二次創作小説(紙ほか)

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※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
日時: 2021/09/10 03:28
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。

初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。


コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!



※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。

・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。

・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。

・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。


2016/12/30 閲覧数100突破!本当に感謝です!

2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!

2017/02/09 閲覧数300突破!唯々感謝です!

2017/03/01 閲覧数400突破!感謝感激雨霰です!

2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!

2017/04/23 閲覧数600突破!泣くほど感謝です!

2017/05/13 閲覧数700突破!感謝しすぎで死にそうです!

2017/05/28 閲覧数800突破!本当に有難う御座います!

2017/06/21 閲覧数900突破!物凄い感謝です!

2017/07/02 閲覧数1000突破!信じられないです…有難う御座います!!

2017/07/18 閲覧数1100突破!有難う御座います!

2017/08/03 閲覧数1200突破!感謝ですっ!

2017/08/30 閲覧数1300突破!有難う御座います有難う御座います

2017/09/24 閲覧数1400突破!本っ当に有難う御座います!

2017/11/03 閲覧数1500突破!感謝しかないです!

2017/11/29 閲覧数1600突破!本当に感謝します!

2018/01/08 閲覧数1800突破!1700飛ばしてすみません!有難う御座います!

2018/01/13 閲覧数1900突破!年始効果でしょうか…有難う御座います!

2018/01/27 閲覧数2000突破!こ、これは…夢でしょうか…?!本当に、心から感謝致します!!

2018/03/07 閲覧数2100、2200突破!1つ逃してしまいました…ありがとうございます!

2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!

2018/04/17 閲覧数2400突破!間に合わないのがとても嬉しいです…!

2018/05/13 閲覧数2500突破!いつの間に…?!有難う御座います!!

2018/05/20 閲覧数2600突破!とてもとても!感謝でございます!!

2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!

2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!

2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!

2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。



何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!


2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.1 )
日時: 2017/10/18 12:30
名前: ぴろん (ID: eso4ou16)

〜紫眼に惹かれて現世を〜

・設定・


・紫 式部

漆黒の長髪に紫の瞳。
裾が地面につく程のぶかぶかの黒いフード付きコートと長い紫色のマフラーのみを身に付けており、常にフードを深く被っている。身体中に包帯が巻かれているのは昔の傷跡を隠す為。
一人称は俺。
無愛想で思った事を直ぐ口に出してしまう様な性格だが妹想いの優しい性格でもある。
気に入っているのか、名乗る時は大抵偽名を名乗る。
過去の事もあり貧血で虚弱体質だが武道に優れていて異能を使わないでも特殊部隊以上の戦闘能力を持つ。

好きな物:納言、マフラー、書物
嫌いな物:自分、生死、自分の異能力、蝸牛

異能力【源氏物語】

あらゆる空間を操る事の出来る能力。
異空間を作り出したり生死や時間、更には他者の記憶や意識の『空間』を操る事も可能。
また、制御する事が出来ない事もあり、暴走する。









・清少 納言

紅茶色の緩い天パに瑠璃色の瞳。
白の猫耳フードのコートを羽織っていて、首には瞳と同じ瑠璃色のマフラーを巻いている。異能の発動を防ぐため、手には常に白の手袋をしている。
フードは良く被っているが、暑い時は外す。
一人称は私。
式部とは正反対に天真爛漫な性格。
式部の事をおにーちゃんと呼ぶ。(本人曰く呼びやすいから)その為か、発音に謎のこだわりがある。
式部に合わせた偽名を持つが、名乗る時は本名の「清少 納言」と名乗る。

好きな物:おにーちゃん、猫、紅茶
嫌いな物:美味しく無いもの、珈琲、悪い人

異能力【枕草子】

触れた物に命を吹き込む事の出来る能力。
生物には発動しないが、水やスライムなどの液体、半固形体にも発動する為極めて危険な異能力。
本人はそれを制御できないため、手袋をはめて発動を抑えている。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.2 )
日時: 2016/12/27 10:40
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

〜Prologue〜


丑三つ時

狭い路地裏に大小2つの陰が揺らめく

大きな影は悲鳴をあげて崩れる

長いマフラーとコートを翻し

小さな影は闇に消える

月光は傾き、小さな影を更に暗く染める

光は影を更に深い闇へと誘っていく

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.3 )
日時: 2016/12/27 10:41
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

1間目



太陽が地面を照らす。
地面には今朝の霜が薄っすらと残っている。

今日の早朝、探偵社に一通の手紙と地図が届いた。

〈本日13時、保護して欲しい者がいる。名は
神代 瑞樹。其方から社員1人を地図の示す
場所に来させろ。出来るだけ待たせないよ
うに頼む。 神代 御影〉

字は達筆だが不躾な文章。しかし、依頼料も同封されていたので断る事も出来ずに探偵社は1人の使いを出した。

「はぁ…いくら何でも酷いよ…」

ため息を吐きながら歩くのは、武装探偵社員の太宰 治。相手の異能力を無効化するという格も奇異なる異能力を持つ男だ。

罠の可能性が非常に高いため、一番暇そうで一番何にでも対応できると判断された太宰が使いに出され、ついでに差出人の意向も探って来いとの命も出た。

「全く…私も暇では無いのだよ?取り敢えず保護したら国木田君に押し付けてやる!」

ブーブーと愚痴を零しながら路地裏を歩くを

「さて、地図の場所はココだね。」

角を曲がる。

そこには、白いコートを身に纏い瑠璃色のマフラーを巻き、大き目のリュックを背負った(というより背負われた)少女が佇んでいた。歳は10歳未満と思われる。

「神代 瑞樹ちゃんかな?」

依頼文に書かれていた名前を呼ぶ。

すると、その子はパアッと明るい笑顔を浮かべる。

「お兄さんが私を迎えに来てくれた人だね!初めまして!」

太宰はその瑠璃色の瞳を見つめる。

曇りの無い瞳。その瞳に嘘が無いと判断した太宰は、にっこりと笑う。

「初めまして。瑞樹ちゃん。私は太宰 治だ。好きな風に呼んでね。」

「うん!でも私の名前は瑞樹じゃないよ」

自然に返された言葉に太宰は首を傾げる。

「でも依頼書には神代 瑞樹って書かれていたよ?」

「おにーちゃんとお揃いなの!えーと…そう!偽名なんだって!」

人差し指をピッと立てて言う。

「じゃあ本当の名前を聞いても良いかな?」

「うん!私は、清少 納言って言うの!」

思ったよりもアッサリと教えてもらえた。

「納言ちゃんか。君はそのお兄さんに何て言われたの?」

「私の偽名を知っている人について行けって!おにーちゃんが信頼できるよって言ってた!」

太宰はしばし黙考する。

誘拐や人身売買の線は薄いな…彼女はそのお兄さんとやらを信頼しているし、何より嘘を吐いていない。

「そうか、じゃあおいで。お腹は空いているかい?」

「さっきおにーちゃんがご馳走作ってくれたから大丈夫!」

そう言って彼女は白い手袋をした小さな手で私の手を掴む。

「おにーちゃんがね、その人に会ったら手を繋げって。仲良くなる為にきちんと挨拶もしろって言ってた!」

悪い事をさせている訳でもなさそうだ。

「お兄さんはどんな人なんだい?」

「私が生まれた時から一緒なの。頭も良くてご飯も作れるんだよ!でも一寸恥ずかしがり屋さんかな?」

純粋そうな子だ。

太宰はこの子を危険では無いと判断し、さらに問う。

「納言ちゃんは今までその人にどんな事をされていたの?」

「えーと、この服をプレゼントしてくれたり、ご飯を作ってくれたり、子守唄を歌ってくれたり!でもたまに怒ると凄く怖いの」

大袈裟に肩をすくめる。

「そのお兄さんに挨拶がしたいな。連れて行ってくれるかい?」

「うーん…連れて行きたいけど、おにーちゃんが会いに来るなって言ってた。」

会いに来るな?今の話を聞く限り…いや、もしかして…

「…大丈夫?」

「ん?どうしたの?」

「えーと、太宰さん。難しい顔してたよ?」

納言は心配そうな顔で太宰を見上げる。

「そう?心配させてゴメンね」

「平気なら良いよ〜」

トコトコと後ろをついてくる。

早く歩き過ぎたかな。

「何時もはココに住んでるの?」

少し待ちながら、質問を続ける。

「うん!2人で暮らしてるけど、路地裏からはあんまり出ないの。おにーちゃんがたまにお金をもらいに行くけど私は待ってるだけ」

少し不服そうに言う。

「あと夜にはうろつくなって!それだけ守れば何処へ行っても大丈夫なんだよ」

「何処へ行っても?」

「うん!前、黒いお兄さんに声を掛けられた時もいつの間にかお家に帰ってた!魔法を使ってるんだよ!」

いつの間にか家に…?

少なくともココ、路地裏は安全な所では無いはずだ。しかも、こんな年端も行かないような少女が生き残れる場所では無い。

という事は…

「ねぇ、納言ちゃんも魔法使える?」

「うん!他の人達は異能力って言うけどね」

やっぱりか。

おそらくそのお兄さんも異能力者だろう。となると、この子を保護して欲しいという事は他の組織に狙われるこの少女を探偵社で引き取って匿えという事か…

でもそれならお兄さんも匿った方が良さそうだね。楽しそうだし!

「納言ちゃんの魔法、見せてくれる?」

「うーん…良いけど一寸だけだよ?」

楽し気な表情を浮かべ、彼女は手袋を外す。

「じゃあ…この石ころさん!お友達になってくれる?」

彼女がその白い手で道に落ちている小石に触れると、眩い光が辺りに広がった。

異能力【枕草子】

少女は手袋をはめ直してから、石ころをこちらに見せる。

「じゃーん!」

その石ころは…ピョンピョンと動いていた。

「コレが…納言ちゃんの魔法?」

「そう!触った物が動くの!」

「なんでも?」

「うーん…このまえ潰れちゃった虫さんにタッチしたけど無理だった…あ!コップの水は動いたよ!チャプチャプ〜って!」

なるほど、この子は生物以外のものに命を吹き込む事が出来るのか…

なんて危険な異能力なんだ。

「太宰さんも魔法使える?」

「一応使えるけど、私のは納言ちゃんみたいに楽しいものではないよ」

「そうなの?でもおにーちゃんは凄い魔法を持ってる人が来るって言ってたよ!私の石ころさんを眠らせちゃうんだって!」

「?!」

太宰は驚く。

確かに自分の異能力は相手の異能力を無効化出来る為、彼女の言っているようにこの動く小石を元の石ころに戻す事が出来る。
だが、必ずしも太宰が行くとは限らないのだ。他にも仕事の無い社員は大勢おり、太宰以外の候補も出ていた。
なのに何故、その人は自分が来ると予測できたのか。

「出来る?」

納言の声で我に帰る。

「ん?あぁ、出来るよ」

「良かったー!私の石ころさん達、おにーちゃんが何時も眠らせてくれるけど自分では眠らせれないの。お願いね!」

はいっ!と無邪気に渡された石ころにそっと触れる。

【人間失格】

先程まで跳ねていた石ころは、太宰に触れられた途端静かになり、元の石ころに戻った。

「おぉ〜!太宰さんの所に行くなら私も大丈夫だね。あとはお仕事を貰わなきゃ!」

「お仕事?」

「迎えに来た人の会社に入って仕事しろって言ってた」

「本当に?」

「うん!私お仕事した事ないけど、洗い物も出来るしお洗濯も出来るよ!お友達に手伝ってもらうけどね」

保護ではなく採用…何か引っかかるな…まぁ楽しそうだしいっか!

「納言ちゃんは字とか書ける?」

「金髪の眼鏡の人に習えって」

「国木田君に?!」

思わず声をあげる。

社員の事まで知ってるのか…にしても、国木田君は確かに最適かもねぇ。鏡花ちゃんも今習ってる所だったかな?

「オレンジの髪の人と白の髪の人は優しいって言ってた。でも白の人はあんまり質問しない方が良いって!」

おぉ、結構詳しく調べてるんだねw

「他には?」

「お姉さんがたくさんいて、蝶々が頭についてる人はお医者さん!あとは私よりちょっと上の着物の女の子もいて、一緒に勉強してって。他の人は魔法を使えないけど良い人だって言ってた!」

「ほうほう」

「麦わら帽子の人は明るくて優しいんだって。でもお仕事の時にはご飯をあげたらダメって言ってたなぁ…」

異能力も熟知してるのか。

「帽子を被った吊り目のお兄さんは偉いからちゃんと挨拶しなさいって。おにーちゃんよりも頭が良いんだって!」

「へぇ〜」

「着物で背が高い人が社長さん。とっても強くてとっても良い人。えーっと、冷静沈着で趣がある。じんぎって言ってたっけ?」

「なるほどねぇ、私の事は?」

「迎えに来てくれる人は、川に飛び込んでも助けないで良いんだって!でも一緒に飛び込んじゃダメ。何時もは面白い事言ってるけど本当は凄い人なんだよって!」

「照れるなぁ」

ぽりぽりと頭を掻く。

「あとは…ポートマフィアの人は何時もは近づいちゃダメって言ってたけど、今は良いよって。でも太宰さんと一緒の時は小ちゃい帽子の人に会っちゃいけないって。」

「小ちゃい帽子ww」

色々と話していると、探偵社のビルが見えてきた。

「納言ちゃん、ココの煉瓦のビルが私がいる所だよ。」

「おおー!凄いね!大きい!」

「一階に行けば綺麗なお姉さん達が珈琲を出してくれるよ」

「うげ…コーヒー嫌い…」

見るからに嫌そうな顔をする。

「じゃあ何が好き?」

「紅茶!」

笑顔で即答する。

「うふふ、紅茶も出してくれるよ」

「本当?!やったぁ!」

嬉しそうにスキップをしながら建物に入っていった。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.4 )
日時: 2016/12/27 10:42
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

2間目


色々と話しながら建物の中を歩く。

「社の名前は武装探偵社。探偵社は4階だよ」

エレベーターを使い、探偵社に向かう。

「コレがエレベーター…」

「ん?乗った事ないの?」

「本で写真は見た事あるよ!」

「へぇ、そうなの」

チーン♪

音と共にドアが開く。

「ココが探偵社。取り敢えず皆に挨拶しようか」

「う、うん!」

流石に緊張しているらしく、少し強張った顔になる。

ガチャッ

「たっだいまぁ〜」

「遅い!もう13時28分47秒だぞ!13時25分には帰って来いと言っただろうが!これだからお前は…む?その少女は…」

帰って早々怒号で迎え入れられる。

彼の名は国木田 独歩。理想を行く現実主義者であり、現実を行く理想主義者である。可哀想なことに太宰の相棒だ。

太宰はヘラヘラしながら答える。

「依頼書に書いてあった子だよ。まぁ、神代 瑞樹は偽名で、本名は清少 納言って言うらしいけど。ココで働きたいそうだよ」

「なに?ココでか?」

国木田は立ち上がり納言の前に立つ。

「せ、清少 納言と申します!おにーちゃんに言われてお仕事をさせて頂きたくココへ参りました!よろしくお願い申し上げます!」

先程まで話していた口調とは打って変わって堅苦しい口調で話す。

「私が話した限りとっても良い子だったよ?純粋な女の子だし嘘を吐かない。まぁココに入るかどうかは私が決める事じゃあないけどねぇ」

太宰が付け足す。

「そうか、お前にしては高い評価だな。む、すまん。自己紹介が遅れた。太宰の同僚の国木田だ。依頼書にはココで保護して欲しいと書かれていたが、仕事をしたいのか?」

「はい!でもそれには読み書きを習う必要があるのです。国木田先生お願い致します!」

「は?まさか太宰…」

国木田はジロリと太宰を睨む。

「私は言っていないよ?納言ちゃんのお兄さんの指示だそうだ。金髪眼鏡の人に習えってさ。鏡花ちゃんも教えている訳だし、丁度良いじゃあないか。それに依頼人さんからのお願いだよ?」

ニヤニヤしながら太宰は言う。

「ぐ…」

嫌そうな顔をする国木田を無視して太宰が進める。

「読み書きはどの位出来るのかは聞いていないけどね。納言ちゃん、これは読めるかい?」

「え?理想…だよね?」

太宰の手には表紙に〈理想〉と書かれた緑色の手帳が摘まれている。

「おい!それは俺のだろう!」

すぐさま国木田はそれをひったくり、パラパラと頁を確認する。

「じゃあ…コレは?」

手元の本を取る。

「完全自殺読本」

「コレ」

「武装探偵社マニュアル」

「ほう…読みは大分出来るみたいだね」

「本当?」

先程の硬い表情から、嬉しそうな表情になる。

「じゃあ書きを見なきゃねぇ…取り敢えずココに私の言う言葉を書いてくれる?」

「はい!」

太宰の渡した紙とペンを受け取る。、

「じゃあ…首吊り健康法」

「もっとマシな単語は思いつかんのか」

「良いじゃないか」

「えーと…首…吊…り…健…康…法…」

整った字が紙に記入される。

「んー?漢字も書けてるね。読み書きが出来ないって訳では無いなら何が出来ないのだい?」

「えーと…おにーちゃんが言ってたのは、パソコン?カタカタって打ち込むの。」

納言は指を動かして真似てみせる。

「パソコン?事務のバイトなら間に合っている。雇う必要はない。」

「そうだねぇ。まぁこのまま軍警とか孤児院におさらばって事になるね。彼女が非異能力者なら」

「なに?」

国木田の表情が強張る。

「太宰さん、何の話?」

「納言ちゃん、多分君は暫くココでお世話になるだろう。そこのお姉さん達に挨拶に行ってきてね」

「うん!分かった!」

トテトテと可愛らしい足取りで部屋の奥へ進む。

「…で、聞き捨てならんな。先程の言葉。」

「彼女は異能力者だ。それもかなりの逸材。本人は魔法だと言っていたけどね」

小さな声で言う。

「では依頼人は…」

「彼女…いや、彼女の異能を狙う組織から守って欲しいのだろう。先程から納言ちゃんが言っているお兄さんが依頼人だ。おそらく、彼も何らかの異能を持っているよ。それもかなり危険な」

「ならばそいつも保護しなければならないのではないか?何故連れてこなかった」

国木田の問いに太宰は冷静に答える。

「うん、そうだね。確かにそれも考えた。だから納言ちゃんに場所だけ聞いておいたよ。彼女曰くココは信頼できると言われたそうだ。それと会いに来るなと」

「…訳ありのようだな。」

国木田は眼鏡を直しながら言う。

「彼の事はまだ分かってないけど、多分国木田君じゃあ敵わないだろう」

「俺でも敵わないだと?どんな異能だ。」

国木田は異能が万能系だがその分武道に長けており、かなりの実力がある。

その国木田が敵わないというならかなり強力な異能なのだろう。

「それはわからない。けど、納言ちゃんの異能は『あらゆるものに命を吹き込む』能力だ。自分ではそれを解除できない。」

「なるほど…使い方によっては危険な能力だな」

難しい表情で言う。

「さっき見せてくれたよ。私が触ったら当たり前だけど元に戻った。けど、何時もはそのお兄さんが戻してくれているらしい」

「異能を…解除しているのか?」

「方法は分からないけどね。まぁ…凄く楽しそうじゃない?」

へらっと笑ってそう言う。

「お前は何時もそう言って面倒事を運んで来るんだ!少しは緊張感を持って行動しろ!」

「そういえば今日は誰がいるの?」

サラリと話題を変える太宰。

「社長以外は下で休憩を取っている。俺もそろそろ行くところだ」

「じゃあ納言ちゃんも連れて行こう!」

「お前は雑務が残っているぞ」

ピシリと言う。

「腹が減っては戦は出来ぬ!」

「おい逃げるな!」

怒号から逃げるように事務員の方へ向かう。

「納言ちゃん、コレから下に行って一緒に働く人の所へ行くけどどうする?

「うん!行く!」

元気よく返事をして事務員に手を振り、出口へ向かう。

「まて、お前と2人だけだと何が起こるか分からん。俺も行く」

「なぁに?心配なの?納言ちゃんの事」

「当たり前だろう。お前と誰かを2人にするとロクな事にならん。…さて、納言」

「はい!」

会社のドアを開け、エレベーターに乗る。

「入社試験はまだだが、今から会う人達はお前の上司になるかも知れん。敬語は忘れずにな」

「分かりました!」

「私にも…」

「うん!太宰さんよろしく!」

「私も含まれるって分かってるのかなぁ…」

そう呟いて不安気な溜息を吐いた。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.5 )
日時: 2016/12/27 10:42
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

3間目



エレベーターから降りて直ぐそこのドアに入る。

「いらっしゃいませ〜!」

愛想の良い笑顔で迎えられ、流れるように席に着く。もう既にいくつかの席は埋まっていた。

「紹介する。今朝の依頼書に書かれていた人物、清少 納言だ。」

「よろしくお願い致します!」

ペコリと頭を下げる。

「あれ?でも依頼書には神代 瑞樹って…」

「偽名みたいだよ。あれ」

「ほう。あんたらにしては随分と可愛い娘を連れて来たねェ」

「本当に可愛らしいですわね!鏡花ちゃんよりも年下かしら?」

「うーん…多分そうだね」

「こんにちは!」

「年下…」

随分と個性豊かな人達が集まっている。

「じゃあまずは自己紹介と行こうか、ね?敦くん!」

いきなりの展開に慌てる。

「僕ですか?!あ、えーと、中島 敦と言います!僕もまだ入り立てで頼れないかも知れないけど宜しくお願いします!」

「場所的に次は僕ですね。名前は谷崎です。主に事務的な仕事をやっています。こっちは妹の…」

「ナオミですわ!」

ナオミがギュッと抱きつき、谷崎は小さな呻き声を上げる。

「泉 鏡花。14歳。好きな物は豆腐と兎。嫌いな物は犬と雷。よろしく」

「名前は与謝野 晶子。この探偵社の専属医をやってるよ。じゃんじゃん怪我して構わないからねェ?」

「宮沢 賢治です!まだまだ未熟者ですが、一応先輩です!よろしくお願いします!」

「よ、よろしくお願い致します!」

見える範囲の全員と挨拶をする。

「そして、其方にいらっしゃる方が我が武装探偵社を支えて下さっている、江戸川 乱歩さんだ」

国木田が恭しく紹介する。

そこには、暇そうにビー玉を弄る乱歩の姿があった。

納言は乱歩に一歩近づく。

「初めまして、清少 納言と申します。コレから暫くの間お世話になります!」

ピンと背中を張り、そのまま深く礼をする。

「んぁ?何、また新入社員入れるの?」

「今朝の依頼書の通り保護をするとして扱います。その他の事はまだ未定です」

「あぁ、あの紙っぺらね」

面倒臭そうに欠伸をする。

納言はその様子に少しも表情を変えず、声を出す。

「江戸川様はとても素晴らしい御人だとおにーちゃんからお聞きしております。他の方とは違う素質をお持ちだと。」

乱歩がピクリと反応する。

納言はそのままリュックを下ろし、中から箱を取り出す。

「お世話になるのでお近づきの印にと」

両手でそれを乱歩に渡す。

乱歩は適当に箱を開け、間を置き、閉じる。

そして、ジッと納言を見つめる。

周囲に緊張が走る。

少しした後、乱歩が楽しげな声を発する。

「うん、宜しくね〜」

無邪気に笑いながら発せられた声は、納言の肩をゆっくりと下げる。

「中身は何ですか?」

「お菓子!ぜーんぶ僕のだからね!」

「承知しております」

先程までの強張った雰囲気は消え、店内に和やかな雰囲気が戻る。

「あ、そうだ。太宰さんにコレ!おにーちゃんが包帯ぐるぐる巻きの人にって!」

リュックから小さな紙を出す。

「私に?」

「うん!私は中身を見ちゃダメって言ってたから知らないけど、絶対に渡せって」

太宰はメモを開き、目を通す。

「…なるほどねぇ…」

目に見えて嫌そうな顔をして、またメモを折り畳み、自分のポケットにしまう。

「あ、紅茶って何処にあるの?」

「飲みたい?」

「うん!」

「でも困ったなぁ…今日は持ち合わせ無いしねぇ」

チラリと国木田を見る。

「お前は何時も持っていないだろう。俺は払わんぞ」

国気にピシリと言われ、太宰は苦笑いを浮かべる。

「あら、大丈夫ですよ。太宰はさんのツケで払っておきますから」

「またまたご冗談を〜」

太宰の言葉を気にもせず、店員は紅茶を淹れる。

「230円ですね」

そう言いながらカリカリとメモを取る。

「あれ?もしかして本気?」

「もちろんです。それにしても大分溜まってますよ。ウチのツケ」

店員はニコニコ顔で答える。

「あははは…」

「そういえば鏡花ちゃんと納言ちゃんってどっちが背が高いんですか?」

「年齢は鏡花ちゃんの方が上ですよね」

「ちょっと二人、並んでみて下さい」

他の人達がワイワイと騒ぎ始める。

「鏡花さんの方が大きいです!」

トコトコと近寄ると、確かに10センチ程の身長差がある。

「私より小さい…」

「そういえば納言ちゃんは年幾つなんですか?」

ナオミが何気なく聞く。

「分からないですけど…10歳より下だと思います。多分」

「え?分からないって言うと…」

谷崎が不思議そうに聞くと、与謝野が代わりに答える。

「あんた路地裏から来たんだろう?なら分からなくても仕様がないねェ」

「…あ!すみません。失礼な事を…」

「いえ、大丈夫です!でも年齢ならおにーちゃんが知ってるかも知れないです」

「そのさっきから言ってるお兄さんってどういう人なの?」

「えーと…」

敦の質問に少し考えてから答える。

「おにーちゃんはおにーちゃんです。」

「う、うん。兄弟なの?」

納言は鏡花の隣の席に座る。

「多分です」

「多分って…」

「えーと、おにーちゃんはおにーちゃんですけど、お兄ちゃんじゃないんです」

「なんか哲学みたいになってきたねぇ」

太宰がクスリと笑う。

「はい、紅茶どうぞ」

「ありがとうございます!」

そーっと受け取って一口飲む。

「はぁ…美味しい…」

「紅茶好きなのかィ?」

「はい!何か温まってホッとします」

「そうか。じゃあ今度良い茶葉を持って来てやるよ」

与謝野はニコニコしながら話す。

「はい、クッキーも」

「わぁ!良いんですか?」

「サービスですよ♪」

店員も納言の笑顔につられて笑う。

「美味しいです!」

小動物のように両手で持ってサクサクと食べる。

「鏡花さんもどうぞ!」

「良いの?」

「はい!美味しいですよ?」

「…ありがとう」

一枚受け取り、食べる。

「美味しい…」

「皆さんで食べた方が美味しいですよ!どうぞ!」

クッキーを持って配り始める。

「あら、ありがとうございます」

「ありがとう」

「ありがとうございます!」

「ありがとねェ」

「ありがとうございます」

「ありがと」

「江戸川様は3枚です」

「おや、気が効くねぇ。にしても江戸川様なんて初めての呼び方だ。新鮮で良いね」

「ありがとうございます!あ、国木田さんもどうぞ」

「俺は要らん。」

スパッと返される。

「お嫌いですか?」

「嫌いでは無い。が、要らん」

そっぽを向きながら言う。

「柄じゃ無いんもね〜」

「五月蝿い!」

言い合っている二人の間に入るように立つ。

「美味しいので、どうぞ」

クッキーの乗った皿を差し出す。

「だから要らんと…」

「皆で食べた方が美味しいです。どうぞ」

目の前にビシッと差し出す。

「だから…」

「どうぞ」

「……」

暫く黙った後、国木田は皿から一枚のクッキーを摘み上げた。

それを見て納言はパアッと明るい顔になる。

「ありがとうございます!」

「礼を言われる程の事はしていないだろう」

目を逸らしてクッキーをかじる。

「暫くの間納言ちゃんは癒し要因だね」

太宰は楽しそうに呟いた。


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