ポケモン不思議のダンジョン昼*夜の探検隊 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M/作


Memory2 ギルドの丘   ~02~



「ミニリュウ、この大きなテントは何か特別なの?」

私は周囲のポケモンたちの視線を気にしながら、ミニリュウに聞いた。ミニリュウも、緊張しているのか焦点の定まらない目で答える。

「うん。なんたって、このギルドの丘で一番大きいテントだからね。このテントには、親方様のプクリンと、その一番弟子のぺラップがいるんだ」

「ふうん。じゃあ、この目の前にある落とし穴みたいな網は何?」

足元にある穴を指差して私は言った。
プクリンたちのテントの入り口の前には、ポケモンが一匹は入れるくらいの大きな穴がある。きちんと網が張ってあって、乗っても落ちないようになっているけど、何か怪しい。まさかとは思うけど、私たちを落として捕まえる気じゃないのかな……。

「これは……、何ていうか、見張り番がいない代わりにあるものかな。この網に乗ると、地下にいるポケモンが乗ったポケモンの足形を見るんだ。そして、許可証を求めてくる……。じゃあ、私がさきに乗るね」

ミニリュウは息を吐くと、ストンと網の上に乗った。不意に地下から声が聞こえてくる。ミニリュウがビクッと肩を震わせる。

「これは、ミニリュウの足型! ミニリュウの足型! 何の用? 何の用?」

「わっ、私、探検隊になりたくて……」

勇気を振り絞ってミニリュウが言う。また、地下から声が聞こえた。

「わかった。まず、そばにもう一匹いるポケモンも網に乗れ」

私の事を言っているみたいだ。しかも、私はポケモン扱いされているらしい。姿がポケモンだから、仕方が無いのか……。

「ミーシャ、網に乗れって」

ミニリュウが私を振り返って言った。仕方なしに私も網に乗る。一人で網に乗っているのが怖かったのか、ミニリュウは、私がそばにくると安心したように一息ついた。


「この足型は……。えっと、メリープ? ……ま、いっか。足型はメリープ! 足型はメリープ!」

「おい! 何がま、いっか、だよ。全然よくないぞ!」

地下で何やらもめているらしい。しばらくもめ事は続いたようだが、私たちが困っていると声が聞こえた。

「すまなかったな。探検隊になりたいんだって? なら、許可証を網の隙間から落としてほしい」

「うん。わかった」

ミニリュウは答えると、許可証を網の隙間に押し込むように落とした。コトン……と、石の許可証が落ちた音がし、すぐさま声が飛んでくる。

「許可証確認! 許可証確認! 入っていいぞ!」

ようやくテントに入れるようになって、私たちはほっとした。入るだけでも、これだけ大変なんて、よほどプクリンという親方は厳しいのだろうか……。

「ミーシャ、入ろうよ」

ミニリュウが急ぐように言う。私はごくりと喉を鳴らすと、テントにするリと入った。



   *



「うーん。やっぱり、見かけは大きくても中は狭いね」

私はテントの中に入ったとたん、騙されたような気になった。やはり、所詮テントの中。見かけから、強いポケモンがたくさんテントの中にいて、よほど広いものかと思っていたから、なおさら騙されたような気分になる。

「た、確かに狭いけど……。でも、よく見て。ここは、このテントの玄関みたいな物らしいよ。だってほら、地下に穴が続いているもの」

ミニリュウが宥めるようにゆっくりと言う。私はその言葉に誘われて、じっと地面を見つめた。テントの狭さだけに気を取られて、足元の方に目が行かなかったが確かに地下深くに穴が続いている。そして、きちんと穴から地下へ降りれるように、木の梯子まで穴の奥へ続いていた。

「じゃあ、このテントはギルドの丘での県庁所在地みたいな物だね」

私はポケモンたちの文化に感心しながら言った。聞いたこともない言葉を私が言ったので、ミニリュウは首を傾げる。

「県庁所在地?」

「ううん、何でもない。さっ、降りてみよう。私がさきに梯子を降りるね」

言いながら、恐る恐る梯子に足をかける。まったく、ポケモンになるならもうちょっとマシなポケモンがよかった、と思う。例えば、伝説や幻のポケモンになっていたら、すっごくよかったのに。まあ、そんな都合のいい話はないと思うが。梯子を降りる時も、この足の短さは不便だ。
ミニリュウは、くねくねした体をうまく梯子に巻きつけて降りれるから、うらやましい。

「よいしょっと」

梯子を降りると、そこはもう別世界だった。
地下なのに、そこは広い。そして、さまざまなポケモンたちが、探検の身支度をしている。また、大きな掲示板が二つあって、それを眺めているポケモンもいた。

「さっき、探検隊になりたいと言って来たのは、おまえたちだな?」

賑わう中、声が聞こえた。ビクッとして、私たちはきょろきょろする。見ると、偉そうに胸を張っているぺラップがいた。顔が音符の形をしている鳥ポケモンだ。翼の色は驚くほどカラフルで、オウムに似ている。

「あ、こんにちはっ」

ミニリュウが緊張して何も言わないので、私が挨拶をした。人間の世界で、挨拶は嫌というほど言わされてきたから慣れている。

「私は情報屋のぺラップだ♪ そして、親方様の一番弟子。おまえたちの先輩ってことだ。よく覚えておきな」

やけにテンションの高いポケモンだ。機嫌がいいらしく、ニコニコしている。

「あの、私たち、探検隊になりたいんだけど……平気、かな?」

ようやくミニリュウが小さく声を出した。ぺラップがやけに驚いた表情になる。

「えっ! 本当に? おお、いまどきそんな子がいたとは……。ギルドの修行が嫌で、脱走するやつもいるのに……」

「そ、そんなに厳しいの?」

「い、いやいやいやいやっ! そんなに厳しいことはしないさ。さ、そうと決まったら、親方様の所へ行こう。さあ、私についておいで♪」

ぺラップは不意にあわてて羽を激しくバタバタすると、すたすたと歩き出した。あわてた時に羽をばたつかせるのは癖らしい。

私たちは顔を見合わせながらも、ぺラップの後へついていった。ぺラップって、なんだか怪しいやつだなあ。