二次創作小説(紙ほか)
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
- 日時: 2021/09/10 03:28
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。
初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。
コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!
※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。
・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。
・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。
・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。
2016/12/30 閲覧数100突破!本当に感謝です!
2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!
2017/02/09 閲覧数300突破!唯々感謝です!
2017/03/01 閲覧数400突破!感謝感激雨霰です!
2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!
2017/04/23 閲覧数600突破!泣くほど感謝です!
2017/05/13 閲覧数700突破!感謝しすぎで死にそうです!
2017/05/28 閲覧数800突破!本当に有難う御座います!
2017/06/21 閲覧数900突破!物凄い感謝です!
2017/07/02 閲覧数1000突破!信じられないです…有難う御座います!!
2017/07/18 閲覧数1100突破!有難う御座います!
2017/08/03 閲覧数1200突破!感謝ですっ!
2017/08/30 閲覧数1300突破!有難う御座います有難う御座います
2017/09/24 閲覧数1400突破!本っ当に有難う御座います!
2017/11/03 閲覧数1500突破!感謝しかないです!
2017/11/29 閲覧数1600突破!本当に感謝します!
2018/01/08 閲覧数1800突破!1700飛ばしてすみません!有難う御座います!
2018/01/13 閲覧数1900突破!年始効果でしょうか…有難う御座います!
2018/01/27 閲覧数2000突破!こ、これは…夢でしょうか…?!本当に、心から感謝致します!!
2018/03/07 閲覧数2100、2200突破!1つ逃してしまいました…ありがとうございます!
2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!
2018/04/17 閲覧数2400突破!間に合わないのがとても嬉しいです…!
2018/05/13 閲覧数2500突破!いつの間に…?!有難う御座います!!
2018/05/20 閲覧数2600突破!とてもとても!感謝でございます!!
2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!
2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!
2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!
2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。
何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!
2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜文スト二次小説※オリキャラ注意 ( No.46 )
- 日時: 2017/02/02 11:43
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
25間目
「次の依頼です。どなたかやりたい方は…」
「はいっ!」
探偵社の中、敦の問いかけに納言が元気良く返事をする。
「うーん…国木田さん、コレは任せても良い依頼ですか?」
「軍警に依頼されていた書類を届ける…か。誰かが着いていけば問題ないな」
これは探偵社の最近の日常。
式部は無事に実技・筆記試験を合格し、仮入社という形になった。
誰かの役に立ちたいという思いの強い式部が片端から依頼を受けようとするので、出来そうな依頼だけ選出してやらせている。
「でも僕はまだ雑務が終わっていなくて…」
「じゃあ僕が行きますよ。丁度今報告書も書き終わりました」
谷崎がパソコンを閉じながら立ち上がる。
「兄様が行くならナオミも着いて行きますわ!」
ナオミが谷崎に勢い良く抱きつき、谷崎は小さな呻き声を上げる。
「そうか、じゃあ2人とも頼んだぞ」
「「はい!」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして外に出たのだが…
「ナ、ナオミ。少しだけ緩めてくれない?」
「嫌ですわ」
今の谷崎は、逸れないように右手で納言と手を繋ぎ、左腕はナオミにがっちりホールドされていてとても歩き辛そうだ。
「私知ってますよ!こういうの、両手に華って言うんですよね?」
「うーん…まぁ間違ってはいないかなぁ」
あははと笑う。
正直言って周囲からの視線が痛い。
「そういえば、納言ちゃんも異能持ちなら調査員になるんだよね」
「異能…?あ!魔法の事ですね?調査員!かっこいいです!」
ニコニコ笑いながら言う。
「そういえば納言ちゃんの異能、見た事ありませんわね」
「確かにそうだね。帰ったら見せてくれないかな?」
2人の言葉に少し考える。
「うーん…太宰さんがいれば出来ます!」
「異能無効化が必要なの?」
「たまに元気な子がいるんです」
納言はちょっと困った様に笑ってみせる。
「それより!軍警は彼処ですよね?」
ピシッと指をさした先には、いつ見ても立派な建物が建っていた。
「そうだね。渡す人は誰かわかる?」
「メモを取ってます!」
コートのポケットから小さなメモを取り出す。
「えーっと…探偵社にご依頼をされていたのは、官僚の方ですね。場所は地図に記載してあります」
またポケットに手を入れると建物内の地図が出てくる。
そこに記されている中の一つに赤丸で囲んである部屋があった。
「ココです。官僚さんは直接渡して欲しいとの事だったので、私が行きたいです!」
小さな腕をビシッと伸ばしてアピールする。
「良いよ、最初からそのつもりだったからね」
3人は中に入り、待合室の椅子に座る。
「じゃあ納言ちゃん、頑張ってきて下さい」
ナオミが納言の手を握って言う。
「知らない方に着いて行ってはいけませんわよ?分からなかったら周りの方に聞いて下さい。皆さんとてもお優しいですから。それから…」
「ナオミ、心配し過ぎだって」
「でも…!」
ナオミが心配そうに言う。
納言はそれを見てビシッと気をつけをする。
「大丈夫です!コレでも武装探偵社の一員ですから!」
仮ですけどねwと付け足してニカっと笑う。
「では行ってきます!」
「頑張ってね」
「気をつけて下さいね」
2人は手を振って見送る。
納言が見えなくなった所で谷崎は無線を繋ぐ。
「国木田さん、予定通り行きました」
『あぁ、了解した。では端末からカメラに繋げ、引き続き監視を頼む』
谷崎は荷物の中からタブレットを取り出し、立ち上げる。
「それにしても軍警まで巻き込んでの入社試験ですか…大分大掛かりですね」
『納言はまだ幼いからな。本当の事件に巻き込むのは危険すぎる。社長のご意思だ』
今回の依頼は納言の入社試験である。
軍警に協力してもらって納言が戻ってきてたタイミングで犯罪者に扮した者達をいれ、その後の反応を見るとの事だが…
「合格すると良いですわね」
「うん、でもそれは納言ちゃん次第だよ。まずは依頼を達成して貰おうか」
谷崎とナオミはイヤホンを繋ぎ、2人で端末を覗き込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
納言は一つずつ国木田に指示された事をこなしていく。
まず、すれ違う人に挨拶。
「こんにちは」
ぺこりと頭を下げる。言われた通りうるさくし過ぎない程度に。
「おや、こんにちは。お嬢さんはどちらの方かな?」
二つ目、自己紹介は簡潔に。
「武装探偵社の者です。この先にいらっしゃる官僚の方にこの資料を届けるんです」
持っていた地図を見せて状況を説明する。
「そうかい。それならこの先の階段を登って行くと近いよ」
「わかりました。ありがとうございます」
道を教えて貰ったらお礼を忘れない。
「あ、お嬢さんちょっと良いかな?」
「はい、なんでしょう?」
「この箱を持っていってくれないかな?あ、お仕事が終わってからで良いけど、下の階の待合室の所に行けばわかるから」
「分かりました。お勤めご苦労様です」
「ありがとう、お嬢さんも頑張ってね」
ニコニコと手を振って別れる。
さて、お仕事が増えちゃった。でも頼まれたからにはちゃんとやらなきゃ!
納言は姿勢を正す事を忘れずに階段を登り、目的の部屋の前に立つ。
小さく息を吸ってから静かに扉を叩く。
「武装探偵社の者です」
「どうぞ」
中から返事が来たのを聞いてから、静かに扉を開く。
ここでも挨拶は忘れない。
「初めまして。新人の清少 納言と申します。ご依頼の資料を届けに参りました」
持っていた封筒を両手で渡す。
「うむ、ご苦労だったね。また頼むよ」
「ありがとうございます」
丁寧にお辞儀をして部屋を出て行く。
よし!任務達成!でもお家に帰るまでがお仕事だよね。失礼の無いようにしなくちゃ。
真面目な顔で階段を下り、待合室に戻る。
「お、帰ってきた」
「お帰りなさい」
谷崎とナオミが笑顔で待っていた。
納言もつられて笑顔になりながら言う。
「ただいま戻りま…」
ガシャァン!!!
納言の言葉は途中で大きな音にかき消された。
ガラスの割れた音。それに続いて覆面を被った男達が入ってくる。
「動くな!うごいたら命はねぇぞ!」
先頭に立っている者がそう叫ぶ。
座っていた2人が小声で話す。
「兄様、この方達試験の方ですか?」
「…違う。ガラスを割ったりなんて演出はしないし、国木田さんは安全だって言ってた」
「じゃあ…」
「そこの2人!何を話している!」
銃を向けられ、2人は小さく悲鳴を上げる。
やがて男の目線はその奥に立つ納言に向けられた。
「おい、そこの餓鬼。こっちへ来い!」
「は、はい」
荷物を持ったまま恐る恐るといった感じで進む。
「ダメだよ!今行ったら人質に…」
「黙れ!」
谷崎が小声で言うが、銃を向けられて制される。
「谷崎さん、ナオミさん…」
納言は相手に気づかれないように小さな声で言う。
「任せて下さい」
その瞳は真っ直ぐに男に向けられていた。
納言は怯えた表情を浮かべながら男に近寄る。
「よし、良い子だ。この建物にはすでに俺達の仲間がいる。その荷物はそいつが持たせた物だ」
男はそう言って納言の持っている箱を取り、蓋を開ける。
中には時限爆弾のような物が入っていた。
「いいか!よく聞け!少しでもおかしな行動をとったらすぐにこの爆弾を爆破させる!俺達の要件はここの地下に収監されている仲間の開放だ!」
そう言って銃口を納言に向ける。
「警察に連絡したら、爆弾の前にこいつの頭を吹き飛ばす」
低く響くような声で言う。
「あの…」
納言が男をそーっと見上げる。
「初めまして。神代 瑞樹と申します」
ぺこりと頭を下げた。
「はぁ?」
男は納言の言った言葉の意味が分からないというような表情を浮かべる。
「私人質とか初めてなんですが、何をすれば良いんですか?」
「変な奴だな、適当に助けてーとか言っていれば良いんだよ。そうだな…あいつらに早く開放するように言え。それが良い」
「分かりました」
納言は深呼吸をしてから泣きそうな声でその場にいる全員に聞こえるように言う。
「皆さん、助けて下さい。早くこの方達のお仲間を開放しないと私は死んでしまいます。なので…」
そこで一度言葉を切る。
そして、静かに言った。
「そこから一歩も動かないで下さい」
納言は手袋を外し、突きつけられた拳銃と自分のマフラーに触れる。
異能力【枕草子】
すると触れた部分が青白く光り、マフラーが不自然にうねる。
「お前、開放しろって言えと…」
その言葉を聞く前に納言はしゃがんで男の腕から抜ける。
「は⁈おい!」
男は納言に容赦なく安全装置の外れた銃を向け、引金をひく。
銃弾は発射されなかった。
銃は飛び跳ねるように男の手を抜け、空中で発射される。
ガガガガガガガッ!!
弾丸は全て他の男達の持つ銃にあたり、弾け飛ぶ。
「ちーちゃん御見事です!」
納言は奥にいた男達が撃ってくる銃弾を軽やかに避けながら走り、奥に置いてあった大量のロープに触れる。
「てめぇ…!」
納言に殴りかかろうとする男の手足に、瑠璃色のマフラーが巻きつく。
それに続いて他の男達全員の手足にロープが巻きつき、縛られた。
全員が倒れたのを確認したあと、納言は言う。
「ロンちゃんお疲れ様です。御上手ですね」
先頭の男を縛っていたマフラーはいつの間にかロープに変わっていて、仕事を終えたマフラーが納言の首元に戻ってくる。
「るーちゃんもお疲れ。いつもありがとね」
納言はそう言ってマフラーを愛おしそうに撫でる。
「えーと、犯人さん。痛い所は御座いませんか?手とか…足腰辺りとか!」
納言は男の前に立って言う。
「ふざけんな、この餓鬼が!」
「餓鬼じゃなくて神代 瑞樹です!取り敢えずこういう時は落ち着いて下さい」
納言はポケットから袋を取り出し、中から赤い実を取って男の口に放り込む。
「美味しいでしょ?おにーちゃんが育てているんです」
納言はニコニコしながら言う。
と、縛られている男の1人が叫ぶ。
「思い出した!神代って名字で聞き覚えがあると思ったんだ…!」
「お、おい…まさか…」
「白いコートに青いマフラー、それとさっきの妙な能力…お前、“死神”の妹だろ!」
怯えたような表情で言う。
「おにーちゃんのあだ名ですね!お友達ですか?」
納言はニコニコ笑ったまま言う。
「このラズベリー美味しいでしょう?おにーちゃんはジャムを作るのが得意なんですよ。今度買ってみて下さい」
そう言って納言は落ちていた爆弾を取る。
「でも偽物を使うのは良くないですね…コレじゃあ脅しになりません」
納言は落ちていた鋏でコードをチョキンと切る。
画面に表示されていた数字は特に変化もなくプツリと切れた。
「では警察さんにみっちり怒られて下さい!今度からはガラスを割っちゃダメですよ?」
納言はもう一度ニコッと笑ってから谷崎達の所へ向かった。
「えへへ…ちょっと格好つけちゃいました」
そう言う納言の表情は何時もと変わらない無邪気な笑顔だった。
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜文スト二次小説※オリキャラ注意 ( No.47 )
- 日時: 2017/02/05 15:01
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
26間目
「凄いよ納言ちゃん!真逆一瞬で捕まえちゃうなんて…」
「それにしても爆弾が偽物だっていつ気づいたんですか?」
谷崎とナオミが納言に駆け寄りながら言う。
「おにーちゃんに教え込まれていましたから!それにこういう事は路地裏で良くあったんです。でも半分以上はちーちゃんとロンちゃん、あとるーちゃんのおかげですよ」
納言は警察に渡されている男達の腕に向かって手を振る。
すると、男達の腕を縛っているロープの端がヒラヒラと振り返した。
「それが納言ちゃんの異能力?」
「はい!使い方によっては武器になるので使用は控えろって言われていたんですけど…今回は仕方ないですよね」
納言は安全装置が付いたままの銃を持つ。
「えっと、この子がちーちゃんです」
手を差し出し、友達を紹介するかのように言う。
「あの人達、道具の手入れだけは完璧でしたから、ちーちゃんもベストコンディションでしたね」
黒い拳銃を撫でる。
すると、拳銃は嬉しそうにプルプルっと震えた。
「それって解除できるの?」
「自分では出来ないんです。太宰さんかおにーちゃんがいれば出来るんですが…」
納言はお疲れ様と呟きながらもう一度拳銃を撫でる。
と、拳銃は動かなくなった。
「あれ?」
「ん?どうしたの?」
谷崎の方を見ずに手袋をはめた手を見つめる。
「せ、制御が出来た…?」
「兄様、それってもしかして…」
ナオミがそう言った所で電話がかかってくる。
谷崎は携帯を取り出し、応答する。
「谷崎です。…国木田さん?何でしょうか?…はい。えっ?でも今のは…あ、なるほど…分かりました。直ぐ伝えます」
暫く話した後、谷崎は電話を切った。
「納言ちゃん」
「はい?」
「合格だって!」
谷崎は納言に向かってニコッと笑う。
「ご、合格…とは?」
「うふふ、納言ちゃんは知らないですわね。探偵社には筆記・実技試験の他に入社試験があるのはご存知かしら?」
「はい。それを通過しないと社員にはなれないと…」
「それが今ので合格したみたいですわ」
ナオミの言葉に納言は少しの間固まる。
「そ、それって…」
ようやく絞り出した声も今にも消え入りそうな声だ。
谷崎はそれを見て笑う。
「探偵社にようこそ。納言ちゃん」
「これからよろしくお願いしますわ♪」
納言は口を開け、ぽかんとしたまま固まった。
そして、暫くして瑠璃色の瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。
「な、納言ちゃん?!どっか痛いの?」
「大丈夫ですか?」
2人が焦った様子で言う。
「大、丈夫、です。嬉しかった、だけ、なので」
しゃくり上げながらそう言ってもう一度笑う。
「…ありがとうございます!」
そう言った納言の顔は、晴れやかな表情を浮かべていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「社長、何故途中で作戦を取り消したのですか?」
事件が終わり一日経った後、探偵社で国木田が訪ねた。
「…乱歩がそう言ったからだ。あいつは勘がいい」
お茶を飲みながら言う。
社長は乱歩の事を信頼しており、乱歩もまたそれ以上に社長を慕っている。
この2人の関係は他の者には無い何かが作り上げていた。
「それに…」
社長が何かを言いかけたところで納言が帰ってくる。
「ただいま戻りました!」
「聞き込みだったな。どうだった」
国木田は駆け寄ってくる納言を片手で制しながら問う。
「有力な情報も沢山聞けました!けど…」
納言は少し俯く。
「緊張して、ずっと硬い表情だったかもしれません」
「そんな事か?寧ろずっと笑っているよりは幾分かマシだ」
「本当ですか?」
納言は明るい笑顔を浮かべる。
こいつは百面相か?
国木田はその言葉の代わりに、少し照れ臭そうに違う言葉を口に出す。
「次も頼むぞ」
そう言って納言の頭に手を置き、事務仕事に戻った。
「なーごんちゃん♪」
「なーに?太宰さん」
「入社おめでと〜!」
そう言って納言の口に飴を放り込む。
「んむっ!…ありがとうございます!」
放り込まれた飴を口の中で転がしながら言う。
「おや?ついに私にも敬語かい?」
「はい!太宰さんは私の大先輩ですから!」
「ふっふっふ!何でも聞くといいよ!」
得意気に胸を張る。
「太宰さん以外は皆昨日言ってくれましたけどね!」
納言はにっこりと笑って言う。
「それは悪かったねぇ。でもお仕事が…」
謝って言い訳をしようとする太宰の言葉を遮るように納言は笑う。
「太宰さん以外は皆昨日言ってくれましたけどね!」
「急な仕事で探偵社にはいられな…」
「言ってくれましたけどね!太宰さん以外の皆さんは!」
笑顔を崩さずに言う。
太宰は観念した様に溜息を吐く。
「…わかったよ、ごめんね?それで何をして欲しいの?」
「おにーちゃんに会わせて下さい!」
間髪入れずに納言は言う。
「式部ちゃんに怒られたりしない?」
「入社試験に合格したら会って良いらしいです。でもその時は包帯連れだって言ってました」
太宰は一瞬だけ苦笑いを浮かべる。
「じゃあ行こうか」
ぐぃっと大きな伸びをして立ち上がる。
「あれ?太宰さんと納言ちゃん何処行くんですか?」
「ちょっとお買い物〜♪」
鼻歌を歌いながら部屋を出て行く。
「うふふふ、面白くなってきたねぇ」
「何がですか?」
「色々と♪」
それからは特に会話も無く、路地裏に着いた。
路地裏に入った瞬間納言は大きく息を吸い、叫ぶ。
「ただいまぁ!!!」
すると、路地裏から人影が出てくる。
「おかえりー!楽しかった?」
「うん!でもちょっと眩しいかな〜」
「そっかぁ…じゃあ日焼けしちゃうね。あれ?その人は…」
太宰はタイミングを見計らって話しかける。
「初めまして。太宰 治です」
「鞠と申します。納言ちゃん直属の部下みたいなものです」
胸を張って言う。
そこで太宰は彼女の左腕が無い事に気付く。
「あ、太宰さんは鞠ちゃんに触らないで下さいね?鞠ちゃんは日本人形さんで私の魔法…じゃなくて異能で動いてるんです」
鞠はつけていた手袋をずらして手首の継ぎ目を見せる。
「今右腕は修理中で式部さんに出してるの。もうすぐ終わると思いますよ」
トコトコと歩いて路地裏の奥に入っていく。
「久し振りだなぁ…ほら、ここの落書き私が描いたんですよ」
納言は壁に描かれた猫の絵を指して言う。
「へぇ、上手だねぇ」
「いえいえ私なんか…」
そんな事を話しているといつもの場所に着いた。
式部はいつもの場所で静かに座って何かをしている。
「ほら納言ちゃん、挨拶して」
太宰は小声でそう言いながら納言を前に出す。
納言は少し恥ずかしそうに前に立つ。
「た、ただいま」
躊躇いがちに言うと、式部が微かに顔を上げる。
「…おかえり」
そう言うとまた顔を下げ、作業を続ける。
「式部ちゃん?納言ちゃんが帰って来たよ」
太宰が声をかけても作業をやめない。
「よかった!何時ものおにーちゃんだね!」
そう言ってとても嬉しそうに笑う。
式部は作業を終えたのか顔を上げて言う。
「鞠、終わったぞ」
「ありがとうございます」
鞠は腕を受け取ってはめる。
「じゃあ私はこれで」
「うん!またねー!」
鞠は静かに路地裏の奥へ消えていった。
「おにーちゃん!ご飯は?」
「ある」
端に真ん中辺りに小さな机が出てきて、その上にパンケーキが乗せられている。
「わぁい!」
納言はそれの前に椅子を置いて座り、手を合わせる。
「いただきます!」
そしてパンケーキを食べ始めた。
太宰はその様子を見ながら式部に言う。
「なんか私が来てた時と同じだねぇ」
「当たり前だろ」
式部は鉄パイプを杖に立ち上がり、紅茶を淹れる。
桃のジャムを入れて静かに混ぜ、納言の前に置く。
「やった!おにーちゃんのピーチティー♪」
それが当たり前かのようにカップを取って飲む。
「あ、そうそう!入社試験受かったよ!」
「良かったな」
興味の無さそうな返事をする。
「むむむ…」
納言は式部の興味を引くような話題を考えているようだ。
「あ!パソコン!国木田さんに習ったんだ!それで貰ったの!」
「そうか」
依然として素っ気ない返事をする。
納言は又してもむむむっと考え込む。
暫くしてから式部は何時もの場所に座り込み、鉄パイプを置く。
「…納言」
「ん?」
「ココ」
式部は足を伸ばして座り、自分の膝をポンポンと叩く。
納言はそーっと近づき、膝に乗る。
「…よくやったな」
式部は静かに納言の頭を撫でる。
納言は大人しく座って撫でられている。
「仲良しだねぇ」
何時もの椅子に座りながら言う。
何処となく猫と飼い主の様な…
「えへへ。おにーちゃんはこっちのが良いみたいで何時もこうなんです」
「そうなの?」
「特に理由は無い。撫でやすいってだけ」
式部はもう一度ポンポンと頭を撫でてから手を下ろす。
「…ねぇ、なんで呼んだの?」
納言がポツリと尋ねる。
「暇潰し」
「嘘つきめ…あ、太宰さん見て下さい!」
納言はポフッとフードを被る。
「私のフード猫耳付いてるんですけど、おにーちゃんとお揃いなんですよ!」
そう言って自分のフードの猫耳部分をちょいちょいと引っ張る。
「式部ちゃんも猫耳付いてるの?」
「はい、ほら!」
納言は式部のフードを引っ張る。
言われてみれば少し横が出っ張っているような…
「関係無いだろ」
面倒臭そうに溜息を吐き、納言を下ろす。
「取り敢えず顔を見たかっただけだ。これからは納言もココに出入りして良い」
「本当?じゃあこれから鞠ちゃんと遊べるね!」
「まぁそうなるな」
2人の会話を聞きながら太宰は静かに考える。
「明日からちゃんと仕事しろよ。やり方は自分に合うものを探せ」
納言を真っ直ぐに見て言う。
「うん!わかった!」
「じゃあまたな」
その言葉を最後に式部は消えた。
「あ…行っちゃった…」
納言が悲しそうに下を向く。
「まだお昼だし、探偵社に戻ろうか」
「はい…」
2人は静かに帰っていった。
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜文スト二次小説 ( No.48 )
- 日時: 2017/02/06 19:27
- 名前: 真珠を売る星 (ID: 9E/MipmP)
お久しぶりです。
しばらく(というか現在形で)パソコンの調子が悪くてなかなか読みに来れなかったのですが、いつの間にやら納言ちゃんが入社試験に受かっていて驚きました!
そして相変わらず式部さん、クールですね……!納言ちゃんに垣間見せるツンデレがまたカッコいい……。
これからも応援しています。
追記 まことに勝手ながら、題名の部分が字数制限に引っかかってしまったため、一部編集させていただきました。申し訳ありません。
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜文スト二次小説※オリキャラ注意 ( No.49 )
- 日時: 2017/02/09 20:00
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
真珠様、お久し振りです!
返信遅れてすみませんでした…!
リアルの方が忙しかったのですが、こういう時は言い訳は甘えですよね本当に申し訳ありませんm(_ _)m
兎に角、またコメント&感想、本当に有り難うございます!
最近投稿を怠ってしまっているのですが、コメントを頂くとやる気に満ち溢れます!
これからも楽しんで貰えるよう誠心誠意書いていきますね!
追記 題名長くなってしまって済みません!ふと良いタイトルを思いついたのでどうしても入れたくなったのですが、見つけて貰えなくなるのが怖くて字数制限ギリギリの題名にしてしまいました…
機種によって字数制限も違うみたいなので少し削っておきます(。・_・。)ゞ
- Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜文スト二次小説※オリキャラ注意 ( No.50 )
- 日時: 2017/02/09 20:02
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
27間目
チリン…
鈴の音が鳴る。
その方向を見れば、黒い影。
微かな鈴の音に混じって人の囁き声が聞こえる。
「…鞠」
「はい」
「頼んだぞ」
「勿論です」
小さな人形が静かに頷く。
黒い影は路地裏を抜ける。
横浜の街を歩いて行く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うーん…ココら辺だと思うけどなぁ…」
敦がポツリと呟く。
「無い…」
隣にいる鏡花も小さく言う。
ただいま仕事の無い2人は探偵社の前で鏡花が紛失したストラップを探している。
「うーん、兎さんのだったよね?」
「うん」
「何処だろう…兎さんやーい」
チリン…
ふと、鈴の音が聞こえる。
敦が振り向くと、大きな黒いコートを着てフードを深く被った人が立っていた。身長は180㎝ほどだろうか。
「っ?!」
警戒する敦を無視して、黒い人は鏡花の前に屈むと包帯の巻かれた手を見せ、ギュッと握る。
パッ
手を開くとその上には兎のストラップが乗っていた。
「私の…!」
黒い人は兎のストラップを鏡花の手に乗せ、そのまま立ち去っていく。
「あ、ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
2人がぺこりと頭を下げると、黒い人は静かに鈴を鳴らした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ…」
街の中でナオミが溜息を吐く。
「この歳になって兄様と逸れるなんて…こうなると分かっていたなら待ち合わせ場所を決めていれば良かったわ」
ナオミは谷崎を探すためにキョロキョロと辺りを見回しながら歩く。
チリン…
鈴の音が響く。
ナオミが無意識にその方向を向くと、黒い人が立っていた。
「あの、私の兄様見ませんでしたか?」
ナオミが聞くと、黒い人は小さく手招きをして、付いて来いと言うように歩いて行く。
ナオミは不思議に思いながらもついて行く。
暫く歩くと、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ナオミー!」
「兄様!」
ナオミは谷崎に駆け寄って抱きつく。
「ぐぇっ!ってナオミ?!」
谷崎が驚く。
「良かった…大丈夫だった?」
「えぇ、黒い人がここまで連れて来て…」
ナオミはクルッと振り向く。
黒い人はすでに背を向けていた。
「ありがとうございました」
ぺこりとお礼を言うと、黒い人は振り向かずに小さく鈴を鳴らした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…という事があったんですよ」
敦が探偵社に戻って太宰に話す。
「へぇ、それは優しい人がいたんだねぇ」
「僕少し思ったんですけど、太宰さんじゃないですよね?」
「私?ずっとココにいたけど?」
相変わらずソファの上に寝転がったまま言う。
「ですよね…でも手品とか前に見たのと似てたし、手に包帯を巻いていたんですよ」
敦は手首辺りを指して言う。
「確かに私みたいだねぇ、でも私じゃないし…」
太宰は少し考えた後立ち上がる。
「何処行くんですか?」
「暇だし気になるから探してくるね〜」
太宰は探偵社を出て行く。
「手がかりは黒いコートと包帯で高身長、あとは鈴の音か…」
適当に聞き込みを始める。
やはり真っ黒な格好というのは目に止まるらしく次々と目撃情報が入ってくる。
「あれ?太宰さん」
大通りに出たところで聞き覚えのある声が聞こえる。
「おや、谷崎君とナオミちゃんじゃないか。どうしたの?」
「少し日用品を買っていただけですわ」
ナオミは谷崎に抱きついたまま答える。
「あ、そうだ。黒いコートで背が高くて…手に包帯を巻いた人見なかった?」
自分の手首辺りを指差して言う。
「あら、その方なら先程助けていただきましたわ。確か彼方の方に行ったかと」
ナオミは街の端の方を指差す。
「良い情報をありがとね」
「いえ、お役に立てたようで良かったですわ」
「気をつけて下さいね」
2人と手を振って別れる。
太宰は先程聞いた方向に歩いて行く。
暫く進むと人通りは無くなり、静かな場所に出た。
「確かこの辺りは…」
太宰が辺りを見回していると、小さな音が聞こえた。
チリン
「鈴の音…?」
音の聞こえた方へ歩いて行くと、廃れた洋食屋が見えてきた。
その前に黒い影が佇んでいる。
「どうも」
太宰は横に立ってニコリと笑いながら言う。
黒い人は静かに手を合わせている。
「お知り合いですか?」
「…ここの主人」
ポツリと言う。
その声に少し聞き覚えがあった。
「へぇ、そうなんですか。お知り合いで?」
「違う」
「じゃあなんで」
「……」
何も答えない。
暫くすると黒い人は歩き出す。
太宰もなんとなくついて行くと、大きな交差点に出た。
黒い人はまた静かに手を合わせる。
「次は誰を?」
「子供達」
また暫くしてから歩き出す。
この場所…しかも洋食屋の主人と子供達か。真逆4年前の事件を知っている?この男はポートマフィアか特務科か、それとも…
太宰はそんな事を考えながらまたついて行く。
黒い人は長い間歩き、一つの廃れた館の中に入っていく。
中には夥しい数の血痕とガラスの破片、壁や天井には銃痕も残っていた。
その館の最上階に登ってからその部屋の真ん中に向けて、黒い人は手をあわせる。
「今度は?」
「…お前の旧友」
太宰はその言葉で気づく。
「君、式部ちゃんだね?」
太宰がそう言うと黒い人は振り返り、顔を上げる。
「気づいていると思っていたが」
「可能性の一つとして考えていたけど、まさか年齢まで変わってるとは思わないでしょ。
どうやってるの?」
太宰の言葉に式部は何かを取り出す。
「この鈴を身に付けてると、前後10年分だけ年齢を変えられる。それだけ」
チリンと音を鳴らし、少し大きめの鈴を見せる。
「ここは歩いて渡りたかったから。体力があった方が良いだろ」
「なるほどねぇ」
太宰はニコニコしながら言う。
「で、お前は何の用だ?」
「別に?黒い人が居るって聞いて気になったから来ただけ。それ以上でもそれ以下でもないよ」
太宰は小さく欠伸をする。
「それにしても今日は別に織田作の命日でもないし、何かあった訳でもないよね」
「まぁな」
「じゃあ何で…」
パシュッ
太宰が言い切る前に音が聞こえる。
よく見ると式部のマフラーに穴が空いており、その先の壁に新しい銃痕が刻まれている。
「…ねぇ式部ちゃん」
「なんだよ」
「撃たれたけど」
「知ってる」
フードとマフラーに血が滲み、床にゆっくりと血溜まりが出来ていく。
式部がいつもの子供の姿に戻る。
「大丈夫?」
「そう思うか?」
自分の首を触って血を見る。
「狙撃手か…異能者狩りだな」
ポツリと呟く。
「太宰、逃げろ。直ぐに回収班が来る」
「式部ちゃんに死なれたら困るよ。なんか死にそうに無いけど」
「良いから逃げ…」
バンッ!
勢いよくドアが開き、武装した男が10人程入ってくる。
「わぁ、囲まれたね!」
「だから逃げろって言ったのに…」
式部が溜息を吐く。
「でもどちらにしろ後ろにもいるから逃げられなかったよ」
後ろの扉にも同じように武装した男がズラリと並んでいた。
「可能性はあった」
「そうかなぁ」
太宰は楽しそうに笑う。
「それにしても一世一代の大ピンチだ!私はこういうの得意じゃないし、式部ちゃんも瀕死の重傷」
笑ったまま言う。
「大人しく捕まろうか」
「そうだな」
太宰は両手を挙げ、降参の意を示す。
式部は血が足りなくなったのか、その場に静かに倒れこんだ。
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