二次創作小説(紙ほか)

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※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
日時: 2021/09/10 03:28
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。

初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。


コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!



※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。

・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。

・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。

・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。


2016/12/30 閲覧数100突破!本当に感謝です!

2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!

2017/02/09 閲覧数300突破!唯々感謝です!

2017/03/01 閲覧数400突破!感謝感激雨霰です!

2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!

2017/04/23 閲覧数600突破!泣くほど感謝です!

2017/05/13 閲覧数700突破!感謝しすぎで死にそうです!

2017/05/28 閲覧数800突破!本当に有難う御座います!

2017/06/21 閲覧数900突破!物凄い感謝です!

2017/07/02 閲覧数1000突破!信じられないです…有難う御座います!!

2017/07/18 閲覧数1100突破!有難う御座います!

2017/08/03 閲覧数1200突破!感謝ですっ!

2017/08/30 閲覧数1300突破!有難う御座います有難う御座います

2017/09/24 閲覧数1400突破!本っ当に有難う御座います!

2017/11/03 閲覧数1500突破!感謝しかないです!

2017/11/29 閲覧数1600突破!本当に感謝します!

2018/01/08 閲覧数1800突破!1700飛ばしてすみません!有難う御座います!

2018/01/13 閲覧数1900突破!年始効果でしょうか…有難う御座います!

2018/01/27 閲覧数2000突破!こ、これは…夢でしょうか…?!本当に、心から感謝致します!!

2018/03/07 閲覧数2100、2200突破!1つ逃してしまいました…ありがとうございます!

2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!

2018/04/17 閲覧数2400突破!間に合わないのがとても嬉しいです…!

2018/05/13 閲覧数2500突破!いつの間に…?!有難う御座います!!

2018/05/20 閲覧数2600突破!とてもとても!感謝でございます!!

2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!

2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!

2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!

2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。



何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!


2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.31 )
日時: 2016/12/29 13:59
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

15間目



奥で声を出したのは、黒い蓬髪と包帯が印象的な青年…いや、少年だった。

「また拾ってきたのですか…ココは子供を連れてくる所ではありませんよ?」

続いて声を出したのは、丸眼鏡が特徴的な知的な雰囲気を持った青年。隣の奴よりは年上に見える。

「さっきの襲撃場で虐待を受けていたそうだ。飯でも食わせてやろうと思ってな」

「優しいねぇ。私だったら可哀想な人が捨てられてたから引き取ってーって誰かに預けちゃうよ」

少年はグラスに入った氷をつつきながら言う。

「なるほど。やはり幹部ともなると一般人とは考えが違うな」

「織田作さん、そこ突っ込む所ですよ」

「そうなのか?」

不思議な会話が交わされている。

「で、その怪我だらけの子は名前何て言うの?背負ってる子も」

視線を下げて俺を見る。

「そういえば聞いてなかったな。というか名前はあるのか?」

多分大人の方が身分は上だよな。なら自分から名乗るか。

「…紫 式部。背中のは清少 納言」

「良い名前だね。私は太宰 治だ。で織田作と安吾」

「織田 作之助だ。織田作と呼ばれている。」

「坂口 安吾です。どう呼んでも結構ですよ」

少年…太宰の言葉を補うように言う。

「マスター、いつものとコイツに食えるもの」

「はいよ」

織田作の前に小さなグラスが置かれる。

「そこ座れるか?」

「私が抱っこしようか!」

「あなたがやると危険ですよ」

「心外だなぁ」

うふふっと笑ってから大声を出す。

「マスター!子供用の椅子ってあるー?」

「ありますよ。2人分で良いですね」

「ありがと!」

少しすると、3人が座っているのとは少し違い、背もたれのついた椅子が二つ出てきた。

「よっ」

織田作は俺を掴み、椅子の上に乗せる。

その後に俺の背中で寝ている納言を隣の椅子に座らせる。

「どうせですし全員でお金を出し合ってご飯食べさせませんか?織田作君だけが出すのもアレですし」

「ああ、そうしてくれると助かる」

「オッケー。幾ら出す?」

「うーん…幾ら持ってますか?」

3人は財布を取り出して中身を見せ合う。

太宰の財布には少し多めのお札、安吾の財布には4枚、織田作の財布には1枚入っていた。

「小銭あるよね。ちょっとずつで良いか」

「そうですね」

「そうだな」

財布から数枚の硬貨を取り出し、カウンターに置く。

「あ、そうだ。マスター蟹缶おかわり!」

空になった缶を振って言う。

マスターと呼ばれた男は太宰の前に缶を置いてからもう一つ黄色い物を置き、カウンターの硬貨を取る。

「おぉ!オムレツだ!良いなぁ」

「こいつのだから食うなよ?」

「分かってるって」

そう言いながら持っていた箸を引っ込める。

「食えるか?」

「…何これ」

思った事を小さく呟く。

「オムレツですよ。食べた事ないんですか?もしかして卵アレルギーでした?」

「卵なら食べた事はある」

檻の中に投げ込まれた生卵を思い出して言う。

「なら平気ですね。苦手でしたらここの馬鹿に食べさせますから」

安吾が太宰を指差す。

「いつでもどうぞ〜」

太宰はニコニコと笑って箸を持っている。

取り敢えずスプーンですくって一口食べる。

暖かく、ふんわりとした食感の中にトロリとした卵が包まれている。

また、胸の奥から何かが込み上げてきた。

先程とは少し違った感情。

口の中に入れていた物を飲み込む。

その瞬間、胸の奥の何かが溢れ出す。

「えぇ?!お、美味しくなかった?!」

「大丈夫か?」

「お口に合いませんでしたか?」

3人が心配そうにこっちを見てくる。

俺はよく分からずに首を傾ける。

「私子供のなだめ方とか知らないよ!」

「私もですよ。織田作君は?」

「俺も知らん」

「織田作なら知ってるでしょ?あ、お菓子とか!マスターなんかお菓子ない?無かったら甘い物!」

俺が不思議そうに首を傾げていると、織田作が俺の頬を拭う。

そこでやっと、自分の頬が濡れている事に気付いた。

何故濡れているのか分からなかったが、取り敢えず自分で水滴を拭って、目の前にある卵をもう一口食べる。

自分の腹の底を満たすようにパクパクと食べていく。

「あ、苦手な訳では無かったんですね」

「そうか、なら良かった」

「なーんだ、驚かせないでよ…」

半分程平らげた所で満腹になった。

スプーンの手を止めると、太宰が聞いてくる。

「お腹いっぱい?食べようか?」

俺は無言で卵の乗った皿を太宰に寄せる。

「ありがと!いっただっきまーす!」

新しいスプーンを出し、かっ込んでいく。

「ちょっと!私達が買ったんですよ?」

「そうだな。じゃあコレの代金は太宰が払ってくれ」

「むぐむぅいむむ」

「飲み込んでから話して下さい

太宰は口に詰め込まれた物を飲み込む。

「分かったよ。でもこの子食べる?」

チラリと俺の方を見て言う。

「子供ですし大丈夫なんじゃないですか?甘い物は別腹って言いますし」

「それ女性だけじゃないのー?」

よく分からなかったがそうなのだろう。俺は一応頷いた。

「ほら、食え」

コトリと目の前に置かれた物は、薄いパンのような物に多分ジャムが載っている。

一つ手で取って食べる。

サクッとした食感の後に、甘酸っぱい香りが広がる。

直ぐに飲み込んでしまったので、また次の手が伸びる。

一つ、また一つ。食べる手が止まらない。

「本当だ、よく食べるね」

「子供の胃袋はどうなってるのか不思議だな」

「そうですね」

3人は時々笑いながら下らない会話を交わしていた。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.32 )
日時: 2017/01/01 13:37
名前: ぴろん (ID: S1x5FqeW)

16間目


突然太宰が絡んでくる。

「ねぇねぇ、傷見せてよ〜」

顔がほんのり赤くなっている。

「完っ全に酔ってますね…」

「明日は大事な会議があるって言ってなかったか?」

「だーじょぶだって!」

微妙に呂律が回っていない。

「見せてくれないなら見てやる!」

いきなりガバッと俺の服をめくる。

と、直ぐに戻した。

太宰の顔色が少しずつ戻っていく。

「どうした?」

織田作が言う。

「ねぇ、織田作…」

顔色が青くなった太宰が問う。

「ん?」

「この子って男の子?」

「性別は知らないが」

織田作の答えにあー…と言って頭を抱える。

「私、見ちゃった」

「見たって何を…ん?まさか…」

安吾が何かを悟ったように顔を歪める。

「うん、ごめんね。“式部ちゃん”」

何故謝られたのか分からず、取り敢えず頷く。

「ん?式部は女だったのか?言われてみればその格好は変わっているな」

俺の服は布袋に穴を開けて被せただけの物だった。誰が着ても変わった格好だろうが、確かに男は着ない服だろう。

だが、それだけで見れなくなるのは太宰が可哀想なのかもしれない。

「別に気にしないし、見ても良い」

今度は自分で服をめくろうとする。

「あー!見せないで良いから!私流石に幼女趣味は無いし!うん!」

何故か焦って服を元に戻す。

「あ、そうだ!お詫びとしてコレあげるよ!どうせもう小さかったし」

俺に何かをバサっとかける。

「大丈夫なんですか?」

「森さんがまた買ってくれるって言ってた」

「流石だな」

「いやそっちもですけど…その、返り血とか付いてましたよね?」

俺は被せられたものを取る。

どうやら黒いコートのようだ。大きさは半分以上が引きずられる程。所々に赤黒い染みが付いている。

「大丈夫」

大きすぎるコートを何とか羽織る。

「意外と似合うね〜あ、そうだ!私とお揃いにしよう!」

「お前と?」

「だって昔の私に少し似てるんだもの。傷だらけだし髪も黒いし」

「うーん…言われてみれば…いや、そこまで似てない気もしますけど…」

安吾が太宰と俺を見比べる。

「よし!じゃあ包帯付けてみよう!頭に巻いてみる?」

「傷がある所だけで良いだろ」

「身体に巻くのはどうしますか?」

なんだかんだで全員ノリ気である。

「うーん…式部ちゃん何歳?」

先程のテンションに戻っている。

「確か4歳」

「じゃあ平気!」

「何が基準なんだ?」

「適当☆」

キラッと効果音が付きそうなポーズをとる。

「あ、包帯持ってないや。一旦戻ろうか。式部ちゃん着いておいで」

「大丈夫なんですか?流石に子供を入れるのは…」

安吾が心配そうに言う。

「平気平気。森さんも許してくれるでしょ。何てったって式部ちゃんは幼女なんだからね!」

「確かにいけそうだな」

「ダメですよ!」

「じゃあ私が育てようか?いっそマフィアに入れちゃう?この子」

クイッと親指で俺を指す。

「そんな軽いノリで入れるのか?」

「みんなも同じノリだよ。織田作もそうじゃなかった?」

「確かに、なら良いのか」

「良くない!」

安吾は肩で息をしている。

それを太宰はへらへらと笑いながら見る。

そんな会話を聞きながら、ふと疑問に思う。

「お前ら、マフィアなのか?」

「あ…」

安吾が呆れたように溜息を吐く。

「言ってなかっ」

「あーあー!」

太宰が織田作の言葉をわざとらしく遮る。

「そうだ!私に心当たりがあるよ」

ニコッと笑ってコッチを見る。

「何処?」

「路地裏だよ。あそこは私達の管轄外だし、今のリーダーはとっても優しいんだそうだ。新入りには食べ物まで恵んでくれるとか!」

「…あぁ、それは良いですね。ならそこに預けましょうか」

安吾も何かを思い出したようで、うんうんと頷いて賛成する。

「そうだな。包帯を買いがてら預けてくる」

「お金は私が出すよ。立派な私になってね」

ポンポンと頭を撫でられる。

…悪い気分では無いな。

「残念ですね。立派になれませんよこの子」

「えー?私に似るんだし大丈夫だよ!」

「そうだな」

織田作が立ち上がる。

「はいコレ。ちゃんと買ってね」

「分かってる」

太宰からお金を受け取り、俺の荷物を持つ。

「行くぞ」

無言でマスターが椅子から降りやすいように台座を出す。

俺は納言を背負ってから、その台座を使って椅子から降りる。

「あ、そうだ。式部ちゃん、困ったら私の名前を出してね。きっと何とかなるから」

「…?」

首を捻りながらも取り敢えず頷く。

「じゃあバイバーイ」

「さようなら」

「あぁ」

ドアを開け、階段を登る。

「少し待ってろ」

織田作はすぐ近くの店に入る。

数分もしない内に透明な袋をぶら下げて戻ってくる。

「付いてこい。逸れるなよ」

スタスタと大股で歩いていく織田作に何とかついていく。

路地を出てまた大きな通りに出てから、少し先の路地裏に入る。

暫く歩き、一つの建物の前で立ち止まる。

「俺が見えなくなってからそこのボタンを押せ。良いな」

俺はコクリと頷く。

「じゃあな」

ポンっと頭に手を乗せてから帰っていく。

その背中をじっと見つめ、曲がり角を曲がって見えなくなってから振り向き、ボタンを押す。

ピンポーン♪

「はーい」

機械音の後にドアが開く。

少し汚れた和服を着た男が出てきた。

「あぁ、何となくそんな感じはしてたんだ。新入りだね。中においで」

中に入ると、壁一面に書物が連なっていた。

「幾つ?」

「4歳」

「後ろのは?」

「1歳」

業務連絡のような会話を交わす。

「そこ座って良いよ」

納言を降ろし、少し柔らかい椅子に座る。

「じゃ、自己紹介ね。僕は折口 信夫。この路地裏のリーダーで、マフィアの拷問班班長だよ」

「マフィア…?」

先程聞いたばかりの単語を聞き返す。

「あ、知らないの?まぁ良いや。君は?」

「紫 式部。そっちのは清少 納言」

「オッケー。取り敢えず慣れるまではココに居てね。色々教えてあげる」

ゴトリと音を立て、分厚い本を目の前に置く。

「これ、路地裏マニュアル。分からない言葉があったら調べてね」

隣に辞書を数冊用意される。

俺は取り敢えずそれを読んだ。

全て読み終わるのに数日かかったが、なんとかその内容を覚える事が出来た。

助け合う事、助けを求める事、約束を守る事、路地裏から出ない事、リーダーには従う事。

常識的な事から少し変わった事までビッシリと書かれていた。

何故か少し既視感を感じたが…

俺は読み終わった事を折口に伝えた。

「え?本当?」

折口は少し驚いた顔を浮かべる。

「…じゃあ、ちょっと質問するね」

折口は幾つかの本についての質問をしてきた。

俺は全てに答えた。

「…うん、君はもっと本を読もう。勿体無いよ、そんなに良い脳味噌を持ってるのに。読んで知識を蓄えるんだ。納言ちゃんにも教えてあげてね」

小さく頷く。

それから、俺は本を読み始めた。初めに自分があの館から持ち出してきた本を読んだ。

すぐに読み終わったので、許可をもらって新たに折口の部屋の本を読んだ。

それを繰り返していたある日、折口の命で買い出しの為に路地裏の外へ出た。

買い物メモを見ながらうろついていると、前を歩く人にぶつかった。

体重差のため、俺は後ろに倒れる。

「すまない、怪我はないか?」

聞き覚えのある声だった。

「織田作?」

「式部か?」

ほぼ同時に声を出す。

「久しぶりだな」

小さく頷く。

「言われた通りになった…」

織田作が小さく呟く。

「何?」

「いや、何でもない。少し賭けをしていてな。負けてしまったようだ」

「賭け?」

「あぁ、負けたらお前に体術を教える事になっていた。明日から暇な時間はあるか?」

「いつも暇」

正直、前から体術に興味があったから即答した。

もしも俺がもっと強かったら…

何度考えた事だろう。

だが、現実に“もしも”の世界は存在しない。これからの未来を変える事しか出来ないのだ。

「なら何時でも平気だな。明日路地裏の奥にある広場で待ってろ」

そう言って大量の荷物を抱えて去っていく。

俺は残りの買い物を終え、その事を折口に伝えた。

「良いよ。頑張ってね」

あっさりと許可を貰い、次の日から体術を習い始めた。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.33 )
日時: 2017/01/01 13:39
名前: ぴろん (ID: S1x5FqeW)

17間目



「で、今に至るって訳だ」

「…やっとスッキリしたよ。なーんか知ってるような感じがしてたんだよねぇ」

頭の後ろで腕を組み、背もたれに寄りかかる。

椅子がギギィ…と鈍い音を立てる。

「で、リーダーさんは何処にいるの?」

ニヤニヤ笑いながら言う。

「知ってるんだろ…」

「いやいやぁ、知らないよぉ?」

わざとらしく笑いながら言う。

御影…いや、式部は小さく溜息を吐く。

「現リーダーは俺だ。昔、ちょっとした喧嘩で勝った」

「ほう、それは凄いね。折口君はそう簡単に負けない人なのに」

ニヤリと笑いながら言う。

「あの時は俺の異能が暴走したからな」

「そうなの?」

「あぁ…あれは…」

式部は言葉を探す。

「いや、今は良い。それより…」

話しながら立ち上がろうとする。

と、視界が暗転して一瞬意識が飛ぶ。

ガタンッ!

「おっと!大丈夫?」

倒れる直前で太宰が受け止める。

「あぁ…痛くはないんだがな。その後塞ぐのを忘れてた」

腕からはまだ鮮血が滴り落ちていた。

「ちゃんとしないと死んじゃうよ?私は良くても君はダメでしょ?」

「…いや、特に問題は無いけど」

「え?もしかして自殺好き?」

「うるさい」

嬉しそうな顔をする太宰を無視して御影は棚から適当な包帯を出し、腕に巻く。

「上手いねぇ、4歳からだっけ?」

「お前達に貰った日からずっとだ。コートは流石に洗濯するけどな」

そう言ってフラフラと歩き、箱を開ける。

その中から一本の注射器を出した。

「何それ?」

「折口に貰った貧血対策。あいつアレでも一応薬剤師だから」

躊躇なく腕に刺し、液体を注入する。

「軽い副作用はあるけどな」

「ダメじゃん」

「それ以外はいい薬だ」

そう言って空になった注射器を違う箱に放り込む。

「で、副作用は何なの?」

「軽い空腹」

そう言ってまた違う箱の中からタッパーを取り出す。

それを開けると、大量の木苺が入っていた。

パクリと一つ口に放り込む。

「良いなぁ。一個ちょーだい」

「これはダメ」

そう言いながら太宰の後ろを指差す。

「そこの棚の一番下にクラッカーとジャムが入ってるから勝手に食え」

「ありがとね」

棚を開け、クラッカーとジャムを取り出し、食べる。

「これ自家製?」

「当たり前だろ。それは木苺のジャム。隣のがラズベリー。木苺はそこから採れる」

指をさした先には、緑色の葉が茂っていた。

式部は自分の木苺をしまう。

「美味しいねぇ。何処で覚えたの?」

「本に載ってた。あとは勘」

軽い伸びをしてから大きな鞄を持つ。

「何処行くの?」

クラッカーを食べ終えた太宰が問う。

「暇潰し」

そう言って鞄を持ったまま近くの壁を軽く登り、あっという間に屋根に立つ。

「来るか?」

上から聞いてくる。

「行きたいけど残念な事に私は軽業師ではないのだよ。目的地だけ教えてくれる?」

「…このまま真っ直ぐ東に向かった所に港がある。その辺りだな」

そう言って隣の屋根に飛び移る。

太宰は見失わないように追いかける。

段々と路地が狭くなっていき、走るのが困難になってきた頃に目の前に式部が飛び降りる。

「こっちから登れ。屋上まで行ける」

式部が指差した先には階段があった。

「ご親切にどうも」

「さっさと登れ」

式部は軽々と壁を登っていく。

太宰は言われた通りに階段で登り、屋上のドアを開く。

そこでは既に式部が座っており、鞄から何かを取り出していた。

「何してるの?」

「暇潰し」

鞄の中から取り出した物はすぐに何処かに消えていく。

太宰はそれをじっと見る。

「今は俺を触るなよ。折角の暇潰しなんだからな」

「その荷物、何処に行ってるの?」

「すぐそこだ」

指をさした先には、小さな台座と箱が置いてあった。

「通りすがった奴に軽い手品を見せるだけ。そこの箱に入れた金額に応じて内容が変わる。まぁ、暇潰し兼小遣い稼ぎってとこか」

式部は小さく欠伸をする。

1人が通りかかった。バケツを持った小さな子供だ。

子供は箱に近づき、硬貨を一つ入れる。

すると、灰色の1円硬貨が軽い音を立てて式部の目の前に落ちる。

「1円?」

「子供だからな。あいつは4日に一度位の頻度で来る」

そう言った後、子供の周りに水流のアーチが出現した。

水流はクルクルと子供を囲むように回ると、静かにバケツの中に入っていった。

「え?今のも式部ちゃんの異能なの?」

「やり方次第だ。あいつはココで毎回水を汲む。初めは回っている水を見ているだけだったんだが、知恵が付いたらしい」

子供が帰っていくのを見守る。

すると、また新たに人がやってきた。

白髪の生えた初老の男だ。

式部の前に100円硬貨が落ちる。

「この老人は大体一週間に一度だな。田舎の風景が懐かしいらしい」

老人は辺りを見回して微笑んでいる。

「これは?」

「空間を半球型にくり抜いて老人に被せた。老人からすれば辺りは田舎の空気と風景に包まれている」

老人は少しすると、また元の場所へ戻っていった。

この後も人が来て、それぞれ楽しむ。

いつの間にか式部の前には沢山の硬貨が積み上げられていた。

「よく思いついたねぇ」

「この金は端た金だし貯金用だ。まぁ、今日はあいつが来るから収入は多いか」

「あいつ?」

太宰が首を捻る。

「ほら、来たぞ」

式部が指をさす。

そちらを見て、太宰の表情が固まる。

歩いてきたのは中年で、白衣姿にボサボサの頭髪。

確実に言えるのは、今ココに居てはいけない人物だった。

「首領?!」

太宰は大きな声を出し、ハッと口をつぐむ。

「こっちの会話は聞こえないし見えてない。異能で区切ってあるから」

首領は、皮の財布から一枚の紙幣を取り出して箱に放り込む。

式部の前に一万円札が落ちる。

「あいつは1ヶ月に1回来るんだが、俺の人形が気に入ったらしい」

式部は鞄から人形を取り出す。

細部まで凝っており、何より人形はエリスにそっくりだった。

「昔頼まれて作ったんだが、ココまで気に入って貰えるとはな」

「頼まれたって?」

「ココでちょくちょく会話をしている。軽い人形劇とかをやりながらな」

式部は人形に括り付けた糸を自分の指にはめる。

「今日も話すが、お前はどうする?」

「あー…やめとくよ」

笑って言うが、その顔は引きつっていた。

「そうか。じゃあそこの袋を持っていけ」

袋の中身は形の整ったおにぎり。

「どうせまた昼飯食ってないんだろ」

「気が効くね。ありがと」

太宰はヒラヒラと手を振りながら帰っていった。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.34 )
日時: 2017/01/04 19:30
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

18間目



「帰らせちゃったの?」

下にいる男、首領が言う。

「選ばせたら帰っただけ」

式部はそう言って荷物を持ち、屋上から飛び降りる。

「やぁこんにちは」

「あぁ」

素っ気無い返事をして首領の前に立ち、鞄を置く。

「いつ見てもこのお人形さんは可愛いね」

「そりゃどうも」

返事をしながら台座や箱を片付ける。

「おや、今日は人形劇は無しかい?」

「どうせ見ないだろ。で、今日もか?」

「そうだよ、でも歩くのが面倒でねぇ。送ってくれないかな?」

首領がそう言った瞬間、2人はポートマフィアの本拠点の前に立っていた。

「おや、大分こなれたみたいだ」

「毎月やってればな」

そう言って2人は歩いていく。

「首領?!お、お疲れ様です!」

門の横にいる者が敬礼をする。

首領はそこを無言で通り過ぎる。

エレベーターに乗り、一番上の階へのボタンを押す。

「それにしても物好きだね。ココの雰囲気が1番居心地が良いなんて」

「あんたに言われたくない。それよりコレだろ?」

式部は鞄の中からヒラヒラとしたピンク色のドレスを取り出す。

「おぉ!ありがとうね。エリスちゃんってば君が作ったのしか着てくれないんだよ〜」

「…もう1着作ったんだが、いるか?」

「本当!じゃあ貰おうかな」

首領がそう言うと、式部は何もない空間に手を入れる。

「この前エリスが言ってたから一応スーツも作った」

出てきたのは黒いスーツ。少し大人っぽい雰囲気を出しつつも、スカートの裾に付いた小さなフリルや胸の辺りの花のコサージュが可愛らしさを引き立てている。

「器用だねぇ」

「本に書いてあるのを応用しただけだ。お前も自分で作れば良いだろ」

そう言って広げた服を畳む。

丁度そこでエレベーターが止まり、ドアが開いた。

薄い乳白色に染まった廊下を歩き、一番奥の部屋に入る。

「ただいま〜!エリスちゃん!」

満面の笑みで名前を呼ぶ。

「なーに?リンタロウ」

奥の部屋からパジャマ姿のエリスが顔を出す。

「あ!式部!」

トコトコと駆け寄って来る。

「久し振り!」

「久し振り」

矢張り素っ気なく返す。

「ほらエリスちゃん、今日も式部ちゃんがドレスを作ってくれたよ〜」

ヒラリとドレスを出す。

「ねぇ式部、似合うと思う?」

式部は面倒臭そうに頷く。

「着る!式部も来て!」

2人で奥の部屋に入っていく。

「あのね、私、式部に似合うと思って用意したの!」

黒のタキシードを見せる。

「イケメンは何でも似合うわね〜」

エリスはタキシードを式部に合わせながら言う。

その言葉に他の人には分からない程度に顔を歪めた。

自分はイケメンではないとでも言いたげにしていたが、諦めた様に溜息を吐いて他の言葉を繋げる。

「…髪結おうか?」

「本当?やった!」

エリスが鏡の所へ走っていく。

「服着てからだぞ」

「あ、そうだった」

忙しなく部屋を駆け回って着替えの準備をする。

「わぁ!今日も素敵ね!」

ピンク色のドレスを手に取り、慣れた手付きで着る。

「髪飾りはどれが良いかな〜」

エリスは幾つかの箱を取り出し、中身を見ながら言う。

「うーん…コレにしよ!結んで!」

「ん」

式部は髪飾りを受け取り、エリスを鏡の前に座らせる。

エリスの長い髪を少し下でまとめ、右にずらす。

それを緩めに整え、最後にエリスが選んだ髪飾りで留める。

「ほら、出来たぞ」

鏡を見たエリスは満面の笑みを浮かべる。

「可愛い!」

そう言ってエリスは部屋を出る。

「みてみてリンタロウ!可愛いでしょ?」

「あぁ、本当に可愛いよ!エリスちゃんが着れば何でも似合うね〜」

首領もニコニコしながらそれを眺める。

「そうそう、もう1着プレゼントがあるんだよ。式部ちゃんが特別に作ってくれたんだって!」

首領は先程の黒い服を取り出す。

「やったぁ!」

服を受け取って着替えてくる。

「式部ちゃんがいないとあんなに嬉しそうなエリスちゃんは見れないよ!いつもありがとうね」

「俺は何もしてない」

「そんな事ないよ。君がいないとダメなんだ。だから、変な事考えたらいけないよ?」

首領が一瞬だけ真面目な顔を見せる。

「着替えたー!」

奥の部屋からエリスが出てきて、飛び跳ねる。

「ねぇ式部、あのタキシード着たら私とお揃いにならない?」

「まぁ…黒だから似てるかもな」

「じゃあ着て!」

エリスが式部のコートとマフラーをバッと取る。

「っ?!」

式部は反射的に遠くへ離れる。

「ほら、リンタロウも手伝って?」

「エリスちゃんの頼みなら断れないねぇ」

包帯姿の式部に2人がジリジリとにじり寄っていく。

「…それを返せ」

包帯が解けないように押さえながら小さく呟く。

「やーだよーだ!」

口を指で横に引っ張る。

「そんなんしたら折角の綺麗な顔が台無しだけど…」

「へっ?!」

エリスは手を離し、頬に手をやる。

「この褒め上手!」

「何言ってんだ?」

式部は首を傾げる。

「あ、そうだ。式部ちゃんは暇潰しがしたいんだよね?」

首領がふと言う。

「まぁな。そのために来てる訳だし」

「なら、ゲームをしよう。私達2人から服を取り返すんだ!ただし、コッチもこの服を着せにかかるけどね」

パッとタキシードを見せる。

「原則として異能を使うのは禁止。これなら平等だし楽しい。まさに合理的だね」

ニコニコしながら言う。

「じゃあ、スタート!」

声と共にエリスが逃げ、首領がタキシードを持って追いかける。

「何このゲーム…」

式部は少し愚痴を零しながらも暇潰しを楽しむ。

「キャー!取られるー!」

エリスが楽しそうに笑う。

首領はそれを楽しそうに見ながら一応式部を追いかける。

式部は部屋の真ん中にあるテーブルに飛び乗り、真上に飛ぶ。

大きな音を立てながらシャンデリアにぶら下がる。

「おや、そんなに跳べるとは知らなかったよ」

「鍛えてもらったからな」

「ほぅ…それはいつかの最下級構成員の事かい?」

意地悪い笑みを浮かべて言う。

「知ってて言ってるな…」

シャンデリアを揺らして弾みをつけ、隣のシャンデリアに飛び移る。

エリスの真上だった。

手を離し、飛び降りる。

「リンタロウ、パス!」

「ええっ!」

首領は戸惑いながらも服を受け取り、タキシードをエリスに投げ渡す。

「えいっ!」

エリスは式部を捕まえようとする。

が、寸前で避けられた。

「待てー!」

「エリスちゃん頑張って〜」

首領とエリスはとても楽しそうに笑いながら式部を追いかけ続けた。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.35 )
日時: 2017/01/06 10:48
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

19間目



変わらず騒いでいると、部屋の扉が開く。

「失礼します」

全身真っ黒の高級服に身を包む、朱色の癖っ毛に黒い帽子の低身長。中也だった。

入ってきた中也は一瞬固まる。

いくら首領がエリスを追い回すのに見慣れたって、エリスと首領が2人で包帯のみ姿の幼女(?)を追い掛けているなんて想像がつかない。

「あぁ、中也君丁度良い。手伝ってくれないか?」

「…何をでしょうか?」

包帯の幼女から目を逸らしつつ、少し遅れて返答する。

「見ての通りだよ。式部ちゃんにタキシードを着せるんだ。エリスちゃんに頼まれてね」

「あぁ、それは致し方ありませんね。手伝います」

「因みに異能は原則禁止だよ」

「分かりました」

中也はコキリと腕を鳴らす。

「ん?中原か。葡萄酒は口に合ったか?」

式部が中也に気付いて言う。

「あぁ?手前は前に会った御影って奴か?」

「そうだけど」

式部はエリスが突っ込んでくるのを軽く避けながら答える。

「あ、そうだ。中也君と式部ちゃんで一騎打ちをしよう!」

「え?あの…」

「面白そうね!じゃあ中也が勝ったらタキシード着てね?」

「…分かった」

その隙にコートを奪い取りながら式部は渋々了解する。

「じゃあココの裏手の訓練場が良いかな?2人とも楽しんで〜」

首領は2人を錆び付いた扉の奥に押し込み、扉を閉じた。

そこには壁際に鉄パイプやら銃火器やらが一通り並んでいた。

中也は小さく溜息を吐いて向き直る。

「…あの葡萄酒は美味かったな。だからって手加減はしねぇけどな!」

走り寄り、正拳を繰り出す。

式部はそれを避けながら中也の顎を蹴り上げる。

「っ!」

中也が怯んだ一瞬の隙をついて身体の下に潜り込む。

中也はそれを利用して蹴りを食らわせるが、腕でガードされる。

式部は後方に吹き飛ばされた。

派手な音を鳴らし、衝撃で埃が舞う。

「動きを読まれている…?」

中也はつい最近首領の命で渋々共闘してしまった者を思い出す。

真逆あいつと同じ位…いや、それ以上に頭がキレるのか?そんな奴この世に…

「んな訳ないだろ。勘だよ」

後方から声が聞こえる。

中也は咄嗟に腕でガードする。

式部の蹴りが入り、中也が吹き飛ばされる。

「今のお前みたいにな」

コートをを翻しながら着地する。

「ちっ…ココまでとは思ってなかったな…」

中也は着ていたコートを脱ぎすてる。

「餓鬼は大人に勝てねぇって事、教えてやるよ」

鋭い視線を式部に向ける。

中也は壁を踏み台にし、跳躍して加速する。

「オラァッ!」

鋭い正拳が繰り出される。

式部はそれを寸前で避けるが、頬に擦って血が流れる。

「やってやろうじゃねえか…!」

不敵な笑みを浮かべながら言う。

「…やれるものなら」

中也の殺気が膨れ上がった。

その後も中也の攻撃を全て避けていく。

その間式部は一切の攻撃をしなかった。

「てめぇ…遊んでるだろ」

「そうだけど」

話しながらも式部は軽く避ける。

「糞っ!当たらねぇ!」

「そりゃあ当たったら俺が危ないからな。あんなのまともに食らったら大人でも骨が折れる」

「その位本気でやってんだよ!お前も少しは攻撃しろ!」

「そう言われてもな…」

コキッと首を鳴らす。

「パワーに関しては最初ので精一杯だし、お前にとっては楽しみたいのかもしれないが俺にとっては負けないだけで良いんだよ」

中也の蹴りを避ける。

「分かっててやってるのか…本当にあの糞鯖に似てやがる」

勢いを利用し、そのまま拳を出す。

式部はそれを飛んで避ける。

「なら一発あてるか」

飛んだ姿勢のまま中也の頭に手を置き、足を振る。

それを避けようとするが、中也が見た先に足は無かった。

「逆だよ」

式部は中也の頭を軸にし、ぐるりと回って踵で後頭部を蹴る。

ガンッ!

蹴りをまともに喰らい一瞬思考が止まる。

そのまま空中で半回転して背中に回し蹴りを入れる。

「ガハッ…!」

衝撃で吹き飛ばされそうになる中也の足を引っ掛け、体制を崩す。

前のめりに倒れる体制になった所で、両手を組んで後頭部に落とす。

ゴスッ!

中也は頭から地面に落ちる。

数秒の出来事だった。

式部の黒いコートがバサリと揺れた。

倒れている中也を静かに見つめる。

「ポートマフィアの幹部が餓鬼にやられるわけねぇだろ…!」

頭から血を流しながら体制を整え、式部の頭に目掛けて蹴りを繰り出す。

それを式部は不自然に下に避ける。

中也は一瞬違和感を感じたが、構わずに背中に目掛けて足を振り下ろす。

ゴスッ!!

それは中也の目掛けた場所にピッタリ命中した。

「ガハッ…!」

式部は少し痙攣した後、うつ伏せになったまま動かなくなった。

「は?」

避けられる前提の蹴りが当たり、中也は驚く。

咄嗟に罠の可能性が浮かび、距離をとる。

が、一向に立ち上がる気配は無い。

「…おい、大丈夫か?」

警戒しつつ近寄り、声をかける。

首領からの命令はこの勝負に勝ち、タキシードを着せる事。殺しては意味が無い。

取り敢えず近くにしゃがみ込み、デコピンを一発。

ビシッ!

反応は無い。

だが、背中が微かに振動しているところを見ると死んでいる訳では無さそうだ。

取り敢えずコートを拾ってから式部を担ぎ上げ、部屋を出る。

「おや、もうすぐだとは思っていたけど早かったね。珍しく怪我をしているじゃないか」

首領は紅茶を飲みながら言った。

「すみません、俺の力不足で…」

「中也君は悪くないよ、今回ばかりは相手が悪かった。少し借りてくよ」

ニコニコと笑いながら式部を受け取り、奥の部屋へ入る。

「あ、終わったの?」

奥の部屋からエリスの声が聞こえる。

「じゃあ今のうちにタキシード着せちゃうからリンタロウ手伝って!」

「もちろん!」

首領の明るい声が聞こえた。


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