内します、ですが!」
 文の話を聞いて、僕は安堵した、と思ったが、文に指を指される、文の指が僕の鼻先に当たりそうだった。
「ですが、何でも話を聞く私じゃないですよ! 華扇くんにも『対価』っていうのを払って貰いますよ?」
 文は薄ら笑いを浮かべながら僕に言う、『対価』、もしもそれがお金なら払えないぞ……だってお金何か持っていないのだから。
「そうですねぇ……どうしましょう?」
 文は顎に手を当てて考える、今の間に逃げられたら良いが、文は空を飛ぶ事が出来る、上空なら簡単に僕の姿が分かってしまう、だから逃げても無駄だろう。
「あぁ、思いつきました、華扇くん、貴方が支払って貰う『対価』は──」
 文が僕に対しての『対価』が決まったようだ、僕は内心ドキドキしながら文の言葉を待つ。
「華扇くんの『対価』、それは『体で払って下さい』、いいですね?」
「えっ? 『体で払う』? それってどういう──」
 僕が言おうとすると文が僕の言葉を遮る。
「言った通りですよ、華扇くん、それでは『人里襲撃事件』の現場へ行きましょう、地味に現場が遠くにあるので、私の力で行きましょうか」
「えっ? 文の力? 何それって……あうわわわ」
 文はいきなり僕の両手の二の腕を力こぶを作る様に腕に引っかけて、宙に浮く、足がゆっくりと地面から離れて驚く僕。
「うわぁ、浮いているよ、完全に──」
「それでは、現場迄急ぎますよ!」
 文はそう言って、前へと移動する、何だろう、凄く風が気持ちいい、そして背中に感じる少し柔らかい『何か』……僕は気にしない様に景色に意識を集中させる──事件現場迄後少しだった──


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