ポケモン不思議のダンジョン昼*夜の探検隊 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M/作


Memory5 初の探検と仲たがい ~03~



「狂い始めたっていうのは、そのまんまの意味だよ。普通は、一日は昼と夜があるでしょ? だけど、最近は夜の時間が長くなって、終いには昼の時間がなくなってしまうんだ。つまり、一日中、夜ってわけだよ。その影響で、ポケモンたちは混乱して暴走するし、不思議のダンジョンが広がるし……。本当に、大変なんだ……」

 ミニリュウの話を聞いて、私は息を呑んだ。
 まさか、そんな事が起こっていたなんて……。一日中、夜なんて考えられない。それじゃあ、ポケモンたちが暴走するのもあたりまえだ。

「でも、どうしてそんな風になってきちゃったの? 絶対に原因があるでしょ?」

「原因は、“光の歯車”に異常が発生してきたからだと、みんなは言っているよ」

「光の……歯車?」

 光? 歯車? この世界では聞いたことのない話ばかりだ。
 私が問い返すと、ミニリュウは真剣な顔をしてゆっくりと頷く。

「そう。光の歯車っていうのは、例えば森や鍾乳洞、洞窟の奥や山の中にあって、各地の太陽の輝きを守っていると言われているんだ。その歯車に異常が発生したために、太陽の光が弱くなり、ずっと夜になっちゃうんじゃないかって言われている」

「そんな……。異常ってどんな?」

 ミニリュウの話を聞いていると、心の中に雨雲が押し寄せてきたかのように、気分がどんよりしてきた。それでも、なんだか気になる。

「異常って言っても、よくわからないんだ。だって、光の歯車を見た事のある人なんて少ないし、昼と夜が狂い始めている原因が光の歯車にあるなんて、単なる予想でしかないし。でも、もし本当に光の歯車に異常があるのだとしたら、色々な異常が思い当たられる。例えば、歯車の力が弱くなったとか、誰かが……歯車を盗んだとか……」

「ぬぬぬ、盗んだ?」

 まさか、そんな大事な物を盗むなんて……。
 思わず、私は大声を出してしまった。ミニリュウは、慌てて苦笑いをする。

「盗んだっていっても、単なる予想だってば。でも、誰かが盗んだなんて、一番考えたくないよ。……ずっと昔から、どんなに悪いポケモンでも、光の歯車だけは盗まない。みんな怖がって、近づかないんだよ」

「もし……盗っちゃったら……?」

 恐る恐る私は聞いてみた。
 ミニリュウも、暗い顔をして口を小さく開く。

「もし盗っちゃったら……、多分、その地域は……ずっと夜に包まれるんじゃないかな」

 ザアアアアアァァァ――――! ゴロゴロ、ビッガガ――ン!

 私たちのどんよりとした気持ちをあおり立てるように、雷と雨がいっそう大きく鳴った。

                    *

 同じ頃、木々が生い茂るどこかの森で、風に負けない速さで駆け抜ける影がいた。
 暗い暗い緑の木々が、風に揺らされ大きく唸る。そんな並木道の中を影は走る。
 ―――そして。

「ついに見つけたぞ、“光の歯車”を!」

 ピカッビッガガガ―――ン!!

 雷の光で、一瞬だけ辺りが明るくなった。そこだけスポットライトを当てたかのように、丸出しになる。木々が大きく唸った。
 暗い暗い森の中、その影がさっとあらわになる。

 ―――光の中に浮かび上がったのは、稲妻よりも鋭い瞳を持つジュプトル……。