二次創作小説(紙ほか)

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※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
日時: 2021/09/10 03:28
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。

初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。


コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!



※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。

・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。

・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。

・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。


2016/12/30 閲覧数100突破!本当に感謝です!

2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!

2017/02/09 閲覧数300突破!唯々感謝です!

2017/03/01 閲覧数400突破!感謝感激雨霰です!

2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!

2017/04/23 閲覧数600突破!泣くほど感謝です!

2017/05/13 閲覧数700突破!感謝しすぎで死にそうです!

2017/05/28 閲覧数800突破!本当に有難う御座います!

2017/06/21 閲覧数900突破!物凄い感謝です!

2017/07/02 閲覧数1000突破!信じられないです…有難う御座います!!

2017/07/18 閲覧数1100突破!有難う御座います!

2017/08/03 閲覧数1200突破!感謝ですっ!

2017/08/30 閲覧数1300突破!有難う御座います有難う御座います

2017/09/24 閲覧数1400突破!本っ当に有難う御座います!

2017/11/03 閲覧数1500突破!感謝しかないです!

2017/11/29 閲覧数1600突破!本当に感謝します!

2018/01/08 閲覧数1800突破!1700飛ばしてすみません!有難う御座います!

2018/01/13 閲覧数1900突破!年始効果でしょうか…有難う御座います!

2018/01/27 閲覧数2000突破!こ、これは…夢でしょうか…?!本当に、心から感謝致します!!

2018/03/07 閲覧数2100、2200突破!1つ逃してしまいました…ありがとうございます!

2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!

2018/04/17 閲覧数2400突破!間に合わないのがとても嬉しいです…!

2018/05/13 閲覧数2500突破!いつの間に…?!有難う御座います!!

2018/05/20 閲覧数2600突破!とてもとても!感謝でございます!!

2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!

2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!

2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!

2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。



何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!


2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.41 )
日時: 2017/01/09 12:27
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

真珠様、またまたコメント有難う御座います!

ネタバレになりますが、外伝の方々…結構出てきますよ!

小説は4巻全て読了済ですので出来るだけ全ての要素に触れていきます。その方が御本家様に近い作品が出来るという私の自論ですのでw

登場人物が増えていくと矢張り置いてけぼりの読者様も出て来ると思われますので、真珠様のように小説まで読んでいらっしゃる方は書いている側として有り難いです。

またのコメント、お待ちしております!

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.42 )
日時: 2017/01/10 18:14
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)


21間目



「さてと、気を取り直して…」

散々説教を受けた首領は、少し疲れた様子で言う。

「前回は広津さんがボートを操縦してくれたから、今回も広津さんに操縦して貰おうか」

「何で行くんですか?」

「ヘリコプター!名案だろう?」

ピッと人差し指を立てながら言う。

「…ちゃんと水没の可能性まで考えとるんじゃろうな?」

「もちろんだよ。だから中也君にも付いて来てもらおうと思ってね」

そんな様子を見ながら式部が口を開く。

「…なぁ鴎外」

「ん?」

「スカイダイビングってのはパラシュート付きでやるもんだからな」

それを聞いて首領は肩をすくめる。

「本当に式部ちゃんは頭が切れるねぇ」

あははと笑う首領を軽く睨む。

首領は一瞬ビクッと固まり、苦笑いを浮かべる。

「高さ的に普通に骨折。骨折は流石に痛いし、痛くなくてもダメージは同じだ」

「そんな怖い顔しないでよ〜」

「他の方法は無いんですか?」

中也が問う。

「うーん、それが無いんだよねぇ…空からポイって落とすのが一番合理的で確実だし、安全な手段だよ」

「子供をそんな粗末に扱うでない。ロリコンのお前が言われる言葉じゃなかろう?」

「大丈夫だよ。確かに式部ちゃんは私のストライクゾーンにばっちり入ってるけど頑丈だからね」

「それはあまり関係ないのでは?」

「…今日は中也君も辛口だねぇ」

頬杖をつきながら言う。

それを見て式部は溜息を吐く。

「そこまで言うなら俺1人で泳いで行くけど」

「途中で発動した時の危険性と帰ってこれないかもっていう可能性があるからダメ」

「帰ってこれなくても良いんじゃねぇの?どうせ居ない方が楽だろ」

首領の顔が少し曇る。

それは事実であったし、何より式部の本心だったから。

できるだけ早くこの世を去りたい。それが式部の願いだ。

ならばさっさと自殺すればいいと思うが、それもしない。

まず中々死なないし、加えて式部の中の決まりが邪魔をする。

“望んで産まれたわけではないのに望んで死ぬなんて莫迦らしい”と言うのだ。

だから式部は自殺紛いな事はしない。これが今式部を生存させている源なのだ。

だが、帰らないだけなら望んで死のうとした訳でもないため、その決まりにも引っかからず死ねるという事だ。

首領が何も答えずに黙っていると、中也が口を開いた。

「てめぇが死んだら誰があの餓鬼の面倒見るんだよ」

その言葉に式部はピクリと反応する。

「…探偵社に預けてある」

「あの糞太宰がお前が死んでも預かるって言ったのか?少なくともお前が死んだ時点で世話が面倒臭くなって自由にさせちまうだろ」

図星だった。

先日の約束でも太宰は式部が死んだ後の保証はしないと言っていた。ならばその後はどうなる?まだ幼い納言を置いて死ぬわけにはいかない。

その問いはすぐに完結した。

その様子を見ていた紅葉が口を開く。

「首領さんよ、ヘリコプターを出すなら早めに準備しないといかんのではないかえ?」

「そうだね、早速広津さんを呼ぼう」

首領は携帯を出す。

「あとはヘリコプターを持って来なきゃだけど…」

「俺がやっておく」

式部が言う。

「おや、良いのかい?いつも面倒だと言って断るじゃないか」

「あと2時間半。移動するのも考えると時間ギリギリだろ。お前らがやると遅い」

そう言うと式部の姿が一瞬にして消える。

「…ふむ。今のが異能というわけじゃな。確かに便利そうじゃのう」

口元に扇子を当て、笑いながら言う。

「何もない空間を繋ぐのは難しいらしいよ。詳しい事は知らないけど、壁とかの方が楽なんだとさ」

首領は立ち上がる。

「さて、中也君には水没防止の為に来てもらいたいんだけど良いよね?」

「勿論です」

間を空けずに答える。

「紅葉君はどっちでも良いよ」

「私は行かん。ちょっとした仕事が残っとるからの」

「そうかい、じゃあまたね〜」

首領に手を振られ、欠伸をしながら部屋を出て行く。

「じゃあ今回の作戦を話すよ。大事な事だからよく聞いてね?」

「はい」

部屋の中がシンと静まり返る。

「式部ちゃんは異能力暴走の少し前になると意識が飛ぶ。その間に海へ放り込むんだ。ただそれだけだけれど、タイミングを間違えたら命取りだよ」

「わかりました」

「それじゃあ行こうか」

「はい」

軽い説明のあと、2人も部屋から出て行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

プルルル

ガチャッ

「はい、武装探偵社です。はい、はい…わかりました」

谷崎は受話器を押さえながら言う。

「太宰さん、特務化の方から電話です」

「私に?ちょっと待ってね〜」

寝転がっていたソファからのそのそと降り、受話器を受け取る。

「もしもし?…あぁ、最近ぶりだねぇ。ん?依頼?それなら私じゃなくて…なに?」

眠そうだった太宰が真剣な表情になる。

「特1級…か…それで要件は?…うふふ、そりゃあ分かっているさ。うん…任せ給え、そんなの朝飯前だよ。それに少し調べてあるからね。…ん?なぁに、そういうのじゃないよ。唯ちょっと気になっただけさ。じゃあね」

ガチャン

受話器を置いてから近くのメモに何かを走り書きする。

「谷崎君」

「はい?」

「これ調べといて」

一枚のメモを机に置いた。

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.43 )
日時: 2017/01/14 15:56
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

22間目




「いやぁ、いつもありがとうね。広津さん」

「私などが役に立てるなら光栄です」

首領と初老の男…広津 柳浪が会話をする後ろで、2人は黙って座っている。

今いるのはヘリコプターの中。丁度海の真上だ。

「今何時?」

「23時52分です」

「あと8分か…ギリギリまでかっ飛ばしてね」

「了解です」

ヘリコプターの最高速度ギリギリで海上を飛行していく。

式部の両目はもう既にほぼ茜色に染まっていた。心なしか辛そうにも見える。

それを見て中也が冗談めいた口調で言う。

「乗り物酔いか?」

「…そんな訳無いだろ…」

今にも消え入りそうな声で答える。

「てめぇに何が起こってるのか知らねぇけど取り敢えず大変そうだな」

軽く頭を撫でると、手に小さな切り傷がついた。

異能が発動されている。

「じゃあ中也君、そろそろ準備してね」

「はい」

中也はゆっくりとヘリコプターの出入り口を開く。

強い風が中に流れ込んできた。

「式部ちゃん!コートとマフラーはどうするの?」

風で聞こえにくいため、大きな声を出して首領が言う。

「…持ってろ」

小さな声だったが、首領は頷く。

式部はコートとマフラーを取って座席に置いた。

その直ぐ後に式部の瞼は閉じられた。

「寝た?」

「はい」

「じゃあよろしくね」

「了解です」

中也は式部をそっと抱き上げ、出入り口の外に持っていく。

「もう離して平気だよ」

「はい」

中也は腕の力を抜き、下にそっと下ろす。

と、その瞬間、憎悪や悲哀、この世の全ての負の感情を凝縮したような得体の知れない何かが流れ込んできた。

中也は思わずバッと手を離す。

「離したね?よし、中也君扉閉めて」

「…はい」

閉めながら、ついさっきの自分の声が震えている事に気がついた。身体も小刻みに震えている。

中也は無意識に自分の腕を掴み、強く握る。

次の瞬間だった。

式部の異能の恐ろしさを知ったのは。

チラリと外を見る。

海がパックリと割れていた。

「っ?!」

続いて交差するように割れ、更に交差し、それを繰り返していく。

割れた海の真ん中には、小さくうずくまる式部がいた。

一通り海がズタズタになった後、海底も割れる。

そこで気づく。

魚がいない。

いや、いた。

よく見ると魚は全てミンチ状に切られていた。

「広津さん急いで!今回は何時もより範囲は小さいけど、油断したら駄目だよ」

「了解です」

ヘリコプターはどんどん式部から遠ざかっていく。

「首領、コレって本当にあいつが…?」

「うん、式部ちゃんはコレでも頑張って抑えているそうだよ。それでも暴走は止められない。1歳の赤ん坊が両親の前でいきなりコレになったら大変だよね」

一瞬だけ首領の顔に影が映る。

中也は見つめていた。

水平線の彼方まで切れた海を。

その中心でうずくまっている小さな少女を。

暫くしてから首領が指示をし、ヘリコプターを止める。

「もう10分経った?」

「はい、今から戻ります」

「うん、お願い」

ヘリコプターは回れ右をする。

外の海は、段々と元通りになっていく。

吸い寄せられるように元の形に戻っていく海の中心には、先程と同じ体勢でうずくまる式部がいた。

式部の上に海が覆い被さる。

「首領、急いだ方が…」

中也が少し焦りながら聞くと首領は笑う。

「大丈夫、すぐに浮かんでくるからそれを捕まえるよ。でもその間水没しないようにしておいてくれる?」

「わかりました」

「よし。じゃあ広津さん、高度落として」

「はい」

ヘリコプターがゆっくりと下降していく。

式部が浮かび上がったのが見え、そこに移動する。

「じゃあこの高さでキープお願いね」

「はい」

中也は異能を使い、ヘリコプターを空中で止める。

海の中から式部を持ち上げ、中也の座席の横に寝かせる。

「よし、じゃあ帰ろう。中也君もありがと」

首領の言葉で、異能を解除する。

ヘリコプターは徐々に高度が上げていき、元来た方向を向いて飛行する。

「今回は楽だったねぇ」

「そうですね。次もヘリコプターにしましょうか」

「うーん…中也君が不在の時困るかなぁ。ちょっとその辺も考えなきゃね」

そう言ってニコリと笑い、振り返る。

「あ、何かかけておいてあげて」

「はい」

置いてあったコートを式部の上にかける。

「…前から思ってましたけど、このコート似てますね」

「ん?あぁ、太宰君の?」

「まぁ…はい、そうです」

出来れば出したくなかった名前に少し顔を歪める。

「私も詳しくは知らないからなぁ…でも太宰君のコートにはフードは付いていなかったはずだから違うんじゃないかな?」

「そうですよね」

中也はコートに付いているフードに触る。

付け根の所も細かい縫い目が隠されており、自作では無いだろうという所から取り敢えず違うと判断する。

と、横に寝かしていた式部がピクリと動く。

それに続いて勢いよく体を起こす。

中也は反射的に手を引っ込めた。

「っ…」

左の脇腹辺りを押さえ、声にならない呻き声を上げる。

「おはよー式部ちゃん」

「……」

その声には答えず、座った格好のまま静かに目を閉じる。

「寝るの?片付けとかも任せようと思ってたんだけどなぁ」

「うるさい黙れ」

低くドスの効いた声が響く。

その声が式部の物だと気づくのに数秒かかった。

「こら!女の子がそんな声出しちゃダメだよ?」

「お前に言われたくない」

物凄く不機嫌そうな声で言う。

「どうしたの?」

「傷が増えた。あと久しぶりに肋骨が痛む」

ほら。と言いながら式部は腹を見せる。

わずかに包帯の巻かれていない隙間に青紫色の痣ができていた。

「この分の包帯はお前が出せよ」

「わ、分かったからその怖い目をやめて?」

引きつった笑みを浮かべながら言う。

「だから反対したのに…」

ボソリと呟く式部にふと、中也が問う。

「痣なのに包帯巻くのか?」

「この包帯は傷の治癒に使ってる訳じゃない。コレが全部完治してなかったら動けないだろ」

そう言いながらコートを羽織り、マフラーを巻く。

長すぎるマフラーはダラリと垂れ下がったまま放置される。

「んじゃあ何で包帯なんか巻いてんだよ」

「隠すため」

式部がそう言った瞬間、外の景色に違和感を感じる。

前回路地裏に行った時のような…

窓を見ると、海ばかりだった筈の景色にコンクリートの島が見え始めていた。

「送ってくれたの?ありがと〜」

首領が気の抜けた声で言う。

どうやら式部が異能を使って港付近まで移動させたようだ。

「エリスにやったスーツはコレの礼の先払いだ。お前にはコレで充分だろ」

首領の手の上に一冊の書類が落ちる。

「おや、こんなの頼んでたっけ?」

「暇潰しにお前の悩みの種でも増やしてやろうと思ってな。手書きだが文句言うなよ」

そう言うと式部は音も無く消え去った。

首領はペラペラとその書類をめくる。

「はぁ…本当にあの子は嫌がらせが上手だ」

その書類を広津と中也にも見えるように広げる。

〈反ポートマフィア無法組織勢力一覧〉

Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.44 )
日時: 2017/01/27 16:06
名前: ぴろん (ID: HPUPQ/yK)

23間目



月明かりが路地裏を照らしていた。

「やぁ!」

何時も通り太宰は路地裏に行き、うずくまっている式部に元気よく挨拶をする。

何時も通り式部はそれを無視して、顔を埋める。

机の上に音も無く珈琲が現れる。

「いつもすまないね」

太宰はゆっくりと珈琲を飲む。

何時もならココでお菓子が出てくるが、今日は出てこなかった。

少し不思議に思いつつも、太宰は式部に話しかける。

「そろそろ異能力について聞こうと思ってたんだけど良い?」

式部は動かない。

コンクリートに囲まれた空間に、何時もの2人の沈黙が流れる。

太宰が口を開く。

「ねぇ式部ちゃん」

式部の腹の辺りを指差す。

「包帯、増えてるよね」

式部は咄嗟に手で隠そうとするが、動いた事で肋骨が軋む。

「っ…!」

声にならない呻き声を上げる。

「こう見えても私、怪我には詳しいんだよ?医者程じゃ無いけどね」

式部の前に屈み、目線を合わせる。

「見して?」

太宰がそう言うと、式部はやっと口を開く。

「…何の怪我か位わかってる。それ位できなきゃココで生きていけねえよ」

コートの前を開け、増えた包帯を解く。

「真っ青じゃないか!ちゃんと治療しないと!」

「ただのヒビ。放っておけば治る」

「そんなのダメだよ。見た所1…いや、2本だね。取り敢えず横になっ」

「やめろ」

低く、冷たい声が太宰の言葉を遮る。

千切れた言葉の切れ端が宙を漂う。

納言は言葉を続ける。

「俺の異能力はお前が思っているよりも万能だ。これ位ならすぐ治る」

「異能力?それで怪我が治るの?」

太宰はニコニコしながら聞く。

「…誰にだって自然治癒能力はある。骨折だって結局は時間が経つのを待つしかない。それなら、“時空”を操ればいい」

そう言って目を閉じる。

青痣がゆっくりと薄れていく。

「これで治ったの?」

「見ればわかるだろ」

式部はそう言って下を向く。

「で、どうして私が来る前にやってなかったの?」

下を向いた式部に問う。

「……」

なにも話さない。

「話したくないなら良いけど…ん?」

太宰が嫌そうな顔をして振り返る。

静かな路地裏にコツ…コツ…と小さな足音が響いている。

段々とこちらに向かって来ているようだ。

太宰が立ち上がろうとした時にはもう遅かった。

「うわっ最悪だ…」

「こっちの台詞だよ。中也」

太宰は立ち上がり、中也を見下ろす。

「何で来たの?」

「届け物だよ。コイツ宛のな」

中也は式部を指差して言う。

「もっと違う時間は無かったの?」

「てめぇこそ何で此処にいるんだよ!」

「私は仕事だよ。情報集め」

「その割には珈琲飲んで寛いでるみてぇだな」

中也は太宰を思いっきり睨む。

「式部ちゃんのサービスだからねぇ。で、届け物があるならさっさと置いて帰ってくれない?」

「うるせぇ!言われなくてもそうするっつーの」

そう言いながら持っていた荷物を式部の近くに放り投げる。

「首領から包帯と救急箱、姐さんから白い薄手の浴衣と裁縫セットだとよ。布とか色々突っ込まれた」

式部は小さく溜息を吐き、袋の中身を確認する。

「…尾崎は本当に過保護だな」

「へぇ、紅葉さんの事苗字で呼ぶ人初めて見たよ。変わってるねぇ」

「お前らが呼んでないだけだろ」

袋が棚の横に移動する。

「尾崎に伝えておいてくれ。今度からは色は白以外で頼む。それと布は…」

一瞬横に視線を向けてから続ける。

「今は必要ない」

「あぁ、わかったよ」

中也は不機嫌そうにクルリと振り返り太宰を見る。

「次会ったら殺してやる」

「そうかい。残念だが私はもう中也と会いたくないね」

「俺だってそうに決まってんだろ!」

先程と同じ足音を立てながらスタスタと帰っていった。

「はぁ…この辺はマフィアの管轄外だから油断してたよ。それで、何もらったの?」

「さっき言ってただろ」

「蛞蝓語は会得してないんでね」

式部は面倒臭そうに溜息をついてから告げる。

「服と布と救急箱」

「あとは?」

「ない」

フラリと立ち上がり、近くにあった鉄パイプを取る。

「時空を操れるのは長さに比例する。次使えるのは一週間後って所だな」

隣の棚の中から包帯を取り出す。

「つまり、何が言いたいの?」

「…さっき俺が治さなかったのは何でか聞いたよな。そういう事だ」

鉄パイプを右足に当て、包帯で巻く。

太宰は気づく。

「そこも怪我してたの?」

「肋骨と足のどっちをやるか迷ってな。お前が先に気付いた方にしようと思った訳だ」

固く結び、右足を伸ばして座る。

「悪いが今日は飯を作れない」

「そんな事は良いよ。さっきも言ったけど、私は仕事でココに来ているんだから」

「それなら良いけど」

暇になったのか、先程の袋の中から裁縫セットと布を取り出して切り始める。

「その外套って…もしかして私の?」

「そうだけど」

「フードとかは自分でつけたの?」

「必要だったから。これ位は誰でもできる」

切った布を和服に縫い付け、袖と裾を長くする。

「私は出来ないよ」

「ふーん…」

糸を切り、縫い目を確認する。

「異能の話は今度にするよ。なんか面倒になったし」

「あっそ」

袋から同じ色の布を取り出し、短い帯状に縫う。

「何作ってるの?」

「服」

太宰の方を一切向かない。

和服の内側に帯をつける。

「ねぇ」

「なに」

「聞いてる?」

「聞いてるだろ」

そう言いながらも縫う手を止めない。

一通り縫い終わり、全体を確認しながら細かく縫っていく。

薄い色で端に小さな模様を入れていく。

「私寝てるね」

「ん」

路地裏の少し空いた空間に布団が敷かれた。

「おぉ、助かるよ。おやすみ」

太宰の声には答えず、式部は黙々と裁縫を続けていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おい太宰!起きろ!」

部屋に怒号が響く。

「んー…あと30分…」

太宰は二度寝をしようとするが、その声が国木田のものだと気付き、目を開く。

「あれ?国木田くん?」

「全く…珍しく定時前に探偵社に来ていると思ったら寝ているとはな。お前は一体何をしに来たんだ!」

再び国木田の怒号が響く。

太宰は目を擦りながら渋々起き上がる。

そこは探偵社のソファの上だった。

「私いつから此処にいた?」

欠伸をしながら問う。

奥にいた敦が首を捻りながら言う。

「うーん…僕が此処に来た時にはもう寝ていましたけど…」

「昨日社長の前に僕達は帰りましたけど、その時には太宰さんはいなかった筈ですよ」

谷崎が確認するように言う。

「昨日の夜?それなら私は路地裏に仕事しに行ったけど」

それを聞いて国木田は溜息を吐く。

「大方、仕事帰りに呑んだくれて酔っ払ったまま此処に入ったんだろう」

「えー?でも二日酔いないよ」

「でも社長が出た後は鍵をかけてあるんじゃないですか?」

考える程疑問が溢れる。

「そういえば今朝一番に来たのは社長ですよね」

「それが、社長が来た時には太宰さんがいらしたそうですわ。太宰さんの事だから窓からでも入ったと思ったらしいのですけど…」

「うーん、ありえますね」

丁度仕事が無かったのを良い事に、わいわいと話し続けていく。

「遅れました!!」

ドアが勢いよく開き、納言が入ってくる。

「あ!太宰さん此処にいたの?!私昨日の夜からずーっと探してたんだよ!帰ってきて居ないのは知ってたからお風呂の準備とかしてから寝たけど朝起きても太宰さんいないし!私折角早起きして朝ご飯作ってたのに!昨日のお鍋も態々分けてもらってちょこっとアレンジしたりとか鏡花さんに教えてもらって頑張ったのに!お弁当だって作ろうと思ったけどお弁当箱無いし!ついでにレンジもないから凍らせても何も解凍できないし!」

わぁーっ!とまくし立てる。

「…って、その服なに?」

落ち着きを取り戻してから太宰の隣にある白い服を指差す。

「あれ?コレは式部ちゃんが昨日いじってた和服で…ん?」

太宰は服に小さな紙が挟まれているのに気付き、手に取る。

「何て書いてあるの?」

「…納言ちゃんの寝間着だってさ。これ」

「え?本当?!」

パァッと明るい顔になり、白い和服を取る。

「可愛い!流石おにーちゃん!というかこの記事はもみじちゃんのかなー」

そう言いながら広げた服を丁寧にたたみ、リュックに詰める。

「もみじちゃん?」

「鏡花さんのお姉さんです!」

それを聞いて敦は

「えっ?!鏡花ちゃんにお姉さんって…」

「私に姉妹はいない」

「だ、だよね…?」

そんな会話をしていると、社長室から1人の事務員が出てきた。

「国木田さん、太宰さん。宜しいですか?」

「ん?なんだ」

「はーい」

「お仕事です」

Re: 〜紫眼に惹かれて現世を〜文スト二次小説※オリキャラ注意 ( No.45 )
日時: 2017/01/29 18:55
名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)

24間目



真昼間、2人は横浜の街を歩いていた。

「いやぁ、久し振りだねぇ!国木田君と2人で仕事をするのは」

「確かにそうだな。最近は敦が着いて来ていたし、その前はギルド戦か…時間が流れるのは早いな」

その言葉に太宰はうふふと笑う。

「国木田君もう歳取ってるんじゃないの?」

「お前も同じ歳だろうが!それに前も言ったが、俺は歳を取ることを悪いとは思ってない。むしろ経験を得るという事になるなら良い事だ」

「お堅いねぇ…」

「誰が堅物だ!」

ギャーギャー騒ぎながらも目的の場所に着く。

「今回の仕事は覚えているな?」

「もちろん!国木田君の眼鏡選びでしょ?」

「違う!」

怒鳴る国木田を太宰はまぁまぁとなだめる。

「冗談だよ。最近の異能力持ちの犯罪者を取締まるんでしょ?でも国木田君もそろそろ眼鏡変えた方が良いと思うけどなぁ」

「俺の眼鏡はどうでも良い!」

ヘラヘラしながら言う太宰を横目に国木田は大きな溜息を吐く。

多分胃に拳程度の穴が空いた。

「で、此処にお前の行きつけの情報屋がいると言っていたが…信用出来るのか?」

「大丈夫、嘘は吐かないよ。それに情報も正確だ」

「なら良いが…」

疑わしげな目で太宰を睨む。

2人は薄暗い路地裏に入っていった。

暫く歩いていると、国木田が口を開く。

「おい太宰」

「んー?」

「此処の路地裏は確か納言のいた所だよな」

「よく覚えてるね」

煽るようにニヤニヤと笑う。

「当たり前だ。それで思い出したのだがお前は最近仕事だと言って此処に来ているだろう?」

「うん」

「今回の情報屋とそれは関係があるのではないか?」

国木田の言葉に太宰は笑う。

「大正解。そのご本人なのだよ」

狭い路地裏の道が少し広くなる。

と、そこに何時もの人が何時ものようにうずくまっていた。

「改めて紹介しようか。納言ちゃんの保護者の紫 式部ちゃんだよ」

式部はチラリと目を上げ、国木田を見る。

「…国木田 独歩だな」

「あぁ、そうだが」

国木田は少し警戒して答える。

「異能力は【独歩吟客】一度見てその形と能力を理解したものを手帳に書き具現化する。ただし大きさは手帳の大きさに限る」

式部はまるで暗唱でもするように国木田の異能力の詳細を淡々と述べる。

「よく調べてあるな」

国木田は感心した表情を浮かべる。

「愛用している手帳には自分の計画、理想の類が全て記入されており、特にその中でも理想の女性像は手帳8枚15項目58要素にも及び、一つ目は…」

その表情が歪み、慌てて遮る。

「ま、まて。まさか太宰、お前全部話したんじゃないだろうな」

キッと殺気のこもった視線を向ける。

「真逆、流石に私もあの項目は覚えたくないよ。頭が痛くなる」

自分の頭を叩きながら言う。

「全て式部ちゃんの仕入れた情報だ。その気になれば国木田君の恥ずかし〜い黒歴史とかも暴露出来そうだよね」

国木田はもう一度式部を見る。

この小さい頭に一体何が詰まってるんだ…?

「さて、コレで情報の正確さがわかったね」

太宰はニコッと笑う。

「早速異能力者の犯罪者達について教えて貰おうか」

「今回は俺と国木田の顔合わせじゃなかったのか?」

「君ならわかってたでしょ?」

太宰の言葉に式部は小さく溜息を吐く。

と、太宰の手の上に1束の資料が落ちる。

「今の段階で言えるのはそれ位だな」

「へぇ〜」

太宰と国木田は資料に目を通す。

全て手書きで記入されているが、要点がまとめてあり分かりやすい。

中にはそれぞれの出生や生い立ち、前職までも書かれている。

「こんな情報よく集められたな…」

「聞きたくなくても耳に入ってくるんだよ」

そう言った後、一枚の地図が国木田の手に落ちた。

「そいつらの居場所と最短ルート、待ち伏せに最適な場所を書き込んでおいた。適当に活用してくれ」

「流石式部ちゃん、過保護だねぇ」

「過保護なのは尾崎だけで充分だ」

「尾崎?」

国木田はその名前を口に出す。

「国木田君知らなかったっけ?この前捕えてたマフィアの幹部」

ニコッと笑って言う。

「ポートマフィアの幹部と何の関係が…」

「たまに話してる。暇潰し程度だがな」

「それも私がいなくなってからなのだよ。あぁ酷い、私も式部ちゃんがいたら楽しかったのになぁ」

ぶぅと頬を膨らませる。

「うるさい、包帯の切れ端が」

「そんなあだ名初めてだ」

太宰と式部が話す横で国木田は深く溜息を吐く。

また厄介な奴と関わってしまった…

「それにしても私、昨日本当に酔っ払ったのかなぁ…そんな記憶無いのだよねぇ」

「それなら俺が運んだ。ずっと此処で寝られたら邪魔だろ」

「あ、そうだったの?それはどうも」

国木田はそんな会話に入る訳でもなく、お茶を飲みながらこの小さな体で太宰を運ぶのに驚いているだけであった。

「そういえば2人はもう飯食ったのか?」

「勿論食べてないよ!ね、国木田君」

「その前に引きずり出したからな。まぁ俺も食べていないが…」

「2人分か…」

式部はそう言って鉄パイプを杖代わりに立ち上がる。

「残念だが鰹は無い。それと、今日は材料が少ないからあまり期待しないでくれ」

そう言って湯を沸かし、太宰にお茶を渡す。

「ありがと」

「おい太宰、どういう事だ」

「ん?此処でご飯食べていくんだよ」

「情報屋に作ってもらうのか?」

「情報屋じゃなくて式部ちゃんだってば。そう思えば小さな少女にご飯を作ってもらえるのだよ?嬉しい事じゃないか」

「少…女…?」

国木田はテキパキと料理をしている式部を見る。

どう見たって女には見えない。

「前に言ったじゃないか。式部ちゃんは女の子だったよって」

「それは聞いたが…」

国木田は目の前の子供を見る。

先程の声、口調、一人称、背格好や服装に至るまで少女とはまるでかけ離れている。

「俺のイメージではもっとこう、納言に似ているのかと思ったのだが…」

「あぁそうか、そっちのイメージかぁ」

太宰はお茶を一口飲む。

「私も最初は男だと思ってたから着替えとか普通に見ちゃったよ」

「はぁ?!」

国木田がガタンと音を立てて立ち上がる。

「お前、人には常識というものが…」

「ストップストップ!私が見たのは背中だけだってば。それに包帯も巻いてたし」

「そ、そうか…なら良いのか?」

首を傾げながらも座り直す。

と、式部のいる方からジューッと焼ける音と香ばしい匂い、更に米の炊けた匂いも漂ってきた。

「式部ちゃんは料理上手いからねぇ。それにレパートリーも豊富だし」

「常識程度しか作れない。これ位は誰だって出来るだろ」

そう言いながら火を止め、溶き卵を回し入れる。

その間に他の皿を洗ったり出したり盛り付けたりと、慣れた手つきでテキパキとこなしていく。

大き目の器に白米をよそい、フライパンの中身を乗せる。

「そんなに大層なもんじゃないが」

2人の目の前に置かれたのは半熟の卵がかかった親子丼。ご丁寧にネギ、刻み海苔、三つ葉が乗っている。後から副菜や汁物が置かれていく。

「おぉ!久し振りの和食だね〜」

「この前焼き魚食っただろ」

「あれは朝ご飯じゃないか。しかも3日前」

その会話を聞いて国木田は太宰を睨む。

「おい太宰…真逆とは思うが、お前毎日此処で飯を食ってるのか?」

「そうだよ?納言ちゃんは敦君と鏡花ちゃんの所でご飯食べてるから大丈夫」

涼しい顔で答える。

「何が大丈夫だ!貴様幼い少女を夜に1人で居させているのかこの大馬鹿者!少しは彼女を泊めているという自覚を持って…」

「いただきま〜す」

「最後まで聞け!」

無視して太宰は親子丼を食べる。

「早くしないと冷めちゃうよ?うん、これも美味しいねぇ」

国木田はまだ何か言いたそうな顔をしていたが、取り敢えず手を合わせていただきますと呟き、一口食べる。

「…美味いな」

「でしょう?そこら辺のレストランなんか比べ物にならない位良い腕してるよね〜」

「普通だって言ってるだろ」

2人は此処に来た目的を忘れているかのように黙々と食べ進めた。

〜15分後〜

「ごちそうさま〜」

「ごちそうさまでした」

2人はほぼ同時に箸を置く。

と、すぐに食器は目の前から消え、流しの中に入っていた。

式部は洗い物をしながら呟く。

「国木田とやら、お前の理想の女性像は実現すると見た目はこんな感じだが…良いのか?本当に」

そう言って指差した先には、何の欠点も無い作り物のような女性が静かに佇んでいた。

国木田は目を見開く。

「おやぁ?国木田君の理想の女性像にぴったりじゃないか。どこから連れてきたの?」

「こんな人間いる訳ないだろ」

式部の言葉が国木田にグサッと突き刺さる。

「探偵社に谷崎ってのがいるだろ?あいつの異能と同じような物だ。ただの立体映像」

そう言うと女性はフワリと消える。

「で、本当にこの理想を追い求めるのか?悪いとは言わないが、それこそ無謀だな。実際日本には今みたいな女は存在しない。四年後となると更にいない」

式部は食器を洗い上げ、沸かしていたお湯で紅茶を入れる。

「だってさ国木田君。諦めたら?式部ちゃんの情報は正確だよ。私も同感だし」

「うるさい!俺は俺の理想を貫く」

それを聞いて式部はチラリと顔を上げ、目を合わせる。

何もかも見透かされているような紫色の瞳に見据えられ、国木田は少し後ろに下がった。

「…その考えは嫌いではないが、理想の女性像と理想の相棒像は早急に改変するべきだな。流石に限度って物がある」

「え?相棒?国木田君そんな事まで書いていたの?それなら今の私でピッタリだよね!なんせ私は社の信頼と…」

そこまで言った所で国木田の中の何かが切れる音がした。

「勤労意欲が無く雑務もせんし報告書もまともに書かない!おまけに趣味が自殺!そんな奴がパートナーだと?!ふざけるな!俺の手帳にはそんな奴が相棒になるなんて書いておらん!!」

太宰の胸ぐらを掴んでぐわんぐわんと揺らす。

「そもそもお前だけが阿呆なら兎も角、お前は周りを巻き込んで馬鹿をやるんだ!今朝も納言の遅刻、事務員の掃除、他の者の業務!全ての予定を千々に乱した癖に何が社の信頼だ!恥を知れ!!」

今まで貯めていた物が洪水のように溢れ出てくる。

揺らされている太宰はその怒号と揺れで笑いながら目を回す寸前。色々と駄目な感じだ。

全て言い切って肩で息をする国木田とヘラヘラと笑っている太宰を見て式部は言う。

「成る程。仲の良い者がする喧嘩は見ていて楽しいな」

「仲など良くない!」

ゼェゼェと息を切らしながら反論する。

と、此処でふと我に返ってハッとする。

「あぁ、いや、すまない。良い情報を貰った、礼を言う。また何かあったら訪れよう」

「私は毎日来るよ〜」

胸ぐらを掴まれたままの体勢で太宰はヒラヒラと手を振る。

「一つ無駄な知識をやる」

「ん?式部ちゃんにしては珍しいね。どんなジョーク?」

太宰はニコニコしたまま言う。

「あの荷物を見て勘違いしている様だが、納言は元々力は強くない」

「へぇ、じゃあどうやって持ってるの?」

「あの荷物は生きている」

少しの沈黙の後、納得したように国木田が言う。

「それが納言の異能力だったな。となると、地面についている紐が支えているのか」

「ご名答。流石武装探偵社員だ。簡単に言うと、太宰。納言が荷物を運んでいる時は手に触れないでくれ。それだけだ」

「はいはい。本当に過保護だね」

太宰がその言葉を言い終わる前に上からバケツが降ってきて、太宰の頭に落ちる。

「いっった!!」

「うるさい」

頭を抱えてうずくまる太宰を横目で睨み、背を向ける。

そんな太宰を見下ろしながら国木田が言う。

「一つ、聞いて良いか?」

「…なに」

「お前、どこまで知っている」

冷たい声で問う。

「お前の知り合いの言葉を借りると…」

そこで一旦言葉を切り、振り向く。

「知ってる事しか知らねぇよ」

ほんの一瞬だけ隣に少年が現れ、消える。

「次来た時は鰹のたたきでも用意しておいてやる。調査頑張れよ」

そう言って式部は姿を消してしまった。


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