ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M / 作

Memory1 必然の出会い ~01~
「待って、行かないで! 私は嫌だ!」
喉の奥から、私は搾り出すように声を出した。誰かが離れていく。同じ場所へ行くはずだった誰かが、離れていく。真珠のような涙がなぜか溢れてくる。目が水道のの蛇口になってしまったみたいだ。もう、止める事なんて出来ないくらいに。
私から離れていく誰かが大声で叫んだ。必死に聞こうとしたけど、よくわからない雑音が混じって聞こえない。声は、鳴き声のようにも聞こえる。
ピィィィ―――ン!!
耳を貫くような音が聞こえ、私の視界は暗くなっていった。
*
ザザザザァァァァン……
美しい波の音が聞こえる。私はどうやら寝込んでいるらしい。起きようと、瞼を動かしたが開かなかった。体が重い。体を少し動かすと、砂がこすれあうような音が聞こえた。私が寝ているのは、砂の上?
しかも、体がモコモコしているような気がする……。でも、私は気にせず、気づかないうちにまた眠りについた。
―――――――
「ねえ、君ー君ー。大丈夫?」
女の子の声が聞こえた。ちょっと弱虫そうな、おとなしい声だった。
「ん……、なあに……」
私は硬い体を動かして、やっと起き上がった。そして、目を開けると、ミニリュウが私を覗き込んでいる。ミニリュウは、小さな竜の体をしている。美しい青と薄紫の混ざった色の体だ。耳は小さな羽根の形をしていて、目はビー玉のように可愛らしい。
おかしいな。人間の私からしてみれば、ミニリュウなんてとっても小さいはずなのに、今は自分と大して大きさが変わらないような気がする。
「よかったあ。君、ここで倒れていたんだよ。私、すっごくびっくりしちゃった。アハハ」
……と、しゃべったのはミニリュウだった。おかしい。私は夢でも見ているのかな?
「アンタ、ポケモン? コスプレでもしているの?」
私は焦る自分の気持ちを抑えるように、わざとふざけて言った。すると、ミニリュウはクスリと笑う。
「コスプレってなあに? 私は正真正銘、ポケモンのミニリュウだよ。君だってポケモンのメリープなのに、変なの」
「違うよ。私は立派な人間だ……もん」
言いながら、自分の体を見て、天と地がひっくり返ったような気分になった。驚いて、声も出ない。
体が綿飴のようなふわふわな体だ。しかも、二本足ではなく、四本足で立っている。体にキュッと力を入れると、自分が電球になったかのように電気が放出された。お尻の方に、違和感があると思ったら、尻尾まである。
「この体は……本当にメリープだ……。どうしよう、私、人間だったのに……」
思わず涙ぐむ。ミニリュウは、心配そうに尻尾をくねくねと動かした。
「人間? 本当に? いつからポケモンになったの? どうしてここに来たの?」
このミニリュウ、質問魔だなーと思いながら、私は過去を思い出そうとした。けれど、頭の思い出のページは真っ白。何も書かれていない。書かれているのは、自分が人間であったことと、自分の名前……。
「私、思い出せない」
私は頭を抱え込もうとした。だけど、手が短くて出来ない。ミニリュウは、うーんとうなると、思いついたように聞いた。
「じゃあさ、名前は? 名前はなんていうの?」
「私の名前……」
私の名前は美沙(みさ)。そして、あだ名がミーシャだったっような気がする。
「私は、みさ。ミーシャって呼んで」
「みさ? ミーシャ? なんかいい名前だね」
ミニリュウは微笑みながら、私をじっと見つめた。そして、思いつめるように海を眺める。
~Memory1終了~

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