二次創作小説(紙ほか)
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- ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
- 日時: 2021/09/10 03:28
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。
初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。
コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!
※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。
・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。
・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。
・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。
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2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!
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2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!
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2017/05/28 閲覧数800突破!本当に有難う御座います!
2017/06/21 閲覧数900突破!物凄い感謝です!
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2017/07/18 閲覧数1100突破!有難う御座います!
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2017/08/30 閲覧数1300突破!有難う御座います有難う御座います
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2018/01/27 閲覧数2000突破!こ、これは…夢でしょうか…?!本当に、心から感謝致します!!
2018/03/07 閲覧数2100、2200突破!1つ逃してしまいました…ありがとうございます!
2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!
2018/04/17 閲覧数2400突破!間に合わないのがとても嬉しいです…!
2018/05/13 閲覧数2500突破!いつの間に…?!有難う御座います!!
2018/05/20 閲覧数2600突破!とてもとても!感謝でございます!!
2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!
2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!
2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!
2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。
何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!
2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.91 )
- 日時: 2017/05/25 18:10
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
58間目
「それで、私の異能無効化の解除方法は?」
治療が終わって回復した式部を応接間に座らせてから太宰が問う。
その横で国木田と谷崎が信じられないと言った顔で立っていた。
治療中、式部は1度も悲鳴を上げなかった。痛みを訴える事もなくただ解体されただけ。
途中から与謝野は式部を実験対象とみなし、自分の解体の腕に磨きをかける為に治療をし続けたらしい。
お陰で今の時刻は午後6時。外はもう夜の気配が漂っていた。
「普段から魂を一部分離してある。俺以外が実際に見る事は不可能だが、その魂は身体が無効化されていても異能を使える」
式部は太宰の手を取る。
「こんな感じに」
近くの観葉植物が真っ二つになった。植木鉢が倒れ、中に入った土が流れる。
直ぐ後にそれは逆再生のように巻き戻り、元の風景に戻る。
「異能は魂に宿る。身体はオマケだ」
「なるほど…で、今のに凄い体力を使うんだね?」
「まぁな。普段は身体を媒介に異能を発動するのを直接魂から持ってくる。その時の媒介は俺の体力と精神力だ」
手を離して腕を組む。
「元々分離した魂は結合しようとする力が強い。外に出すのは簡単だ」
「へぇ、じゃあ今私の魂を抜き取るのは?」
「無理、お前の魂には異能無効化が宿っている。他の奴なら幾らでも出来る」
そう言いながら部屋の1番隅っこでビクビクしている敦を見る。
敦はビクッと肩を震わせ、視線を逸らす。
「一応依頼人なんだが」
「す、すいません。もう少し納言ちゃんに似ているのかと思っていたので…」
「血は繋がっていない。それに納言は俺に似ないように育てた」
「そうですか…」
警戒しながら少しだけ式部の方に近寄る。
「臆病な猫だな」
「…人間です」
ムッとした顔で言う。
「式部ちゃん、敦君を虐めないでくれる?」
太宰はニコニコと笑ったまま言う。
「式部ちゃんさ、実年齢は幾つなの?」
「今は10歳」
「“今は”って事は前があったんだね」
「まぁな」
適当に相槌を打つ。
その会話を聞いていた谷崎が躊躇いながら問う。
「その、前ってどういう事ですか?」
「そのままの意味だ。分かりやすく言うと生まれ変わり」
「生まれ変わり?」
話す度に自分の住んでいる世界と懸け離れた話になっていく。
「俺の異能は生への執着が異様に強い。そのお陰で肉体が死んでも魂だけは残っている」
「でも今回は肉体も生き返らせたよね」
「今回みたいに撃たれる位なら蘇生も可能だが、真っ二つにされるとその身体は使えなくなる」
「…魂だけ分離するって事ですか?」
敦も興味深そうに聞く。
「そんなトコだ。それで次の媒介が見つかるまで彷徨って、見つけたらそこに入る」
「それをずっと続けてるんだね」
太宰が納得したように頷く。
「それで、式部ちゃんの意識が生まれた時…異能が現れたのは何時頃?」
「それは良く覚えていない。取り敢えず紀元前なのは確かなんだが…」
「紀元前?!」
今まで黙って聞いていた国木田が声を上げる。
「お前、ちゃんと意味を分かって言っているのか?2000年以上の記憶を持つ者など…」
「この世に居てはいけない」
太宰が静かに言葉を継ぐ。
国木田が落ち着くのを見てから笑顔で質問を続ける。
「式部ちゃんこの身体になる前は何年生きてたの?」
「幕末頃に死んだから…150年位か」
「150歳?!凄いお年寄りじゃないですか!」
敦が大声で言う。
「見た目は異能で幾らでもいじれるから生活に特に支障は無かった。その前は200年生きていたからそこまで驚く歳じゃない。1番長い時は5、600だったか?」
「ろ、600…」
もう目を回す寸前だ。
「って事は江戸時代真っ盛りだね!気に入ってたの?」
「政権が移るまでは生きていようと思ったんだ。大分長引いたが」
太宰は動揺する事なく、楽しそうに話す。
「貴様何処のペテン師だ?精神病院でも紹介してやろうか」
「残念だが嘘偽りのない真実だ。昔の奴らは直ぐ神だとか妖怪だとか言って信じたのに最近の奴らは面倒だな」
ナオミがそっと机にお茶を置く。
「国木田君、こういう時は順応性が大事だよ?もっと自由に生きなきゃ!」
「お前ほどになると加減も必要だろう」
睨みながら言う。
「あ、そうだ。式部ちゃんってどんなお仕事してたの?学者とか?」
「色々やったからな。学者も勿論だが医者、音楽家、大工、作家、水商売、料理人、役者、絵描き、警察、脚本家、用心棒、あとは…」
「す、凄い量ですね」
職業名をつらつらと並べていく式部を見て敦がボソッと呟く。
「数千年も生きていればな。因みに生まれ変わりの時に5回に1回位の割合で女になる」
「じゃあ今の姿はレアなの?」
「そういう事になるな。男の姿に慣れ過ぎてまだ落ち着かない」
自分の手を見ながら言う。
「1番長くやった職業って何ですか?」
谷崎が問う。
「…その話なら名探偵が良く知っている。会った事があるから」
「乱歩さんが?」
乱歩は何時も通り気怠そうに椅子にもたれて足を組み、欠伸をしている。
「乱歩さん、会った事あるんですか?」
「あるんじゃないかなぁ」
駄菓子を手に取っていじる。
「お願い出来ますか?」
太宰が丁寧に言う。
「良いよ。僕今機嫌良いし」
ヒョイっと立ち上がって式部に近寄る。
「性別も年齢も変わると確信は持てないよ?」
「大丈夫です」
「ふぅん…」
乱歩は暫く式部を観察してからあぁ、と納得したような声を上げる。
「そこの棚の1番上、右から4番目」
「はい」
国木田が指定された所のファイルを取ってくる。
「32ページ」
ページをめくる。
「会った事あるみたいだね。君の死体と」
そこに書かれていたのは、無残に切り刻まれて原型をとどめていない何かの死体だった。
「うっ…」
敦と谷崎が後ずさる。
「おやおや、これまた随分と派手ですねぇ」
挟まれていた写真を見る。
「殺人だとか騒いでたけど、唯の自殺だったよ。僕も手足と胴体、あと首まで斬った自殺なんて初めて見たけど」
「これで自殺なんですか…?」
写真に写っている死体は、身体をくまなく斬りつけられて更に腕、足、胴体、首が切り離されている。
「これ、途中で死んだりしないんですか?」
「致命傷になったのは首の両断。その他の部位を切ってる時は生きているみたいだよ」
乱歩はファイルを取って適当にめくる。
「指紋もグチャグチャでさ、歯型で身元を調べたらびっくり仰天」
めくったページを見せる。
「殺し屋さんだった」
そのページには被害者の身元が書かれていた。
「本名不明、偽名は神代 御影。通り名は朧。腕の立つ殺し屋で監視カメラなどにも一切姿が映っていない。彼を見たものも全員始末されてしまう為目撃者もいない」
太宰が声に出して読み上げる。
「コレが式部ちゃん?」
全員が式部を見る。
「別に隠す意味も無い。俺が1番長くやっていた職業は殺し屋だ」
部屋が静まり返る。
目の前にいる少女が元殺し屋?なら今でも危険なのではないか。異能力も持っている。すぐに離れるべきだ。
そんな言葉が脳裏をよぎった。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.92 )
- 日時: 2017/05/28 13:31
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
59間目
その沈黙を1番に破ったのは太宰だった。
「式部ちゃん、この自殺どうやったの?」
「は?」
国木田が眉間に皺を寄せる。
「貴様、話を聞いていたのか。目の前にいるやつは元殺し屋だぞ」
「殺し屋がどうとかじゃなくってさ、こんな素敵な死に方思いついても出来ないよ!まず痛いし苦しいし」
「ならお前は尚更だろう!」
声を荒げる国木田を見て小さく笑う。
「じゃあ何でこんな死に方したのか聞かないの?」
「死に方…?」
もう一度写真を見る。
身体には無数の傷、周りにも大量の血が飛び散っている。切断された手足と胴体に首は無理矢理捻り切られたような切断面だ。首だけが鋭利な刃物で切られたかのように綺麗な切り口になっている。
「この物凄ーく痛そうな死に方。思いついても実行しないでしょ」
「言われてみれば…」
与謝野が考え込む国木田の手から写真を取る。
「専門家の意見を述べるとすれば、この切り口は肉を半分と骨を切ってから自分で捻り切った形だ。妾の解体の方が痛くないね」
「あ、あれより痛いってどんな死に方ですか…」
そう言った敦の横で谷崎が想像上の痛みに苦しそうな表情を浮かべる。
「で、何でこんな死に方を?もっと楽な方法あったでしょ」
「…理由は幾つかある」
机に置かれたお茶を手に取り、眺める。
「1つは西暦2000年だったから死んで区切りをつけようと思った。1000年の時も同じ理由で自分の首をはねた」
「へぇ、楽な死に方だねぇ」
少し皮肉っぽく言ったその言葉も無視して続ける。
「もう1つは、その時やっていた殺し屋から完全に足を洗おうと思った。きっかけは数十年前に会った1人の女性の死。納言の親戚だ」
「納言ちゃんの…」
敦は事務室の扉を見る。
納言は今、鏡花と事務室で残った仕事をこなしている最中でこの話は聞いていない。
「どうせだから今まで殺した人数分自分に傷をつけようと思った。そいつらの首をはねた鎌で」
太宰は前に見た持ち手に大量の血がついた大きな鎌を思い出す。
「まぁそれだけだと死ねないのは知ってたから、斧で手足と胴体を半分切ってから捻り切った。順番は足、胴体、腕の順で最後の腕は扉に挟んで引き千切ったって方が正しいな」
写真の中で右腕と見られる部分が扉からはみ出ている。
「それでも死ねないから流石に呆れたな。最後は異能で首を斬って終わり。結構痛かった記憶はある。今まで殺した奴等に比べればそこまで痛い訳じゃないかもしれないが」
「充分痛いと思うよ。それで、その身体中の傷は今までの分の償いだったって事?」
「簡単に言えばな。深さは全て4センチで統一してある」
「変な所正確だね」
太宰と乱歩以外はもう誰も笑っていない。
「乱歩さん、これってどうやって自殺と判断したんですか?首を切るのに能力使ってますけど」
「前からこの殺し屋の事は知ってたからね。異能の事も把握してたよ」
「成る程。流石乱歩さんです」
「当たり前だろ?僕は名探偵なんだから!」
そう言ってニッと笑う。
「あ、あの…」
「なんだい?敦君」
「この写真だと顔が分からないんですけど、生きていた頃の写真とかって残ってないんですか?」
「確かに…例えば車に乗るなら免許取る時に証明写真も撮るはず。それならデータとして残っているかもしれませんね」
谷崎が頷きながら言う。
その言葉には式部が答えた。
「残ってない」
「え?」
「写真は1度も撮らなかった。車なんかは死体から免許証を奪ってそれに化ければ良かったし、何より移動手段は徒歩か異能だ。海外もパスポート無しで行ってた」
敦と谷崎がポカンと口を開ける。
「流石腕利きの殺し屋。徹底してるね」
「ここまでしてるのは俺くらいかもしれないな。元々写真が好きじゃないのもあるし」
「好きじゃないの?」
「出来るだけ後世に俺の姿を残したくない」
お茶を一口飲んで机に置く。
「本当に生まれ変わるとしたら、お前はどうやって産まれているんだ?親がいない事にはならないのか」
「おや?国木田君生まれ変わるって認めたの?」
「でないと話が進まんだろう」
少し面倒臭そうに言う。
「生まれ変わる時の身体はそいつの未来を見て決める」
「未来?」
「幸せな未来を奪うのは気がひけるからな。出来るだけ可哀想な奴を選んでいる」
ポケットから小さな紙を2枚取り出して太宰に渡す。
「俺が今使ってるこの身体は子供を産んで1歳まで育ててから売るとかいう人身売買の手口を使う者から産まれ、その後虐待に合う未来があった。俺が入るには丁度良い」
「悪趣味だねぇ」
「そんな訳あるか。生まれ変わってから6歳頃までは前の記憶が曖昧になるように調節してあったからあの時は本当に怖がってたからな。1歳の頃に暴走するようにもしておいたが、その所為で今も残ってる」
式部は静かに立ち上がる。
「気が向いたらまた来る。ナオミに茶の礼を言っておいてくれ」
「待って」
立ち去ろうとする式部の服を太宰が掴む。
「なんだ、まだ質問か?」
「最後に1つだけ。どうして殺し屋をやっていたの?」
真剣な目で見つめる。
式部は少し間を空けてから無表情で答えた。
「好きだったから。人殺しが」
そう言ってから手を軽く振り払って消える。
太宰は行き場の無くなった手を見つめて動かない。
「太宰さん…?」
敦が心配そうに呼びかける。
「大丈夫、私散歩してくるね」
ニコッと笑って机に何かを置き、探偵社を出て行く。
全員が少しの間扉の方を眺める。
「ねぇ国木田ー」
「は、はい。なんでしょう」
急に乱歩に名前を呼ばれ、反応が遅れる。
「駄菓子の備蓄切れちゃった」
空になった菓子箱を振りながらそう言った。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.93 )
- 日時: 2017/05/28 20:42
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
60間目
カン…カン…
階段を上がる音が小さく鳴っている。
「〜♪」
足音に合わせて口笛も混じり、音が大きくなっていく。
カンッ
足音が止まり、鍵を回す音が鳴る。
扉を開けると中はこじんまりとした1LDKの部屋。黒を基調とした家具や装飾でシックにまとまっている。
男は壁にコートと帽子を掛け、大きなソファに腰掛けて持っていた缶コーヒーを開ける。
「はぁ…」
小さな溜息と共に缶コーヒーを飲み干した。
空になった缶を軽く潰してゴミ箱へ放り投げ、小さな窓から灰色の景色を眺める。
「路地裏の統治…ねぇ」
黒ずくめの男…中也は、その景色を見ながらもう一度小さく溜息を吐いた。
中也は首領から1つの命を受けていた。
そろそろ路地裏もマフィアの監視下に取り込みたい為、まずは様子を探ってくれとの事。
その命を果たす為にまずは路地裏の1番端にあるこのアパートの一室に住み込む事になったのだ。
「俺が外部から、折口が内部から。それで路地裏を徹底的に監視する…」
首領の命令を確認するように呟き、また溜息を吐く。
中也はこの作戦に乗り気ではなかった。
路地裏の統治を完全にする為には人数すら把握できていない住民の承諾、そして土地を管理する為にこの薄暗い灰色の場所に部下を数人入れなければならない。
ここの立地はお世辞にも戦闘に向いているとは言えない最悪な場所だ。何故首領は此処を手に入れたがるのかも理解出来ていない。
そして何より…式部がいる。
異能無しであの戦闘力。異能があっても暴走時には海が割れる程の危険な物。もしも力尽くで奪うとしたらこちら側にも甚大な被害が出るのは目に見えている。
「非合理的では無いんですか。この作戦は」
先程も首領に対して言った言葉をもう一度呟きながら、窓の外を眺めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「国木田さん、これって太宰さんの書き置きですよね」
敦は机に置かれたメモを手に取る。
「なんと書いてある」
「えーっと、あれ?この字って太宰さんの字じゃない…」
「なに?」
敦が持っているメモを受け取る。
そこに書かれた文字は何時もの上手いのか下手なのかわからない太宰の字ではなく、最近良く見かけているあの達筆な字だった。
「依頼人の字か…」
「それにしても〈この範囲を封鎖しろ〉ってどういう事でしょう?」
「裏を見ろ」
クルッとメモを返すと、そこには簡潔に書かれた地図と赤い丸が書かれていた。
「この範囲か…何をするつもりだ?」
「結構広いですね。この地図って何処のでしょう?」
「恐らく先程通った路地裏付近だろう。東側に海が見える。灯台も建っているからそれを目印に見れば良い」
「え?どれが灯台ですか?」
地図記号の読めない敦は頭の上にハテナマークを浮かべる。
「これだ。場所は分かるが目的が…」
「どーせそこが危険なんでしょ」
乱歩が詰まらなそうに言う。
「乱歩さん。危険とはどういう事ですか?」
「そんなん知らないに決まってんじゃん。まぁやるなら早めにした方が良いと思うよ」
「分かりました」
サッと礼をして振り返る。
「敦、谷崎、地図の場所へ急ぐぞ」
「はい!」
「分かりました」
3人は少しの荷物を持って出掛ける。
「本当に知らないんですか?」
3人が出て行った後に賢治が問う。
「知らないよ」
ラムネを飲みながらキッパリと答える。
「もしも知ってても、1番よく知ってる人が現場にいるから僕が言う必要は無いね」
そう言って1枚の紙と大きめの財布を渡す。
「駄菓子買ってきて」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
路地裏の港近くで太宰は辺りを見渡しながら歩く。
手に持っているのは先程式部に渡されたメモの1枚。片方は探偵社に置いて任せてきた。
太宰が持っているメモに書かれているのは時刻の書かれた簡単なメモ書き。
〈19時頃に暴走が起きる。太宰以外は近づけるな〉
時計の針は18時50分を指している。
先日手に入れたポートマフィアの資料にも書いてあったその言葉。
もしもそれが本当ならば先程の地図に書かれた赤い丸の規模では足りない筈。なのに式部は範囲を指定した。
その理由を聞く為に地図の赤い丸の中心へ向かっていた。
「式部ちゃーん。いないのー?」
周りの灰色の壁に太宰の声が吸い込まれていく。
「しーきーぶーちゃーん」
殆どやる気の無い声で呼びかける。
ガスッ
太宰の足に何かが当たった。
「あ、いた」
あぐらをかいた式部が片目だけ開けて太宰を見る。
瞳はもう既に茜色に染まっていた。
「そんな怖い顔しないでよ。何してるの?」
「…1つ思い付いた。異空間に飛ぶ」
「異空間?」
安吾に聞いた話を思い出す。
異空間は主に物の収納に使っている、それ以外の使い道は聞いた事がないと言っていたが人間も入れる事が出来るのか。
太宰の考えを察したのか、何時もより小さな声で話す。
「何時もなら人の移動なんて余裕なんだが、暴走直前だと異能のコントロールが出来ない。面倒だからこの辺りごと移動する」
「それで、赤い丸の所に近寄るなと」
「分かりやすい目印も付くからまぁ近寄らないだろう。お前だけは運べないからいても平気だ。安全は保証しないが」
太宰は納得したように頷いて続ける。
「成る程ね。因みに此処には誰でも入れるの?」
「中から出るのは困難だが、外から入るのは虫でも出来る。お前なら出るのも楽だろう」
そこまで言ってからまた静かに目を閉じる。
それを黙って見つめていると、周囲に変化が現れた。
「空が…赤い?」
空だけではない。遠くの建物や景色、海も全てが赤く染まっている。
すぐに分かった。半透明の赤いドームで囲われていたのだ。いや、海の底の方の状態から見ると赤い球体と思われる。
「コレが目印か。分かりやすいね」
ふと、5、6年前の記憶が蘇る。
同じように路地裏の方に赤い球体が浮かんでいた。それは周りの建物にもかかっているように見えたが、中身は何も無かった。
あれが今出ている球体と同じものだとしたらこの中身が全て異空間に移動する。
残るのは太宰のみ。つまり、地面が移動することによって太宰の立っている場所には地面がなくなる。
時計を見る。18時58分。
「またね、式部ちゃん」
半分祈る様な気持ちで別れを告げ、足早に球体を出て行く。
太宰が球体を出た数秒後、その中身は一瞬にして消失した。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.94 )
- 日時: 2017/05/30 20:24
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
61間目
側に置いてある無線機を取って波数を合わせる。
少しした後ピッという音と共に雑音が消え、代わりに男の声が聞こえる。
『やぁ、中也君か。どうしたのだい』
「路地裏に赤い球体が現れました」
間を空けずに今の状況を簡潔に述べる。
『此方からも見えるよ。数年前にも同じものを見たよね』
「はい。以前と同じく内部は何もありません。そこにあった建物や地面も失くなっています」
赤い球体の上に灯台の頂上部が乗っている。
主な部分は削り取られており、球体が解除されれば転落するだろう。
『少し前まではどうだった?』
「球体の中央付近に2つ人影が見えました。片方は座っている様でよく見えなかったですが、もう片方は恐らく太宰かと」
無線機を持っていない方の手を握る。
「内部が空になる数秒前に球体から出たのを確認しました。10分程前から周囲は探偵社に閉鎖され、中に入った者はいないようです」
『ほぅ、では引き続き監視してくれ給え。私は少し急用が出来たからこの事は中也君に一任するよ』
無線機の奥からエリスの駄々をこねる声が聞こえる。
「了解しました」
そう答えて直ぐに無線機は切られた。
「あの糞鯖…また何か仕出かしやがったな」
眉間に皺を寄せて呟きながら帽子を被り、壁に掛かっているコートを手に取る。
無線機をポケットに突っ込み、部屋を出た。
〜数十分後〜
赤い球体は消えず、周りの警戒も解ける気配はない。
「一体何時まであるんだこの球体は…」
「国木田さん!」
少し離れた所から敦が走ってくる。
「なんだ敦。あまり持ち場を離れるな」
「太宰さんから伝言を頼まれまして…」
国木田は顔をしかめる。
「太宰が?あいつ今まで何処にいた」
「僕の所に来る前は谷崎さんの所に居たそうですけど、今は僕の持ち場を代わってもらっています」
「あいつが此処に直接言いに来れば良いだろう」
「国木田さんに会うと説教が始まりそうで嫌なんだそうです」
それを聞き、国木田の額に青筋が浮かぶ。
「敦、お前は此処にいろ。行ってくる」
「え?あ、伝言です!そろそろ球体が消えるから少し離れて待機って言われました」
「分かった。お前も気を付けろよ」
そう言って足早に去っていく。
少し歩くと太宰が能天気に手を振っているのが見えてきた。
「くにきーだくーん!そんな怖い顔してどうしたのー?」
ニコニコした顔で呼び掛けている。
国木田は駆け寄って思いっきり殴る。
拳は当たらず、太宰が乱れたスクリーンのようにぼやけていく。
「いやぁ谷崎君に頼んでおいて正解だったよ」
直ぐ横から声が聞こえる。
「国木田君はきっと話す前に殴ると思っ」
ゴスッ!
「そんなに俺の説教が受けたいか」
「痛い!ほら当たったじゃないか。ね、谷崎君」
建物の陰で谷崎が申し訳なさそうに立っている。
「太宰、今まで何処にいた」
「この辺りの安全確認。海の所とか凄いよ?水ごと切り取られてるもの」
「この球体の正体は知っているんだな」
太宰の話を無視して問う。
「勿論。式部ちゃんが作った場所だよ。空間転移だってさ」
「空間転移?」
「そのまんま異空間に飛んじゃったって事。異能力の暴走で周りに出る被害を最小限に抑えた結果だそうだ。暴走は数十分で終わるそうだからそろそろ帰ってくるよ」
国木田は太宰を軽く睨んだ後、大きめの溜息を吐いて諦めたように球体を見た。
数分後、赤い球体の色がゆっくりと紫色に変化していく。
「帰ってくる合図かな?」
そう言った直ぐ後、球体の内部に大量の瓦礫が現れた。
中心辺りには何か黒い物も見える。
瓦礫の出現と共に球体は消え、上に乗っていた灯台の頂上部やビルの屋上部が降ってくる。
「うわわっ!」
敦は急いで瓦礫から離れ、降ってくる物を回避する。
「こりゃあまた随分と派手だねぇ…どれが地面だったかわからないよ」
瓦礫の方に歩きながらふと遠くを見る。
少し固まった後よく分からないジェスチャーをし、また瓦礫の上を歩き出す。
「敦くーん!ちょっと来て!」
「は、はい!」
瓦礫だらけで歩き難い地面をなんとか進んで太宰の所に向かう。
「どうしました?」
「此処の瓦礫退かしてくれない?そしたら此処に置いて」
「あ、分かりました。えっと…」
敦は腕を虎化し、軽々と瓦礫を持ち上げる。
そのまま言われた通りの場所に置く。
「これでいいですか?」
「じゃああとこれも」
先程よりもふた回りほど大きな瓦礫を指差す。
「よい…しょっ」
軽く弾みをつけて持ち上げる。
「ありがと〜そこ置いといて」
お礼を言いながら瓦礫を退かしてできた窪みに入り、何かを引っ張る。
「よっ」
出てきたのは包帯でぐるぐる巻きにされた何か。
「うわ、結構奥で引っ掛かってる…」
窪みから顔を出して辺りを見回す。
「そこもお願いできる?」
「ここですか?」
「そうそう」
指定された瓦礫を持ち上げ、指定された位置に退かして置く。そんな作業を何回か続けるうちに、足場が不安定になっていく事に気づく。
「うーん、限界かなぁ。敦君、そこの瓦礫少しだけ持ち上げて」
「少し…こうですか?」
一際大きな瓦礫を少しだけ浮かせる。
「オッケー。そのまま動かないでね」
太宰は瓦礫の中から何かをズルズルと引き出していく。
「よし、もう降ろしていいよ」
「はいっ」
あまり振動を与えないようにそっと下ろす。
「お疲れ様〜お陰で救出も大成功だ」
何かを担いで窪みから出てくる。
「何ですか?それ」
「式部ちゃん」
「えぇ?!式部さん?!」
「うん」
太宰は式部を背負い直し、国木田達のいる方に歩く。
「たっだいま〜」
「ん?依頼人か?」
「この子の異能力の暴走だからね。特務化に後始末の要請しといて」
そう言いながら式部を離れたところに座らせる。
「連れて帰らないんですか?」
「元々はここの住人だからね。気絶してるだけだし問題ないよ」
ポケットから小型の発信器を幾つか取り出し、フードやポケット、マフラーの間などに忍び込ませる。
最後にカプセルを口の中に放り込み、無理やり飲み込ませる。
「何してるんですか?」
「発信器をつけてるだけだよ。これも依頼のうちだね」
そう言って式部から少し離れる。
「太宰さん」
谷崎が携帯を持って駆け寄る。
「特務化なんですが、路地裏の担当はもう決まっているからそちらに任せろと言って来てくれないンです。どうしましょう?」
「担当?」
太宰は少し考えてから思い付いたように言う。
「谷崎君、電話の中で式部ちゃんの名前出した?」
「いえ、出していませんが…」
「じゃあ紫 式部さんの暴走ですって言ってみて。その後すぐ私に代わってくれれば良いから」
「わ、分かりました」
保留中にしていた電話を慌てて掛け直し、謝罪と共に詳細を伝える。
暫くした後携帯を太宰に差し出す。
「もしもーし」
『式部さんが其処にいるんですね?』
電話の奥から少し強張った声が聞こえる。
「やっぱり無断でいなくなったの?私が路地裏に行って少しした頃に来たのだけど」
『路地裏で爆発が起きてから少ししていなくなりました。途中から発信器の反応はありません』
「こっちでは一回死んだ式部ちゃんを連れて帰って治療した後少し情報を貰ったよ」
『…簡潔に述べ過ぎて要点が抜けています』
溜息を吐いてから続ける。
『とにかく、今から其処に向かいますから貴方達は戻っても結構です。お疲れ様でした』
ブツっと電話が切れる。
「どうでした…?」
「来てくれるってさ。電話ありがとね」
「来てくれるんですか?!凄いですね…」
「私の知り合いだったから事情を述べたら承諾してくれたよ。さ、帰ろ帰ろ〜」
大きな欠伸をして帰路に着く。
「特務科にも知り合いが…太宰さんって何者なンだろう?」
飄々と歩いていく太宰の背中を見つめながらボソリと呟いた。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.95 )
- 日時: 2017/05/31 20:28
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
62間目
「あぁ糞っ!気付きやがった…」
灰色の建物の屋根に登って球体を観察していた中也が悪態をつく。
いきなり球体が消えたと思ったら物陰から太宰が出て来て此方を見たのだ。
少し固まってからジェスチャーを送ってくる。
『路地裏を手に入れようとするのは駄作だね。式部ちゃんが怒るよ』
『後の事は任せて子供は家に帰りなさい!』
『君の訃報を何時までも請い願っているよ』
中也の額に青筋が浮かぶ。
『誰が子供だ!この失格人間!』
『前半の言葉は首領に伝えておく』
『手前もさっさと帰って死ね!青鯖野郎!』
ジェスチャーでそう言ってから中指を突き立てる。
太宰はそれを見て笑顔で小さくジェスチャーを送る。
『蛞蝓って塩かけられたら縮むけどさ』
『もしかして塩かけられたの?縮んだよね』
最後に親指で首の前に線を引き、さっさと歩き始める。
足元の地面がめり込み、周囲の石ころが浮き上がる。
「遠いからって好き放題しやがって…次会ったら殺してやる!あンの糞野郎!!」
近建物を破壊しそうになったところでやっと異能が収まり、深く長い深呼吸を繰り返す。
暫くして落ち着きを取り戻してから無線機を取り出して波数を合わせる。
『私だよ』
「中原です。前回の球体とは異なり、球体の内部が瓦礫になって戻ってきました」
そういうと首領は静かに溜息を吐く。
『みたいだねぇ。前は中身がまるまるそのまんま帰ってきて何事も無かったかのように戻ったのに』
「はい。瓦礫の様子から見るに、恐らく式部の異能で切り裂かれたのかと思われます」
『ふむ、成る程ね』
少しの沈黙のあと、中也は低めのトーンで話す。
「監視が太宰にばれました」
『ほぅ?流石太宰君だね。やはり元相棒は仲が良いねぇ』
「忠告を受けました。路地裏を奪うのは駄作だと」
電話越しでも分かるくらいに声が固まる。
『…分かっているよ。だからこそ手に入れなければならない』
「そうですか…」
『君はこの作戦に反対かね?』
少し威圧的な、返事は1つしか許されない声。
「いいえ、そんな事ありません」
『それなら良かった。ところで、今使っている部屋なんだが』
大袈裟に明るい声で話題を変える。
『家賃の方は気にしないで大丈夫だからね』
「分かりました」
『では引き続き宜しく頼むよ』
「はい」
無線機からは雑音のみが流れ出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ガチャンッ
鉄製の扉が何時もよりも乱暴に閉められる。
「…それで、言い訳はありますか」
「特に無い」
暴走の後気絶していた式部を特務化が捕え、この隔離室に鎖で固定している。
無論そんなことをしても式部は逃げられるのだが取り敢えずの保険として椅子と一緒にグルグル巻きにしてある。
「貴方は特1級危険異能者です。あの“山火事”が起こった日から自由な活動は許されません」
「だか俺を縛る事は不可能。だからその代わりに路地裏の統治をやっている」
「えぇ、路地裏なら目立たず何か諍いがあっても気付かない上気付いても誰も気にしませんから」
安吾は大きな溜息を吐く。
「しかし、いくら特務科でもあの騒ぎで何もなかったと揉み消す事は出来ません。太宰君達探偵社が周囲を封鎖した為近づく者はいませんが、あの赤い球体は流石にアウトです」
「ああいうの見つけたら近づきたくなるからな」
平然と言われた言葉に眉を寄せる。
「…分かっててやったんですか?」
「まぁ半分な。ちょっとした実験がてらって感じか」
「実験?」
「あぁ、封鎖した状況でも寄ってきて野次馬が出来た。その範囲が知りたかった」
何時の間にか腕の鎖は解け、ポケットからメモ帳と鉛筆を出す。
「球体の範囲が此処。その周りの数メートルを探偵者が封鎖したが、いなかったら触ってみるやつも出てくるだろう。子供なら中に入る奴も出てくる」
暫くの間何かを書き、同じ物をもう一枚書くと安吾に渡す。
「次に球体が出る時には危険だという忠告だ。周囲を固めて安全を確保してくれ」
「何言ってるんですか。貴方は今上から処刑命令も来てるんですよ」
サラリとそう言って書類を見せる。
「残念だが電気椅子やらマシンガンやらの玩具だと俺は死なない。太宰に詳細は聞いただろ」
「はい。ですから少し大掛かりな処刑の準備をしますので、2日程待ってもらいます」
「大掛かりな?」
式部がピクリと反応する。
「どんな物だ」
「簡単に言えば刃の多いギロチンです。太宰君に聞いたところ、君は全身を切り刻めば死ぬそうなので」
「成る程な…」
少し考えてからまたメモ帳に何かを書いて破り取る。
「切り落とす箇所は此処で頼む」
「…随分おかしな注文ですね」
メモを受け取り、ファイルに挟む。
「では2時間後にまた様子を見に来ますので。その時に此処にいるならばその間は何処に行っても構いませんよ」
そう言って安吾は扉を閉めた。
「2日間か…」
そう呟いて自分を縛っていた鎖を外す。
外した鎖をポケットに押し込むと、静かに吸い込まれるようにして入っていった。
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