ポケモン不思議のダンジョン昼*夜の探検隊 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M/作

Memory3 キセキの探検隊 ~04~
「ふむふむ。じゃあ森の主と言うのはセレビィの事で、セレビィは“ときわたり”をすることができる。そして、時の回廊を通って未来へ行った……ということ!?」
ギルド地下二階の親方様の部屋の前に戻った後、森での出来事を私たちは順々にぺラップに話した。探検を終えてのギルドは、なぜか懐かしい。まるで、久々に故郷(ふるさと)に帰った気分だ。
ぺラップは話を聞き、興奮して羽をぱさぱさとバタつかせた。
「すごいよ! あの森にセレビィがいたとは! 大発見だよ!」
「うん。でも、セレビィはもう未来へ行ったからあの森にはいないよ」
ミニリュウが褒められて嬉しそうに頬を赤く染めて言った。ぺラップは機嫌がよく、声が高い。なにより、目がにっこりとしている。
「セレビィが今はあの森にいなくても、セレビィのいた森って事ですごい森じゃないか。私も会ってみたいなあ。……ま、それはさておき、依頼主が来ているみたいだよ」
「依頼主? ナゾノクサだよね」
ミニリュウが言うと、そばで「はい、私です」という声がした。振り向くと、嬉しそうにお礼の品を持っているナゾノクサがいる。頭から生えた草が嬉しさで揺れていた。
ナゾノクサは、ミニリュウからオレンの実を受け取ると、私たちに小包を差し出した。開けてみると、金で出来たコインで「P」というマークが入っている。お金のようだ。コインは何枚かある。
「3000ポケです。お礼にどうぞ」
“ポケ”というのは、ポケモンの世界で言うお金の単位らしい。なるほど。だから、「P」なのか。ということは、私たちは3000という大金を手にした……ということだ。
「わあ! 3000ポケなんて大金、貰っていいの!?」
お金を受け取りながらミニリュウが、驚いて声を張り上げた。興奮で息が荒い。
ナゾノクサは微笑みながら、うなずく。
「いいんですよ。本当にありがとうございました。では」
そう言うと、ナゾノクサは去っていった。その手にしっかりとオレンの実を抱えて。
ナゾノクサに感謝され、お金も貰え、喜びでミニリュウが体を震わせる。
「すごいよ、ミーシャ! 私たち、お金持ちだね」
「ちょっと待った。そのお金をよこしな♪」
ぺラップが、ミニリュウの手の中にあるお金をさっとくちばしで奪った。奪われた拍子に、お金がキラリと光る。
ミニリュウが、ムッとしてぺラップを見た。それもそうだ。頑張って手に入れたお金を奪われたんだから。
「それは私たちが貰ったんだから返してよ」
「そうはいかないんだよ。この3000ポケは親方様の分。おまえたちの文は3000ポケから、0を1つとって300ポケかな」
ぺラップは、ジャラジャラと音を立てながらお金を分けると、ミニリュウに300ポケを渡した。何枚かあったお金が、数枚に減っている。
私もミニリュウも、「えーっ」と叫ぶ。
「ちょっと待ってよ。これしか貰えないの?」
私が言うとぺラップは当然だ、というような顔をした。ひどい! あんなに頑張ったのに!
ぺラップは不満そうな私たちを見て、いやみっぽく目を細める。
「これがギルドのしきたりだからな♪ 我慢しな♪」
「そ、そんなあ……」
初めての仕事で結構頑張ったのにお礼の品がこれじゃあ、とミニリュウはがっくしとする。私もガッカリしたが、それよりも気になる事がある。さっきから、お腹がグウグウ鳴りっぱなしなのだ。うるさくて仕方が無い。
チリ――ンチリ――ン!
透き通った響きのよい澄んだ鈴の音がした。それとともに、チリーンの声がする。
「みなさーん! 夕食の準備ができましたよ!」
その声を聞いて、この地下二階にギルドのメンバー達が集まってきた。そして、食堂へと入っていく。メンバーは、なにやら嬉しそうにはしゃいでいる。
「おまえたち、夕食だ♪」
ぺラップも嬉しそうに言うと、食堂へ私たちを案内した。
食堂は、地下二階の親方様の部屋の隣の洞穴にある。親方様の部屋の扉が豪華なので、私たちは気づかなかったが、確かに扉の隣に洞穴があったのだ。
食堂は、とても賑やかで騒がしかった。
木で作られた長いテーブルの上に、りんごやグミ、木の実や、栄養ドリンクなどが積まれている。みんなはテーブルのそばに置かれている丸い椅子に座り、食べ物に噛り付いていた。その食べっぷりのよさに、ガツガツとかむしゃむしゃとか食べる音が聞こえてきそうだ。
どうしてだろう。
人間だった私が、木の実やただのりんごなどの物がおいしそうに見えてくる。ポケモンの本能なのだろうか。
「ミーシャ、食べようよ!」
ミニリュウに言われて、私は椅子に座った。ミニリュウはテーブルの上に置いてある食料を適当に取って食べているが、私はどれを食べていいかわからなくて、なんとなくりんごを手にとった。そして、恐る恐るかじってみる。そのりんごのみずみずしさと新鮮さときたらなかった。齧ればシャワッというような音を立て、口の中に甘さが広がる。これも、ポケモンだから感じるものなのだろうか。
「ねえ、ミーシャ」
ミニリュウが、グミを手にしながら話しかけてきた。
私はりんごを口から話すと、ミニリュウの話に耳をかたむける。
「私ね、今日はすっごく楽しかったよ。そりゃあ、お金をとられちゃってガッカリもしたけど、何よりナゾノクサの嬉しそうな笑顔が忘れられないんだ」
「私もだよ。落し物を探してきただけなのに、すごく嬉しかった」
私たちは笑いあいながら、しばらくの間、時間を忘れて食べることに夢中になった。
~Memory3終了~

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