二次創作小説(紙ほか)
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- ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
- 日時: 2021/09/10 03:28
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。
初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。
コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!
※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。
・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。
・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。
・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。
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2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!
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2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!
2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!
2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!
2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。
何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!
2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.76 )
- 日時: 2017/04/29 10:39
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
45間目
地下室で2人は変わらず座り込んだまま話す。
「子供は笑った顔が1番似合う」
そう呟いて小さな欠伸をする。
「ねぇ、お兄さん本当に僕より歳下?」
「一応齢は10歳だ」
「なんかお兄さん通り越して大人って感じ」
置いてある花束から薔薇を1本ずつ取り出しながら言う。
「そうか」
「その反応も!お兄さんも今言ったでしょ?子供なら笑った顔が良いって!」
Qは自分の頬を引っ張って言う。
「…昔笑い過ぎた」
「なにそれ」
式部は言葉を選びながら話す。
「大分昔に一生分心から笑った。その後に一生分愛想笑いを続けた」
「だから笑わないの?」
「上手く笑えないだけだ」
布を縫ったところに綿を詰め始める。
「変なの」
「お前もな」
薔薇を全て出し終えやる事が無くなったQは体をつついてみたりくすぐってみたりと式部にちょっかいを出す。
式部は何も反応せず、ビクともしない。
「変なの」
式部の頭に乗っかって言う。
布を縫い止め、ボタンをつける。
「ほら」
「もう出来たの?」
「現物があるんだ。出来ない訳がない」
式部が作った人形は確かにQの持つ物にそっくりだった。
少し子供向けに改造されており、首用ギプスの所は普通の布に、角張った所は綿を詰められモコモコとした手触りになっている。
率直に言うと、可愛くなった。
「なんか…壊したくないね」
「人形はそういう物だ」
鞄の中から人形を取り出す。
「あれ?そんな鞄持ってたっけ?」
「手品」
「そんなの無理でしょ!」
「じゃあ魔法」
式部が取り出した人形はQによく似ていた。等身が低いため玩具のような可愛らしさがある。
その後に取り出したのはエリスによく似た同じような人形。更にポートマフィアの構成員を模した物が出てくる。
「あ、この人知ってる!よく遊んでくれたんだ!」
赤い髪に緑色のコート、鼻の辺りに絆創膏が貼られた人形を取って言う。
「よく一緒にいる人がこの人と、あと広津さん!」
黒髪で奇抜なヘアスタイルにマスクを付けて黒いコートを羽織った人形と、白髪に片眼鏡でスーツを着た人形も手に取る。
「この人達はセットで呼ばれてるんだよね。えーと、何だっけ?」
「黒蜥蜴」
「そうそれ!」
ビシッと指差して言う。
「皆そっくり!こっちは中也さんでこっちは芥川さんだね。これは紅葉さん。あ、レモンの人もいる」
1つずつ手に取りながら言う。
「それにしても僕のも似てるよね〜」
自分に似た人形を取る。
「ほら、ここの目なんかそっくり!」
自分の顔の横に並べて言う。
「何処で売ってるの?」
「俺が作った」
興味の無さそうな声で言う。
「え?じゃあコレ手作り?」
信じられないというような顔で言う。
「これ位なら誰でもできる」
「僕出来ないよ」
「やらないだけだろ」
Qを頭に乗っけたまま立ち上がる。
「おっとっと…」
Qはバランスを取りながらよじ登り、肩車のように乗っかる。
「すごーい!重くないの?」
「普通。あと降りろ」
「えー」
足で式部の首を絞めるようにしがみつく。降りる意思は微塵も感じられない。
「牢屋の中でも見るか」
「何も無いよー?」
式部はQを頭の上に乗せているのを気にしていないかのように鉄格子の扉をくぐる。
上から小さくいてっと声が聞こえた。
「…つまらないな」
「だから言ったでしょ」
無機質なコンクリート製の壁と床。長い鎖の付いた手錠と足枷以外には何も無い。
「欲しい物は?」
「え?うーん…」
唐突な質問に驚きつつも、少し考えてから口を開く。
「カーペットかなー、床冷たいし。出来るだけカラフルで明るいのが良い」
そう言うと、床にカラフルなカーペットが現れた。
「えぇ?!」
「他は?」
式部は特に何も動かずに立っている。
「え、えーと…壁紙も欲しい。白に黒の星と丸がついてるの」
壁の色が変わる。Qの要望通りだ。
「あとは?」
「あー…じゃあ天井も。宇宙みたいなのが良い。それに星がぶら下がってるの」
天井も変わる。
「君って魔法使いなの?」
Qが疑い深い表情で言う。
「そうかもな。で、もう無いか?」
そう問うと、先程とは違いキラキラした顔で言い始める。
「さっき見たいな人形と、カラフルなクッション!いっぱいね!それと積み木と車。あとお絵描き用の紙とクレヨンも欲しいな!」
Qが言うたびに周りに物が出てくる。
いつの間にか鉄格子の中は子供部屋のように明るく、退屈しない場所になっていた。
「わぁ〜!ココなら僕幾らでも居られるよ!いつもみたいに寂しく無いもん!」
式部の頭の上で嬉しそうにはしゃいでいる。
「これで充分か?」
「うん!ありがとうお兄さん!」
満面の笑みを浮かべて言う。
「じゃあ降りろ」
そう言うとQは、少し渋りながらも式部の肩から降りた。
「手錠と足枷つけるのは忘れんなよ」
「あ、そうだった」
人形やクッションに埋もれた鎖を辿って自分の腕と足につける。
「欲しい人形があったら鴎外に言え。売りつけておく」
そう言って扉を閉めて立ち去ろうとする。
「ねぇ、今君に言っても良い?」
「…別に良いけど」
振り返らずに立ち止まる。
「じゃあ君の人形!包帯グルグルに黒いコートと紫のマフラーね。フードは取り外し式で!」
少しの沈黙の後、式部は振り返る。
「それだけは無理。自分で作れ」
「なんで?」
不思議そうに首を傾げる。
「教えない。俺の人形が欲しいなら代わりにそれでも可愛がってやれ」
耳の上に刺さっている薔薇を指差して言う。
Qは軽くその薔薇に触れた後、納得したように頷く。
「これが君だね」
「勝手にしろ」
式部は鉄格子の前に散らかる赤い薔薇を残して帰って行った。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.77 )
- 日時: 2017/05/02 20:53
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
46間目
ビーッ!ビーッ!
警報音が鳴り響く。
「監視カメラ一部故障!」
「場所は?!」
「B3-13からB3-21まで!地下牢獄です!」
慌ただしく連絡が飛び交う。
「首領に報告しろ!ココにいる半数は様子を見に行き、安全が確認され次第復旧を!」
「了解です!」
1人は首領に電話を掛け、残った半数は他の場所に異常が無いかを調べる。
『なんだね?』
電話の向こうから声が聞こえる。
「地下牢獄の監視カメラが一部故障致しました。場所は夢野 久作の居る場所かと」
『ほぅ…異常があったら伝えなさい』
プツッ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ガチャン!
受話器を置き、机に肘をつく。
「どうせQ君が石でも投げたのだろう」
そう呟いて書類を読み続ける。
「リンタロー!外で遊びたい!」
「ごめんねエリスちゃん。今は仕事中だからまた今度」
「やーだー!」
エリスが騒ぐ様子を見て幸せそうな表情を浮かべる。
「やっぱりエリスちゃんは可愛いなぁ」
「なら連れてって!」
「あとで行くから、ね?」
「今すぐが良いの!」
エリスが駄々をこねていると、扉が開いた。
「おや、扉から入って来るなんて珍しいね」
「あ!」
エリスが目を輝かせて駆け寄る。
「式部ー!」
思いっきり抱きつく。
「エリス、遊びに行くか」
「本当?どこどこ!」
「式部ちゃん、エリスちゃんが行くなら私も行かないと…」
首領は困った顔で言う。
そんな事は無視して式部は特に話し続ける。
「Qの所。クッキーも焼いたし」
式部の手には袋がぶら下げられている。
「えー!Qの所って何も無くてつまんないじゃん」
「色々あげた」
式部は抱きついているエリスを持ち上げて肩車の格好にする。
「…もしかして監視カメラの故障って式部ちゃんの仕業?」
「直ぐ回復させるから問題無い」
エリスを乗せたまま部屋を出ようとする。
ジリリリリリ!
部屋に電話の音が鳴り響く。
少し面倒臭そうに受話器を取る。
「私だ」
『首領!地下牢獄に近づけません!』
受話器の向こうから切羽詰まった声が聞こえる。
「近づけない?」
『近づこうとしても何時の間にか戻されてしまいます!赤い薔薇があるのは見えるのですが…』
「薔薇?」
『はい、敵の罠かもしれません。如何致しましょう』
首領は式部の方をチラリと見る。
「…君達は帰って宜しい。私が行くよ」
『で、ですが…』
「安心し給え。君達が無能という意味では無い。私もそちらに用があったのでね」
『わ、分かりました。では直ぐに撤退致します』
ガチャン!
少し乱暴に受話器を置く。
「全く…まだ仕事は終わっていないのに」
「お前の都合だろ」
そう言いながら部屋を出る式部を追いかけるように首領も部屋を出た。
「肩車〜!」
「エ、エリスちゃん、あんまりはしゃぐと落ちちゃうよ?」
「式部だから平気!ね、式部!」
「知らん」
何時も通りの無表情でエレベーターに乗る。
「背が高くなった気分!リンタローも抜かしてる?」
「まだまだかなぁ」
ほのぼのとした会話を交わす。
エレベーターが止まり、扉が開く。
「ココから少し階段で下りるよ」
地下へ向かう扉を開き、中へ入る。
「首領、お疲れ様です!」
様子を見に行っていた者達とすれ違う。
すれ違った者に挨拶はされるが、誰も式部の肩車には突っ込まない。
「エリス様もお連れですか?」
1人の礼儀正しい年配の男が言う。
「うん!」
「お気をつけ下さい」
ぺこりと頭を下げてそのまま去っていく。
その後も誰1人として式部の事について聞く事はなく、いなくなった。
まるで式部だけがこの場に存在していないかのように気づかれる事は無かった。
「バレないものだねぇ」
「見張りがいるなら先に言え。無駄に疲れる」
式部は不機嫌そうに言う。
「まぁ君はある意味不法侵入だからバレたら大変だ。追い出せないのに労力を使うなんて非合理的だし、なにより面倒臭い」
「後者が本音だな」
そっぽを向いて言う。
「リンタロー仕事サボってる」
「違うよぉ!エリスちゃんが喜んでくれるから居ても良い事にしてるんだよ?」
「嘘つき。堕落者」
「酷い!」
誰も居ない地下への階段を下りながら話す。
暫くしてから鉄格子の並ぶ部屋に着いた。
部屋の廊下のど真ん中に赤い薔薇が散乱している。
「通れないって事は式部ちゃんの異能だね。もう解いた?」
そう言いながら式部の方を見る。
「わわっ!」
式部は既に消えていた。
肩車されていたエリスは少し浮いた後にフワリと降り立つ。
「わー!今のなに!」
「私は何もしてないよ?」
2人の頭の上に疑問符が浮かぶ。
「あ、通れる」
取り敢えず部屋に入る。
「あのお花もらっていい?」
「良いよ〜でも棘には気をつけてね」
エリスは薔薇の方に駆けていった。
「綺麗〜」
棘に気をつけながら薔薇を1本ずつ拾っていく。
「あ、エリスちゃん!」
鉄格子の中から明るい声が聞こえる。
「え?!なにこれ!」
エリスが牢屋を見て言う。
「どうしたんだい?」
「すごーい!可愛い!」
エリスは何故か鍵の掛かっていない鉄格子の扉を開け、中に入る。
「見て!リンタロー!」
鉄格子の中を覗くと、牢獄とは思えない程華やかな作りになっていた。
「森さんも来たんだ!凄いでしょ!魔法使いが来たんだよ!」
鎖を鳴らしながら腕を広げる。
「そのクッションや人形は?」
「出してくれた!」
「壁紙やカーペットも?」
「出してくれた!」
キラキラとした笑顔で言う。
それを見て首領は小さく溜息を吐く。
「2人とも暫くココで遊んでて良いよ」
「きゅーさく、クッキー食べる?」
エリスは既に中でくつろいでいる。
「うん!あ、お絵描きしよ?クレヨン貸してあげる!」
「分かった!」
2人は楽しそうに遊び始めた。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.78 )
- 日時: 2017/05/07 17:46
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
47間目
木製の扉が開く。
「お早うございます。綾辻先生」
辻村が出来るだけ威厳を持った態度で言う。
「あぁ、おはよう」
綾辻は顔も上げずにそう答えて本のページをめくる。
「また同じ本を読んでいるんですか?」
辻村の質問にも答えずに文字を追い続ける。
取り敢えず何時もと同じ椅子に座って報告書を書きながら話す。
「その本って確か、式部さんに貰った本ですよね」
式部、という単語にピクリと反応する。
「推理小説でしたっけ?犯人は誰でした?」
「分からない」
綾辻が即答する。
その声は絶対零度の空気よりも冷たく辻村の鼓膜を震わせた。
「分からないって…」
「何度も読み返し、推理した。疑った。だが分からない」
煙管に火を点け、ゆっくりと吸って吐く。
青白い煙が空気に溶けるように流れていく。
「辻村君」
「はい」
緊張した声で答える。
「式部は今特務科にいるのだろう」
「えっ!な、なんで知ってるんですか?!」
その事は極秘事項で絶対にバレてはいけないのに…!
「カマをかけただけだ。その反応を見る限りいるんだな」
しまった…
「い、今のはその…」
「なら君に頼みたい事がある」
辻村の声を無視して言う。
「この本の解答を聞いてきてくれ」
「か、解答…?」
辻村は一瞬何を言われたのかが分からなかった。
今まで数々の難事件を解決してきた名探偵である綾辻が、真逆その1冊の本の答えを導けないなど思った事もなかった。
ましてやその本は、異質だとしても子供が書いたもの。解けないはずがない。
「…何故ですか?」
「答えが分からなかったからだ。なんだ、本もロクに読ませてくれないのか?」
「充分読んでるじゃないですか!」
壁一面の本棚を指差してビシッと突っ込む。
「嘘ですよね?もしかして描写に欠陥があるんですか?それならその部分だけ聞いてくれば…」
「欠陥は無い。文章としてはむしろ素晴らしい程の出来だ。情報もある」
煙管の灰を落とす。
「だが、その情報量で真実を埋め尽くしている。木を隠すなら森の中という事だな」
眉間を抑えながら溜息を吐いた。
「だから解答を聞いて来いって事ですか?」
「あぁ、信用しているぞ」
物凄い棒読み口調で言う。
ふと辻村は気付く。
「というか、推理小説なら物語の最後に解決されるんじゃないですか?ほら、主人公が全員を集めて犯人はこいつだ!みたいな」
「ふむ、君は随分とお花畑な脳みそをお持ちだな。そのうち頭に蟻が寄って来るんじゃないか?」
「来ません!」
頭を押さえ、綾辻を睨みながら言う。
「で、何故その解決が無いんですか?」
「読めば分かる」
1番最後のページを開いて辻村に見せる。
〈屋敷は、永遠の静けさを手に入れたのであった〉
ページの1番左端の隅に達筆な字体で小さく書かれたその文字が目に入った。
「この物語はバッドエンドだ。本来暴かれるべき犯人も死んでいる」
辻村は首を傾げる。
「最後に生き残った人が犯人じゃないんですか?」
「最後の死因は集団自殺だ。登場人物が各々の部屋で同じ時刻に死んでいる」
またページをめくって見せる。
そこには死体の有り様や致命傷となった傷の場所、更には飛び散った血の一滴まで鮮明に描写されていた。
思わず口元を押さえる。
それ程までに書かれているモノは無残な姿であったと想像できた。
「凄い文章ですね…」
口から漏れ出たのはそんな言葉。良い意味でも悪い意味でも“凄い”のだ。
「まるで実際にいるかのような感じです。トラウマ物ですよ」
こんな文章を綾辻先生は読破したのか…
尊敬と畏怖の混じり合った感情で綾辻を見る。
「これ程までの物を10歳で創り上げるとは…アイツとは人間として関われないな」
そう言った瞬間、机の上に何かが落ちる。
数枚の書類の左肩を止められた物。表紙に走り書きで〈お前も同じ人型の化物だ〉と書かれている。
「…辻村君、今日は盗聴器の類は付けていないだろうな」
「付いていません。因みに式部さんの異能ならこの会話くらい筒抜けであろうと考えられます」
「そうか」
綾辻は書類を手に取ってめくる。
瞳が文字を追い、1枚めくる。
それを繰り返すうちに綾辻の目は見開かれていく。
何か驚くような事が書いてあったのだろうか…
辻村はそれを心配そうに見つめる。
最後のページを読み終えた瞬間、額に青筋が浮かぶ。
書類を乱雑に塵箱に投げ捨て、スタスタと去っていった。
「ま、待って下さい!」
辻村は隣の部屋へ向かう綾辻を捨てられた書類を一応拾ってから追いかける。
「何をするんですか?」
辻村の質問には答えず、積み上げられた本の山から数冊を取って椅子に座る。
「見れば分かるだろう、読書だ」
「知ってます!何故急に?」
「気分転換だ。気にするな」
そう言って本を読み始める。
読んでいる本はどれも非現実的な物を題材とした本ばかりだ。
確か昔こういう本は現実逃避に1番だと言っていた気が…
よく分からなくなったので取り敢えず書類を読む。
書類の中身は先程の本の“解答”であった。
1つ1つの事件の概要の後に凶器と証拠、殺人方法や動機、そして犯人が書かれていた。事細かに丁寧に。
その事件の概要にも驚かされる事が多かったが、その方法や凶器には特に驚いた。
普通では思いつかないような突飛なものからベタすぎて誰もやらないのではないかというような古典的なものまで、ありとあらゆる殺人方法が記載されていた。
感心しながらそれを読み続け、最後の1ページをめくる。
〈以上、ここに挙げられた物全ては推理である〉
「…ん?」
一行目から何だかよく分からない。
兎に角先が気になるので文字の羅列を読み続ける。
〈これらは実際に自分で考えた殺人ではなく、実際に自分がこの目で“見た事がある”ものの中から最も残酷だと思われる殺人を選んで綴った物だ。この小説はノンフィクションの実話をただただ集めて同じ舞台に立たせただけのものであり、実際に犯人が誰だったのかは定かではない〉
雲行きが怪しくなって来た。次のページをめくっていく。
〈取り敢えずそれぞれの事件の犯人だと判断したものは全員最後に殺して終わらせた。つまり、この小説は俺の“暇潰し”で書いたものであり何の意味も持たず結末がある訳でも無い。解けない謎を解き続ける気分はさぞかし悪かったであろう。それなら俺も満足だ〉
最後の一ページをめくる。
〈暇潰し、ご苦労だった〉
綾辻先生が不機嫌になった理由が分かった。
あの大量の文章を読み、大量の事件を(おそらく)一生懸命に推理したにも関わらず、出された結末が唯の“暇潰し”だ。何の関係性もなく、連続殺人でも何でもない。現実逃避したくなるのも分かる。
辻村は無言で書類をシュレッダーにかけ、報告書の続きを作成し始めた。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.79 )
- 日時: 2017/05/06 16:55
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
48間目
危機察知能力。
それは探偵社員全員が所持するべき能力である。
危険と思ったら逃げる。不利だと思ったら逃げる。
当たり前の事ではあるが、常に危険と隣り合わせである探偵社員にとってはとても重要なことだ。
そして今、その能力が発揮された。
「ふゎあぁ…」
大きな欠伸をしながら部屋に入ってくる。
「あ!与謝野先生!」
「お早うございます」
納言と鏡花が挨拶をする。
「おはよう。2人共、何処か怪我してないかい?」
「元気です!」
「そうかい」
退屈そうに言って辺りを見回す。
「今日は誰かに買い物に付き合って貰いたかったんだけど…」
チラリと2人を見る。
「あんたら以外いないみたいだねェ」
普段この時間に仕事をしている国木田も、奥の席で駄菓子を頬張っている乱歩もいなくなっていた。
「あれ?さっきまで皆さんいた筈なんですけど…」
「ま、良いか。2人とも付き合って貰うよ」
「私も?」
鏡花が首を傾げる。
「当たり前だろう?すぐ出るからおめかしするなら急ぎなよ」
そう言って与謝野は医務室の方へと消えていった。
〜1時間後〜
「ありがとうございました!」
店員の元気な声で見送られて1つ目の店を出る。
「持てるかい?」
「これ位は余裕」
「私も持ちますよ!鏡花さん!」
「大丈夫」
鏡花は大量の買い物袋を腕に下げている。与謝野も同量の袋を持っているが、納言だけが何故か小さな包み1つだ。
「じゃあ次のところで持って貰おうかねェ」
与謝野は楽しそうに笑いながら次の店に入っていった。
〜30分後〜
「納言…本当に大丈夫?」
「え?何がですか?」
納言が持っているのは目の前が見えなくなる程の箱の山。重量だけでも凄そうだ。
「無理しなくて良いよ。私がもう少し持つ」
「本当に私は重く無いんです!労うならこの子達をお願いします!」
納言は手が埋まっているので目線だけで指す。
1つは箱の山の上に置かれたマフラー。とても長いため箱の山を縦にぐるりと一周するように巻かれている。
もう1つは箱から垂れ下がっている4本のリボン。これも長いため地面について引きずられている。
この2つは先程納言が触った物だ。
「るーちゃんがバランスを取ってくれてりーちゃんが持ってるんです。私はそれを不自然に見せない為のダミーですから」
るーちゃんはマフラー、りーちゃんはリボンの事を言っているのだろう。
「ふぅん、じゃあ納言が手を離したらどうなるんだィ?」
「4足歩行の謎の生き物になります」
真面目な顔で答える。
「そりゃあ大変だ」
ふふっと笑いながら言う。
「るーちゃんもりーちゃんもこの倍の量なら余裕で持てるそうなので安心して下さい!」
太陽のような笑顔で言う。
横で鏡花がつられて微笑んだ。
「さてと、あと1つだけ回ったら休憩にしようか。お昼の時間も近いんだし、ご飯も食べちまおう」
「はーい!」
「分かった」
〜1時間半後〜
「いただきます!」
「いただきます」
海の見える公園のベンチに座り、先程買った焼売弁当を食べる。
「美味いかィ?」
「はい!」
「美味しい…」
「そりゃ良かった」
与謝野は2人より少し大きめの焼売弁当を食べている。
「そろそろ帰るかな」
「あれ?もう買わないんですか?」
「欲しい物は大体買ったし、そろそろ道具の手入れをしなきゃならないし…やる事はたんまりあるさ」
パクリと煮物を食べる。
「あ、私も仕事しなきゃいけないんですよね。この間の密輸業者さんの張込み報告書」
「私は家の掃除と洗濯」
2人同時に焼売を口に入れ、幸せそうな表情を浮かべる。
「おや、2人とも忙しいのに来て貰ったのかィ?なんか悪い事したねェ」
「いえ、楽しかったですよ!」
少し焦りつつ納言が言う。
それを見て与謝野はニヤッと笑う。
「じゃあ最後に一軒寄っていこう」
昼食を食べ終えて向かったのは、可愛らしい小物や日用品が売られている雑貨。
「さてと、じゃあ2人共その辺見て回ってて良いよ。私はちょいと探し物をしてくるから」
そう言って奥の方へ入っていく。
すぐそこで借りた台車に荷物を乗せて押しながら、2人は雑貨を眺める。
「可愛い…」
鏡花は台の上に乗った1つを手に取る。
うさぎのハンカチ。
「こっちも可愛いですよ!」
納言が取ったのは、同じメーカーなのかハンカチのうさぎと同じうさぎのついたマグカップ。近くに猫や犬など他の動物バージョンも置いてある。
「この時期ホットミルクとかも飲みますし、丁度いいですね」
ニコニコ笑いながら言う。
「確かに。納言はどれが1番可愛いと思う?」
「うーん…全部可愛いんですけど…」
テクテクと歩いて他の場所へ行く。
「コレなんか良いかなって思います」
可愛らしい柄のついた髪飾り。
花や蝶、動物など色々な種類が揃っている。
「ピン留めならこういうポケットとかにつけても使えると思うんです」
青い猫の付いたピン留めを、自分の着ているコートのポケットにつける。
白いコートにそのピンは眩しいほどに映えていた。
「私はこっちの方が好き」
白いうさぎがついたものを取り、着物の襟につける。
「可愛い!」
「納言も似合う」
お互いに付近の良いと思ったものを取ったり付け合ったりしながら話す。
「コレ、ナオミさんに似合いそうですね」
「赤い薔薇とかも良いけど、こういう綺麗なのも似合いそう」
小さな花がシャラシャラとついた髪飾りを取る。
「コレを付けるなら黒の着物で…」
「こっちなら制服のリボンとか…」
そんなこんなで何十分も話し込み、最終的にお土産を買う事にした。
「国木田さんにはペン立てですね」
「それなら向こうにシンプルなのがあった」
「谷崎さんはナオミさんとお揃いにしましょう!」
「マグカップはもう持ってるから、ハンカチとかが良いかも」
トコトコ歩き回り、なんとか自分達の所持金ギリギリの物を揃える事が出来た。
「あと500円分なら買える」
「事務員さん達に飴買いましょう!」
「じゃあ乱歩さんの駄菓子もそこで買おう」
2人は急いで会計を済ませ、元の場所に戻る。
その直後、与謝野が帰ってきた。
「おや、何買ったんだィ?」
「お土産です!与謝野先生のもありますよ」
「帰りに駄菓子屋に寄ってもいい?」
与謝野はふふっと笑って頷く。
「じゃあ私は最後に会計済ませてくるから、先に駄菓子屋に行ってな」
「はい!」
2人は荷物を持っていそいそと外へ出て行く。
それを見送ってから与謝野は店内を歩き回り、幾つかの雑貨を手に取る。
「これも追加で」
そう言って会計に出した。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.80 )
- 日時: 2017/05/07 13:39
- 名前: 真珠を売る星 (ID: 9E/MipmP)
お久しぶりです。
結構久しぶりに綾辻先生と納言ちゃん登場会だった気がします……。
相変わらず、納言ちゃんも鏡花ちゃんも天使ですね……。癒されました。
そして式部ちゃんの暇つぶしに付き合わされた綾辻先生(笑)。久しぶりのご登場だというのに、お気の毒ですね。綾辻先生が原作で(といってもまだ小説に一度しかご登場されていないのですが)京極さん以外に弄ばれている(?)ところは見たことがなかったので、レア感があって素敵でした。
あと、Qちゃんとエリスちゃん、こっちもこっちで天使ですね……!!
エリスちゃんを式部さんが肩車して、森さんの慎重にかなわないとか……、可愛すぎてにやけが止まりませんでした……。尊い……。
毎度毎度長文ですみません。今回もとても面白かったです!これからも応援しています!
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