ポケモン不思議のダンジョン昼*夜の探検隊 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M/作


Memory4 光のささやき ~13~



「ほら、ルリリ。お礼を」

 マリルがルリリにささやくように耳元で言った。
 ルリリは頷くと、手に持った木の実を差し出してくる。その木の実は合計五つで、それぞれ違った形、色をしていた。

「あのっ、本当にありがとうございました。こんなものしか、ぼくたち持っていないけれど、受け取ってください」

 五つの木の実のうち、二つはオレンの実とモモンの実だったが残りの三つはあまり使ったことのない実だった。
 一つはカゴの実。上半分はペンキで塗られたように青く、下半分は青く塗られる前の茶色がむき出していて栗(くり)のような形をしていた。ねむりの状態異常を回復する。
 もう一つはクラボの実。小さく丸い赤の実からバネのようにクルクルした茎が生えている。まひの状態異常を回復する。
 最後はチーゴの実。青緑色の苺のような形をしていて、やけどの状態異常を回復する。

「この五つはそれぞれ、オレン、モモン、カゴ、クラボ、チーゴの木の実です。冒険に役立つと思って、家から持ってきました」

 そうか。ルリリが岩場からいったんいなくなったのは、家にこれを取りに戻ったんだ。なんだか受け取りにくいな。

「そんな、いいよ。たいしたことはしてないよ。木の実は自分たち用にとっておいて」

 私は木の実を貰うのを拒んだ。だって、申し訳ないから。私が断ると、マリルとルリリは困ったように顔を見合わせた。……やっぱり貰った方がよかったのかな?

「いいえ、受け取ってください」

 優しく透き通った声がした。見ると、マリルとルリリの容姿に似たポケモンがいる。そのポケモンは青く卵のような体をしていて、その体からウサギのように長い耳が二つ生えている。マリルリだ。確か、マリルリはマリルの進化系だったような気がする。そういえば、マリルもルリリの進化系だ。

「私はマリルリと言います。このルリリとマリルの母親です」

 マリルリはゆっくりと私とミニリュウの前に寄って来る。そのマリルリのお腹にマリルとルリリが抱きついた。やっぱり、お母さんが大好きなんだ。

「助けてくださってありがとうございます。この子たちは病気がちな私を助けようとして、騙されました。原因は私です。私からもお願いします、どうか木の実を受け取ってください」

 マリルリは深く頭を下げた。長い耳が前に垂れる。私とミニリュウは慌てて木の実を受け取った。

「頭を上げてくださいっ。……木の実をありがとうございました。ええっと、これからもトレジャータウンなどで会ったらよろしくお願いします」

 ミニリュウが丁寧にお礼を言った。私も頭を下げる。
 マリルリは優しく微笑むと、子供たちを連れて帰っていった。なんだかほっとして私は息を吐く。

 ぎゅううう……。

 安心すると、私のお腹の虫がなった。ミニリュウがクスクス笑う。

 ぎゅううう……。

 そんなミニリュウのお腹の虫もなった。
 そういえば、私たちはお昼ご飯を食べていなかった。お腹が減るのも当たり前だ。ミニリュウがあはは、と笑う。

「安心したらお腹がすいちゃったね、ミーシャ。ギルドに戻ろうよ」

「そうだね」

 私は軽く返事をすると、木の実を抱えなおす。

「なんだなんだ。バトルには勝ったけど、ひもじさには勝てないなあ」

 ドゴームがからかった。どどどどっと笑いが起こる。私たちはそのまま笑いあいながらギルドに向かう。

 本当によかった。無事に解決して――。

~Memory5終了~