二次創作小説(紙ほか)
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- ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
- 日時: 2021/09/10 03:28
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。
初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。
コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!
※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。
・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。
・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。
・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。
2016/12/30 閲覧数100突破!本当に感謝です!
2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!
2017/02/09 閲覧数300突破!唯々感謝です!
2017/03/01 閲覧数400突破!感謝感激雨霰です!
2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!
2017/04/23 閲覧数600突破!泣くほど感謝です!
2017/05/13 閲覧数700突破!感謝しすぎで死にそうです!
2017/05/28 閲覧数800突破!本当に有難う御座います!
2017/06/21 閲覧数900突破!物凄い感謝です!
2017/07/02 閲覧数1000突破!信じられないです…有難う御座います!!
2017/07/18 閲覧数1100突破!有難う御座います!
2017/08/03 閲覧数1200突破!感謝ですっ!
2017/08/30 閲覧数1300突破!有難う御座います有難う御座います
2017/09/24 閲覧数1400突破!本っ当に有難う御座います!
2017/11/03 閲覧数1500突破!感謝しかないです!
2017/11/29 閲覧数1600突破!本当に感謝します!
2018/01/08 閲覧数1800突破!1700飛ばしてすみません!有難う御座います!
2018/01/13 閲覧数1900突破!年始効果でしょうか…有難う御座います!
2018/01/27 閲覧数2000突破!こ、これは…夢でしょうか…?!本当に、心から感謝致します!!
2018/03/07 閲覧数2100、2200突破!1つ逃してしまいました…ありがとうございます!
2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!
2018/04/17 閲覧数2400突破!間に合わないのがとても嬉しいです…!
2018/05/13 閲覧数2500突破!いつの間に…?!有難う御座います!!
2018/05/20 閲覧数2600突破!とてもとても!感謝でございます!!
2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!
2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!
2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!
2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。
何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!
2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.56 )
- 日時: 2017/02/26 19:03
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
あぁ、真珠様!
返事が遅れてすみません。自分は携帯の機種変更をしておりましたm(_ _)m
外伝の皆様はなんとなく出したいなぁと思っておりまして。
自分のイメージで書いてしまっている所もあるので違和感があるかもしれませんが、何とか魅力を伝えられていたら幸いです!
自分も毎度のことながら、コメント有難う御座いました。これからもコメントを力に頑張っていきます!
追記
題名変えたと思っていたら出来てませんでした…
今度こそ変えておきましたのでお許し下さい( ′0ω0)
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.57 )
- 日時: 2017/03/01 18:20
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
32間目
「式部さんって小説家だったんですか?」
特務科へ向かう途中で辻村が問う。
「小遣い稼ぎ程度だ。売れるものが無くなったら書いて売る」
スタスタと先を歩く式部を追って歩く。
「この感じも綾辻先生に似てる…」
ボソリと呟いて少し歩くスピードを上げる。
「あ、そうだ。式部さんの異能の説明って大分アバウトですよね。詳しい事とかはまだわかってないって…」
「俺だって分かってねぇよ。最近やっと勝手がわかってきた位だ。色のつけ方とか」
辻村の周りにボンヤリとした薄い青色の花弁が舞う。
それに触ろうとするが、すり抜けてしまい触る事が出来ない。
「要するに手品の技術を上げたって事だ。下らないだろ?」
クルクルと舞った花弁は少し下に落ちたかと思うとフワリと浮いて集まり、一輪の薔薇を形取る。
もう一度触れようとすると、それは弾けて無数の結晶となった。
「綺麗ですね…」
「まぁ多少の金は稼げる」
「そういう事じゃないです!」
辻村はそんな会話をしながら思う。
この人真逆お金の事しか考えてないんじゃ…
「声に出てるぞ」
「へっ?!」
慌てて口を塞ぐ。
「路地裏の住人は金を稼がないと冬は野垂れ死ぬ。だから必死で金儲けの方法を探すんだよ」
「そうですか…」
「政府機関はあそこを放ったらかしてるから非合法の奴達の拠点になるのも時間の問題だ。今は何とかしてるけど俺が死んだら一気に増えるだろうな」
「え?それってどういう…」
辻村が問う前に式部が立ち止まる。
目の前には大きな建物があった。
「あれ?私達そんなに歩きましたっけ」
「着いたんだからそうなんだろ。早く来い」
そう言って中に入る式部に着いて行く。
式部は警備員やガードマンに注意される事なく奥へ進んでいく。
式部さんの事は特務科しか知らない筈なのに誰も注意しない?此処の警備はどうなってるのかな…
疑問に思いながらも早足で着いて行く。
「式部さん背小さいのになんで歩くの速いんですか」
「背が高ければ速いのか」
「そういう意味じゃないです!」
周りの目を気にして少し抑えた声で怒鳴る。
「ならさっさと歩け」
スタスタと歩き、エレベーターに入る。
辻村も後を追って入り、閉じるボタンを押す。
扉が完全に閉じたのを確認してから式部はエレベーターの中で座り込んだ。
「汚いですよ」
「そんなに立ってられないんだよ。血が足りない」
ダルそうに息を吐く。
「それなら病院に行って輸血でもしてくれば良いじゃないですか」
「置いてないんだよ」
式部がぶっきらぼうに言う。
「置いてないってどういう事です?」
「…俺の血液型なんだと思う?」
質問に質問で返されて少しムッとしたが、辻村はうーんと唸って素直に考える。
「…A型?」
「違う」
「B型ですか?」
「違う」
「AB型?」
「ハズレ」
「あ、じゃあO型なんですか?なんか意外…」
「違う」
「え?」
辻村は自分で言った言葉をもう一度確認する。
「…他にありましたっけ」
「あるにはある。RH型とかな」
エレベーターが止まり、式部は立ち上がる。
「俺の血液型は一番近いのがRh null。約40年前に発見された極めて稀な物だ」
エレベーターを降りながら言う。
「RH型って言うのは聞いた事があるような気がしますけど…その血液型の人って世界に何人位いるんですか?」
「43人」
先程よりも少し遅めのペースで歩く。
「ついでに言うと俺のはそれに近いだけで同じではない。未だ発見されてない原子でも入ってるんだろ。お陰で年中貧血だ」
「もし血が足りなくなったりしたらどうするんです?」
「折口が作った薬はあるが気休め程度だからな。最悪死ぬ」
「死ぬ?!」
大声を出してしまい、辻村は慌てて口を押さえる。
「じゃあもし首とかそういう所を切られたりしたら…」
「あぁ、それ位じゃ死ねないから平気。昨日ここ撃たれたし」
首の後ろを指差して言う。
「撃たれ…?」
「色々恨み買ってたりするから。よくある事だ」
何でもないような顔で言って扉を開ける。
「お早うございます」
安吾が奥のデスクから言う。
「お早うございます!」
辻村がビシッと姿勢を正して言う。
「…返す」
安吾の机に小さな物がぽとりと落ちる。
「政府機関が犯罪まがいの事するんじゃねえよ」
「やっぱりバレてますよね。バレないように一応辻村君の方に付けたんですけど」
「え?何をです?」
「盗聴器です」
机の上の小さな物を拾い上げる。
「壊さないでやっただけ良いと思え」
「途中でちょくちょく妨害電波を流していたのは誰ですか。お陰で朝から耳が痛い」
イヤホンを外し、耳を押さえる。
「さ、坂口先輩、私に盗聴器仕掛けてたんですか…?」
「えぇ、昨日のうちに式部さんに仕掛けていたんですけど途中で使い物にならなくなってしまったので。今朝来た時に貴女に付けました」
辻村は項垂れる。
「何してるんですか?」
「どうせ「内務省特務科のエージェントたる私が盗聴器にさえ気付けなかったなんて…」とか思ってんだろ」
「人の心を勝手に読まないで下さい!」
顔を真っ赤にして怒鳴る。
「図星みたいですね」
「だな」
「うぐ…」
言い返せない辻村を横目に安吾は続ける。
「じゃあ式部さんはこっちに。辻村君は綾辻先生の所に帰って結構ですよ」
辻村はピシッと姿勢を正す。
「逃げないように見張りはしますか?」
「必要ありません。それにどう頑張ったってこの子には逃げられますから。今日辻村君に迎えに行って貰ったのは逃げた時の連絡用です」
「え?じゃあ私の技術を見込んで、万が一逃げようとしても捕まえられるからとかそういう理由は…」
「ありません。綾辻先生の所へ行くなら貴方が一番楽だと思ったからです」
伸ばした背筋がまた曲がる。
「リアクションが大袈裟な奴だな」
「うるさいです」
むうっと頬を膨らませる。
「さて、式部さん行きますよ」
「分かってる」
式部はポケットから注射器を取り出し、首に刺す。
注射器の中の液体がゆっくりと注ぎ込まれていく。
「…またあのヤブ医者ですか?」
「これの生産者としては優秀だ」
空になった注射器は式部の手から消え、代わりにラズベリーが摘まれている。
「ちゃんとご飯食べてますか?」
「今食べてる」
そう言いながら口の中にラズベリーを一つ放り込む。
「僕が言っているのはちゃんとした食事です。作れる癖に自分では食べないんですから勿体無いですよ」
「それを言うなら金が勿体無い」
「また貴方はそう言って…」
安吾は溜息を吐きながら頭を掻く。
その様子を見て辻村が問う。
「お二人は仲が良いんですか?」
2人は少し考えてから言う。
「まぁまぁですね。悪くは無いです」
「色々世話にはなっている」
「お互い様ですけど」
辻村はそれを聞いて驚く。
役人として務める安吾と路地裏の孤児の式部…普通では相見えないようなこの2人の関係とは如何に?!
頭の中でドキュメンタリー番組のようなナレーションが流れる。
「初めて出会った時から何年位ですか?」
興味津々な顔で前のめりになって問う。
「…確か5年ですね」
「会った場所は何処ですか?」
「酒場」
「えっ?!」
思ってもいなかった答えに思わず声が出る。
「5歳で酒場って…」
「連れ込んだのは私ではありませんよ。その時の…友人が連れてきたんです」
そう言って少し目を伏せる。
暗い空気を感じた辻村は慌てて話題を逸らす。
「ええと!何か第一印象とか…」
「堅物」
式部が即答し、安吾は眉間に皺を寄せる。
「後は間諜なんて面倒臭そうだとは思ったけど、楽しそうだったな」
「気付いてたんですか?」
「当たり前だろ。分かりやすすぎ」
「一応太宰君も騙せていたんですけどね」
少し悔しそうに言う。
「坂口先輩、間諜なんてやってたんですか?!初耳です!」
「話す理由がありませんから。それより何で僕達の関係性を聞きたがるんです?業務には関係無いでしょう」
「あ、えっと…その…」
視線を逸らし、言い訳を探す辻村。
「俺達の関係がドキュメンタリーみたいで面白かったから。だそうだ」
「うっ!」
「やっぱりそういう理由でしたね」
大きな溜息を吐く。
「さっさと綾辻先生の所へ戻って下さい。あの人の事ですから見張っていないとまた人形を買いに行ってしまいますよ。新しい依頼も入りましたし」
机から1束の書類を取り、辻村に渡す。
「はい!行ってきます!」
辻村はそう言ってビシッと礼をし、背を向ける。
それと同時に…
「ん?」
「どうしました?」
安吾の声に辻村が振り返る。
つい先程までココにいたはずの式部が消えていた。
遅れて一枚の紙切れが落ちる。
〈急用、直ぐ戻る〉
殴り書きのメモを残して、式部は消えてしまった。
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.58 )
- 日時: 2017/03/05 11:43
- 名前: ぴろん (ID: so77plvG)
33間目
探偵社は、至って平和である。
何時も通りの事務仕事、何時も通りの電話の呼び出し音、何時も通りの…
「太宰ィ!!」
怒号である。
「なーに?国木田君。そんなに眉間に皺を寄せているとそこだけ凹んで溝になっちゃうよ?」
自分の眉間をトントンと叩きながら言う。
「今日という今日は許さんぞ!これを見ろ!」
国木田は自分の革財布を見せる。
「国木田君にしては良いセンスしてるじゃないか。此れで眼鏡のセンスも…」
「財布の外見では無い!中身だ!」
財布をガバッと開け、中身を見せる。
一万円札が一枚と小銭が幾枚か入っている。
「別に普通じゃないか。むしろ私よりちょこっと豪華だよ?」
そう言ってお札に触ろうとする手をバシッと叩く。
「俺は昨日の朝、財布には2万5千685円を入れていた。そして昨日使った金は昼飯の500円のみだ」
「へぇ、倹約家だねぇ」
先程叩かれた手をさすりながら言う。
「そして今朝財布を開けたら中身が此れだ。1万と185円しか入っとらん」
「どうせ国木田君だし、酔っ払って覚えてないとかじゃないの?」
国木田の額に青筋が浮かぶ。
「…俺は財布の管理は徹底している。が、今までに何度か中身のみを盗られた事がある」
「国木田君から盗るなんて余程優秀だね!一体何処の人だろう!」
肩が怒りで震える。
「そいつが盗った後には必ず知らない女の名刺が入っているのだ」
「盗みが上手い上にモテる?!なんて優秀な人材なんだ!是非この探偵社で雇い、給料を沢山払うべき人だよ!」
限界点だ。
国木田の手が太宰の首を掴む。
「お前が!また!盗ったのだろう!毎回毎回此れで何度目だ!酒飲み代か!夜遊び代か!俺の1万5000円を返せ!!」
グワングワンと揺らしながら言う。
「うふふふ、死にそう」
笑顔で揺らされ続ける太宰。
「谷崎さん、此れ何回目なんですか?」
敦は2人に聞こえないように小声で問う。
「うーん…確か6回目だったかな?」
「毎回1万円は盗られてますわ」
「じゃあ6万?!国木田さんよく生活できますね…」
「あぁ、それなら…」
谷崎は2人の喧嘩を見る。
「良いじゃん、給料前払いって事で」
「明日が給料日だからという甘い考えはやめろ!第一何故俺なのだ!」
「1番盗り安いから」
「ふざけるな!!!」
太宰の首が捻れる。
「もしかして毎回給料日前にやってるんですか?」
「国木田さんに聞いたら太宰さんが入って来た2年前から続いてるんだって。或る時は酒飲み代、或る時は夜遊び代に」
「1番怒ったのは太宰さんの自殺代でしたわね」
「自殺代?」
ナオミの言葉に首をひねる。
「1年位前に太宰さんがお金をかけないで自殺したいから人から借りよう!って言って同じ事やったら案の定失敗してこっ酷く怒られてたんだよね。趣味に人の金を使うなって」
「その時にはもう趣味公認だったんですね」
苦笑いをしながら言う。
「全く…それで今回は何に金を使った」
睨みながら言う。
太宰は捻られた首をコキコキ鳴らしながら笑顔で答える。
「それがねぇ、ちょっとした無法者に捕まっちゃってさ。その帰りにちょこっとお出かけしてからタクシーで帰ったのだよ」
「捕まった?お前が?」
国木田は疑いの目を向ける。
「勿論わざとだよ。ただその相手が異能力者狩りの連中だったから捕まってみたら、いつの間にか県境越えてた」
「馬鹿か」
「でも一緒に式部ちゃんも居たのだよねぇ」
「おにーちゃん?!」
今まで黙って業務をこなしていた納言が飛びつく。
「どうでした!元気そうでした?!それともまた風邪引いて…!いや、怪我してますよね!でもおにーちゃんなら平気だけどでもやっぱりまたお薬使うし身体大事にいやそれよりもおにーちゃん少食だからちゃんと食べてるか…」
「ストップ」
「むぐ…!」
鏡花が納言の口に人差し指を当てる。
納言はハッとして深呼吸をする。
「す、すいません…つい興奮しちゃって…」
「良いよ、でも気をつけて」
「はい!」
「鏡花ちゃんもすっかりお姉さんだね」
敦がそれを見てニコニコしながら言う。
「まだ…未熟…」
少し照れながらそう呟いた。
「あ、もしかして昨日追いかけていた黒い人がその依頼人さんなんですが?」
谷崎が言う。
「うん、異能で高度な変装も可能みたいだよ」
ニコニコしながら言う。
「あ、そうだ。思い出した」
徐ろにポンと手を叩く。
「式部ちゃんに関する情報をポートマフィアが持っているのだよ!誰か取りに行きたい人ー!」
誰も答えない。
「だよねぇ…」
「はい!」
納言が手を挙げた。
全員の視線がそこに集まる。
「私、行きます!」
ビシッと手を挙げてアピールする。
「えー…と…」
敦は視線を泳がせ、国木田を見る。
国木田は俺に聞くなと言うように視線を逸らす。
「納言ちゃんかぁ…1人だと危ないから誰かが行かなきゃね」
「俺はパスだ。今日は午後から会合がある」
手帳をめくりながら言う。
「僕もパスで良いですか?仕事終わってなくて」
「僕もちょっと…」
「…行きたくない」
全員が視線を逸らす。
「やっぱり私かぁ…」
溜息を吐きながら手元のメモを確認する。
「国木田くーん、今何時?」
「謎に伸ばすな。9時18分53秒だ」
腕時計を見ながら答える。
「約束の時間は9時40分か…納言ちゃん、準備しよっか」
「はーい!」
納言はいそいそと準備を始める。
太宰は何時も通りのソファに寝転んでペンを回す。
たまに思いついたようにペンのキャップを外してメモ帳に何かを書くが、大体はゴロゴロしていた。
「太宰さん!行きましょう!」
「んー」
「行きましょう!」
「はいはい」
「行きましょうっ!」
グイッと引っ張ってソファから下ろす。
太宰は床に落下し、鈍い音を立てた。
「いったたた…思ったより豪快だったね…」
「そうですか?それより行きましょう!もう8時30分ですよ!」
そう言ってピョンピョンと飛び跳ねる。
「わかったよ…」
太宰は嫌々起き上がって先程のメモ帳とペンを持つ。
「気をつけて下さいね〜」
「気をつけて…」
手を振られて外に出る。
「情報提供者はどんな人なんですか?」
「多分…うーん…森さんかな」
「森さん?あ、首領さんですね!」
納言はポンっと手を打つ。
「昔からおにーちゃんにそいつには気をつけろって言われてるんですけど、そんなに怖い人なんですか?」
「怖いよ。納言ちゃんには特に」
ニヤリと笑いながら言う。
納言は少し怯えた表情を見せるが、首をプルプルっと振って元のキリッとした顔になる。
「待ち合わせ場所は何処ですか?」
「路地裏を抜けた所にある港。今はポートマフィアの領地になってるから誰も近寄らないと思うよ」
「内緒話にはうってつけって事ですね!」
「そゆこと」
笑いながら歩く。
暫く歩いて、目的地の港に着いた。
「やぁ太宰君、待っていたよ」
白衣姿の首領がニコッと笑いながら手を振る。エリスも着いて来ているようだ。
太宰は作り笑いを浮かべながらペコリと頭をさげる。
「おや、そちらの少女は…」
「清少 納言と申します。おに…紫 式部の妹です」
「可愛い子だねぇ、これ渡すから借りて行っても良いかな?」
分厚めの資料を持って振る。
「駄目です。社員ですから」
太宰は笑顔のまま言う。
「でも私達だけが情報を渡すなんて割に合わないじゃあないか。その分だと思えば安いだろう。エリスちゃんも友達になりたがっているし」
エリスは納言をジッと見つめている。
「…納言ちゃん、どうする?」
「私は別に良いですよ!エリスさんともお友達になりたいですし!」
エリスがピクリと反応する。
「今日1日だけで良いから、ね?」
首領はニコッと笑いながら資料をチラつかせる。
「…私も同伴なら」
「うん良いよ。じゃあ行こうか」
クルッと振り返って歩く。
「貴女、納言っていうの?」
エリスが聞く。
「はい!えーと…」
「私はエリス。よろしくね!」
ニコリと笑って言う。
「宜しくお願いします!」
納言もニコッと笑って言った。
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.59 )
- 日時: 2017/03/10 13:34
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
34間目
太宰が大きな欠伸をする。
「寝不足ですか?」
「んー…まぁそんな所だねぇ」
眠たそうに目を擦る。
「ちゃんと寝なきゃ育たないよ?太宰君」
「取引相手に言われてもって感じです」
「そうかい」
あははと笑いながら建物に入る。
「寂しいねぇ、また帰ってくる気は無いのかい?」
「その話はもう前にしました」
ニコニコ顔のまま答える。
「ねぇ納言、お絵描き好き?」
「はい、大好きです!」
「本当?じゃあ一緒に描こ!」
「はい!」
こちらも双方ニコニコ顔である。
エレベーターに乗り、最上階の釦を押す。
「わぁ…!」
納言はガラス張りの壁から見える景色に見惚れている。
「あそこにあるのが赤煉瓦倉庫で、そっちが観覧車。あとそこにある山みたいなのが公園なの」
「へぇ〜…エリスさんは物知りなんですね」
「毎日ココを見てるからね。当たり前」
そう言いながらも胸を張るエリス。
「何時ものエリスちゃんも素敵だけどやっぱり笑顔のエリスちゃんも可愛いなぁ」
首領はそれを見て幸せそうに笑っている。
太宰は外を眺めながら考える。
森さんは納言ちゃんと私が来る事を想定済みか…何を求めている?本当に遊ぶだけか?それとも…
エレベーターが止まり、扉が開く。
「おぉ〜!フッカフカですね!」
廊下に敷かれた絨毯を見て言う。
「土足で良いんですか?」
「良いわよ。皆そうだもの」
納言は慎重に絨毯の上を歩く。
「うわわわっ!足が沈む…」
おぼつかない足取りで歩く納言を太宰は笑いながら見る。
「楽しそうだね」
「人の家にお邪魔した時って皆こんな感じなんでしょうか。なんかワクワクします!」
キラキラした目で太宰を見る。
「冷たい子も可愛いけど明るい子もまた違った可愛さがあるねぇ」
首領は2人を見てまた幸せそうに笑う。
ふと、納言が足を止める。
「ひとーつ」
床の端を指差して言う。
「ふたーつ」
今度は天井。
「みーっつ」
壁の真ん中辺り。
「よーっつ」
反対側の壁の少し上。
「いつーつ」
クルッと振り返ってエレベーターの方向。
「うーん…後は…」
「納言何してるの?」
エリスが不思議そうに聞く。
「カメラの場所です。おにーちゃんが知らない建物に入ったら確認しておけって。流石に全部は見つけられないんですけどね」
えへへと笑って頭を掻く。
納言が指を指していた場所を確認すると、確かに防犯カメラがある所だ。だが、全てが巧みに隠してあり、そう簡単に見つかるものでは無い。
「流石式部ちゃんの妹だね」
首領は笑って肩を竦める。
廊下の突き当たりに行くと、黒服のガードマンが数人立っている扉があった。
男は無言で横に避け、扉を開ける。
「ココが私の部屋だ。エリスちゃんの部屋は隣だよ」
「紙とクレヨン持ってくる!」
楽しそうに走っていく。
「私も行きます!」
それに納言も着いて行く。
「あ、ちょっと待っておくれ」
「なに?」
「何ですか?」
2人が同時に振り返る。
「2人でコレを着てくれないかな?」
首領が取り出したのは袖や裾に大量にフリルが着いたドレス。何時もエリスに着せようとしているものだ。
「色違いが二つあるんだよ。2人で着たらペアルックみたいになって可愛らしいんじゃないかなぁ」
「ペアルック…」
エリスがピクッと反応する。
「納言が着るなら着てあげてもいい」
「着たいです!」
二人が言う。
「じゃあどうぞ」
2人にそれぞれドレスを渡す。
納言は取り敢えず自分が着ていたマフラーとコートを脱ぐ。
「どうやって着るんですか?」
「先に脱いで」
「あ、そうですよね」
2人を楽しそうに見ている首領の横で、太宰はそっと視線を逸らした。
その瞬間、首領の方から殺気を感じる。
反射的にそちらを見る。
殺気の正体は首領ではなかった。
「なぁ鴎外」
突然背後から聞こえた聞き覚えのある声に首領は驚いて振り向く。
誰もいない…
「言ったよな」
今度は前。
声のした方を向くと、机の上に式部が座っていた。
何時も通りの無表情だ。
「や、やぁ式部ちゃん。どうしたの?」
引きつった笑みを浮かべながら震えた声で言う。
首領の言葉は無視して納言の方へ行く。
「納言、エリス」
「あ!おにーちゃん!」
「式部!」
2人が笑顔で言う。
「着替えは部屋でしろ。後で髪結ってやるから」
「本当?!」
「納言、行こ!」
2人はドレスと脱いだものを持って隣の部屋へ行く。
扉が閉まった後、式部はゆっくりと首領の方を向く。
「納言には何もしないって…言ったよな?」
式部が顔を上げる。
「触れないし声もかけないって」
瞳が茜色に染まっていた。
首領は座ったまま少し下がる。
声が出ない。
「何処から斬り落とされたい」
式部の手に大きな鎌が握られる。
持ち手の部分に赤黒い血がベットリと付いているのが太宰の位置からもはっきりとわかった。
「手足、胴体、それとも…」
光のない目で見つめる。
「首か」
大きな部屋に小さく、低く響いた。
首領は動けない。ポートマフィアのボスが、蛇に睨まれた蛙状態である。
横から見ている太宰も動けない。
黒いコートを身に纏い、血の付いた大きな鎌を持つ。その姿はまさに…
「式部ー!」
「おにーちゃん!」
隣の部屋から声が聞こえる。
式部は無言で鎌をしまい、隣の部屋に入った。
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜※オリキャラ注意! ( No.60 )
- 日時: 2017/03/11 16:26
- 名前: 真珠を売る星 (ID: 9E/MipmP)
お久しぶりです。
式部さんの殺気を感じて飛んでまいりました。(←
相変わらず、かっこいいですね……将来が楽しみです。森さんに心の中で『良いぞ、もっとやってくれ!』とエールを送ってしまいました。(なんか私がロリコンっぽくなってきていますが、決してそんなことはありません!きっと、多分、違う……と、思いたいです……)
そしてだんだん輝いてきた納言ちゃんの天才児っぷりにほれぼれしてしまいました。
今回も、ありがとうございました!
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