二次創作小説(紙ほか)
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- ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
- 日時: 2021/09/10 03:28
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。
初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。
コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!
※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。
・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。
・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。
・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。
2016/12/30 閲覧数100突破!本当に感謝です!
2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!
2017/02/09 閲覧数300突破!唯々感謝です!
2017/03/01 閲覧数400突破!感謝感激雨霰です!
2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!
2017/04/23 閲覧数600突破!泣くほど感謝です!
2017/05/13 閲覧数700突破!感謝しすぎで死にそうです!
2017/05/28 閲覧数800突破!本当に有難う御座います!
2017/06/21 閲覧数900突破!物凄い感謝です!
2017/07/02 閲覧数1000突破!信じられないです…有難う御座います!!
2017/07/18 閲覧数1100突破!有難う御座います!
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2017/08/30 閲覧数1300突破!有難う御座います有難う御座います
2017/09/24 閲覧数1400突破!本っ当に有難う御座います!
2017/11/03 閲覧数1500突破!感謝しかないです!
2017/11/29 閲覧数1600突破!本当に感謝します!
2018/01/08 閲覧数1800突破!1700飛ばしてすみません!有難う御座います!
2018/01/13 閲覧数1900突破!年始効果でしょうか…有難う御座います!
2018/01/27 閲覧数2000突破!こ、これは…夢でしょうか…?!本当に、心から感謝致します!!
2018/03/07 閲覧数2100、2200突破!1つ逃してしまいました…ありがとうございます!
2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!
2018/04/17 閲覧数2400突破!間に合わないのがとても嬉しいです…!
2018/05/13 閲覧数2500突破!いつの間に…?!有難う御座います!!
2018/05/20 閲覧数2600突破!とてもとても!感謝でございます!!
2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!
2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!
2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!
2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。
何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!
2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.81 )
- 日時: 2017/05/07 17:55
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
真珠様、本当にいつもいつもコメント有難う御座います!
外伝組を出す機会が中々なくてすみません…
原作では綾辻先生が1番立場が高くなってるのでついつい弄りたくなってしまうんですよね(‾▽‾;)
小さい子はできるだけ純粋に可愛らしく描くよう意識しております!
これからも尊く思ってもらえるよう頑張ります!
それと、肩車の時の身長…
気づいて下さる方がいらっしゃったら嬉しいなぁ、くらいの気持ちでチョロっと入れた情報だったのでとても嬉しいです!
こちらこそ何時も長文ですみません。
これからは更新頻度をもう少し上げていきたいと思います(`・ω・´)
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.82 )
- 日時: 2017/05/12 20:23
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
49間目
「…それでこの大荷物か」
事情を話した納言に国木田が呆れたように言う。
「はい!あ、国木田さん用のお土産はコレです」
袋の中から灰色のペン立てと緑色のペンケースを出す。至って無難なデザインだ。
それを国木田の手にギュッと押し付けるように乗せる。
「お、おう」
いきなりの展開にそれしか言葉が出て来ない。
「賢治さんにはコレ」
鏡花が小さな植木鉢と受け皿、小さめの黄色いジョウロを渡す。
「ありがとうございます!」
ニコッと笑顔で言う。
「谷崎さんとナオミさんにはコレです!」
お揃いのハンカチと万年筆。インクの予備もセットだ。
「ありがとうございます」
「ありがとう。大事に使うよ」
谷崎は照れ笑いながら礼を言う。
「与謝野先生は、コレ」
金色の蝶の刺繍が施されたハンカチとメモ帳にペン。
「おや、丁度欲しいと思ってたンだよ。ありがとね」
笑いながら受け取る。
「太宰さんにはコレです。机に置いておきますね」
ソファの方に大きな声で呼びかける。
「ありがと〜…」
力無く答える。
「二日酔いですか?」
「まぁね…ちょっと付き合いますって言ったらコレだよ…あー気持ち悪い」
「やってる事は何時もと変わらんがな」
「国木田君酷い」
弱々しい声でそう言う。
取り敢えず太宰の机の上に置く。
包帯と付箋にメモ帳。特に変わった様子の無い普遍的な物だった。
納言曰くこれが一番だというらしいが、単に思いつかなかったのかもしれない。
「敦はコレ」
鏡花は敦の手にそっと乗せる。
白黒のハンカチとマグカップ。それにカメレオンの箸置き。
「ありがとう。僕がカメレオン好きって言ったっけ?」
「納言が言ってたの。この前爬虫類図鑑読んでたらカメレオンの所だけ覗いてたって」
「あれ、バレてたのか…結構こっそり見てたんだけどね」
恥ずかしそうに頭を掻く。
「江戸川様はコレです!」
大きな紙袋と四角い布製コースターにハンカチやペン。乱歩に似合うデザインの物が揃っている。
「この紙袋は駄菓子屋に行ったら福引で当てまして…」
そう言って中身を見せる。
「駄菓子5000円分だそうです」
「おぉ!ありがとね〜」
早速そこから小さな飴を取って口に放り込む。
「あ、コレあそこのおばちゃんのだ。美味しいんだよねぇ」
口の中でコロコロと転がしながら言う。
「お口に合ったようで良かったです!」
そう言ってぺこりとお辞儀をする。
そして、事務員の部屋の方に歩いて行く。
「綺羅子さん」
「はい?」
仕事の手を止めて振り返る。
「コレ、社長にお願いします」
渡したのは布製コースター。乱歩の物と良く似た色違いだ。
「あのお二人は大変仲が宜しいみたいなので、こっそりお揃いです。まぁ多分バレちゃいますけど」
えへへ、と笑って言う。
「ちゃんと渡しておくわね」
「あと、事務員さん全員にコレです」
大きな飴の袋を渡す。
「たっぷりあるので、1人2つは貰えると思います」
「あら、ありがとう。じゃあコレも私が責任を持って配るわ」
「はい、ありがとうございます!」
ペコっと頭を下げて戻っていく。
「鏡花さん、渡してきました!」
「コレで全員。任務完了」
「任務完了…格好良いです!」
2人で楽しそうにはしゃいでいると、与謝野がポンっと頭を撫でる。
「そんな優しい2人にお姉さんからご褒美だよ」
そう言って2人に紙袋を渡す。
中を覗くと、うさぎと猫のピン留め、マグカップ、ハンカチが入っていた。
「可愛い!」
「うさぎ…」
「欲しがってただろ?お揃いのにしておいたから、大事に使いな」
ニッと笑ってそう言い、医務室に入っていった。
「お揃いです!」
「うさぎと猫のお揃い…可愛い」
2人で見せ合って喜んでいる。
「ん?納言ちゃん、その袋は?」
敦が納言の持っている小さな袋を指差す。
「あ、おにーちゃんの分を一応買ったんです。最近路地裏にいないので渡せないんですけどね」
少し悲しそうに笑う。
「私昨日会ったよ」
「え?!」
太宰がサラッと言った言葉に、納言は駆け寄る。
「本当ですか?何処ですか?!会ったって事はお話したんですか!」
納言の勢いに少し押されながらも答える。
「昨日、私が特務科の方に行ったのは知ってるよね?」
「はい、聞きました」
「そこで働いてたよ。お金稼がなきゃいけないからって」
「おい太宰、初耳だぞ」
国木田も太宰の方に来る。
「そりゃあ話してないもの」
「そういう大事な事は報告しろと言っているだろう!」
「えー?そうだっけー?」
惚ける太宰の頭に拳骨が落ちる。
「あの!本当ですか?!」
「あーうん、ほんとー」
頭をさすりながら言う。
「因みに国木田君の机の上にあるハンカチは何?」
国木田の気を逸らすようにピッと指さして言う。
「ハンカチ?」
首を傾げながら太宰から目を離し、机に向かう。
国木田は深緑色のハンカチを手に取り、挟まれていた紙片を見る。
「〈返却致ス〉?このハンカチは確かに昨日渡したが…」
「おにーちゃんの匂い」
納言がひょこっと顔を出す。
「コレ、おにーちゃんの字です。ほら、ここの払いとか跳ねとか…」
「ん?それは違うと思うが。これは昨日会った女性に…」
そこまで言って太宰がニヤニヤしているのに気づく。
「…お前、何か知っているな」
「うふふふふふ」
太宰は笑うだけで何も答えない。
「吐け、全て吐け。ついでに臓物まで吐いてしまえ」
「酷いなぁ。私そんなに知らないよ?」
わざとらしく手を振る。
「本当か?」
「勿論!国木田君が逢引してた事も見ず知らずの女性を車に乗せて横浜観光していた事なんてぜーんぜん!知らないよー?」
「貴様…!」
「自称特務科の女性を一瞬で信じちゃった挙句、お茶を飲んで更に捜査まで協力して貰った事なんて本当に全く知らないから安心して彼女とお付き合いを…」
太宰の首が絞められた。
「何処まで知っている!」
「国木田君の行動と彼女の正体」
首を絞められ揺らされながら答える。
「…話せ。厭な予感がしてきた」
首を絞めていた手を離して言う。
展開が読めたのか、乱歩が楽しそうに笑って見ている。
「昨日、国木田君はあろうことにも私抜きで黒幕を暴いてやろうと事件のあった周辺を調べ回っていた。その途中で特務科の者だと名乗る女性、神代さんに出会って調査を手伝って貰うことになった。そのハンカチは途中で彼女が襲われた時に傷ができて、そこに縛ってあげたんだね。優しい〜」
国木田はギロリと睨む。
「因みにその様子はこの盗聴器から聞こえたもので、国木田君には仕掛けていない。じゃあどうやって知ったと思う?」
「真逆…!」
「その真逆!私が盗聴器を仕掛けたのは式部ちゃんでした〜」
国木田は首を絞めた形のまま固まる。
「いや〜初めて会った時に本当に女の子か?って疑ったその子に惚れちゃうなんて!ましてや相手は10歳!って事は軽い犯罪を…」
「惚れてなどいない!」
太宰の首からポキっと軽やかな音が聞こえる。太宰は幸福そうな表情を浮かべる。
「…来い。詳しく聞かせてもらう」
国木田は太宰を引きずって部屋を出て行った。
「えーと…そ、それで、お兄さんにあげる物は何?」
全力で話題を逸らす敦。
「紐です」
「紐?」
納言は袋から何かを取り出す。
「紐を編んで模様をつけたりするものがあって…簡単に言えばミサンガみたいな物です」
「なるほど」
長い紫色の紐を見せる。
よく見ると小さな模様が編み込まれていて、値札は切ってあるが恐らく高価な物だと予想が出来る。
「何に使うの?腕とか足につけたりかな?」
「いえ、おにーちゃんは髪が長いので結ぶようにと思って。実はお揃いなんです」
クルッと後ろを向いてみせる。
1つに括られた髪の付け根が青色の紐で結ばれていた。
「という訳で、仕事が終わったら届けに行きたいんです。駄目ですか?」
「え?ぼ、僕に聞かれても…」
敦は先程2人が入っていった扉を見る。
「では、聞いてきます」
納言は扉に向かって歩き始める。
「その必要は無いよ」
乱歩が言う。
「江戸川様、どういう事ですか?」
振り返って首を傾げる。
「だって紐無いじゃん」
そう言って納言の手を指差す。
そこには、先程握られていた紐の代わりに紙切れが握られていた。
紙切れには達筆な字で〈貰っておく〉と書かれていた。
「届いたみたいだね。さて、君達が買ってきたお菓子は何だろな〜!」
乱歩はいつも通りの無邪気な笑顔で紙袋を覗く。
「…仕事します!」
そう宣言して探偵社は何時も通りの空間に戻った。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.83 )
- 日時: 2017/05/13 15:16
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
50間目
特務科に何時も通りの平和が戻ってから数日後。式部はすっかり特務科に馴染んでいた。
「式部さんおはようございます」
「あぁ」
「おはようございます。今日朝食食べてないんですけど…」
慣れた手付きで机の上にサンドイッチが置かれる。
「何時もありがとうございます」
そう言ってパクパクと食べる。
今話していたのは事務員。安吾は事務員全員の警戒態勢の上働くという規約の上で働かせているのだが、こうも緊張を解かれてしまっては警戒も何も無い。
しかも事務員達の言葉に対してどんなに無愛想に返しても、事務員達は新しく後輩が出来た事に喜んでしまっているため誰も叱らない。
よって、今日も安吾の怒声が響く。
「式部さん!なんでこれもやってるんですか!僕がお願いしたのは此処だけですよ!」
式部は、紫色の紐で髪を後ろで1つに括りながら答える。
「関連付けた方が効率良かったから。仕事しないよりはマシだろ」
「それはそうですが…」
深い溜息を吐く。
「俺のおかげで寝不足にはならないんだから良いだろ。お前の分もやろうか?」
「駄目です。これは政府から信用されて僕が託された仕事ですから」
「真面目だな」
「好きでやってる訳ではないです」
書類を整理する安吾の机に珈琲を置く。
「…君は本当に気持ち悪いですね」
「今欲しそうだったからあげたんだが、当たったか?」
「残念な事に大当たりです」
珈琲を一口飲んでからもう一度深い溜息を吐く。
「じゃあこの仕事頼みます」
「これが仕事か?殺人事件の解決なら適役がいる筈だろ」
欠伸をしながら言う。
「綾辻先生は別の事件を解決して貰っています。それに、君に任せた方が被害が少なくて済みますから。さっさと現場に行って解決してきて下さい」
「メールで良い。こんな分かりやすい殺人は現場に行く事が無駄だ」
「犯人と動機と殺害方法、それと証拠さえ揃っていればやり方は問いませんのでどうぞご自由に」
「はいはい」
面倒臭そうに返事をしながら部屋を出て行く。
数十分後、辻村がおずおずという感じで部屋に入ってきた。
「先程の事件、解決しました。後日報告書を提出致します」
「了解です」
「それで、なんですけど…」
辻村は扉の方に目をやる。
「どうしました?」
「綾辻先生が来るのは報告しましたよね?」
「えぇ、今回の証拠品に気になるものがあったから手渡しでという話は聞いてますが」
それを聞いて辻村は目を逸らしながら言う。
「それが、その、嘘だそうで…」
「はい?」
安吾の額に青筋が浮かぶ。
辻村は焦って弁明する。
「私はそう聞かされていたんです!それで、その渡すべき証拠品もあるんですけど…」
鞄から密閉袋に入った金属片を取り出す。
「全て此処に来る口実だったそうです」
「…それで、何の用ですか?」
ジロリと睨みながら言う。
「式部さんに言いたい事があるそうで…」
安吾は今日何度目になるか分からない深い溜息を吐く。
「適当に引き返させて下さい。何にしろ式部さんは仕事中ですから」
「分かりました…」
礼をしてから部屋を出て、そーっと隣の部屋を覗く。
そこでは式部が何時も通りパソコンに向かって仕事をしており、その前で綾辻が見下ろすように立っている。
「俺に何か言うことはないか」
「殺人探偵が随分な口の聞き用だな」
「昨日の書類はどういう事だ」
「そのままだ。暇潰しご苦労だったな」
冷戦は既に始まっていた。
「お前のお陰で随分時間を無駄にした」
「そのお陰で知識を得た。読書とはそういう物だろう」
パソコンから目を離さずに答える。
「綾辻先生!帰りますよ!」
「何を言っている辻村君。新人に挨拶をしているだけだろう」
式部から目を離さずに言う。
というか、式部さん律儀に子供の格好に戻ってる…
「それにしてはただならぬ雰囲気ですが」
「そんな事は知らん」
依然として式部から目を離さない。それはもう、親の仇かの様な目付きで睨んでいた。
式部はしばらくキーボードを叩いてからタンッと小気味良い音を鳴らし、ようやく顔を上げて綾辻と目を合わせる。
2人はそのまま数秒間ピクリとも動かずに睨み続ける。
実際は式部にはその気は無いのだろうが、辻村からはそう見えた。
元の目付きが悪いとここまで印象が変わるものなのか。目付きが良かったら見つめ会っているようにも…いや見えないかな。
「そんな事の為にわざわざ足を運んだのか」
「他の用事があったらついでにな」
わざとあからさまな嘘を吐く。
「暇なんだな。あんな駄文を読む位」
綾辻の眉がピクッと動く。
「駄文の自覚はあるのか」
「答えの無い推理小説程読んでいてつまらないものは無い」
「なら何故読ませた」
「暇潰し」
2人の会話を辻村はビクビクしながら聞く。
「あの…」
「なんだ」
「う、いえ、何でもありません」
声を掛けようにもその気迫に押されて何も言えない。
「あの本を書いたのは本当にお前か?」
「疑うなら勝手にしろ。少なくとも俺はそうだと思っている」
曖昧な返事を返し、パソコンを閉じる。
「何にせよ仕事中だ。また今度気が向いた時に来い」
そう言って部屋を出て行く。
「待て」
綾辻が低い声で呼び止める。
「………」
「お前が1番最初に読ませた暗殺者の本、10年程前まで世間を騒がせていた殺し屋の実話だな。“朧”とかいう通り名が付いていた」
式部は特に動揺する事もなく答える。
「殺人方法や光景は覚えているが、そのモデルまでは覚えていない。その殺し屋の名は聞いた事はあるが直接顔を見た事はないな」
そう言って扉を閉めた。
綾辻はしばらく考えこんでから何事も無かったかのように辻村を見る。
「帰るぞ」
「私に命令しないで下さい!貴方はあくまで私の支配下で…って聞いてるんですか?!」
少し言い合いをしながら建物を出て行った。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.84 )
- 日時: 2017/05/14 09:13
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
51間目
無機質なコンクリートに囲まれた地下室。
そこにコポコポと気泡の音が響いていた。
部屋には大量の容器やチューブ、中には様々な色の液体が入っている。
「…よし」
部屋にいた男はそれを1つ取り、満足そうに部屋を出て行く。
プルルルルルルル
地下から出て電波が届くようになったのか、持っていた携帯電話が鳴る。
嫌そうに電話を取り、ボタンを押した。
「もしもし」
『班長!お仕事です!』
「僕、まだご飯食べてないんだけど」
『食べ終わってからでも構いません』
「…行かなきゃ駄目?」
『尾崎幹部からの御命令です』
「えー」
『お願いします!』
「…分かった。ご飯食べてからそっちに向かうから30分くらい待っててね」
『はい!ありがとうございます!』
通話を切って携帯を放り投げる。
「鞠ちゃん、ご飯まだ?」
「そろそろ届く頃ですよ」
部屋を掃除しながら答えたのは鞠。納言の力によって動いている日本人形だ。
「折口さんは自炊出来ないんですか?」
「出来るけどしないよ」
長いボサボサの頭をかきながら欠伸をしてソファに座る。
「今日作った薬品は何ですか?」
「取り敢えず飲んだら駄目なもの。」
栓をしてある試験管を振る。
中の緑色の液体がチャプンと音を立てた。
「貧血剤はありますか?」
「勿論、そっちが本業だからね」
ほら、と近くの箱を指差す。
「わざわざ全部注射器に入れてあげてるよ。コレの所為で残りの注射器は後5個しかないけど、まぁ困らないし良いか」
「駄目です。ちゃんと回収してますから殺菌消毒をお願いします」
空の注射器が入った箱を置く。
「後でやる。それよりご飯は?」
「今届きました」
机の上に並んでいるものを指差す。
おにぎり2つとほうれん草の白和えに味噌汁。何とも健康的な食事だ。
鞠がそっと淹れたてのお茶を置く。
「いただきまーす」
パクリとおにぎりを食べる。
「あ、シャケだ。僕の好み知ってるね」
「当たり前でしょう。貴方が育てたんですから」
「そうだったかな、途中から家出しちゃったけど」
味噌汁を飲む。
「これも合わせ味噌。本当に僕の好みに合わせてくるね」
「味噌汁は万人受けするから。おにぎりの具は1人ずつ変えているそうですよ」
ヒラリと落ちたメモを拾って言う。
「あ、そっか。今は他の人達にも作ってるんだっけ?」
「はい。お仕事の一環だそうです」
忙しそうに洗濯物を干している。
「僕もそっちに行こうかな」
「捕まっておしまいですね」
鞠の冷たい受け答えに苦笑いを浮かべる。
「式部ちゃんとは仲悪くないよ?」
「知ってます」
鞠はガラスの目で折口を睨む。
「それより早くご飯食べて仕事に行って下さい。私は貴方の身の回りの世話を仕事にしていますけど、貴方の話し相手はやっていないんです」
「酷いね。君には血も涙も無いのかな」
「生憎人形ですから」
折口は最後の一口を食べ終え、お茶を飲む。
「ごちそうさま。行ってくるね」
エナメルの鞄を持ち、和服に白衣、洋風の革靴といった奇妙な格好で玄関へ向かう。
「行ってらっしゃい。お気をつけて」
台詞を読み上げるような棒読み口調で言う。
「行ってきます」
折口はそんな事を気にしていないかのように少し微笑みながら家を出て行った。
少し歩くと紙切れが落ちてくる。
頭の上に乗った紙切れを取って見る。
〈送るか〉
達筆な字で書かれたメモ書き。
「後10分で着かなきゃいけないんだ。よろしくね」
そう言った直後、折口はポートマフィアの建物の前に立っていた。
「ありがと」
小さく呟いてテクテクと歩く。
「おはよう。元気?」
立っている黒服の男に無造作に話しかける。
「おはようございます」
「元気か聞いてるの」
「え?あ、はい。元気です」
「良かったね。僕は眠いよ」
いまいち噛み合っていない会話を交わして歩く。
また見つけた黒服の男に話しかける。
「おはよう。元気?」
「はい、好調です」
「そっか、元気そうで何よりだよ。僕を読んだのは君だね」
そう言って黒服の男のから鍵を受け取る。
「この合言葉気に入ってるけどさ、他の人にやっても不自然じゃ無いのが良いな」
「では、新しいものを考案して…」
「変えないで良いよ。覚えるの面倒」
「は、はぁ」
よく分からないと言った顔で折口を見る。
「何時もの場所で良いんだね」
「はい。中々の強者でして…」
「そういうのは僕に言わないで良いよ。鍵ありがとね」
そう言ってスタスタと歩いて行く。
廊下の途中の扉の前で立ち止まり、鍵を差し込む。
カチャリと音が鳴り、その上の電子版に電気がつく。
〈名前・職業・地位〉
表示された文字に相当する物を打ち込んで回答する。
〈折口 信夫・薬剤師・拷問班班長〉
ピピッと電信音が鳴り、扉が開く。
「はぁ…」
溜息を吐きながら血やら臓物やらの混ざった異臭の充満する部屋に入って行く。
「お疲れ様です。班長」
「お疲れ様です」
ズラリと並んだ黒服の男達が言う。
「お疲れ。調子どう?」
「いつも通りやっております。それで、今回お呼びしたのは…」
「あの人かな」
黒服達を無視して真っ直ぐ歩いて行く。
目の前には金属製の椅子に座った大男。手足を縛り付けてあり、こちらには一切手を出せない。舌も噛めないように細工してあるが、喋れるようにはなっている。
「うわっ、また爪剥いだの?痛そう…」
折口はブルッと身震いをして言う。
「あ、まずは挨拶だよね。初めまして、調子どう?」
まぁまぁな高身長の折口は、少し屈んで目線を合わせる。
大男は何も答えない。
「痛かったよね、それ。もう少し加減すれば良いのに…」
爪を剥がれた指先を見て、心底同情した口調で言う。
大男は折口を睨んだまま何も喋らない。
「喋らないように訓練されてるのかな。もしかしてくすぐられても笑わないの?凄いね」
ふふっと笑って言う。
「班長、これを…」
後ろに立っていた男が一枚の紙を渡す。
「あ、言ってもらう内容か。忘れてた。えーっと…所属組織名とその場所、手掛かりが掴めること全て…曖昧じゃない?」
「す、すみません!」
男はビクッと肩を震わせる。
「君が指定したんじゃないでしょ、姐さんとかその辺り。取り敢えずお話すれば良いんだよね。何時も通り」
そう言って椅子の下をいじってタイヤを出す。
「手伝ってくれる?」
「了解です」
黒服の男達はタイヤが出て移動可能になった椅子を押し、別の部屋に移動させる。
タイヤをしまい、もう一度椅子を固定させてから男達は部屋から出て行く。
「待っててね」
全員が出たのを確認してから、折口は扉を閉めて鍵を回した。
- Re: ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜 ( No.85 )
- 日時: 2017/05/14 20:43
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
52間目
持っていたエナメルの鞄を置き、その横にしゃがみ込んでチャックを開ける。
「えーっと…確かこの辺に…あったあった」
鞄の中から飴を取り出し、袋から出す。
「うぇ…いただきます…」
嫌そうな顔をしながらポイッと口に放り込んで転がす。
暫くして、ガリッと飴を噛み砕く音が聞こえた。
「……ふふ…ふふふふふふ…」
折口の肩が震え、奇妙な笑い声が口から漏れる。
これまで反応を示さなかった大男も、流石に眉をひそめる。
「ふふふふふ」
振り返った折口の口は、奇妙にニィッと笑っていた。
「良いねぇ、最高だねぇ?」
不自然に語尾が上がった口調で呟く。
「…お前は…?」
今まで一言も話さなかった大男が口を開く。
「余は折口。ポートマフィアの拷問班班長だ。よろしくねぇ」
言葉の端々にヒヒッという笑いが入る。
「さてと、今から拷問をする訳だけど…」
鞄の中から液体の入った試験管を取り出す。
と、折口の陰からゆらりと黒い人が出てくる。
「例えばこの薬品Aをこいつにかけるとねぇ」
そう言った直後、後ろにいる人の左頬がジュワッと音を立てて沸騰する。
そしてそれが流れていき、左肩、腕、脇腹の辺りまで沸騰する。
音をたてながら沸騰は広がっていき、既に左の目玉は萎んで小さくなっている。
「どう?これ、最っ高じゃない?ねぇ」
ボコボコと音を立て、喉から声にならない断末魔を鳴らしながら崩れ落ちていく“モノ”を見ながら、うっとりとした声で言う。
「でもこれは失敗。“僕”曰く殺したら駄目なんだとさ。筋肉まで溶けちゃ駄目って、酷くない?」
長い髪の間から狂人のような目が覗く。
折口は持っていた試験管をしまい、新しいものを出す。
「で、次に薬品Bがあるからぁ」
折口の陰から新しく人が出てくる。
「コレをかけるとねぇ」
そう言うと、皮膚が蒸気を出しながら焼けただれたように剥がれ、ボトリと落ちる。
火傷のようなものは全身に広がっていき、次から次へと皮膚だったものが剥がれ落ちていく。
皮膚が剥がれ落ちた箇所から筋肉が剥き出しになっていく。
「コレも良いでしょぉ?解剖する時に楽なんだよねぇ」
笑いながら言う。
「でもコレも失敗。火傷に似せた症状にしたんだけど、範囲が広いと死んじゃうんだってさぁ。それに痛みもさっきのに比べたらそこまでじゃないんだよねぇ」
残念そうに言い、大袈裟に溜息を吐く。
「そこで余は考えた。この薬品AとBの良いトコだけを取り出す事は出来ないかと!」
大分熱のこもった声で言う。
「“僕”にはそれが可能だった。だから、“余”のために作らせたのがコレなんだよぉ?」
懐から栓をした試験管を取り出す。
「コレ、かけても良いよねぇ?」
大男は怯えきった目で折口を見る。
「ねぇ、実験させてくれない?」
先程の人“だったモノ”が転がっているのを見て、首を激しくふる。
「余に口答えかい?許されないねぇ。余に反対して良いのは僕より地位の高い人か…」
ジロリと大男を見る。
「余に情報を提供してくれる人じゃないと」
試験管の栓をキュポンと抜く。
「因みに、この薬品は君にかけても死なないよぉ?自分の皮膚が沸騰して剥がれていく様子をよぉく見るんだねぇ」
「ま、待て…」
「なに?情報提供かぃ?」
試験管を傾けていた手を止める。
「何故死なないとわかる…俺は死ぬぞ。死んで情報を絶対に…」
「死なないよぉ?」
折口の笑みが一層深くなる。
「余の異能力を教えてあげよう」
そう言って懐からナイフを取り出す。
「異能力名は【死者の書】自分が今持っているもので出来る殺人方法を幻覚にして見る事が出来るのさぁ」
折口の後ろから人が出て来る。
すると、その人の左胸の部分にナイフで刺されたような傷が出来る。少し間があってから鮮血が吹き出し、傷口は刺していたナイフが捻られたように広がり、血飛沫は更に激しくなる。
喉からグェっという音が出て、人だったモノはその場に倒れこむ。
「ほらねぇ?凄いリアルで良いでしょ?」
うふふっと笑う。
「で、この薬品を持っても何も見えない。って事は人を殺す程の威力は無いんだよ。これを飲ませたら死んじゃうかもだけど、見る?ねぇねぇ?」
折口は楽しそうに言う。
「いや…だ…」
「でも情報提供してくれないと拒否権は無いしねぇ…かけちゃおうかぁ」
「ひっ…や、やめて…」
そーっと試験管を傾けていく。
「ギャアァァァアアアアアア!!!」
〜10分後〜
折口と大男の入っている部屋、一部から班長専用特別拷問室なんて呼ばれている部屋の扉が開く。
「班長、お疲れ様でした」
「うぇえ…気持ち悪い…僕がじゃないからってやり過ぎだよ…」
ヨロヨロとした足取りで折口が出て来る。
「あの人が話してくれた内容は全部ココに書いてあるから。薬品も中和済み。安心してお掃除してね」
そう言って小さめのメモ用紙を渡す。
「真逆あんな効果だったなんて…もう少し僕に詳しく話してくれても良いと思うんだけどなぁ…」
大きな溜息を吐きながら地下室を出て行った。
因みに特別拷問室の中の様子は、皮膚が沸騰して焼けただれたようになって原型を留めておらず、床にドロッとした“ソレ”がこびりついている。大男は辛うじて生きているがうわ言のように所属組織名を言っている。
〈霧雨〉
メモ用紙にも書かれた組織名。
残っていた背中の皮膚に波紋のような刺青が施されていた。
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