二次創作小説(紙ほか)
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- ※文スト二次創作※ 〜紫眼に惹かれて現世を〜
- 日時: 2021/09/10 03:28
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
初めまして。カキコ初見のぴろんと申します。
初投稿ですので何かと至らぬ点も御座いますが、生温かい目で見守って下さると助かります。
コメントや物語に関する質問などは何時でも受け付けておりますので遠慮なくコメントしていって下さい!
※注意
・この小説は作者の完全なる二次創作です。御本家様とは全く関係がありませんのでご了承下さい。
・登場人物の異能など説明不足の部分が多々あります。その場合は御本家様、文豪ストレイドッグスの漫画1〜10巻、小説1〜4巻を全て読んで頂けるとより分かりやすく楽しめると思われます。
・作者の勝手な解釈で作っておりますので、良く分からない表現や言葉等があった時はコメントで質問をして下さい。読者の皆様方が分かりやすく楽しめる小説作りをする為の参考にさせて頂きます。
・此処では二次創作小説の連載を行なっております。リクエスト等にはお答えできませんのでご理解頂けると幸いです。
2016/12/30 閲覧数100突破!本当に感謝です!
2017/01/14 閲覧数200突破!有難う御座います!
2017/02/09 閲覧数300突破!唯々感謝です!
2017/03/01 閲覧数400突破!感謝感激雨霰です!
2017/03/24 閲覧数500突破!有難う御座います!
2017/04/23 閲覧数600突破!泣くほど感謝です!
2017/05/13 閲覧数700突破!感謝しすぎで死にそうです!
2017/05/28 閲覧数800突破!本当に有難う御座います!
2017/06/21 閲覧数900突破!物凄い感謝です!
2017/07/02 閲覧数1000突破!信じられないです…有難う御座います!!
2017/07/18 閲覧数1100突破!有難う御座います!
2017/08/03 閲覧数1200突破!感謝ですっ!
2017/08/30 閲覧数1300突破!有難う御座います有難う御座います
2017/09/24 閲覧数1400突破!本っ当に有難う御座います!
2017/11/03 閲覧数1500突破!感謝しかないです!
2017/11/29 閲覧数1600突破!本当に感謝します!
2018/01/08 閲覧数1800突破!1700飛ばしてすみません!有難う御座います!
2018/01/13 閲覧数1900突破!年始効果でしょうか…有難う御座います!
2018/01/27 閲覧数2000突破!こ、これは…夢でしょうか…?!本当に、心から感謝致します!!
2018/03/07 閲覧数2100、2200突破!1つ逃してしまいました…ありがとうございます!
2018/03/28 閲覧数2300突破!ありがとうございます…!!!
2018/04/17 閲覧数2400突破!間に合わないのがとても嬉しいです…!
2018/05/13 閲覧数2500突破!いつの間に…?!有難う御座います!!
2018/05/20 閲覧数2600突破!とてもとても!感謝でございます!!
2018/05/23 閲覧数2700突破!ぺ、ペースが早い…!ありがとうこざいます!!
2018/06/02 閲覧数2800突破!間に合わなくてすみません。有難う御座います!
2018/06/29 閲覧数3000突破!え、あの、ごめんなさい!有難う御座います!なんかします!
2021/09/10 閲覧数7000突破!有難う御座います。恐らく更新はありませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。
何時の間にか返信数も100突破です。有難う御座います!
2017/06/30 本編完結。今後とも宜しくお願い致します。
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.6 )
- 日時: 2016/12/27 10:43
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
4間目
「あんの青鯖…今度会った時には絶っ対に縊り殺してやる…!」
ブツブツと悪態を吐きながら月明かりの下を歩く。
彼の名は中原 中也。異能力は【汚れつちまつた悲しみに】重力を自在に操る能力。ポートマフィアの幹部であり、太宰の元相棒である。
暫く歩くと目的の路地裏に着いた。
「全く…何で俺がこんな目に…」
彼がこの時間にココに訪れた訳は、数時間前に遡る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日の昼過ぎ首領から呼び出しがかかった。
「任務か…」
一人で呟きながらをエレベーターを降りる。
首領のいる部屋はこのビルの最上階。幹部の部屋はその一つ下なのですぐに着く。
ドアの前に立ち、ノックをする。
「首領、中原です」
「お願いだよぉ〜!エリスちゃん!一回だけで良いからぁ!」
「やだ!絶っ対に着ないもんね!リンタロウ気持ち悪い!」
「酷いよぉエリスちゃん!」
「…失礼します」
苦い顔をしながらドアを開けると、何時も通り半裸の幼女をドレスを持って追いかける白衣の男性の姿があった。
男性の名は森 鴎外。謎に満ちたポートマフィアの首領だ。
他の部下達が見たら卒倒するであろうこの光景も見慣れた風景だ。
「首領」
「あ、中也君…えーと…ちょっと待ってね」
「了解です」
中也との会話の隙に、幼女…もといエリス嬢は隣の部屋に逃げて行く。
「さて、何時もすまないね」
首領は既に身なりを整え、目の前のテーブルに腰掛けていた。
「いえ、大丈夫です。それで今回は?」
何時も通りの返事と質問を返す。
「今日は中也君宛に依頼が来ているのだよ」
コレが依頼書。と言って俺に一枚の紙を差し出す。
と、その文字を見て猛烈に湧き上がる殺意。
「これは…!」
「流石中也君。直ぐに気付いたね」
二コリと笑って告げる。
この見ているだけで嫌気がさす字…間違い無く太宰の字だった。
「…俺にこの依頼を拒否する権利は?」
「残念ながら首領命令だ。」
「……」
「さて、依頼の内容を話そうか。」
森はテーブルに肘をつく。
「私達の監視外である路地裏に行って、話を聞いて欲しい者が居るそうだ。そのメモに質問事項は書いてある」
チラリとメモを見ると、幾つかの質問事項が箇条書きされていた。
「あとは…あぁそう。其の者は何らかの異能力を持っているらしい。出来れば探偵社に来るように言って欲しいとの事だが、それでも良いかな?」
Yesしか許されない一方的な質問。
「…分かりました。」
「宜しい。では地図と情報を渡しておこう。時刻は午後11時。頑張ってね」
ニコリと笑顔を浮かべる。
「…一つ質問しても宜しいですか?」
「なんだい?」
「何故俺にしか頼めないと言うのです?」
率直な質問をする。
「ふむ、私もそれは勿論太宰君に聞いたよ」
少し上を見てから中也を見てニコリと笑う。
「彼曰く、依頼人に会いたかったら犬よりも嫌いな人を使いに出すようにとの指示があったようだ。君以外に思いつかなかったみたいでね」
「…そうですか。失礼しました」
中也はさっさと部屋を出て行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「にしても、犬より嫌いなのが俺しかいないってあいつ本物の馬鹿だろ!今度探偵社の周りに野犬集めてやる…」
またブツブツと文句を言いながら路地裏を歩く。
「地図的にはこっちだよな…」
因みに見ているだけで吐き気がするあのメモは、昼の間に中也が書き直した。
目の前の角を右に曲がる。
と、何かが“ずれた”。
「?!」
辺りを見渡す。
角を曲がる前と全く同じ景色だ。
警戒しつつ、もう一度曲がる。
またずれる。
「なるほどな…コレが相手の異能力か」
しかし、会えと言われているのにこうなると近づけない。
どうしたものかと悩んでいると、突然周囲に声が響いた。
「名乗れ」
男とも女とも分からないような中性的な声。
「…ポートマフィア幹部の中原 中也だ」
少し躊躇いつつも、名を名乗る。
「来い」
相手の声が返ってくる。
「来いって事はココを曲がればいいのか?」
返事は無い。
中也はそれを肯定と捉え、角を曲がる。
そこには黒いコートの上から長すぎるマフラーを巻き、フードを深く被って座り込む子供の姿があった。
「お前が神代 御影か?」
メモに書かれた名前を読み上げる。
「思ってたよりも早かったな」
「知らねえよ。取り敢えず俺の質問に答えろ」
吐き捨てるように言い、メモを取り出す。
「紙を寄越せ。俺と話すとお前が疲れる」
「ふん、正論だな」
ほらよ、と折り畳んだメモを投げ渡すと、それは空中で吸い込まれるように消えた。
「…てめぇの異能は何なんだ?」
「個人的な質問か」
「そりゃあこんだけ見せ付けられれば気になるだろ」
中也は羽織っていたコートをバサリと揺らす。
「別にそんなに複雑な物じゃない。それに知りたかったら力付くで聞き出すのかお前のやり口だろう」
「分かってるじゃねぇか…」
中也はニヤリと不敵な笑いを浮かべ、拳を握る。
「が、それは無理だ。諦めろ」
「はぁ?」
「俺の異能は見ただろう。お前は異能を使うどころか俺に触れる事も出来ない。俺に異能を無視して触れる事が出来るのはあの包帯男…太宰とやら位だろう」
「ちっ、胸糞悪ぃ奴の名前を出しやがって…」
が、彼の言っている事は正論だ。中也の異能は触れた者の重力とベクトルの強さを操る能力。触れる事が出来なければ攻撃のしようがない。
「まぁ俺と闘いたければ包帯男を連れて来るんだな」
メモ用紙が中也の目の前に飛んでくる。
「俺の異能を知りたければ、そのメモ用紙を覗き見ろ」
「あっそ、じゃあ勝手にするよ」
メモを受け取り、踵を返す。
「あぁ、コレを忘れてたな」
「あ?」
と、目の前に緑色の瓶が出てくる。
反射的に受け取ると中也好みの葡萄酒が入っていた。
「俺の遊びに付き合ってくれた礼だ。ついでにマフィアまで送ってやるよ」
そう言い終わった瞬間、中也はマフィアの本部の目の前に立っていた。
手に持っている上等な葡萄酒を見つめる。
「…案外良い奴…なのか?」
ポツリと呟いてメモ用紙を開く。
そこに書かれていた異能は…
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.7 )
- 日時: 2016/12/27 10:55
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
5間目
「空間を操る異能力?!」
探偵社内に国木田達の声が響く。
「うん、他にも色々答えてくれたよ」
太宰は一枚のメモ用紙を取り出し、国木田に渡す。
「情報源は何処だ」
「企業秘密。まぁ多分本人が答えているんだろうね。字的に」
そこには太宰にとっては吐き気のするような字と、依頼書と同じ達筆な字が書かれていた。
「あ!コレお兄ちゃんの字です!綺麗ですよね」
念のためと言って国木田にパソコンを教わっていた納言が顔を出す。
「僕には到底こんな字は書けませんよ。凄いですね」
隣の席の敦も言う。
「にしても随分細かく書いているな」
「趣味も聞いてみたけど、生憎自殺じゃ無いみたいだ」
「そんな阿呆らしい趣味を持っているのはお前位だろう」
趣味の欄に書かれた言葉は〈読書〉。至って無難な趣味だ。
「でもまぁ〈人殺し〉とか物騒な人じゃ無くて良かったですよ」
「敦くんもココに染まって来たねぇ」
「え…」
露骨に嫌そうな顔をする敦。
「何だいその顔?まるでココにいる人と同族なんて嫌だ!みたいな顔じゃないか」
太宰がニヤニヤしながら言う。
「そんな事有りませんよ!国木田さんも谷崎さんも他の皆さんも尊敬してますし!唯、太宰さんに言われるのは…」
「え?」
太宰の笑顔が引きつる。
「良い心構えだ。小僧、絶っ対にコイツには似るなよ?」
「あれ?私の扱い酷くない?」
「普通だ/ですよ」
国木田と敦が同時に言う。
「皆今日は変だよ…」
「お前が異常だ。それで納言、ローマ字は覚えたか?」
太宰を無視して納言に向き直る。
「はい!何とか読み書きは出来るようになりました!」
「ほう、飲み込みが早いな」
「国木田さんの教え方が上手いんですよ!」
「その褒め言葉って何処で習ったの?」
「敬語とかはおにーちゃんが教えてくれた!覚えていればいつか役に立つって」
「今現在進行形で役に立ってるねw」
「そうだね!」
太宰と納言はニコニコと笑いながら話す。
「じゃあ次はキーボードの打ち込みか」
国木田は手元からノートパソコンを取り出す。
「あれ?そんなスペア持ってたの?」
「我々は常に最悪の事態を考えていなければならないと昔言っただろう」
カタカタと立ち上げる。
「取り敢えずコレで自分で文章を打ち込む練習をしろ。このパソコンはやるから、パスワードは考えてから俺に言え。」
「良いんですか?!」
「仕事上必要なものだ。無いと困るだろう」
「あ、ちょっと待って下さい!」
リュックを降ろし、中身を探る。
「えーと…あった!お財布!」
取り出したのは白い長財布。新品そのものの様に綺麗だ。
「コレおにーちゃんが必要な時に使えって言っていたお金なんですけど、足りますか?」
取り出したのは一万円札がたっぷり…
「そ、それ何枚入ってるんですか?」
敦が引き気味に聞く。
「えーっと…」
納言はいち、にぃ、さん…と暫く数えてから顔を上げる。
「30枚位だと思います!」
「さ、30万円?!」
ガタッと音を鳴らして立ち上がる。
「ほら敦君、座って座って〜」
「あ、すいません…」
太宰に抑えられ椅子に座りなおす。
「国木田さん、そのパソコン買います」
「いや、コレは俺の私物だ。金を貰う訳にはいかん。その金は他の事に使え」
キッパリと言い切る。
「そうですか…分かりました!では今度何か贈り物をしますね!」
「そういう意味ではない」
「はい…」
目に見えてしょんぼりする。
「国木田さん、先程言われた資料まとめておきました」
谷崎が紙束を持って来る。
「流石仕事が早いな。何処かの包帯男とは違って」
受け取りながらジロリと太宰を見る。
「嫌だなぁ、私ちゃんと仕事してるよ?」
「パソコンを立ち上げてすらいないのにどうやって仕事をするのか知らんがな」
「私はちゃーんと納言ちゃんとコミュニケーションを取ってるじゃあないか」
「それが仕事か?」
「もちろん!納言ちゃんも私と話していて楽しいよねぇ?」
チラッと納言を見るが、納言は既にパソコンに向かっていて太宰の話を聞いていない。
「なるほどな、コミュニケーションを取っているのか。勉強に励む納言と」
嫌味たっぷりな言い方で国木田が言う。
「それは唯の妨害にしか思えないが?」
「あはは、私急用を思い出したんだよね〜」
焦った様子の太宰。
「さよーならー」
ヒラリと扉から出て行く。
「おい!今日こそは働いてもらうぞ太宰!」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
それを追いかける国木田と敦。
どちらにしろ三人共仕事放棄である。
「あー…行っちゃいましたね」
谷崎がポツリと呟く。
「国木田さん!パスワードは…ってあれ?」
パソコンに向かって何かを考えていた納言が顔を上げる。
「あー、国木田さん達はお出掛けに行っちゃったよ」
「そうですか…」
「どうしたの?」
「パソコンのパスワードを設定したいんですけど…」
「あ、それなら僕もできますよ。やりましょうか?」
「本当ですか?!ありがとうございます!」
「いえいえ、じゃあちょっと待っててね」
谷崎は納言のパソコンをカタカタと弄り始める。
「はい、ココにパスワード打ち込んで」
「はい!えーっと…」
たどたどしく指を動かし、パスワードを入力していく。
「出来ました!」
「じゃあコレで設定完了。パスワード忘れないようにね」
「谷崎さんは何でも出来るんですね!」
「え?そ、そんな事ないよ」
谷崎は照れて頬をかく。
「その通りですわ。兄様は何でも出来るんですの!」
ナオミが谷崎を後ろから抱きしめる。
「うぇっ!ナ、ナオミまで言い過ぎだよ」
「いいえ、本当の事ですわ」
ナオミの指先が谷崎の首筋をなぞる。
「ナ、ナオミ?納言ちゃんが見てるし…」
「あら、口答えかしら?」
ナオミの指先は更に艶かしく谷崎を肌を滑る。
「あの、ナオミさん…何してるんですか?」
扉の方から声がする。
と、戻ってきた敦と太宰を捕まえた国木田が立っていた。
「あら、お疲れ様です」
そのままの格好でナオミは答える。
「何ってスキンシップですわよ?何時もの事ですわ」
「で、でも、納言ちゃんも見てますし!ダメです!」
顔を真っ赤にして敦が言う。
「はい納言ちゃん目閉じて〜」
「わわっ!」
復活した太宰がサッと納言の目を塞ぐ。
「谷崎、気をつけろ」
「え、あ、はい。ナオミ、ごめんね?」
「むぅ…」
頬を膨らませながらナオミが離れる。
「はい良いよー」
太宰はパッと納言の目を塞いでいた手を外す。
「何だったんですか?」
「うふふ、まだ知らなくて良いよ」
「お前はその気色悪い笑い方を改めろ」
「えぇ〜国木田君酷いなぁ」
笑いながら話す。
「あ、国木田さん!パスワード谷崎さんにやってもらいました!」
「そうか」
国木田は素っ気なく返して席に着き、残った雑務をこなす。
「ふぁあ…散歩したら疲れちゃったよ。おやすみ〜」
太宰はごろりとソファに寝転ぶ。
「あ、そうだ。敦君、報告書書いといて〜」
「え?!自分でやって下さいよ!」
敦が反論した時にはもう既に寝息を立て始めている。
「敦君、僕も手伝いますよ」
「いや、やらんで良い。あまり甘やかすな」
「ですよね」
敦があははと笑う。
「納言ちゃん、パソコンなら私も出来ますので分からないことがあったら聞いて下さいね?」
「はい!頑張ります!」
各自が席に着いて、各々の仕事をこなしていく。
今日も武装探偵社は平和である。
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.8 )
- 日時: 2016/12/27 10:44
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
6間目
冷たい風で目が覚める。
寒さに思わず身震いしつつ見を縮め、左胸に手を当てる。
手に振動が伝わる。
微かだが、規則正しく動いている。
今日も…生きてた…
「にゃあお」
すぐ隣から猫の声が聞こえた。
「…また来たのか」
納言に懐いていた猫のハズだが、納言が居なくなってもココに来る。
取り敢えずミルクを皿に入れ、猫の目の前に置いてやると、猫は嬉しそうにそれを飲んだ。
そういえば今日は内職を出す日だったか。
猫を軽く撫でてから立ち上がる。
側にあった台車に色々と詰めた段ボールを乗せ、ガラガラと押す。
路地を曲がり、大通りに出る。
「っ…」
路地には無い眩しい光に眼がくらむ。
少しよろけながらも台車を押し、区役所に向かう。
因みに今日も1着しかないブカブカの黒外套を身に纏い、中は何も着ずに包帯のみの格好。側から見れば確実に通報される格好だ。
出来るだけ人目につかないように道の端を進み、区役所の中に入る。
「えーと、どのようなご用件ですか?」
俺の姿を見て少し驚いているのか、距離を置いたまま話しかけてくる。
「これ」
台車を目の前に出し、中身を見せる。
「あ、かしこまりました!」
キンキンする声を響かせ、台車を持って奥に入っていく。
今回はこの量で1万円位か…全額貯金するとして…
考えながら待っていると、先程の事務員が奥から出てくる。
「お疲れ様でした。どうぞ」
封筒を渡される。
それを受け取ってから掲示板の方に目が行く。
「最近多いんですよ。ちょっとした犯罪なんだそうなんですけど、それが積み重なって警察も手が負えないとか」
ポスターには写真と懸賞金が載った紙が貼ってあった。
「場所は確か…路地裏だとか。お兄さんも気をつけて下さいね」
手配書の懸賞金の欄に目が行く。
〈\150,000〉
「まぁちょっとした窃盗罪も積み重なれば重犯罪なんですね〜」
お喋りな事務員から情報を得て、区役所を後にする。
封筒を覗く。
中身は1万4千円。
「もうけは4千円…か…」
ボソリと呟きながら角を曲がり、路地裏に入る。
今はこの路地裏は俺の縄張りになっている。その縄張りで勝手な犯罪をしてる奴がいる。そしてその勝手な奴は賞金首。
「軽く締めるか…」
ポツリと呟き、首を鳴らした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜更け、路地裏の上から月明かりが覗く。
その明かりに照らされて二つの影が揺れる。
「おい」
「っ?!」
気配も無くいきなり聞こえてきた声に大きな影が驚く。
「なんだ餓鬼か…俺に声をかけるって事は金は持ってんだろうな?」
「この路地の鉄則を知ってるか」
小さな影が無視して話す。
「あぁ?偉そうに。それ位は知ってるに決まってんだろ」
「言ってみろ」
大きな影は答える。
「リーダーの縄張りであるこの路地裏に、無許可で立ち入ったり勝手な事はしてはいけない、だろ?」
ニタニタと下品に笑い、自慢気に言う。
「そんなのはリーダーにバレなきゃ良い話だし、ココは良いカモがたっぷりいるんだよ。勿論、お前からも貰うんだし」
「…そのリーダーが何処にいるかは知ってるのか?」
「あぁ?うるせぇ餓鬼だな…んな事知らねぇよ。一回会って顔を拝んでみてぇよw」
「そうか…」
小さな影がゆらりと揺れる。
「良かったな。顔が見れて」
「は?お前何言っ…」
大きな影の声が消える。
小さな影はゆっくりと大きな影に近づき、静かに告げる。
「手と足、どっちから切り落とされたい」
「ど、どういう事だ!」
「…こういう事だ」
異能力【源氏物語】
小さな影が歩みを進めるたび、周りの鉄パイプや壁が斬り崩されていく。
「ま、まさか…お前…!」
「選べ。それともなんだ?他の選択肢が欲しいのか?」
小さな黒い影と大きな鎌が月光で照らし出される。
「お前なのか?!リーダーって奴は!」
「お前はルールを破った。ついでに指名手配犯だ。情けはいらない」
「や、やめ…」
ゴスッ!
大きな音が鳴り響く。
大きな影はそのまま倒れる。
頭には先程斬り崩した壁がぶつかり、血が流れていた。
「…」
鎌を投げ捨て、倒れた男の腕を持って引きずる。
「面倒だな…」
引きずりながら異能力を発動する。
空間を捻じ曲げ、軍警の前に繋ぐ。
引きずりながら進む。
「き、君!何処から出て来た!」
見張りの警備員が驚いた声で言う。
「こいつ、指名手配犯」
引きずっている男を見せると、警備員は胸ポケットから手帳らしき物を取り出して顔を確認する。
「服装、顔も一致…お兄ちゃん、ありがとな。何処で見つけたんだい?」
少し屈んで顔を覗く。
「路地裏。瓦礫で頭打ってた」
「そうか、ココまで来るの大変だったろう?懸賞金を渡すからこっちに…」
「いらない」
「え?」
警備員は行き場の無い手をしまう。
「その代わり、武装探偵社に送っておいてくれ。」
「分かった、伝えておくね。にしてもボランティアかい?優しいね〜」
「…」
そのまま振り返り、歩く。
「ん?そっちは行き止まり…」
警備員の声を無視して異能力を発動し、路地裏に帰る。
空間を閉じる寸前で警備員が慌てた声が聞こえてきた。
それも無かった事のようにいつもの場所にうずくまり、コートを握る。
「雪…?」
黒いコートの上に白い結晶が落ちていた。
軽く払い、目を閉じる。
横浜の街はすでに静けさに包まれていた。
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.9 )
- 日時: 2016/12/27 10:59
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
7間目
『横浜では記録的な大雪が観測され…』
薄型のテレビから機械的な音声が流れる。
「積もったねぇ…」
太宰は白く染まった街を喫茶店の窓から眺める。
「そうですね〜」
「敦くんはまだはしゃぐ歳?」
「流石にはしゃぎませんよ!というか雪にはあまり良い思い出は…」
敦は目を伏せる。
「あ…うん、なんかごめん」
「そ、そんな事ないですよ!大丈夫です!」
ブンブンと手を振って否定をする。
「それにしても、鏡花ちゃんに良いお友達ができて良かったねぇ」
「そうですね。納言ちゃんも良い子ですし」
窓の外では二人が楽しそうに遊んでいる。
「そういえば太宰さん、本当に今日は仕事休みなんですか?いくら大雪だからって探偵社も休みになるとは思えないんですけど…」
「そこら辺は社長も鬼じゃないからね。雪で滑って転んで怪我でもされたら大変だし。因みに今日から一週間お休みだよ」
「そうですか…」
「ここにおったか太宰!」
太宰の頭に拳骨が落ちる。
「いったぁ!何するのさ国木田君!今日はお休みだよ?」
「あぁ、確かに今日は休みだ。だが休みは今日のみだ!それに、休日だからといって怠けて良いわけでは無い!前回の報告書、まだ終わらんのか?」
「終わったよ、国木田君がうるさいから」
「一言余計だ!終わったならさっさと出せ」
「忘れちゃった。今日は仕事じゃ無いよ。ゆっくり休もうじゃないか」
太宰はそう言って手をヒラヒラさせる。
「貴様…!ふざけるな!」
「ま、まぁまぁ!お二人共落ち着いて下さい!」
首を絞める国木田を敦がなんとか止める。
「それにしても納言ちゃんのあの重装備、良くリュックに入りましたよね」
「そうだね〜お菓子も入ってたし、どうやって詰めたんだろ?」
外で遊ぶ二人の格好は、鏡花は着物の上に羽織り等(探偵社負担)を重ね着して手袋をはめていて、納言は元々着ていたマフラーとコートの中に重ね着をして、手袋、耳当て、帽子(全て納言持参)を被っている。
「まぁ初めて会った時もリュックに背負われてる感あったけど。意外と力持ちなのかもよ?」
「それはあり得るな。あいつも一応元路地裏の住人だ。それ相応の腕力はあるのかもしれん」
「…そういえば路地裏って今日みたいな雪が降ってる日はどうなるんですか?」
敦が問う。
「あそこは道幅も狭く人が少ない。大通りよりもよく積もるだろう。昔調べた事はあるが、大抵の者は冬場は路地裏では無い所に避難するようだ」
国木田に付け足すように太宰が言う。
「その為に毎年お金を貯めている人もいるよ。居候をお願いするかホテルに泊まるか…どちらかは分からないけど、そのために三十万円位貯金する人もいるって言うね」
「三十万円も?!って、あれ?それって…」
首を傾げる敦に国木田が答える。
「納言が持っていた金はその為の物かもしれんな」
「じゃあ、もしも依頼人さんが路地裏の住人で、その分のお金を納言ちゃんに託してたとしたら…?」
「うん、今頃もまだ路地裏にいるかもしれないね」
太宰がサラッと言う。
「そ、それって大分危ないんじゃ…!」
「だから調査をしているのだよ。前回私が頼まれた報告書も路地裏に関するもの。路地裏の事には毎年目を瞑ってきたけど、今年は依頼人の安否が問われる」
国木田が太宰に付け足す。
「今回の依頼は保護だが、何処にどの位の期間保護していれば良いのかも分からん。場合によっては依頼料を請求する事にもなりかねん」
「それで、どうするんですか?」
「今谷崎君とナオミちゃんが路地裏に調査しに行っているよ。倒れている人を見つけたら連れて帰って来るようにって。全く…今日は休日だと言うのに働き詰めだよ…」
太宰はやれやれと肩をすくめながら珈琲を飲む。
「お前は全く働いてないだろう」
「そんな事無いよ!こうして今現在敦君に事情を説明しているでしょう?」
「そういえば、なんで僕にはそれを言わなかったんですか?」
「あぁ、伝え忘れてただけ」
ニコッと笑う。
「えぇ…」
「信用していない訳じゃ無いよ。その辺りは安心してね」
「そういう事じゃ無い気が…」
「ただいま戻りましたー!」
「ただいま」
外で遊んでいた二人が入ってくる。
「お帰り〜楽しかった?」
「はい!凄く楽しかったです!」
「楽しかった」
「それは良かった。二人共風邪引かないように温まってね」
太宰がストーブの方を指差す。
「うん!お姉さん、紅茶下さい!」
「今日も太宰さん負担ですか?」
「いえ、それだと中々返って来ないでしょうから私が払います!」
「あら、分かってますね」
店員がチラリと太宰の方を見る。
「あー…私、ちょおっと急用思い出しちゃった」
目を泳がせながら立ち上がる。
「待て太宰、家に戻るのなら報告書を持って来い」
「ついでにツケも払って下さい」
「あはは、私がいつ家に帰るなんて言ったんだい?」
完全な棒読みである。
「では、さようなら〜」
駆け足で店を出て行く太宰。と、
「あれ?谷崎君達じゃない。どしたの?調査終わった?」
大きな黒い塊を持った谷崎とナオミが焦った様子で建物に入ってきた。
「与謝野先生は!」
「与謝野先生なら社内に居る。怪我人か?」
「僕急ぎますので、ナオミに!」
谷崎はそのまま黒い物を持って階段を駆け上がっていく。
「…どうしたの?」
太宰は肩で息をしているナオミに問う。
「路地裏を調査していましたら倒れている人を見つけたんです!酷い熱だったので急いで帰って来たんですの!」
「本当か?!」
国木田が立ち上がる。
「はい、薄着で雪に埋もれていたのですぐに連れて帰って来ました」
「分かった。おい太宰、急用などどうせ無いのだろう。社に残れ」
「えぇ…とんでもないブラック企業だね」
「僕も残ります!」
敦も立ち上がって社に向かっていく。
「ど、どうしたんですか?」
状況を理解できていない納言が鏡花に問う。
「路地裏で人が倒れていたみたい。与謝野先生が治療するって。私達も行こう」
「うん!」
二人も遅れて着いて行った。
- Re: 文スト正統派(?)小説※オリキャラ注意 ( No.10 )
- 日時: 2016/12/27 11:33
- 名前: ぴろん (ID: XL8ucf75)
8間目
熱い…痛い…苦しい…
そんな事を思いながら、意識が段々とハッキリしてくる。すると、身体が横になっている感覚を感じた。
「っ?!」
直ぐに起き上がり、近くにあった壁に寄る。
「ん?起きたのかい?中々の生命力だねェ」
蝶の形の髪飾りを付けた女がベッドに近寄る。
「与謝野 晶子…」
掠れた声で名前を呼ぶ。
「ん?何だ、私の名前も調べ済みか。あんたの名前は?」
ベッドにいる子供は、壁に寄り掛かったまま答える。
「神代 御影」
「良い名前じゃないか。丁度今包帯を取り替えてやろうと思ってたのだけど…」
御影は自分の服を確認する。
寝ている間に着替えさせられたのか、何時ものぶかぶかコートではなく病人服を着ていた。
「いらない」
「ふぅん、そうかい。じゃあ取り敢えずそのまま寝てな。雪の中で埋もれてたんだって?そりゃあ風邪引くさ」
そう言って椅子に腰掛ける。
「…見たのか」
御影は与謝野に問う。
「見たって何を?」
「俺の身体」
「ふふふ、何を聞くのかと思えば…当たり前だろう?見ないでどうやって病人を診察すれば良いのかコッチが聞きたいよ」
冗談めいた口調で言う。
「じゃあ…」
「安心しな、包帯には触れてない。それにしても太宰よりもぐるぐる巻きにしてたけど、包帯は足りてるのかい?」
机の上のお茶を一口飲む。
「横になってな。ちょっと聞きたい事もあるらしいから」
「……」
御影はそのままの体勢で黙り込む。
与謝野はその様子を見て、呆れたように溜息を吐いてから部屋のドアを開ける。
「起きたよ。逃げる前に入りな」
与謝野が声を掛けると、背の高い黒髪の男、太宰が入ってきた。
「やぁ、こんにちは。調子はどう?」
「太宰 治…」
「お、私の名前もチェック済みか。じゃあコレも知ってるね」
そう言って太宰は御影の肩に手を置く。
「逃げない様にって事で」
「元々異能は使う気はない。さっさと質問しろ」
紫色の瞳が太宰を見つめる。
「…思ったよりも頭が回るみたいだ。取り敢えず君が納言ちゃんの保護を依頼した人で良いのかな?」
太宰は変わらずクスクスと楽しそうに笑っている。
「そうじゃなかったらお前らが困るだろう」
「確かにそうだねぇ。まず、君の名前と年齢を教えて貰おうか」
「神代 御影、10歳」
「納言ちゃんの年齢は?」
「7歳」
「なるほど…まぁそれだけ知れれば充分なんだけど…」
暫く考え込んでからポンっと手を打つ。
「あ、そうそう。このメモは君が書いたって事で良いのかな?」
内ポケットから見覚えのあるメモを取り出す。
「あぁ、この前来た中原って奴のか」
「何であの時はあんな変な指令を出したの?」
「気分」
即答されて顔を大袈裟に顰める。
「酷いなぁ、私本当にあれの事嫌いなんだよ?文字を見るだけで吐き気がする位」
「そりゃあ良かった」
太宰の言葉に辛辣に返す。
「あ、そうだ。その包帯は何時から付けてるの?」
「4歳」
「えーと…お洒落?」
「そんな訳無いだろ」
「だとしたら、そんな小さい頃から何で?」
その問いに御影は頭の包帯を解く。
「見れば分かる」
そう言って前髪を掻き上げる。そこには、古傷だと思われる生々しい傷跡があった。
「…それが4歳の頃から?」
「悪いか」
「そんな事無いよ。でもその傷、もう治ってるみたいだけど?」
御影は包帯を巻き直しながら答える。
「納言にこんなものは見せられない」
「なるほどね。妹想いなのは良い事だよ」
「……」
包帯を巻き終わり、髪をおろす。
「さてと。そろそろ与謝野先生が皆を読んでくる頃だと思うけど、大事な質問を一つ」
コホンと咳払いをする。
「何故納言ちゃんをうちに?」
静かに御影を見つめて言う。
「答えたくなくてもコレだけは答えて欲しい。一番重要な問題だ」
「……」
御影は少し俯いていた顔を上げ、真っ直ぐに太宰の顔を見る。
「“異能者狩り”は知ってるか」
「異能者狩り?」
聞き覚えの無い単語に首を捻る。
「遥か昔に行われていた魔女狩りの様な物だ。それを代々続ける一族がある。魔女狩りと違うのは狩って殺すのでは無く、じぶん達のために利用するって事。一言で言えば奴隷だな」
太宰は御影が淡々と述べる言葉を黙って聞く。
「俺と納言もそいつらに狙われている。二人まとめて捕まるよりは、バラけて片方が囮になれば良い」
「それで納言ちゃんをココに?」
「納言はまだ異能力を制御しきれない。あの手袋を外せば使い放題だ。対して俺は納言よりは制御できる」
「つまり、もしも捕まっても悪用はされないと?」
「簡単に言えばな。それに…」
御影は俯いて口を噤む。
「それに?」
「アレは…納言には見せたく無い」
そう呟いて再び顔を上げる。
「依頼の期限はまだ決まっていない。毎月生活費は振り込むから、それが途切れたら俺は死んだと思ってくれて構わない」
「ほう。じゃあその時になったら納言ちゃんを自由にするよ。何年後かな?」
「知らん。まぁ暫くの間宜しく頼む。それと…」
肩に置かれた太宰の手を掴む。
「ん?」
「納言はまだ幼い。血は見せないでくれ」
そう言って御影は太宰の手を強く握る。
「っ!」
「異能無効化は厄介だが、体術はマフィアの中堅以下…」
小さく呟きながら肩に乗っている太宰の手を払い、みぞおちを蹴る。
「ガハッ…!」
ガシャァン!
思い切り吹き飛ばされた太宰は、勢いよく後ろの棚にぶつかる。
「荒業ですまない。だが、今は納言に会う訳にはいかないからな」
太宰を横目に、壁にかかったコートとマフラーを取る。
「服は洗って返す。与謝野に礼を伝えておいてくれ」
その声と共に御影は音も無く消え去っていた。
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