二次創作小説(紙ほか)
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- ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
- 日時: 2021/09/10 03:28
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。
初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。
コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!
※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。
・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。
・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。
・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。
2016/12/30 閲覧数100突破!本当に感謝です!
2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!
2017/02/09 閲覧数300突破!唯々感謝です!
2017/03/01 閲覧数400突破!感謝感激雨霰です!
2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!
2017/04/23 閲覧数600突破!泣くほど感謝です!
2017/05/13 閲覧数700突破!感謝しすぎで死にそうです!
2017/05/28 閲覧数800突破!本当に有難う御座います!
2017/06/21 閲覧数900突破!物凄い感謝です!
2017/07/02 閲覧数1000突破!信じられないです…有難う御座います!!
2017/07/18 閲覧数1100突破!有難う御座います!
2017/08/03 閲覧数1200突破!感謝ですっ!
2017/08/30 閲覧数1300突破!有難う御座います有難う御座います
2017/09/24 閲覧数1400突破!本っ当に有難う御座います!
2017/11/03 閲覧数1500突破!感謝しかないです!
2017/11/29 閲覧数1600突破!本当に感謝します!
2018/01/08 閲覧数1800突破!1700飛ばしてすみません!有難う御座います!
2018/01/13 閲覧数1900突破!年始効果でしょうか…有難う御座います!
2018/01/27 閲覧数2000突破!こ、これは…夢でしょうか…?!本当に、心から感謝致します!!
2018/03/07 閲覧数2100、2200突破!1つ逃してしまいました…ありがとうございます!
2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!
2018/04/17 閲覧数2400突破!間に合わないのがとても嬉しいです…!
2018/05/13 閲覧数2500突破!いつの間に…?!有難う御座います!!
2018/05/20 閲覧数2600突破!とてもとても!感謝でございます!!
2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!
2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!
2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!
2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。
何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!
2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.26 )
- 日時: 2016/12/27 15:43
- 名前: ルイージ (ID: f2y8EREE)
いいですよ
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.27 )
- 日時: 2016/12/29 15:52
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
13間目
「グッドモーニン♪御影君」
「……」
御影は無言で二度寝に入る。
目を覚ましたら突然目の前に太宰がいたのだ。現実から目を背けたくなるのも頷ける。
「二度寝は良くないよ?折角私が珍しく早起きして会いに来たのにぃ」
わざとらしく頬を膨らませる。
「…朝から居るなんて想定外だ」
「そりゃあ良かった!」
太宰の言動を無視して目を開け、立ち上がる。
太宰が此処に通い始めてから3日。何時も通りの他愛ない会話が続く。
「…今の気温分かるか?」
「ん?おぉ!0度だよ!朝早く起きた甲斐があったね!」
「凍死なら他所でやってくれ。死体始末が面倒」
そう言いながら棚を開ける。
「何探してるの?」
「包帯」
棚の中から包帯を取り出し、着ていたコートに手をかける。
「向こう向いてろ」
「あ、着替えるの?でも異性じゃないんだし気にしないでも…」
「人には見られたく無い物もある」
そう言って御影は背を向け、コートを脱ぐ。
と、後姿だけでも殆どが包帯に包まれているのがわかる。
「包帯も変えるから見るなって言ってんだ。察しろ」
「はーい」
言われた通りに後ろを向く。
「じゃあ私も腕の包帯巻き直そうかな〜」
シュルリと包帯を解き、馴れた手つきで巻き直す。
「御影君は包帯何ヶ所あるの?」
「大きく分けて二ヶ所」
「へー!私は腕と首と脚だから五ヶ所だけど、御影君の方が包帯の量は多いと思ったんだよね。見間違い?」
太宰は自分の包帯を確認しながら言う。
「上半身と下半身で二ヶ所。ヘソの所で切れてる」
「なんだ、やっぱりミイラ男だ」
ふふっと笑う。
「寒くないの?」
「別に」
無感情な声で答える。
「本当?私、ココで着替えるとか考えられないよ。寒くて死にそう」
「なら死ねば良いだろ」
淡々と述べて太宰の心を抉る。
「うわっ!人に言う言葉じゃないよ!」
「自殺愛好家は人じゃない」
ズバッと言い放つ。
御影はコートを羽織り、太宰に言う。
「終わった」
「お、私も丁度終わったよ」
ニコリと笑いながら太宰は振り返り、包帯を撒き直した腕をヒラヒラとさせる。
「ほんっとに寒そうな格好だよねぇ」
「寒くないんだから別にいいだろ」
「じゃあ暑いの?」
「暑いわけないだろ」
その答えに太宰は首を捻る。
「うーん、何でだろ…もう神経が麻痺してるとしか思えないね」
「正解」
「へ?」
御影はスタスタと歩き、 壁に手をつける。
異能力【源氏物語】
壁に丁度御影が通れる程度の穴が開き、向こう側に賑やかな市場の景色が見える。
「少しの間留守を頼む」
「ちょ、ちょっと待って?神経が麻痺って」
「じゃあな」
御影が穴を通り抜けると、穴は静かに閉じた。
「…便利な異能力だなぁ」
〜30分後〜
先程の壁にまた穴が開き、御影が出てくる。
「おかえり〜」
穴を閉じ、大きな荷物を引きずる。
「…お前、朝食は?」
「もちろん食べてないよ!」
「ふぅん」
ぽいっと小さな袋を渡される。
中身を見ると、幾つかのサンドイッチが入っていた。
「売れなかった分だ。タダでやるよ」
「ありがと!」
袋を開け、パクリと一口食べる。
「あ、そういえばさ」
「なんだ?」
「神経が麻痺してるってどういう事?」
モグモグと食べながら言った太宰が問う
御影は少し考えてから徐に棚からカッターを取り出し、コートをまくって腕を出す。
ザクッ!
「っ?!」
「こういう事」
滴り落ちる鮮血が、白い包帯と溶けかけの雪を緋色に染めていく。
「深い傷だと流石に痛いけどな。これ位は何も感じない」
「驚いた…本当に痛くなさそうだ」
太宰は口を開けたまま固まる。
「それと、あんたらは勘違いしているみたいだが、俺は女だ」
「…えぇ?!」
少し間が空き、ガタガタっと音を立てて立ち上がる。
「じゃあさっき言ってた見られたくない物って…」
「身体の傷も見せたくないが、異性に裸を見せるものじゃないんだろ?」
御影は淡々とした調子で喋る。
「…納言ちゃんは君の事おにーちゃんって呼ぶよ?」
「昔色々あってな。その時の名残だ。発音に謎のこだわりがあるけど」
口をポカンと開けたまま固まっている太宰を見て御影はコートに手を掛ける
「信じられないなら見るか?ついてないぞ」
「いやいやいや!なんでその証拠を見せるのに初めに脱ぐなの?!」
「それもそうだな…あぁ、ならコレはどうだ」
フードを取ってピンを取り、長い黒髪を見せる。
その姿はまさに女の子そのものだった。
「うーん…言われてみれば美人だね」
そう言いながら太宰は違和感を感じる。
何か懐かしいような、忘れているような…そんな思い。
「そうか?まぁ5、6年は髪を切ってないからな。邪魔で仕方がない」
溜息をついて髪を止め直し、フードを被る。
「えーと…なんか色々あったけど、神経で麻痺してない所とかは無いの?」
「指先と顔は大体無事だ。物書きくらいは出来る」
パッと手を広げて見せる。
「どうしてそんな怪我したの?火事で大火傷とか?」
「半分正解」
「じゃあ聞きたいなぁ。今日は探偵社がお休みなのだよ。どうせだし君の今までの人生を全部」
「俺が面倒」
「お願い、ね?私も仕事なのだよ!」
御影は面倒くさそうに溜息を吐いてから一呼吸置き、話し始める。
「…俺は1歳の頃に、異能力に目覚めた。そのまま、その異能で両親を殺した」
サラリと物騒な事を口に出す。
「人身売買の奴らに拾われたが異能の所為でなかなか売れなくてな。捨てられたりして方々を回った。あの時は小さいなりに良くやってたと思う。で、1年程した頃に、ある集団に買われた」
「その集団って…」
太宰の言葉に静かに頷く。
「異能者狩りの奴らだ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…お前誰?」
目の前の馬鹿そうな男に問う。
馬鹿そうだが背が高く、それなりに筋力もありそうだ。
「あぁ?チビの癖に一端の口は聞くみてぇだな。お前を買いに来たんだよ。異能力者だろ?」
馬鹿そうな男は眉間に皺を寄せて言う。
「そうらしい」
「ならさっさと来い。言う事聞かねえとぶん殴るからな!」
馬鹿そうな男に連れられて車に乗り、大きな館に入っていく。
長い廊下を歩いていくと、大きな部屋に辿り着いた。
「そういやお前、名前は?」
「ある」
「あるか無いかを聞いてんじゃねぇよ。若様に名乗る名前がなきゃいけねぇだろ」
それを聞き、俺は嫌々答える。
「…じゃあ、紫でいい」
「むらさきぃ?呼びにくい名前だな。他はねぇの?」
「式部」
「しきぶ…こっちも呼びにくいな。」
「文句あるなら聞くな」
「てめぇ…!」
殴られる寸前で部屋の中から声が聞こえる。
「入って良いぞ」
「…失礼致します」
大きな部屋の中に入ると、奥から男の声が聞こえる。
「其奴が言っていた異能力者か」
「はい。どんな異能力かは不明ですが、素質のある異能力だと…」
「名乗らせるんじゃ無かったのか?」
馬鹿そうな奴の言葉を遮るように言う。
「うるせぇな!今話してるだろ!」
「話してる途中に割り込むのは駄目なのか」
「当たり前だろ!…若様、すみません。何しろ売られていた物で知識が抜け落ちているのかと。」
「一つ知らないだけで勝手に決め付けるなんて馬鹿だな」
「このガキ…!」
思った事を口に出しただけで殴りかかろうとしてくる。
本当に馬鹿な野蛮人だな。
一応口には出さずに心の中で言う。
「まぁ良い。で、其方の名前は?」
「名前を聞く時には自分から名乗るのが礼儀なんじゃねぇのか?」
「おや、知識が無いわけではないみたいだな。だが、立場的に下の者から名乗るのも礼儀だ。覚えておけ」
冷たい瞳がこちらを見つめる。
「…紫 式部」
「私は井伏 鱒二、君を買った物だ。今日から奴隷のように働いてもらう」
「面倒臭い」
「てめっ!若様に向かってなんて口を…」
怒鳴る馬鹿男を片手で制する。
「正直者なのは良い事だ。だが、少しお喋りすぎるのは良くないな…」
「お前らの都合なんて知らねぇよ」
冷たい目をギロリと睨む。
「ん?其方…女か?」
「え?!」
驚いた顔の相手を睨みながら答える。
「見てわかるだろ。文句あんのか」
「…大有りだ」
若は近くに置いてあったグラスに注がれた水に、指先を少し触れる。
異能力【黒い雨】
触れた所から水が黒く変色していき、ドロリとした液体に変わる。
クイッと指先を動かすと、黒い液体はグラスから出て動き出し、一直線に向かってくる。
ドスッ!
「ガハッ…!」
みぞおちに衝撃が走り、背中が壁に叩きつけられる。
「ゲホッ…なに…」
「ほう、意識はあるか。幼い癖に中々丈夫だな」
また指先を動かすと、黒い液体はズルズルとグラスの中に這い戻り、元の水に戻った。
「おい」
低い声に馬鹿男の背筋がビシッと伸びる。
「こいつを地下に放り込んでおけ」
「はっ!ただいま!」
すぐに大男が出てきて、俺を担ぐ。
「…離…せ…!」
必死で抵抗するも、ガッチリと掴まれて身動きが取れない。
地下牢に放り込まれ、朦朧とする意識の中で幾つかの声が聞こえてきた。
「まさか女だったとはな」
「すいません、私の調査不足で…」
「お前は悪く無い。あいつらが偽の情報を流していた。今度始末するべきだな」
「では、その為の手筈を整えておきます」
「あぁ、頼んだぞ」
そんな会話を最後に、俺の意識は途絶えた。
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.28 )
- 日時: 2016/12/28 12:30
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
14間目
それからの間、俺は拷問を受け続けた。
手順は毎回同じ。白いベッドの上に寝かされて固定され、焼けた火かき棒で思いっきり殴られる。
その後はその時々によるが、ある時は鉄パイプで骨折するまで殴られ、またある時は焼けて柔らかくなった鉄を手足や首に巻かれる。
手当は不十分。死ぬギリギリの所まで痛めつけ、それを毎日続ける。
まだ自分の異能を使いこなせなかった俺は、最初の半年は毎日暴れ、喚き、叫び続けた。
俺を囲む奴等はその反応を楽しみにしているようで、俺の顔には殆ど傷を付けずにその表情を鑑賞するように見ていた。
だが途中で気づいた。そんな事をしても意味はないと。
そして残りの月日は感情を押し殺し、静かに過ごした。
そんな生活が約2年続いたある日、事件が起きた。
俺はその時、自分の命が尽きるのはそう遠く無い事をなんとなく感じていた。身体中の殆どの感覚も消え、指先の感覚が微かにあるだけ。それももう直ぐ潰されるだろう…
いつも通り手錠や鎖で拘束され、身動きの取れない牢獄の中で幾つかの声が聞こえた。
「くそっ!あいつら偽の情報を流してやがった!」
「今日仕入れてきた帰りを着いてきたらしい!こいつさえいなければ…!」
「そんな事言ってる暇はねぇぞ!しかも相手はポートマフィアだなんて…っ⁈入ってきたぞ!」
「あり得ねえ!あの扉はどんな衝撃があっても壊れないようになってるってのに!」
「お、俺は逃げるぞ!あんな奴等相手に戦うなんて命が幾つあっても足りねぇ!」
どうやら此処に敵襲が来たらしい。
ポートマフィア、か。音を聞く限り大分戦闘なれしてるな…あいつらなら此処を壊して…いや、俺には関係ないか。だが…
久し振りに、外の空気を吸いたいな…
俺はまだ自分の異能力を上手く扱えていなかったが、理屈は分かってきた。
目を閉じ、空気の膜を想像する。
そこの空間を切り裂くように水平に線をひき、同じように上にもう一箇所の線をひく。
ガランッ!
大きな音に目を開ける。
開い…た…?
目の前にあった鉄格子は、音を立てて崩れ落ちていた。その断面図は刃物で切ったように鋭い。
成功したのか…
丁度人一人が通れる程度の穴だったが、俺が出るには充分すぎる大きさだった。
人が来ないのを確認し、牢から出る。
ゆっくりと歩き出し、地上への階段を登る。
先程まで聞こえていた声は随分前に断末魔となり、今では消えて無くなっていた。
階段が終わった頃から少しずつ屍が増えていき、広い所に辿り着いた時には足元がそれで埋まっていた。
俺は何ともなしに館を歩いてみる。
館内は月光に照らされ、薄ぼんやりと光っていた。
ふと、廊下の途中にある部屋に意識がいく。
この部屋には入った事なかったな…
どうせ死ぬなら、と思いながら扉を開く。
中には壁一面の本が並んでいた。
数分の間見て回り、すぐ側に布製の袋がある事に気がついた。
少し迷った後、袋の中に欲しい本と置いてあった物を詰めていく。
何かの小説、論文、食料、日用品…
自分で持てる重さに調整し、袋の口を閉じて部屋を出る。
袋を引きずりながら歩いていくと、ある部屋から人の気配を感じた。
俺は無意識にその部屋を開ける。
中には一つの小さめのクッションと、その上に小さな子供が座っていた。
前に聞いた会話を思い出す。
最近俺が死にそうなのを見て、新しく暇潰しを探すって言ってたな。年齢は1歳で名前は…
子供の方に歩み寄ると、そいつは無邪気に笑った。
近くに名札が置いてある。
〈清少 納言〉
俺は辺りを物色し、適当な布を取る。
昔やった事があるかのように手際良く布を細長く折って簡易的な帯を作り、子供…納言を背負えるようにする。
落とさないように慎重に背負うと、背中で納言が楽しそうに笑った。
ココで自分が何をしているのかに気づく。
何故他人を助けようとしている。まずは自分が逃げるべきだろう。
そんな言葉が頭の中で流れる。
だが、何となく放っておけなかっただけだった。
コレが俗に言う母性本能って奴か…?
下らない事を考えながら部屋を出る。
廊下に転がるモノが見えないように納言に目隠しをつけた。
初めは驚いていたようだが、次第に落ち着いてきて直ぐに寝息を立て始めた。
あまり振動を与えないように歩いていると、窓から入ってくる光とは少し違った影が見えてくる。
出口だった。
ずっと待ち望んでいた外に出て、上を見上げる。
そこには、コンクリートで固められた天井とは全く違い、黒く深い闇が無限に広がっていた。不思議と懐かしい、安心する景色…
少し歩いていくと、館内の者ではない屍も混じってきた。
黒服に黒眼鏡。襲撃に来た奴らだろうか。
少し顔を上げると、何か動くものが見えた。
「…誰だ」
低く、掠れた声が聞こえる。
少し経って、それが自分の声だという事に気がつく。
俺の声より少し早く気づいていた影が顔を上げる。
「子供か。ここで何をしているんだ?」
「こっちの台詞だ」
月明かりに照らされ、影の姿が明確になっていく。
癖のついた赤茶色の髪に、薄い色のスーツ。死体から何かを回収しているようだ。
「俺は見ての通り遺品回収だ。コレが仕事だからな。で、何処から来た?」
「そこの地下」
俺はほとんど廃屋と言える程ボロボロになった館を指差す。
「地下もあったのか。じゃあそこの館の生き残りだな」
彼は脇のホルスターから拳銃を抜く。
「死にたくなかったら去れ」
照準を俺の眉間に合わせる。
殺気は感じられない。
と、そこで彼は気づく。
「背中にいるのは妹か?」
「さっき拾った」
「ならその身体中の傷は?」
俺は自分の身体を見る。
そこには、まだ完治していない生々しい傷跡が大量に刻まれていた。
「……」
答えられずに黙っていると、彼は言った。
「火傷、打撲、切り傷、痣……虐待か」
その言葉に内心驚く。が、表情には出さない。
「ココの館にはひとしきりの拷問道具が揃っていた。それでやられたんだな。お前はココの家の者ではない。背中の奴もそのために買われたんだろう」
俺は答えない。いや、答えられなかった。
正直ココまで観察眼が優れている者を今まで見た事がなかった。周りを囲んでいたのは、あの汚らわしい奴等だけだったから。
彼は拳銃を下ろし、腰に収める。
「仕事が終わるまで待っていれば飯を奢ってやる。少し待っていろ」
そう言ってまた死体を漁り始める。
俺は取り敢えずその場に座り、背負っていた納言を下ろす。
納言はまだ寝ており、小さな寝息を立てている。
そっと抱きかかえてあぐらをかいた膝の上に乗せ、目隠しを外して口元につけ、異臭を吸い込まないようにする。
…何も感じない…
子供特有の暖かさも、柔らかさも感じられない。ただ一つ分かるのはその重さだけだ。
何故か呼吸が苦しくなり、胸の奥から何かが込み上げてくる。
俺はそれをグッと堪えたまま下を向いた。
「…これ位か。行くぞ」
呼ばれたのに気付き、納言を背負い直す。
「荷物、重そうだな」
俺は特に何も考えずに話しかける。
「大人は意外と平気だ。お前も重そうだな」
俺が引きずっている荷物を指差す。
「…子供だからな」
「なるほど」
それ以上でもそれ以下でもない話が続く。
「俺の友人に会ってみるか?」
「どんな奴らだ」
「一言で言うなら…変わっている」
そこで会話が途切れる。
小さな事務所の様な建物の前で立ち止まる。
「すぐ終わるから待ってろ」
俺の頭にポンっと手を置いてから階段を上がっていく。
数分待っていると階段から彼が降りてくる。
「行くぞ」
俺が引きずっていた荷物を何も言わずに軽々と持ち上げると、街の方に向かって歩いていく。
…眩しい
「逸れたら売り飛ばされるぞ」
その言葉を聞いて、少しだけ距離を詰める。
彼にとっては慣れた道なのか、大股歩きで一度も立ち止まらずにスタスタと歩く。
子供の俺には着いて行くだけで精一杯だった。
少し歩くと人通りが少なくなり、硝子街灯の灯りがひっそりと落ちている路地に入った。
ぐねぐねと曲がる道を進んでいくと、小さな白い看板が目に付いた。
文字は掠れて読めなかったが、階段を降りていくと酒の匂いがしてきた。
青白い煙がもうもうと立ち込めている。
「ケホッ…」
「大丈夫か?」
俺が咳き込んでいると、チラリと後ろを振り返って声をかけてくる。
小さく頷くが、煙が目に沁みて視界がぼやける。
酒と煙草の煙の匂いに少しむせながら前を向く。
「やぁ織田作、子連れかい?珍しいね」
奥から明るい声が聞こえてきた。
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.29 )
- 日時: 2016/12/28 21:22
- 名前: ルイージ (ID: f2y8EREE)
「の前に名前を出すといいですよ
誰が台詞言ってるのかわからなくなるので
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.30 )
- 日時: 2016/12/29 13:58
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
ルイージ様、アドバイス有難う御座います。
ですが私の書く文章は長文ですのでセリフの前にその人物名を入れると文字数がオーバーしてしまうのです…
原作を観た、または読んだ事のある方は問題なく読めると思われますので、読みにくい場合は初めに書いてあるように御本家様のをご覧頂けると幸いです。
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