コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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Multiplex Cross Point 完結
日時: 2011/01/04 15:36
名前: Faker (ID: uUme72ux)

新たに小説を書きます、Fakerです。
どうぞ、お気軽に見て貰えれば嬉しいです。
御意見など、お待ちしています。

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Re: Multiplex Cross Point 最終話更新予定 ( No.835 )
日時: 2011/01/04 12:34
名前: インク切れボールペン (ID: uUme72ux)

Multiplex Cross Point─Season1─ Last Episode

朧気な意識の中で声が聞こえた。
誰かの名前を呼ぶ、聞き慣れた少女の声が。

「クロトッ!!」

肩を揺さぶられ、身体が揺れる。
”神穿ちの魔槍”を使役した事で身体に返った反動に蝕まれる状態で、これは随分と厳しかった。
何とか瞳を開いて最初に視界に入ったのは、見慣れた亜麻色の髪の少女。
普段は魔術組織の副隊長としての威厳に満ちた表情の彼女は此処にはいない。
其処に映ったのは、柚葉 クロトを一途に慕っている義妹だった。

「…やぁ、椛ちゃん」

呆然と、クロトは眼前の少女へ挨拶をした。
普段と同様の飄々とした雰囲気を纏わせて。
ふと、そんな挨拶の後に、彼の頬に何かが零れ落ちた。
春の到来を思わせる暖かな水滴。
その発生源は、柚葉 椛の瞳からだった。
くしゃくしゃの表情で、彼女の瞳からポロポロと溢れる、涙だった。

「…ごめんね。心配を懸けちゃってさ」

その手を延ばし、そっと椛の涙を拭った。
ごめん、と最後に付け加えて。

「…俺はどうなったんだ? ダージスは…?」

「そ、それはだな…、って、うわ!?」

「空から落ちて来たのよ。あんたは」

唐突に椛を押し退け、無愛想な表情を浮かべた少女が彼の視界に入る。
メル・ヴァートン。
彼女は無愛想な表情のまま、現在の状況の説明を始めた。

「突然に”使徒”が消えたの。その後に、あんたが落ちて来た。その数秒後に奴が落ちて来た」

「奴って言うと、ダージスの事?」

正解よ、とメルはダージスの落下地点である場所を指で示した。
見れば、白衣を纏った緋色の髪の青年が倒れている。
ダージス・シュヘンベルク、彼だった。
視界にダージスを捉え、クロトは沈黙を続ける。

「…これが、お前の望んだ結末だったのか?」

なぁ、ダージス・シュヘンベルク。
”共鳴現象”で見た、過去のダージスの発言を思い出し、彼は呟いた。
本当に、それで良かったのか、と。

「…何が?」

彼の言葉に応えたのはダージスでは無く、メルだった。
クロトはメルに対し、何でも無いよ、と応え、静かに立ち上がる。
視界は変わらずに揺らいでいるが、歩いたりする事には支障は無い。
彼は立つと同時に、総帥であるひょっとこの仮面を装着している男へ一つの頼みを投げ掛けた。

「ダージス・シュヘンベルクを殺さないで欲しい」

刹那、その場の誰もが蒼然とした。
誰もが、この状況でダージス・シュヘンベルクを討つべきだ考えていたから。
その考えを知っていて尚、柚葉 クロトはそれを拒んだ。
何故だ、とひょっとこ仮面は敵を前に、敵の助命を乞うた彼に質疑を投げ掛ける。

「彼は一年前の”Child Soldier事件”の首魁だ。断罪するに充分に値すると思うが」

「解ってる。俺の言ってる事が気に食わないって事は。だが、これは譲れない」

断固、己の意志を貫く。
クロトがそう告げた刹那だった。

「ふざけんな!!」

彼の胸倉を掴み、威牙は激昂する。
その瞳に憎悪の感情を滲ませて。

「この男の所為で、どれだけの子供が犠牲になったと思ってやがる!! 寝言にも程があるぞ!!」

彼の吼えるが如き言葉に、クロトは何も答えない。
答えられるはずが無かった。
威牙 無限、彼も”Child Soldier事件”で人生を狂わされた、その一人なのだから。

「俺は奴を殺す。邪魔をするなら、お前も!! 例え誰であっても!!」

恐らく、彼はこの時を待っていたのだろう。
人生を狂わせた事件の首魁を殺す、その日を。
だとしても。

「奴は殺させない」

ズンッ、とクロトは渾身の力を籠め、威牙の腹部に拳を叩き込む。
こふっ、と肺から突然に息を吐き出させられた彼は、クロトの胸倉を離し、身体をくの字に曲げ、咳き込んだ。
その刹那だった。

「醜いね。仲間同士で潰し合いなんて」

そんな馬鹿な、とクロトは耳を疑った。
音源は倒れていたはずの白衣を纏った緋色の髪の青年の口からだったから。
見れば、彼は立っていた。
侮蔑の微笑を湛えて。

「君の一撃は脅威だったよ。御陰で取り込んだ”神の力”の殆どを失ったのだから」

それは逆に述べれば、まだ残された力はある、と言っているのだ。
息を呑んで警戒する魔術師達に向け、ダージスは残された魔力を用い、最後の魔術を展開する。
刹那、魔術師達は唐突に顕れた結界に身を捕縛される。
目に見えない力が魔術師を一人一人を完全に捕らえ、離さなかった。
だが、それに驚愕する暇は与えられない。
何故なら。

続けて、”造られし天上”の下階が爆発したからだ。

「…ふん。予想通り、僕は捨てられるべき駒だったらしい」

爆音を耳に捉え、彼は微笑を湛えた。
魔術師達は一瞥して。

「此処から出せーッ!!」

「くそッ!! だから奴を殺すべきだと言ったんだ!!」

それぞれにダージスの形成する檻から脱出を試みるが、成功の例は現れなかった。
強固な檻に閉じ込められた魔術師達へ、ダージスは静かに言葉を告げる。

「暴れないで欲しいね。それが壊れると困るんだよ」

「俺達を捉えて何をする気なんだ!!」

何をする?
ダージスは、”檻”を蹴破ろうと蹴撃を繰り返す雅依 輝星の質疑に、一笑する。
決まっているだろう、と。

「──────────────────此処の爆発に巻き込まれない様に逃がすんだよ、君達を」

Re: Multiplex Cross Point 最終話更新予定 ( No.836 )
日時: 2011/01/04 12:35
名前: インク切れボールペン (ID: uUme72ux)

理解不能だった。
何を言っているんだと誰もがダージスの言葉を訝しんだ。
敵である者達を助ける、と言っているのだから、その反応は当然だと言える。
だが、ダージスは至って真面目に、

「既に、この建物には脱出を不可能とさせる”迷宮結界”という魔術が張り巡らされている」

という事は、とダージスは付け加え、ダージスは尚も語りを続ける。
この建物の爆発から逃れられない、と。
彼の言葉に、魔術師達は聞き入っていたが、雅依 輝星が彼に噛み付く勢いで言葉を投げ掛ける。

「その爆発も、魔術も、お前が仕掛けたんだろ!!」

「残念。僕はそんな陳腐な罠は仕掛けないさ。」

だったら誰なんだよ、と彼は”檻”の中で尚も吼え続ける。
ダージスは彼の言葉に静かに口の端を吊り上げ、意地の悪い微笑を浮かべた。

「正式な名前までは僕も知らない。だが、一つだけ言える事があるよ」

彼は、”Child Soldier事件”で己の運命を狂わされた者達を見据えた。
威牙 無限、月架 蒼天、そして他の者達を。
彼らを一瞥した後、ダージスが放った言葉は、彼らの心臓を跳ね上がらせるに充分な言葉だったと言える。

「”Child Soldier事件”。あの惨劇を画策し、裏から操作した者達さ」

息が停まった。
誰もが息を停め、その言葉を脳裏に反芻し、表情を驚愕に染め上げる。
予想通りの反応に、ダージスは更に言葉を続けた。

「今回の事件も彼らの”実験”さ。僕が被験体の、ね」

そして、この実験と共に”奴ら”は僕と君達の抹殺を画策している。
”奴ら”は君達の行動パターンを知っていたからね。
だからこそ、この本拠地で実験を行ったのさ。
”迷宮結界”と、遠隔操作で起爆する”爆弾”を設置して、とダージスは語った。
それを語った上で、彼は言う。
真摯な表情で、強い意志を感じさせる瞳に魔術師達を捉えて。

「君達は死ぬな。此処で死ぬべき人間は僕だけだ。だから、君達を逃がす」

ダージスの言葉に、誰もが沈黙する。
恐らくは、彼は全てを見越していた。
自分がクロトの一撃に敗北させられる事も、何もかも。
ふと、沈黙の中、結月がダージスに言葉を掛ける。

「何で…。私達を脱出させられるのに、自分が脱出しないの!?」

誰だって、他者よりも己を優先するはずだ。
それでも、彼は命を投げ打ってまで、魔術師達を助けようとしている。
彼女の疑問は至極当然な質疑だった。

「僕は罪を繰り返してきた。”Child Soldier事件”。あの事件で”奴に”に従った」

そして、僕は多くの子供を死地に送り、死なせてしまった。
停められなかった、誰も。

「僕はあの時、あの瞬間に”奴ら”に反旗を翻してでも子供達を救って見せるべきだったッ!!」

後悔。
ダージスの言葉から感じる感情、その一つだけ。

「罪を犯せし者はいつの日か断罪を受ける。それが今なんだよ」

哀しみを感じさせる微笑と頬を伝って落ちる涙。
死ぬという事に恐怖を持たない人間はいない。
それでも、彼は敢えて、その選択を取った。
この瞬間が、断罪の時であると解っていたから。

「…さぁ。別れの時間だよ、諸君」

その言葉に呼応する様に”檻”を光が抱擁する。
何の光景も見えなくなり、聞こえるのはダージスの声だけ。

「転移位置設定完了。術式構築完了。空間魔術───────────、ぐッ!?」

言葉は途切れた。
口から、血の塊を吐き出した為に。

(限界…か。最早、僕の魔力で”神の力”は抑えていられない。そして、)

”神の力”を抑えている魔力を、この空間魔術に回せば、僕は死ぬ。
内に納めた”神の力”に身体を喰い破られて。
現実に迫ってくる死を感じ、彼は恐怖を抱いた。
しかし、

(何を迷ってるんだ、ダージス。僕の命は彼らの命を助ける為の布石!! 躊躇う理由など存在しない!!)

天に向かって、彼は血に塗れながらも吼える。
空間魔術発動、と。

刹那、ダージスの魔術は発動され、”檻”の中の魔術師達は強制的に転移させられて行く。

一人、また一人、と。
そして、最後の一人が消えると同時に、彼は床に仰向けに倒れた。
爆発は既に其処まで迫っている。

「ああ…。星が綺麗だ…」

今こそ、断罪の刻。
閉ざされた瞳から、自然と涙が流れた。

「…ごめん。君との約束、破っちゃいそうだ。最後に、君に逢いたかったよ」

脳裏に浮かぶ、愛を誓った一人の少女。
さよなら、と最後に彼はその愛しい少女の名前を呟いた。

「────────────────────アイリス」

刹那。
断罪の刻を迎えた青年は、爆発の焔の中へと消えた。

Re: Multiplex Cross Point 最終話更新 ( No.837 )
日時: 2011/01/04 14:06
名前: インク切れボールペン (ID: uUme72ux)

結局、俺達は奴の望んだ結末を停められなかった。
漆黒の闇の中、荒川 冬丞は”灰燼の風”の本部付近の森の中で静かに呟いた。
元から定められた結末を変えられなかった、そんな現実に打ち拉がれて。

「ダージス様は死んだのですね」

彼の後で木に背中を預けている満身創痍の荒川 琴音は、ぽつりと呟いた。
その頬に涙を伝わせて。

「…奴は己の役目を完遂して見せた。次は俺達の番だ。俺達の」

陳腐な言葉だ、と冬丞は思う。
幾ら感情を籠めても、幾ら言葉を重ねても、実の妹の涙を停められないのだから。
それでも、”真実”を胸に戦った一人の戦友の為に、冬丞達は前に進まねばならない。
ふと、涙を流し続ける荒川 琴音の頭を撫でた者があった。
肩に掛かる程度の薄金色の髪の可愛らしい容姿の少女。

「…、ミリー先輩」

「哀しいなら泣いたら良いんだよ。溜め込んでたら破裂しちゃうもの」

その瞬間。
琴音はミリーの胸に縋って泣き叫んだ。
一途に慕った恩師の死を前に。
冬丞は琴音の泣き叫ぶ姿を捉え、自分の無力を悔やんだ。
実の妹の涙も拭ってやれない、無力な己を。

「…悔やむな、冬丞」

ぽん、と軽快な挙動で冬丞の肩に手が乗った。
振り向き、冬丞は己の肩に手を乗せた人物を捉える。
白髪の混じった黒髪の初老の男性、彼は。

「セルゲイ殿…」

「後悔は過去に置いていけ。前に希望を見いだせ。それが出来ないなら、絶望に呑まれるぞ」

満身創痍の身体で、セルゲイは優しさを感じさせる微笑を湛えた。
痛ましい満身創痍を隠すかの様に。

「…ダージスは死んだ。我々は戦闘前に彼から言い渡された命令に従って、本部を抜けた」

魔術師達がダージスに挑んで行った、その隙に。
”荒廃せし失楽園”の魔術師達が”造られし天上”に侵攻する以前から彼はそれを命じていた。
荒川 琴音に、荒川 冬丞に、ミリー・シャルロットに、セルゲイ・ディスコラヴィッチに。
後の展開を全て予測した上で。

「諸君、我々は彼の意志を継ぐのだ。これは序章に過ぎない。真の戦いは、これからなのだ」

往くぞ、とセルゲイは言う。
この戦いを操ってきた者達への反撃を成すが為に。

「此処から我々の反撃は始まる」

深淵の闇に抱擁される森の中。
”灰燼の風”の新たなる物語が始まりを告げる。

完結。 ( No.838 )
日時: 2011/01/04 15:35
名前: インク切れボールペン (ID: uUme72ux)

…微妙な状態ですが、これで完結です。
示唆された真実と犠牲。
残された者達はそれぞれに物語を紡ぎます。
次回からは第二部に移行します。
一年前の"Child Soldier事件"を主軸に物語は展開されます。
さて、それではご縁あらば、また会いましょう〜。

To be Continue…

Re: Multiplex Cross Point 完結 ( No.839 )
日時: 2011/01/04 16:31
名前: 夜風 ◆MjV6.5TmZc (ID: gJM7cnIU)

完結!
おめでとうございます。
長い間お疲れ様でした。

最後は少し泣きそうになりました。
ダージス、何だかかっこいいですね。
本当に感動しました!
いやぁ、面白い小説で私を楽しませてくれて感謝です!
次の話も期待してます!


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