ポケモン不思議のダンジョン昼*夜の探検隊 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M/作


Memory4 光のささやき ~08~



 ミニリュウはごにょごにょと私の耳元で作戦を話した。これなら、いくら“よちむ”の特性を持つスリーパーでも太刀打ちできないに違いない。キセキの探検隊へ与えられた最後のチャンス、逃がすものか! 運よく、この作戦は麻痺しているスリーパーには聞こえていないらしい。

「ふふっ、麻痺が治ったぞ……。覚悟しろ!」

 麻痺がはやくも完治すると、スリーパーは私を睨みつけた。驚くほどはやい回復力。やはりスリーパーはランクの高いお尋ね者だった。レベルも違いすぎる。五つ星評価でいうなら、星三つくらいだろうか。私たちにとっては。
 それでも私は負けじと睨み返した。スリーパーは、フッと鼻で笑う。

「さっきの麻痺のお礼をしなくてはな。まずはそのフワフワした電気羊(でんきひつじ)からつぶしてやるわいっ!」

 スリーパーは私を指差すと、攻撃体勢に入った。フワフワした電気羊!? 失敬な。まあ、この借りは後で返すとして、そうだ、そうこなくっちゃ。スリーパーは完全にはめられた。作戦はきっと成功する。

 ザアアアアァァァ―――――!!

 川の水の流れる音が、私たちの戦いのBGMのように聞こえる。まるで、私たちが負けることを……いや、勝つことを表しているかのようだ。もう怖くない。二人でなら大丈夫。
 ミニリュウと私は、目を合わせて頷く。

「待って! やるなら私をさきにやれ!」

 怖さを押し殺してミニリュウが言った。もう体は震えていない。それどころか、溢れるパワーを感じる。スリーパーはミニリュウの言葉を聞いて、私からミニリュウへ目線を変えた。

「ほう、ずいぶんと強気だな。あんなに怖がっていたのに。まあいい。望みどおりにしてやるっ」

「行け、<たつまき>!」

 動けないミニリュウは尻尾だけを動かして大きな竜巻を作った。竜巻はゴオゴオと音を立てながらあらゆる物を吸い込んでいく。まるで陸のブラックホールだ。その勢いは空まで吸い込んでしまいそうなほどだ。

 私はその竜巻のてっぺんに、ミニリュウが起こした風を利用して飛び乗った。てっぺんなら、上昇気流がクッションになって竜巻の中に取り込まれない。柔らかな真綿の上にいるような感じだ。

「そんなもの、<サイコキネシス>で吹き飛ばしてやるっ」

 スリーパーの目が最初と同じように青く光った。そしてスリーパーの指が上を向くと、竜巻はあっけなく空へ舞い上がる。そして消えた。スリーパーの目が、冷たいナイフのようにキラリと光る。私は竜巻が空高く消えてしまう前に竜巻をジャンプ台にして、スリーパーの後方に飛び込んだ。幸いスリーパーは、私の事に気づいていないらしい。

「これで終わりだ、ちっこい竜め! <サイケこうせん>!」