二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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東方崩壊譚
日時: 2018/06/27 23:03
名前: 彩都 (ID: J1W6A8bP)

 少年は博霊神社で目覚め、何を思い、幻想卿を崩壊させるか──

 始めましての方は始めまして、何度も彩都の作品を読んでいる方は有難う御座います。
 彩都(サイト)と申します。
 もう九作目ですよ、九作目! まぁ、一ヶ月一回更新が多いですねぇ……
 まぁ、今回は『東方PROJECT』という原作者『ZUN』さんの三次創作となっております。
 何故二次創作じゃないかって? それは秘密です☆
 そんな話は置いといて、今回の物語は『幻想入りした少年が幻想卿諸共破壊する迄のお話』で御座います。
 基本的に口調や喋り方は原作通りですが、間違っている部分があれば普通にコメントで説明してくれれば幸いです。
 自分も原作(体験版のみですが)は少しだけ経験していますが、それでも新発見は多いです。
 とまぁ、ここら辺でお話は止めまして、それでは、本編どうぞ!

 目次

『東方崩壊譚』第一章 第一話
本編
>>1-15
後書
>>16

『東方崩壊譚』第二章 第二話
本編
>>16-46
後書
>>47

『東方崩壊譚』第三章 第三話
本編
>>48-62
後書
>>63

『東方崩壊譚』第四章 第四話
本編
>>64-78
後書
>>79

『東方崩壊譚』第五章 第五話
本編
>>80-94
後書
>>95

『東方崩壊譚』第六章 第六話
本編
>>96-110
後書
>>111

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Re: 東方崩壊譚 ( No.29 )
日時: 2017/03/19 22:08
名前: 彩都 (ID: ???)  

「……はぁ?」
 いや、いきなり何を言っているのだろう? 僕はそう言おうとして口を開けた、だがその次の瞬間、金髪の幼女の持っている『人の手』を幼女は『食べ始めた』、くちゃ、むちゃ、ぬちゃあ……とゆっくりと『人の手だった』物はゆっくりと幼女の口の中へ収まっていく──そして食べ終わり、白い骨を草むらへと投げ捨てる、そして幼女は言う。
「あっ、切れちゃった──だからお姉さんを『食べても良い』よね? 私お腹が空いているんだぁ、だからもっと食べなきゃいけないの──」
 幼女の言葉に頭の中で警報が鳴る、僕は体が動かなかった、動け! そう思っていても体は動かない、そしてそのまま幼女の言葉を聞いてしまう──
「だからもっと食べなきゃいけないの──『人間の肉』を──」
 ぞわりっっ! 体の警報が一気に鳴り響く、動かないと──動かないと僕は『食べられて』しまう! 僕はそう思いながら少しだけでも良いから声を発した。
「あ……あぁ──」
 よし、少しは声を出せる! 僕はそう思いながら金髪の幼女に向かって言う。
「え、えーと、君の名前は何だい? まず、それが聞きたいなぁ」
 話を少しでも逸らさせる為に他の事を聞く事にする、すると彼女は普通に答える。
「それがお姉さんの最期の言葉? いいよ、聞いてあげる、私の名前はルーミア、能力は『闇を操る程度の能力』、これで良い? お姉さん? でも私だけ名乗るのは可笑しいなぁ、お姉さんも教えてよ、名前?」
 うっ、確かにそうだ、名乗ったら名乗り返さないと──
「僕の名前は華扇だ、因みに男だからお兄さんなんだけどなぁ──」
 僕がそう言うとルーミアという幼女は驚いていた。
「えっ? 男の人なの? これは驚いたなぁ──じゃあお兄さんだね」
 お姉さんからお兄さんに言い直すと僕は安心する、って安心してどうする、僕はこの子に殺される運命にあるんだぞ!?
 そう思いながら周りを確認する、隠れて身を潜めて逃げるという手段があるが、何より僕はこの森を初めて歩いているのだ、もしもルーミアがこの森の住人だったら簡単に敗北してしてしまうだろう──そう考えているとルーミアが突然喋り出す。
「それじゃあ、名前も言い終わったし、お姉さんならぬ、お兄さん? お兄さんは『食べて良い』?」
 ルーミアがそう言うと僕はゆっくりと答える──
「その質問には──『厭だ』、と答えるよ!」
 僕はそう言いながら来た道を戻る、するとルーミアも僕の事を追いかけてくる、矢張り、僕の事を食べるのか……僕はそう思いながら考える、どうやって倒せばいいのか? とりあえず手荒な真似や攻撃をせずに『気絶、もしくは失神させたい』のだ、なので、どれだけ簡単に、素早く気絶、失神させるかが問題だ。
 どうする? どうする!? 頭の中で『?』マークが回転する、そして
思い付いた事があった、だがこれは果たして正解なのだろうか、それは分からないが、試してみなければ分からない、その気持ちが大事だ、僕はそう思いながら急にその場で立ち止まる、追いかけるルーミアはそのまま僕に近付いていく──ルーミアが僕の視界に入って、数メートルの部分で、僕は下から滑り込みをした、そのまま僕は滑って、振り向く、ルーミアは僕の後ろにいる、よし、成功した、僕はそう思いながら急いで立ち上がり、前へ、前へと走っていった。
「そんな事をして逃げられると思うなー?」
 ルーミアはそう言いながら滑り込んで逃げた僕を追いかける、流石幼女、体力だけは有り余っている様だ、何で小さい子はこんなに体力があるのだろう? あっ、ルーミアは『ご飯』を食べた後だから体力が有り余っているのかな? 僕はそう思いながら心の中で溜息を吐く、全く、僕は食べても美味しくはないんだけどなぁ──
 そう思っていると『何時の間にか目の前が真っ暗になっていた』、月の光があるからまだ自分の影や木の影が見える筈なのに……そう思っていると急に後ろから自分の脹ら脛に口がぶつかる、一体誰のだ? そう思いながら振り向くと、何も無い、何だ、ただ単に狐や小動物がぶつかっただけか、そう思ったが次の瞬間、そんな考えが吹き飛んだ。
「へぇ、此処にいたんだ、お兄さん? 捕まえたことだし、頂きます──」
 何でルーミアの声がするんだ? こんな暗闇の中で──そう思った時、自分の右の脇腹に謎の痛みが走った、そのあまりの痛さに叫んでしまう。
「ああああああ!!」
「煩い」
 ルーミアはそう言って、僕の左脇腹に向かってパンチをしてきた、両脇腹が痛い、一体何が起きているんだ!? 僕はそう思いながら痛みの元である右の脇腹に触れる、そして顔の近くに持ってくるが見えない、仕方ない、匂いは嗅げそうなので、嗅いでみる──これは、匂った事のある物だった、そして頭の中でこの『匂い』が分かった、それは『血』だ、でも何で『血』が出ているのだろう……? すると何か音が聞こえる、僕はその音に耳を澄ましてみる──ぶちぶちぃ、ぬちゃ、ねちゃ……もぐもぐ、音が鳴る度に僕の脇腹が痛くなった、そして頭の中で、『頂きます』、という言葉が繰り返される──そして一つの結論に辿り着く、それは『ルーミアが僕の右の脇腹を食べている』、という事だ──

Re: 東方崩壊譚 ( No.30 )
日時: 2017/03/19 22:12
名前: 彩都 (ID: ???)  

 流石にそれは無いだろう、僕はそう思いながら見えないルーミアに聞く。
「おい……ルーミア? 君が食べているのは一体何なんだい?」
 僕がそう聞くとルーミアは簡単に言う。
「お兄さんの脇腹」
 くっ、矢張り食べられていたか──そう思いながら自分の右手で食べられた脇腹の部分を『元に戻』す、痛みと共に元通りに感じる、だが『元に戻』した場面をルーミアは見ていた、更にルーミアは怖い事を言った。
「うわぁ、食べる部分が増えた、また食べれるね、同じ部分」
 ゾクリ、背筋に冷たい何かが注がれた感覚がする、まるで背筋に冷水でも注がれた様な気分だ、僕はまた叫びながら前へと進む。
 だが進んだ感覚はない、何でだ? まるで自分の影を踏まれている気がする、気がするだけだが。
 嘘だ、死にたくない、食べられたくない、そう思いながら体をじたばたさせる、そして右手に何だか柔らかい物がぶつかる、そうだ、右手には『元に戻す』能力があるのだ、もしかしたらこの暗闇を解除出来るかもしれない、そう思いながら僕は柔らかい物に対して、『元に戻』す能力を使用する──すると急に視界が開けた、全く、何だったんだ、あの暗闇は……そう思って自分の右手の手の甲を見る、一体何を触ったんだろう? 不思議そうに自分の右手の手の甲を見ながら触れた部分を確認する、まだ柔らかい、何に触れたのだろう、そう思っているとルーミアの顔がほんのり赤かった、そしてルーミアは自分の腕を握り締める、一体何に触れているんだろう? そう思いながら自分の右手に目をやる、目をやると自分がルーミアの何処に触れているかが分かった、その場所は──ルーミアの胸だった、一瞬、何処に触れているんだ? ともう一度確認したが、触れているのはルーミアの胸以外変わらなかった。
「お兄さんの変態……」
 ルーミアがむすっとした顔で言う、僕は素直に謝るしかない。
「あ……あの、ごめんなさい……」
 僕は謝った後、ルーミアの胸から右手を離し、ルーミアに向かって言う。
「ゴメンね、ルーミア、僕は急ぎの用事があるから急いで帰らないといけないんだ、それじゃあね」
 僕はそう言って、逃げようとする、だがルーミアは走ろうとした僕に対して、僕の左手を手首から口の中に入れて、ルーミアは『噛み千切った』──
 えっ? ルーミアは何を口に入れている? そして左手から何か無くなった感覚と手首から熱い感覚を感じる、僕は自分の左手を見る、手首から無い、指も手の平も、手の甲も爪も指先も親指も人差し指も中指も薬指も小指も、何もかも左手首の先から無くなっている──そして僕は判断する、『コイツは『人喰い妖怪』』だと──まさかこんな所で『妖怪』に会うなんて──何て僕はついていないんだろう、ちゃんと妖怪に警戒さえしていけば、レミリアの、『『人喰い妖怪』には気を付けなさいよ、その『右手で触れた部分が『元に戻って』いる』、それが問題なのよ』、『そう、『人喰い妖怪』はどんな人間も関係無しに食べるから、貴方の能力は重宝される──その事も考えて行動しなさいよ』、その言葉が頭の中で回転する──もっと警戒していれば、もっと油断していなければ僕は食べられなかった筈だ──今更後悔してももう遅い、僕は左手を食べられたショックでその場で跪く、そしてルーミアは僕に対して言う。
「お兄さん、頂きます──って待って? お兄さん、どうやって自分の脇腹の怪我を一瞬で治したの? 食べる前に聞いてあげる」
 ルーミアが完全に僕の事を下にして見ている、僕は仕方なく、自分の右手の事を説明する。
「僕の右手は『元に戻す』能力、怪我も痛みも『元に戻す』のさ、これで良いかい? ルーミア、君が噛んだ脇腹はこの能力を使って『元に戻』したんだ、『怪我をする前の脇腹』に『元に戻』して──」
 僕がそう言うとルーミアは不思議そうな目で言う。
「と言う事は、『その能力で『元に戻』し続ければ、無限にご飯を食べられる』って事?」
「……あぁ、そう言う事だ、どうする? このまま食べて殺すか、生かすか、生かした場合は逃げる、殺した場合は無限にご飯が食べられない、さてどうする?」
 僕は究極の二択を作って、ルーミアに問わせる、さぁ、君の回答は何なんだろうね? そう思いながらルーミアを見る、するとルーミアは言った。
「うーん、逃げられたら困るし、無限に食べられないのも困る……あっ、そうだ!」
 急に笑顔になるルーミア、だが顔に付いている血がなければもっと可愛い笑顔だったろうに。
「『今、抵抗出来ない様にお兄さんを食べてしまえばいい』んだ、それはいい考えだね、と言う事でお兄さん、さよなら──」
 そう言いながらルーミアは大きく口を開ける──結局喰われるのか、僕はそう思いながら目を閉じる、これで僕の人生も終わりか、そうかそうか、何気に楽しかった人生だ、さよなら霊夢、さよなら魔理沙──僕はそう思いながら食べられるのを待つ、だが中々食べないので、僕は片目を開ける、すると目の前に『ルーミアが居なかった』のだ、そして声をする方向へ顔を向けるとルーミアが謎の棒を顔面に突き刺さりながらどっかに吹き飛んで行った──あの棒は、誰のだろう? そう思っているとルーミアが吹っ飛んだ方向の逆の方向からじゃりっと、砂と靴が擦れる音がする、一体誰だろう? そう思いながらその音の方へ顔を向けるとそこには神奈子が存在していた。
「……華扇、お前は大丈夫なのか?」
 神奈子がそう言うので、僕は答える。
「少し、大丈夫じゃないかも……?」
 僕はそう言いながら自分の左手を右手の能力で『元に戻』した、『元に戻』した所で、『元に戻』した前の左手の出血は触れていないので、変わらない、僕は段々と目の前が真っ暗になる──そのまま僕は倒れてしまった──

Re: 東方崩壊譚 ( No.31 )
日時: 2017/03/19 22:13
名前: 彩都 (ID: ???)  

 …………、ん? 此処は何処だろう? 暖かいし、何だか心地良い、ん? って僕は何で布団に包まれているのだろう? そう思いながら起床した僕の初めての思った事だった。
 そう思いながら横に寝転がる、すると目の前に早苗が居た、えっ? 何で早苗が? 落ち着け、そう思いながら逆の方へ振り向くとそこには諏訪子が居た、えっ? 何で諏訪子が? って此処は守谷神社って事なのか? 僕はそう思いながら起き上がる、僕の両隣には早苗と諏訪子が、つまり僕は二人に挟まれて就寝していた、と言う事か……って、そうじゃない、何で僕がこの二人に挟まれて寝ているんだ!? 意味が分からない! 僕は頭を抱えながら悶絶する、何で僕は此処で寝ているのだろう……? すると早苗が目を擦って起きた。
「んんっ? あれっ? 華扇ちゃんじゃないですかぁ、昨日は大変でしたねぇ、よく寝れましたかぁ?」
 えっ? 昨日は大変でしたね? どういう事だ? 僕はそう思いながら早苗に聞く。
「えっ? どういう事? 昨日は何があったんだい?」
 不思議そうに聞くと、早苗は不思議そうに言う。
「えっ? 覚えてないんですか? 昨日はあんな事が起きたというのに……」
 早苗はそう言いながら説明する。
「昨日華扇ちゃんは神奈子様に背負われて此処に戻ってきたじゃありませんか」
 えっ? あの神奈子が? 確か昨日は喧嘩した筈──そう思っていると少しずつだが記憶が蘇ってくる、確か喧嘩して僕は外へ出た、博麗神社に戻る為──
「そして顔が青醒めていたじゃないですか──妖怪に襲われて左手を食べられて、失血して、気絶した、と神奈子様から聞いていますが──もう大丈夫なんですか?」
 そうだ、確かにそうだ、僕はルーミアに左手を食べられ──『元に戻す』能力で左手を『元に戻』した後、気絶したんだ──つまりその後神奈子が運んだ、と言う事か、少しは状況が読み込めてきたぞ……
「そして一人で寂しそうだったから私が隣で寝て、私がトイレに行って、戻ってきたら諏訪子様が華扇ちゃんの隣に……と言う事です」
「おい、何さらっと凄い事言ってんの!?」
 さらっと添い寝宣言されて驚く僕、ていうか二人で添い寝なんかしなくてもいいのに……
「本当は神奈子様も添い寝したかったらしいけど、先に諏訪子様が寝ていたので、『神が両隣に寝ていたら驚くだろう』って言って、トイレ後の私に譲ってくれたり……」
「いや、早苗も神でしょ?」
 冷静にツッコミを入れる僕、まさか三柱共僕と添い寝がしたかったとは……
「言えば添い寝ぐらいするよ? 言えば、だけど」
 僕がそう言うと早苗が喜ぶ。
「そうなんですか!? だったら今日から添い寝して下さい! 毎日です!」
「えっ!? いきなりだなぁ、考えておくよ……」
 僕がそう言うと、早苗は喜んでくれる、まぁ、いきなり添い寝されているから驚くだけなんだよなぁ、言ってくれれば、添い寝ぐらいしてあげるのに……僕はそう思いながら食べられた左手を確認する、血は出ていない、握ったり、開けたりするが何も無い、良かった、ちゃんと『元に戻』っている──フランドールの時は『左腕』という大まかな場所だったので、あまり気にしていなかったが、今回は『左手』という指や爪等細かい部分もあるので、少し不安だったが、大丈夫な様だ──
「よし、大丈夫な様だね──さて、朝御飯を食べようか」
 僕はそう言って、欠伸をする──

 そして僕は居間に行き、早苗が作ったご飯を食べる、本当、ゆっくりとだが、昨日の事を思い出してきた──でも、人喰妖怪って言うのも初めて見たな──でも、人喰妖怪が可愛い女の子なのは驚きだが──僕はそう思いながらもぐもぐもぐもぐご飯のみを食べ続ける──
「……い、華扇……おい、華扇!」
 神奈子の声にハッとする僕、一体何なんだろう?
「どうしたんだ? 無心に白米だけ食べて……?」
 気づくと僕のお茶碗は白米が入っていなかった、何時の間にか食べ終わっていた、何でご飯が無い事に気付かないんだろう? そう思いながらお茶碗にご飯をお代わりする──考え過ぎもよくないな、僕はそう思いながら、またご飯を食べる──

 そして一人縁側へと出る、昨日は諏訪子に簡単に負けたけど、今日こそは右手の力を存分に使って何とか勝利をもぎ取ってやる! 僕はそう思いながら大きく深呼吸をする、そして何時でも右手の能力を出せる様に右手を動かしたりする、すると諏訪子は縁側に座りながら湯飲みでお茶を飲む。
「ん? 今日は諏訪子、僕と戦わないのかい?」
 僕が縁側に座る諏訪子にそう言うと、笑いながら諏訪子は言う。
「私は華扇みたいに元気じゃない、だから今日は他の人を選んだよ」
 そう言いながら諏訪子は指を指す、するともう一人、縁側に座る人物が居た、それは神奈子だった。
「華扇、お前と戦う存在は、この我、八坂神奈子なるぞ?」
「えっ!? 神奈子が!?」
 僕は突然の存在で驚いてしまう。
「そうだ、この我、八坂神奈子なるぞ? 我に勝てると思っているのか?」
 神奈子は古臭い言い方で僕に言う。
「……まぁ、冗談はこれ位にして──今日の対戦相手はこの私、八坂神奈子だ、さぁ、華扇、お前のその右手の力、存分に発揮させて頂くぞ?」
 神奈子がそう言うと僕は大きく唾を飲み込む、大地の神様の次は、天の神様か……
「相手にとって不足無し!」
 僕がそう言いながらガッツポーズをする、神奈子は背中の注連縄を外して、僕の前に立つ。
 そして僕と神奈子の戦いが始まった──

Re: 東方崩壊譚 ( No.32 )
日時: 2017/04/16 22:26
名前: 彩都 (ID: ???)  

東方崩壊譚(とうほうほうかいたん) 第二章 第二話 守谷神社と二柱の神

CHAPTER 4 乾を創造する程度の能力 八坂神奈子

「じゃあ、頑張ってね、神奈子、案外──華扇は弱い」
 諏訪子がそう言うと少しにやりと口の端を広げる神奈子。
「成程ねぇ──それは良い情報だ、有難う、諏訪子」
 神奈子がそう言って、僕は焦る、簡単に諏訪子みたいにやられそうだな、そう思っていると諏訪子が言う。
「それじゃあ──神奈子と華扇の戦い、開始!」
 諏訪子が僕と神奈子の戦いの開始を宣告する、その瞬間、僕は空を浮いていた、いや、『跳ばされて』いた──
 そして『何も無い』場所から腹部を押され、一気に急降下、そのまま僕は地面に激突して──意識を失った。

「…………? 此処は?」
 僕は守谷神社の縁側で水と氷を入れた袋を腹部に当てながら目覚める、すると目の前に神奈子が居たので、驚く、どうやら僕は神奈子に膝枕されていたらしい。
「えっ? 何で神奈子が……?」
 僕がそう言うと神奈子は少し汗を掻きながら言う。
「いや、その……私が悪かったし、華扇があんなに弱いとは思っていなかったし……」
 神奈子がそう言うと、僕は起き上がる、だが背中が何故か熱かった、僕が背中を触ると湿布が貼られていた、道理で熱いのか──
「おまけに華扇、お前は背中を強打したんだ、少しは修行を休止する」
「えっ? つまり僕は背中の強打が治る迄、特訓も修行もダメなの?」
 僕がそう言うと神奈子は頷く、嘘だろ……!? 僕はそう思いながら、膝から崩れ落ちる──すると水と氷が入った袋を持った早苗が縁側に来る。
「あっ! 華扇ちゃん、目覚めたんですね! 良かったぁ……」
 早苗はそう言いながら僕の腹部を触る、腫れていたのかもしれないが、もう痛みもなく、元通りになっている──僕は腫れていた事実は知らなかったが、早苗が『治って良かったですね!』と言っているので腫れていたのだろう。
 ……それにしてもお腹が冷たい、何か温かい物をお腹に当てないとお腹を下してしまう、そう思いながら僕は居間にある、湯呑みに入った温かいお茶を飲む──

「全く──僕の右手の能力の事を考えて、発言してほしいなぁ、僕の右手はある程度は万能なんだから、腫れた部分を『元に戻』したり、背中の強打で痛い部分を『元に戻』せるのに──まぁ、少しは休憩するのもありかもしれないな」
 僕はそう呟いてから、斧で薪を割っていく、この割った薪でお風呂の火を焼(く)べるのだ、僕は斧を振り上げて、一気に下に下げて薪を割った。
 少しでも力を付けて、霊夢や魔理沙に勝ちたい、その一心で額から溢れる汗に気付かず、僕は薪を割る、だが僕の見えない所で神奈子は思う。
(全く、アイツには何を言っても聞かない様だな、どれだけ力を付けたいんだか──)
 神奈子は僕が頑張って斧で薪を割る所を見続ける、だが神奈子の瞳には僕への心配が籠もっていた──
「よし──完成した、これで一週間分は持つと思うんだよなぁ……」
 溜息を吐いた後、尻餅をついて、僕が言う、すると神奈子がお皿に大量に盛ったお握りを持って、僕に近付いて言った。
「えー、おほん! 華扇! よく薪割りを頑張ったな! これは神である私からのお礼である! たんと食え!」
 そう言って神奈子は僕にお握りを大量に盛ったお皿を渡す、まさかこれ全部神奈子が握ったのか?
「そうだ、私が握ったお握りだ、とても貴重だぞ?」
 神奈子がそう言うと、湯気が出ているお握りを見て僕が言う。
「えーと、これは全部食べても良いのかい?」
「あぁ良いぞ、これは華扇、お前の為に作ったお握りだからな、全部食べてもいいぞ」
 神奈子がそう言うと、僕は持っていた斧を地面に置いて、神奈子が握ったお握りを持って、一口食べる──そのまま僕は固まる。
「えっと……どうした華扇? もっと食べてもいいんだぞ? 何で一口目で止まっているんだ?」
 神奈子が言う、僕は『この事』を本当に伝えて良いか、悩んだ挙げ句、『この事』を伝える事にした。
「神奈子、このお握り──食べた?」
 僕がそう言うと神奈子は不思議がる。
「いや? 流石に塩と砂糖を間違えたって事は無いだろうが──何回も確認したし──味は保証する!」
 神奈子はそう言って、塩と砂糖を間違えては無い! と念を押す、いや、そうじゃない、そうじゃなくてさ──
「……とりあえず、神奈子、食べてみ? 止まる理由が分かるから」
 僕はそう言って、神奈子に神が握ったお握りのお皿を渡す、神奈子は不思議そうに自分が握ったお握りを一つ掴んで、一齧りする──すると目からぽろぽろと大粒の涙を出して、神奈子が言った。
「このお握り──塩辛い……華扇はこんなおにぎりを食べていたんだな──すまん! 完全に私が悪い! だからもう食べなくていい!」
 神奈子が皿を上に持ち上げる、だが僕は立ち上がって、神奈子が握ったお握りの皿を奪って、神奈子に背を向けて僕一人で食べ始める、すると神奈子は泣きながら僕に訴える。
「何でこんな塩辛い物を食べるんだ!? 私は言っただろう、『食べなくても良い』って! なのに! 何で……」
「誰が『塩辛い』って言ったの? 僕は『塩辛い』なんて言ってない、『不味い』とも言っていない──このお握りは『美味い』じゃないか、僕は『このお握りが美味しいから食べている』だけなんだよ、僕が一口で止まった理由を教えるよ、『このお握りが美味し過ぎて止まった』だけだ、だから……僕は食べる、『こんなに美味いお握りを食べた事は無い! 美味しいなぁ!』」
 僕はそう言いながら神奈子の塩辛いお握りを食べて涙が出る、この涙は『神奈子のお握りが美味いから出た涙』だ、決して塩辛くて泣いている涙じゃない、と自分に言い聞かせながら神奈子の握ったお握りを食べ切る、そして僕は食べ終わった皿を神奈子に渡す。
「神奈子──美味しかった、また僕に作ってくれよ?」
 僕は神奈子に背を向けたまま言う、すると神奈子の啜り泣く声が聞こえる、そして神奈子は言う。
「また……食べてくれるのか?」
「そりゃそうに決まっているだろ? 神奈子が握ってくれたお握りは美味しかったもん、また作ってくれよな?」
 僕がそう言うと、神奈子は啜り泣きながら言う。
「あぁ、分かった……今度はもっと美味しく作るからな! 期待しておけよ!」
 神奈子はそう言って、食べ終わったお皿を持って、僕から離れる──美味しかったなぁ、神奈子のお握り──僕はそう思いながら深呼吸をする──

Re: 東方崩壊譚 ( No.33 )
日時: 2017/04/16 22:29
名前: 彩都 (ID: ???)  

「華扇ちゃん、勇気有りますねぇ──」
 そう呟きながら早苗が縁側から現れる、どうやら隠れて見ていたようだ。
「勇気、ねぇ──これを勇気というなら、僕のは勇気ではなく、食欲、と答えておこうか──」
 僕は溜息を吐いて寝転がる、すると僕の顔を覗き込んで早苗が言う。
「フフフッ、華扇ちゃんは優しいですねぇ──今日の夕飯は神奈子様に作らせましょうかねぇ?」
「おいおい、またお握りになるかもよ?」
 僕がそう言うと早苗は言う。
「大丈夫です、お握りだけなら美味しいですし」
「そう? だったら食べたいね、今度は何が食べられるだろうね?」
 僕はそう言って、割った薪を見る、そして早苗に言う。
「これ位で良いかな? 薪を割るのは」
「えぇ、有難う御座います、何時も神奈子様に薪を割って頂いていましたし──男手ってあるだけで楽ですねぇ」
 早苗がそう言うと僕は言う。
「おいおい……僕もあまり力が無いよ? 霊夢や魔理沙の方があると思うんだよなぁ」
「まぁ、幻想郷は暮らしたり、妖怪と会うので、大変ですから、力そのものが現代人よりもあるんじゃないでしょうか? 私はまだまだ力が足りませんし──」
 早苗はそう言って、溜息を吐く、そして早苗は呟く。
「もっと……もっと力を付けないといけないですねぇ──まぁ、弾幕があるから多少は妖怪とかに対応出来ますが、華扇ちゃんは──」
「うん、『右手の力だけで生きなければならない』んだよね──僕にも弾幕が出せたら少しは霊夢や魔理沙の助けが出来るのに──」
 僕はそう言って、自分の右手を見て、拳を作った、もっと、もっと強い男になりたい、もっと、もっと強くなって、霊夢や魔理沙を助けたい──そう思いながら強く握った右手を降ろす。
「さぁ、僕も神社内に入って、風呂に入ろう、今日は汗を掻き過ぎたからね──」
 僕がそう言うと早苗が言う。
「あっ、お風呂の準備してきますね」
「有難う、早苗」
 僕は早苗に感謝して、神社の縁側に座って、休憩をする、さぁ、お風呂に入った後、ご飯を食べよう──

「大変だねぇ、薪割り」
 そう言って、諏訪子が僕の隣に座る、そして僕の両手を見る、あまり綺麗とは言えない両手、初めて薪を割って、自分の手の平はマメが出来ていた、潰れていないが、潰れたら相当痛いだろう。
「マメが出来てる──相当頑張った証拠だね、偉い偉い」
 諏訪子は立ち上がって、僕の頭を撫でる、何故だろう、何故か諏訪子の頭を撫でる行為は落ち着くのだが──
 すると早苗が僕の事を呼んだ、もうお風呂が沸いた様だ。
 僕は服を脱いで、お風呂に入った、温かい湯船に入って、僕はほぅ、と息を漏らす、だが風呂場前の脱衣所の所から、がちゃがちゃと何かの音が聞こえる、どういう事だ? 誰も脱衣所には居ない筈──まさか!? 僕はそう言いながら身を弁える。
 すると早苗と諏訪子が巨大なタオルを巻いて、僕が居る風呂場に入ってきた。
「さっ、早苗!? それに諏訪子!? 何で二人が入ってくるんだよ!?」
 僕が叫ぶ様に言うと、諏訪子が言う。
「だって、一緒に入った方がお風呂が温かくて、節約出来るし、おまけに華扇の身体検査も出来る」
「何の身体検査だ、何の!?」
 僕が怒鳴ると早苗が言う。
「まぁまぁ、華扇ちゃんも落ち着いて下さい、諏訪子様の悪戯ですから、あまり気にせずに……」
「悪戯、で片が付くのなら、僕は早めに出た方が良いですよね、では、先に上がらせてもらいまっ」
 僕がお風呂場を出ようとした瞬間、早苗が腕を、諏訪子が僕の足を掴んで言う。
「まぁまぁ、一緒に入って、仲良くしましょう? 華扇ちゃん?」
「早苗の言う通りだよ? 親睦を深めようじゃないか、一応、お風呂場を出ても良いんだよ? 出ても良いけど、神奈子に、『神奈子に隠れて私達に華扇が、『神奈子のお握りはとても不味かった、もう作って貰いたくないね』って言ってたよ?』って言ってもいいんだよ? 言われたくなかったら、三人でお風呂に入ろう?」
 それは言われるとマズい──僕は仕方なく、湯船に端に入って、二人が入るのを待つ──
 すると早苗が僕に言う。
「すいませんが、華扇ちゃん、後ろを向いててくれますか? 今からタオルを取って、体を洗うので」
「えっ? あぁ、分かった」
 僕はそう言って、早苗と諏訪子に背を向ける、すると、シュルルッと、タオルが外される音がする、すると早苗の後ろに座っていた諏訪子が、早苗に向かって言う。
「あれっ? 早苗、また成長した?」
「ひゃん!? 諏訪子様、何処を触って!?」
「いいじゃないか、結構大きくなったねぇ」
 僕は思う、何処を触っているんだ!? いや、そうじゃなくて、早く体洗うの終わって!
「諏訪子様、あまり触らないで下さいよぉ」
 早苗がそう言うと諏訪子は笑いながら言う。
「アハハッ! やっぱり、早苗をイジるのは楽しいねぇ」
「もう! 華扇ちゃんだって居るんですよ!? 私だって女です! 恥ずかしい感情もありますよ!」
「まぁまぁ、落ち着いて、さっさと体を洗って華扇と戯れようじゃないか」
 諏訪子がそう言うと、早苗が喜々とした声で、『はい、そうですね!』と言う、僕は……僕はこの後、お風呂でどうなってしまうのでしょう、神様……?

 まぁ、神様は僕の後ろにいるけれど。


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