ポケモン不思議のダンジョン昼*夜の探検隊 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M/作

Memory3 キセキの探検隊 ~02~
「ねえ、ヘイガニ。この剣風の森では、よくこんな風に周囲が光るの?」
私は、緑に光る森全体を見渡しながら言った。光はさっきより強くなっていて、私は目をかすかに細める。ミニリュウも眩しそうだ。
ヘイガニも目を細め、怒ったように首を振る。
「ヘイヘイ! そんなわけねぇだろ。森がこんな風に光るなんて、尋常じゃないって。もしかしたら森の奥にあるお宝が光っているのかもしれないぜ! 急ぐぞ、ヘイヘーイ!」
「もうっ、お宝探しに来たんじゃなくて、オレンの実を探しに来たんでしょ」
私はため息をつきながら言った。まったく、ヘイガニって何なの? まったく、こんなやつといっしょに初の依頼なんて……。初めての依頼は良い思い出になりそうに無い。
そんな事を言っている間に光は薄くなっていって、しまいには元どうりになる。
「へ、ヘイ!?」
先頭を走っていたヘイガニが急に立ち止まった。急に止まられたので、私とミニリュウは止まれなくてヘイガニに突っ込む。突進してしまったからヘイガニはすぐに怒るかと思ったら、ヘイガニは呆然と前を見ている。
「ヘイガニ、急に止まらないでよ! って……」
言いながら、私はヘイガニの見ている先を見つめて言葉を失った。ヘイガニが止まった理由。それは、前に進めなくなったからだ。
どうして進めなくなったのか?
その理由は私が見ている物が邪魔しているからだ。地面から突き出た、太くて大きないばら。どす黒い緑色をしていて、いかにも怪しい。それが雑草のようにあちこちに生えていて通行止めをしてしまっている。
「こ、こんな大きないばら……。よほど力のあるポケモンの技なのかな……森の主とか……」
ミニリュウは、地面から突き出たいばらを見上げながら口をあんぐりと開けて言う。
いばらの高さは背の高い木と同じくらい。それが、みっしりと隙間一つなく地面から生えている。最初は危険だがいばらといばらの隙間を通ろうとしたが、隙間そのものがないので難しそうだ。
「へ、ヘイガニ。こういうときは先輩として何かいい案を出してよ」
ミニリュウが苦笑いを浮かべた。ヘイガニははさみをカチカチ鳴らしながら汗をかく。
「こんなに大きないばらじゃあ、おいらのはさみでも切れないぜ、ヘイヘイ……」
本当に、頼りない先輩だ。
「こんな事だろうと思ってましたわ。来て正解でしたわね」
聞き覚えのある声がした。
私たちがはっとして振り向くと、そこには赤いバンダナを首に巻いたキマワリがいる。キマワリは、あきれた顔で私たちのそばまでやってきて、ヘイガニを厳しい目で見た。
「親方様が新米のキセキーズとヘイガニじゃあ心配だからって、わたくしをついて行かせたんですわ。ヘイガニの事だから何も準備せずに出かけたんじゃないかと思ってたら、やっぱり。こういうときは、これが一番! <はっぱカッター>ですわー!」
キマワリは大きく葉のような手を広げると、刃物のように尖った葉をいくつもいばらに飛ばした。尖った葉はいばらを粉々に切り裂く。
「わー! キマワリはすごいや!」
ミニリュウが瞳を輝かせた。ヘイガニがチェっと舌打ちをする。キマワリはすべてのいばらを切り裂くと、私たちに青いスカーフを差し出した。
「わたくしの技がパワフルだったのは、この“パワーバンダナ”のおかげで攻撃力が上がったからですわ。さ、皆さんもどうぞ」
そう言って、ミニリュウと私に青い“ぼうぎょスカーフ”をつけてくれた。これは、防御力を上げるためのものらしい。
ヘイガニも悔しそうに、キマワリから乱暴にスカーフを受け取った。
「さあ、さっき森の奥が光ったのを私も見ていましたわ。早くオレンの実を見つけましょう。いばらが地面に転がっているから、足元に気をつけてね」
こういうポケモンが先輩なんだ、と私は思った。
キマワリは言うと、切り裂かれたいばらが散らばっている道を歩き出した。

小説大会受賞作品
スポンサード リンク