ポケモン不思議のダンジョン昼*夜の探検隊 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M/作


Memory2 ギルドの丘   ~03~



ぺラップは、もう一回梯子を降り、地下二階まで来た。まったく、何階まで地下があるのって思ったら二階までだったみたい。

地下一階は、大きな掲示板があったりポケモンたちが身支度をする場だったが、地下二階はガラーンとしている。あまりポケモンはいないし、目立つ物といえば二つくらいだ。
一つは大きな穴だ。穴の奥には太い木の蔓が続いていて、蔓をつたって降りれるようになっている。この蔓は梯子代わりになっているらしい。穴があるから、地下三階まであるのかと思って降りようとすると、ぺラップにさっそく怒鳴られた。この穴は地下へ行くものではなく、テントの入り口にあった、網のかかった穴に続いていてその穴から網の上に乗ったポケモンの足型を見極める、とのことらしい。

二つは、やけに大きく豪華な扉。木で出来ていて淵は黄色、他は赤で塗られた扉には、「ノックをしてから入ってね。じゃないと、ビックリしちゃうから」という文字が雑に刻まれている。

ぺラップは、その扉の前まで来ると、こちらをクルリと振り返った。

「ここが親方様のお部屋だ。いいかい、変なまねするんじゃないよ。……親方様ー、ぺラップです♪ 入りますね」

ぺラップは言うと、くちばしでコンコンと扉を叩いた。ノックのつもりらしいけれど、手ではなくくちばしでやるのを見て、私は思わずぷっと笑う。 すると、ぺラップがキッとこっちをにらんだ。私とミニリュウは「ひっ!」と声をあげる。

「静かにおし!」

言った後は、コロッと態度を変えて扉を開けて、親方様の部屋に入る。なんという二重人格……。
私たちも、引っ張られるようにして部屋に入る。

部屋には大量の大きなりんご“セカイイチ”が置かれ、二つのロウソクがプクリンを挟むように置かれていた。プクリンはピンク色のウサギの体をしている。ロウソクの火がプクリンの体をオレンジに染める。プクリンの顔をよく見ようと目をこらすと、プクリンは後ろを向いていた。

「あのー、プクリン……さん?」

ぺラップもプクリンも何も言わないので、ミニリュウが探るように言った。すると、プクリンがくるりんっと振り返る。
そして……。

「やあ♪ ぼく、プクリン。このギルドの親方だよ。君たちは、ここに何をしに来たの?」

「え……。あの、その……」

親方様と言うからものすごくおっかない人かと思ったら、まるで小さなお子様みたいなポケモンだ。
想像していたのと違いすぎて、私もミニリュウも声がでない。そんな私たちを見て、ぺラップがささやいた。

「おい、親方様の質問に答えな」

そう言われて、やっと目が覚めた。ミニリュウは、まだ驚いているらしく、プクリンをじっと見たまま何も言わないので私が言う。

「私たち、探検隊になりたいんです」

「オッケー。じゃあ、探検隊として登録するから、チーム名を教えてくれないかな?」

「チーム名……」

これはさすがに私一人では決められない。探検隊をいっしょにやっていくのはミニリュウだから、ミニリュウの意見も取り入れないとだ。

「ミニリュウ。探検隊のチーム名は、どうする?」

私が話しかけると、今まで寝ていたかのようにミニリュウがはっと目を覚ました。そして、うーんと悩む。

「チーム名とかは考えていなかったよ。だけど、キセキを起こすような……すごい探検隊になりたいなあ」

キセキ……? キセキを起こす探検隊……。
「キセキ」とくれば、もうチーム名は決まったようなものだ。

「あの、『キセキーズ』でいいですか?」

ビー玉のようなクリンクリンの丸いプクリンの目を、私はじっと見つめる。プクリンはうなずいた。

「うん、いい名前だよ。本当にキセキを起こせるような探検隊になれるように頑張ってね♪ じゃあ、ぺラップ。ギルドのメンバーを連れてきて」

ぺラップに命令する。なぜかがっくりとうなだれながら、ぺラップは部屋から出て行った。



   *



しばらくすると、ギルド全員のメンバーを連れて、ぺラップが戻ってきた。なぜかみんな、うかない顔をしている。もしかしいて、私たちが弟子入りするのが嫌なの……かな。

「じゃあ、みんな自己紹介。ぺラップとぼくはさっきしたから、もうしないよ。まずは、ミニリュウたちから」

プクリンは、楽しそうに踊りながら言った。
ミニリュウが緊張しながらぺこりとお辞儀をする。

「私、ミニリュウです。えっと、ずっと前から探検隊にあこがれていました。よろしくお願いします」

言い終えると、私の方をチラッと見る。私も、ゴクリと喉を鳴らす。こういう自己紹介って苦手だ。ポケモンたちの目線が怖いというか、緊張するというか。

「えっと、私はミーシャ。この世界に来たばかり……じゃなくて、この世界のことはあんまり詳しくないから色々と教えて下さい。お願いします」

余計な事は話さないように気をつけて言った。私たちの自己紹介が終わると、まずドゴームが私たちの前に出る。

「ドゴームだ。朝、ギルドのメンバーを起こしに来る。よく覚えておくんだな」

普通にしゃべったのだと思うが、ものすごく馬鹿でかい声だ。普通に話しても怒鳴っているような声なのに、本当に怒鳴ったらどうなるんだろう。
次にヘイガ二があいさつする。

「ヘイヘイへーイ! おいらはヘイガニ! 別に覚えてもらわなくてもいいぜー。以上!」

……と、やけにかっこつけた声で言うと、キマワリと入れ替わる。キマワリは、コホンと咳払いした。

「わたくしはキマワリですわー。自己紹介なんて、照れますわー、キャー。弟子入りの祝福として、花をどうぞ」

言うと、黄色い顔を薔薇色に染めて舞を舞いだした。キマワリの周囲から桃色の花びらと粉が溢れ出る。<はなびらのまい>の技だ。キマワリは舞を終えると、
礼儀正しいチリーンと入れ替わった。

「私はチリーンです。食事の支度を毎日させていただきます」

そして、頭のベルを一回鳴らしてから、ディグダとダグトリオと入れ替わった。二匹同時に私たちの前に出て、ダグトリオがあいさつする。

「私たちは親子だ。息子のディグダは、ギルドの入り口の網に乗ったポケモンを見極める、見張り番を、私は掲示板の情報の更新をしている」

次に、やけにニヤニヤ笑うグレッグルがあいさつした。何が面白いのか、くくっと笑い声を上げるのをこらえている。

「わしはグレッグル。ま、特に目立ったことはやっていないな」

最後に、少しおどおどした様子でビッパが挨拶した。出っ歯が可愛らしい。

「えっと、あっしはビッパでゲス。君たちが来るまでは、あっしが一番後輩だったんでゲスが、あっしにも弟子ができて嬉しいでゲス」

ビッパが戻ると、ぺラップが冷や汗を流してうつむきながら言った。

「えー、では、新しくギルドの仲間に入ったこの者たちの祝福に、お、親方様の<ハイパーボイス>を一人一人受けてもらいます。ではまず、ドゴームから」

ここは空気を読んで、何も言わずにドゴームがプクリンの前へ出た。ドゴームは、きゅっと縮こまる。
プクリンが、大きく息を吸った。

「いくよ♪ 祝福、祝福、タアアア―――――!」

「わ―――――ッ!」

一瞬、部屋の中に雷が二回落ちたような感覚がし、プクリンの口から、光の輪が風といっしょにいくつも出てきた。ものすごいパワーで、見ているこっちまで頭がクラクラしてきた。
祝福が終わると、ドゴームはフラフラした足取りで「うー、強烈」と言って戻る。

「な、何か、私たちギルドに入ってよかったのかな……」

全員が<ハイパーボイス>を受けた後にミニリュウがぼそりと言った。プクリンがにっこりする。

「心配いらないよ。こうすることによって、みんなの頭にはしっかりと君たちの事が刻まれたから♪ おめでとう。君たちもこれから探検隊だよ」

そう言って、私たちにバッグと、二つのバッジ、古ぼけた地図を差し出した。

「これはトレジャーバッグ。君たちが活躍すればするほど大きくなる、不思議なバッグだよ。この二つのバッジは、探検隊バッジ。そして、この地図は不思議な地図。この世界のすべてが載っているよ」

「ワアアア! ありがとう!」

ミニリュウは言うと、遠慮せずにそれらを受け取った。そしてバッグの中に地図を入れて、肩からバッグをかける。バッジも胸につけた。
私もなんとなくバッジをつけてみる。結構、ポケモンにしてはよく作られたバッジだった。卵のような形に、小さな羽根が付いている。

「じゃあ、後はよろしくね、ぺラップ」

プクリンは言うと、クルリと後ろを向き、山のように詰まれたセカイイチに夢中になってしまった。ドゴームたちの弟子たちも、ゾロゾロとプクリンの部屋を出て行く。

「お前たち、私についてきな。初仕事だよ」

何をしていいかわからなくて、私たちがウロウロしているとぺラップが声をかけた。私たちは、初仕事と聞いて期待をしながらぺラップに歩み寄る。