ポケモン不思議のダンジョン昼*夜の探検隊 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M/作

Memory4 光のささやき ~07~
「ミーシャ、ミーシャ」
と、ミニリュウの涙声が聞こえる。そうか。私はミニリュウの足元に倒れたんだ。だから声が聞こえるんだ。うっすらと目を開けると、ミニリュウが目に涙を浮かべて私を見下ろしている。ミニリュウは、頑張って動こうとするが<かなしばり>のせいで、いくらふんばってもダメだ。
ごめん、やっぱり私はなにもできないダメなやつなんだ。ミニリュウは、<かなしばり>で動けないからわかるけど、私はまだ動けるのにダメージを受けてなんにもできないなんて。
面白そうにスリーパーが足元の石を蹴った。その石が転がってきて、私の顔にコチンと当たる。少々痛かったが、その事を気にするほど私の体力は残っていなかった。
ミニリュウが、歯をくいしばる。悔しいのだ。
「動けないなら、動けないなら……! ここからスリーパーまで届く技で戦えばいいんだっ。<りゅうのいぶき>」
……苦しいはずなのに、ミニリュウは薔薇よりも血よりも赤い光線を口から出した。一直線に、光線はスリーパーへ向かう。しかし、それもスリーパーはスルリンとかわす。光線は、大岩に当たると薔薇の花びらが散るようにしてスカッと消えた。
「わ、私だって……」
私はミニリュウの頑張りを見て、ふらつきながらようやく立ち上がった。足がブルブル震えている。体力が大幅に減少し、もう立つこともできないの? 戦うって、こんなにも苦しいんだ。人間の頃はポケモンが戦う姿を見て、「うわ、痛そう」とか思っていただけだった。しかし、やってみるとこんなにも苦しいなんて……。
でも、私だって、私だって……! 負けないんだから!
「ど、どうして全部の技をかわせるの? どうして全部、予測できるの……」
「フフフフ……。ポケモンに“特性”と呼ばれる特殊能力があるのは知っているよな? おれの特性は“よちむ”だ。未来に起こることが予測できる。ハハハハッ、おまえたちにおれは倒せない。絶対にな」
スリーパーは相変わらず余裕で、お腹を抱えて笑った。いつまでもいつまでも笑っている。
どうしようどうしよう。ミニリュウは<かなしばり>のせいで動けない。私も、もうそんなに体力は残っていない。キセキを起こす探検隊なのに。
「みんな……」
頭の中にギルドの仲間の顔が浮かんだ。キマワリは強かったな。ヘイガニも嫌なやつだけど、強い。ぺラップだって、プクリンだって。みんな、こんな試練を乗り越えてきたのかな。私たちには無理なのかな。突破口はないのかな。どうして……!
「もうっ!」
私は苦し紛れにあちこちへ電気を飛ばした。電気はスリーパーへも飛んだが、それもスリーパーはひょっこりとかわす。……が、地面の岩につまずいて前のめりに転んだ。
チャンス……!
「やったあ! くらえ、<でんきショック>!」
力を振り絞って放った電気は、いつもの<でんきショック>と色も音も違った。いつもは、黄色くバチバチッと音を立てるが、今回のは青白くピリッピリッと音を立てるのだ。
「うわあ!」
転んで立ち上がろうとしていたスリーパーはまともに電気をくらい、悲痛な叫びを上げた。しかし、今まですべての技をかわし続けてきたスリーパーはこんな電気などなんともないらしい。ちょっと痛そうにスクッと立ち上がる。
「ふんっ、こんなちっぽけな技などどうってことな……い……」
言っている最中に、スリーパーは急にドシンと仰向けに倒れた。見ると、スリーパーの体がピリッピリッと音を立てている。さらによく見ると、青白い電気が体にまとわり付いている。『麻痺(まひ)の状態異常』になったらしい。
「く、くそおっ。体が痺れて動けない。あれは<でんじは>の技だったのか」
<でんじは>……? もしかしてさっきの技? <でんきショック>ではなく? 確か、<でんじは>は相手を麻痺状態にさせる技だ。そんな技を、私はいつの間に覚えたのだろうか。そういえば、ポケモンはピンチになると進化したり新しい技を覚えたりすることがよくある。私もそれかな?
「ミーシャ! 今ならあいつは動けないよ! こんな作戦はどう……?」

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