複雑・ファジー小説

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IF=全国中学生能力者選手権編= 再開してみました。
日時: 2011/11/16 21:40
名前: 狒牙 (ID: tDghPMhC)

コメディ、ライトの方で違う名前で
違うもの書いてる者です。

えーと、ざっくりと説明するとですね、
闘いまくります。
そして今ちょっとしたピンチ、詳しくはこの>>0の下の方を見て下さい。

あと、大阪編と東京編に分かれて、同時進行します。
東京編書いたら大阪編って感じで。
メイン主人公が大阪編、メインストーリーが東京編だと
思ってください。
大阪編は東京編の一年前のストーリーです。

長編予定です。

ってなわけで、東京編行きまーす。



プロローグ

今朝起きたら、父親がいつも通り、新聞を読んでいた。
「早くしないと二年生の新学期早々遅刻よ」
キッチンから母さんの声が聞こえる。
ふと時計を見ると、七時半を指している。
「あっそ、入学式は八時半からだ」
朝食を取った俺はすぐに着替え、カバンを用意し、
八時十分ぐらいになるのを待った。
するといきなり、インターホンが鳴った。
「ターカシーン!まだかーーーーーー!」
白石の呼ぶ声が聞こえる。
どうやらシンスケも一緒にいるようだ。

「来るの早いんだよ」
ブーブー言いつつも、いつも通り学校に行く支度をする。
とりあえず、俺は外に出た。
四月だから、吹く風も心地よく、日差しも柔らかく、穏やかだ。
そして、超平凡な、この俺、高木新羅(たかぎ しんら)の
超非凡な物語が始まる。




今回だけ、大阪編も一緒にします。

プロローグ


大阪のある市立中学に通っている白山 後(しろやま こう)には、
もう一つの顔があった。
それは、芸能人としてのじぶんである。
そんな華々しい自分に、少なからず誇りを持っていた。

ある日突然白山は、クラスでも浮いている男子から
声をかけられた。
「俺のいるチームで、全中に出ないか?」と。


※大阪編の主人公は浮いている男子です。
 謎や秘密は頻繁に出てきますが、ちゃんと後々
 明かしていくので、気にせず読んでください。






質問は気軽にしてください
答えますんで

そして、一つピンチです。能力が足りません。
誰か心優しい方はここを見て下さい。>>34
ついでいうとキャラクター募集、という形に変わりました。

Re: IF=全国中学生能力者選手権編= キャラと能力募集中 ( No.125 )
日時: 2011/09/29 16:48
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: ybb2RaRu)

東京編続き







 嘘だ、そんなことがある訳が無い。こんな無名の後輩に、一撃で倒されるなんて。
 タイミングを合わせ、突き出した拳は見事に高木の振り出す右手に衝突した。そこまでは確かに見事だったのだ。しかし、その後の出来事が彼の予測を大きく裏切ることとなった。
 高木の拳には想像を絶する威力が宿っていた。簡単にこっちの攻撃は弾き飛ばされてそのまま高木の正拳突きが梶ヶ谷の腹に入った。
 小さくうめき声が口から漏れ出た後に彼は後方に勢い良く吹っ飛ばされた。そうして殴られた後に思ったのだ、こんなことがある訳が無いと。
 それまでの高木のイメージは、学校全体としてほとんどの者の持っている印象は似通っていた。
 『神道と仲のいい奴』、『神道の金魚のフン』、『能力を使おうとしない』、『臆病者』、『超普通人間』。良い印象を抱いている者は、本当に彼のことをよく知るごく少数の人間だった。
 背中で地を抉りながら、高木の一撃に吹き飛ばされながらようやく梶ヶ谷は自分の敗北を受け入れた。どのような言い訳も通用しない。負けたのは全て、自分が侮っていたから。
 そう悟った瞬間に、意識は飛んだ。できることなら、起きている頃には医務室で回復は済んでいて貰いたい、それだけ願いながら。

「向こうは決着したぜ」

 燃え盛る紅い炎をその身に纏った神道は紫電に、代介の作りだした雷分身に話しかけた。そうね、と無機質に返してきたことからさっきから感じていた違和感を口にする。お前は本当に紫電佑香本人なのか、と。

「どうにもお前からは別人の感覚がしてならねえ。そもそもお前の能力はサンダーアーティストじゃねえだろ。怪しいんだよ、とっとと正体明かしやがれ」

 キツイ口調で、尋問するように彼は目の前の奴にそう訊いた。眉間にしわを寄せて、さらに敵対心を強くして射抜くように睨みつける。それでも目の前にいるそいつは態度を変えようとしない。
 かといって神道は騒ぐ訳にはいかなかった。大勢が見ている中でいきなりそんな行動を取ったら混乱を呼ぶ。だからこそ小さい声で、強い口調で脅さなければならなかった。
 それでも眉ひとつ動かそうとしない彼女に耐えかねて、一撃与えてやろうと踏み出した時だ、ようやく顔つきに変化が訪れた。唇の端が持ち上がり、不敵な笑みをこぼす。


 その表情には、不敵さ、不気味さ、そのような負の感情が入り混じっていたが・・・どこか・・・神々しくもあった——。


「まだ、教えるには早いんでね。言う訳にはいかないよ。ただ君たちには一つだけ覚えてもらうことがある。この闘いが全てのターニングポイントだということを。そこの高木の種を発芽させることがこれから先の二十一人の運命を、ことごとく決めることとなるのだから。ひいてはこの世の未来もな。一応、名乗っておこうか人形を操る俺自身の名を。源薪、——の加護を受けしものだ」

 ——、そう言った箇所は聞きとることはできなかった。源薪、その言葉には聞き覚えがあった。どこで聞いたのだろうか。最近だった覚えがある。
 だが、それ以上迷っている暇は無かった。いきなり、周囲に浮遊している目に見えぬ微弱な静電気が全て紫電に集中して行く。バチバチと、電撃が爆ぜるような音が周囲に響く。
 その行為には少し前の自分の発していたものと、同じような雰囲気が漂っていた。周囲の自分の属性の完全なる隷属。これは、LV2のための足がかり。

「LV2、雷獣憑依」

 何かを押しつぶすような重苦しい音が聞こえたかと思うと、次の瞬間には間近で雷電が奔ったような凄まじい爆発音が轟いた。突然眩しい閃光が目の前を包み込んだかと思うと、一瞬で目も当てられぬその光は止んだ。目の前には、自分が朱を纏っているように黄金を纏っている紫電に良く似た者がそこに立っていた。

「さあ、いくぞ!」

 もうすでに、発する言葉は完全に男のものになっていた。声は紫電の声そのままだったが。
 サンダーアーティストのLV2が発動したとなると、一瞬たりとも気を抜く訳にはいかない。アーティストスキルのLV2は特定の身体能力が格段に上昇する。炎なら腕力、雷ならスピードだ。
 いつ来るかと待ちかまえていると、瞬時に紫電の姿は消えた。粗いやすりが肌をなでるような感覚が腕を通る。素早い物が通り過ぎたような鋭い風が流れる。
 神道の脳内に戦慄が走る。脊髄に氷を入れられるような思いになるほどの重く鋭利な殺気が背後から発せられた。
 電気の速度は光のようなもの、一瞬の判断が全てを左右する。多少の犠牲は覚悟のつもりで炎を背後で爆発させる。
 確かに炎自体で怪我をすることは無いが、爆発で自分の身は突き飛ばされる。その衝撃で自身の身体を回避させて紫電に攻撃した。
 しかしその攻撃さえも紫電はあっさりと回避する。言わば捨て身の一撃を難なく回避されて神道は舌打ちを慣らした。
 気付いた時には紫電はLV2を解除していた。どういうことか分からずに慌てて観察する。すると、纏っていた電気エネルギーを砲弾のようにして丸めて手掌に集めていた。LV2一つ分のエネルギー体、それが意味するのは超常的な破壊力。
 おそらくこれが向こう側の最大の技。

「ボルテック・エクスプロージョン!」




                                    続きます



_________________________________________



LV2状態での代介の必殺技、発動です。
ついでに言うと校内予選にしてちゃっかりと激動のお話になってます。
次回、東京編校内予選決着です。

Re: IF=全国中学生能力者選手権編= キャラと能力募集中 ( No.126 )
日時: 2011/09/29 16:45
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: ybb2RaRu)

東京編続き






「ボルテック・エクスプロージョン!」

 黄金に光り輝き、爆ぜるような音を巻き上げるその雷電の弾丸を携えて紫電佑香は神道に向かって突き進む。
 ふと、その黄金の砲弾が地面をかすった。その瞬間に一部の電圧がフィールドに放電された。たったそれだけのことなのに、嫌な音を上げてその部分が完全に蒸発し、消滅した。
 その状況を我が目で収めた神道の脳裏に一瞬だけ、凍るような感情が走る。それでも彼はすぐにその感情を抑えつけた。この程度に対抗できるぐらいで無いと、これから先の何の、誰の役にも立てない。
 そう、この程度なら圧倒しなければならないのだ、これは本人の分身なのだから。本体はこれよりも圧倒的に強いに決まっている。たかだか分身に含まれる帯電量の電撃を弾きとばせないのならここであいつらの仲間と言えるはずが無い。
 心にその息構えを注入しなおして短く息を吐きだした。目を細めてその技をもう一度よく観察する。LV2エネルギーを全て固めた最も威力の高いであろう一撃、砲弾のような形をしていて、詳しい威力はというと易々と地面を抉り取れるほど。そして、一番重要なのがこれに尽きる。近距離攻撃だと言うこと。
 近距離攻撃ならば、近づいてくる前に倒せばよいだけの話。どのような強大な攻撃でも、届かなかったら闘う術が無いのと何ら変わりは無い。雷獣憑依が解除されて身体能力も元に戻っている中、そのための炎を作りだす時間は充分にある。
 これでラストにする、その意気込みで全身から余力を余すことなく引き出す。LV2が発動していることもあって、これほどまでの攻撃を出すのは生涯で初めてかもしれないな、と神道は振り返る。
 今まで闘ってきたのは自分から勝負を売ってくる上っ面だけのザコ集団。生徒会や得体の知れぬ奴の操り人形とは比べ物にならないほどに弱い。全力など出さずとも楽勝という辺りのレベルだ。
 だが、今退治している奴は違う。正真正銘の、生まれつきの天賦の才を持つ絶対的な勝利の化身。
 でもたとえそのようなのが敵であろうとも負ける気は微塵も無かった。

「天才だろうが秀才だろうが、怪物だろうがバケモンだろうが、全員ぶっ倒してやるっての。この俺、神道宗哉がな」

 相手が右腕に集めたように自分は丹田、体の中心にSOEを一気に集め、燃え盛る、何者をも溶かし去るような豪炎を思念として想像する。会場一帯が熱気に包まれていく、あらゆる意味で——。
 ついに、その手元の爆弾をいつでも叩きこめるような間合いに紫電は入りこんできた。もらった、と判断したのか多少の油断がそこに生まれた。
 大げさに、その高圧縮の超威力の電撃の爆弾を無造作に振り回す。その動きには少しの違和感があった。
 まるで初めて使う技をいきなり使わされているようなぎこちなさ。もしかして、あれを使っているのは・・・雷分身の核となっているところに、紫電佑香はいるのか?
 そんなことはまだ自分には分からない。もっと上の段階まで昇った時にはいつかそのような方法があると発見するかもしれない。そのためにも、目の前のこいつを倒さないといけないのだ。
 名字通りの紫の髪をなびかせながらそれを振り回す紫電の上方遥か高くの地点を飛び上がる。足だけでなく、全身のばねを使って全身の力で、紫電の調度真上にと、理由は二つ、反応を遅らせること、普通真後ろに回ったと思われるものだが、真上から襲うのは多少予想外だろう。もう一つの理由は太陽だ、上を向いても太陽の光で逆行となり、有利にことを勧められる。
 そう思ったのだが、予想外に紫電はすぐに真上だと気づいたらしい。迷うことなく視界から消えた瞬間一切の同様なく真上を向いた。それでも、もう一つの策は通用したのだが。
 真上を向いた紫電は顔色を変えた。眩しそうな顔をして、おもむろに顔をしかめる。そうであっても、ボルテック・エクスプロージョンを落ちてくる神道に向けて身構える。落ちてくるところを帰り討ちにするつもりだ。でもそれも、作戦の内。

「先にこっちを喰らいやがれ」

 体中からかき集めた全ての炎の力を、まとめて紫電にお見舞いする。咄嗟に彼女は手元の砲弾でそれをガードする。二つの全力のエネルギーがぶつかり、うねりを上げる。紅い炎と黄色い雷撃の激突、それは絵の具のように溶けあい、混ざり合い、オレンジ色の一際美しい大爆発を引き起こした。本人たちには自分たちの攻撃で弾きとばせるから大丈夫だが、近くにずっといる高木はというと耐えるのに必死だった。
 少しずつ、ゆっくりとその衝突はお互いの威力を削り、徐々に無力化していく。神道の炎は次第にその熱量が抑え気味になり、紫電の電気はゆっくりとその爆ぜるような音を落ちつけていく。そして、最後の最後になってようやく打ち勝ったのは、雷撃の爆撃だった。

「残念だったわね、神童くん!」

 そして、紫電は赤色の炎に後ろから吹っ飛ばされた。会場の人間は何が起きたのか分からなかった。次の瞬間にはあの神道が敗北すると思っていたのに、勝ちそうな紫電の方が吹っ飛ばされたのだ。
 君吉やチョコ、トーゴーはこの技は何度も見ていた。火炎玉、だ。しかし彼らでさえこの奇襲は予想外だった。
 順を追って解説するとこうだ、まず神道は飛び上がった際に自分自身の炎をほとんど全て受け渡した炎分身を作りだした。それが上空から落ちた神道。本物はというと、太陽で見づらくなっていることを利用して、その隙に後ろに回っていた。そして、二人が衝突している中で、残った力で精いっぱいの火炎玉を錬成した。
 後は知っての通り、見事に紫電に決まったと言う訳だ。

「残念だったな・・・」

 それでも、神道の中の不安は消えなかった。




 俺があいつと闘ったのは相当昔の話、その時あいつは確実にイエローガントレットだった。
 しかしだ、思い返してみるとあいつは、アーティストスキルの双璧の一人、何かが、何かが変だ。準を省いているなら納得できるが、おそらく違う。多分、憶測だが紫電はどこかの段階で能力が変わっている。
 しかし、そんなことができる人間なんてこの世に・・・



 深い疑問を残してその場での思考は止まった。
 さあ、まだ初戦だが祝杯を上げようと、歓喜した仲間が押し寄せてきた。



                                       続きます



__________________________________________


次回大阪編です、内容はというと代介VS春&金田・・・予定

前回の大阪並みに長かったなあ・・・次回に続きます

Re: IF=全国中学生能力者選手権編= キャラと能力募集中 ( No.127 )
日時: 2011/10/03 20:28
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 9nW7JjDH)
参照: 今回の大阪編は修行からスタート

大阪編第九話 最終基礎修行







 七人の少年少女が夕方の山を登っていた。四人の少年、三人の少女、その組み合わせで山を登っていたのだ。
 その中でも、三人の女子は今にも溜息を吐きだしそうなほど疲れ切った表情をしていて、少年のうちの一人は眠たげな表情を浮かべながらも苛立ちを浮かべていた。それを後ろから眺める残りの少年三人はこれは荒れてるねと、呆れている。
 怒っている方に呆れているのではなく、怒らせている方にだ。実際、今日の彼女ら三人のうちの二人の成長具合は散々なものだった。功績と言えばザコを数十人片付けただけ。
 白山はかなり活躍したのだが、岩木と春はとても健闘したとは言い難かった。予選が終わるや否や即座に代介は表彰とかの一切を放り出して修行場である山に向かうぞと、半ば強引に連れだした。
 珍しく感情を露わにした彼に気圧された、睨みつけられた女子三人組は首を縦に振るしか無かった。
 という訳でかれこれ三十分以上も歩かされていたのである。何度もその修行場には行ったことがあるのでもう少しで到着することは分かっていたが。

「なあ、なんであんな怒ってるん?」

 状況の飲み込めていない春が金田に訊いてみた。しかし、金田もしらないようで、後にも訊いてみないといけなくなった。
 それでも後にも心当たりは無いと言う。それも当然だ、後はそれなりに今日は成果を収めていた。ボロボロになりながらのLV2の解放、花宮に勝利。そんな後がキレられる事は無いからだ。
 実際に代介が苛立っているのは、やはり金田と春の二人だけであり、後はその二人の分の後始末をさせるために連れてきた。
 悶々と連れてこられた意図を考えていると、いつの間にか目的地である広場にたどり着いた。

「剣、マスキタ、新城、ちょっとしばらく手ぇ出さずに見といてくれよ」

 やっぱりなと、彼ら三人はため息を吐いた。このノリになったのはいつ依頼だろうと思考を巡らせる。案外簡単に思い出せた。半年前に新城がクラスの奴相手に暴走しかけたことに対して精根叩きなおしてやるとマジギレした時だった。
 突如、代介の姿が彼らの視界から消えた。動きを追うことができたのは、マスキタ、剣、新城・・・そして後の四人だった。
 金田と春は何が起きたのか理解する前に後ろからド突き飛ばされた。不意を突かれた二人は軽々と吹き飛んだ。それを見た白山は親友二人の元に近寄った。

「ちょっ・・代介!いきなり何すんのよ!」

 いきなり彼の取った行動に動転した白山は怒りと焦燥の混じった声でそう問いただした。瞳孔は開き、今にも跳びかかろうとする勢いだ。

「悪いな。今までがぬるかったみてぇだな。ちょっくら本気でてめぇらの修行するぜ。文句は言わせねぇ。ここまで来てまだ泣きごと言うってんなら全てについての言葉は聞き入れねえ、ここであっさりと死ねよ」

 突然発せられた言葉の意味が理解できなかった。ぬるかった・・・あれで?そして、死ねって・・・

「修行って何すんねん?多少のことはもうできんで」

 動転しながらも落ち着いて金田が代弁して代介に訊く。一応今までの地獄のような特訓でそれなりの腕は付けたつもりだった。
 実際、その辺りにいそうな奴なら一瞬で十人ぐらいあっさり倒せるくらいに、その実力は上がっていた。

「多少?そうか、じゃあ俺達にとっての多少をやってもらおうか」

 バチバチと黄色い電撃が周囲から感じ取れる。ピリピリと刺すような痛み、そして殺気が感じられる。目の前にいる代介からは普段の眠たそうな感覚は一切無く、好戦的なモードに入っていた。
 代介の能力はサンダーアーティストだと聞いてはいた。だが、アーティストスキルとはこれほどまでに強く大きな物だっただろうか?

「三人がかりで、LV2までしか使わない俺を倒せ」

 嘘だろと、三人の目が一人の男子に向かって向けられる。言った本人は至って本気だった。それでも彼女らは驕っていた、三人がかりでは楽勝に決まっているだろうと。三人の予想はこうだった。白山のLV2で代介より少し劣るところまではいくだろうと。その穴を二人で埋めれば絶対にいけると。
 そうやって油断しているのが第一の間違いだった。

「おい白山、お前ウィザード発動するのに何秒かかる?」

 ふと関係があまり無さそうな、というかどうでも良さそうなことを代介は訊いた。二十秒ぐらいだけど、と白山は軽く答えた。

「そうか・・・」

 代介は、深くため息を吐く。そして、またしてもその姿は消えた——。
 今度の動きは白山でさえ追うことはできなかった。

「遅いんだよ」

 目の前に、黄金色に煌めく代介が現れた。そう、代介は一瞬にしてLV2状態に変貌した。しかもその後に尋常ではないスピードで詰めよって。
 何か、爆ぜるような音が周囲に轟く。まるで電流が流れるかのような。その予想はぴったりと当たっていて、目と鼻の先の代介の手元で電撃は集束されていた。
 青白い電撃が、爪のように代介の腕を多い、一つの武器となった。

「雷爪・・・」

 その鋭い爪の右腕を振り上げる。不味いと思った白山が氷の盾を展開した。かなり腕の上がっている白山の盾だ。いかに代介であろうと、易々と砕くことはできない筈、そう自身を持って張ったシールドだった。
 ガラスが砕けるような快音が突如その空間に響いた。雷撃の、リゲルのような青白い雷撃の鋭爪は、容易くその透明な盾を貫いた——。





                                       続きます


________________________________________________



リゲルっていうのは星の名前です。
青い青い超熱い星です

Re: IF=全国中学生能力者選手権編= キャラと能力募集中 ( No.128 )
日時: 2011/10/06 19:33
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: F343Lai/)

大阪編続き






 振り下ろされる青白い雷撃の尖爪、展開される透明な、ガラスを思わせるような氷の盾。瞬く間にそれらは衝突、何かの砕けるような軽快な音が周囲にこだまする。いともたやすく、白山の防御は打ち砕かれた。

「嘘でしょ・・・」

 信じられなかった以前とは実力が比べ物にならないほど上がっているはずだったし、実際その通りだった。それでも、目の前の少年は容易く破りぬいて見せた。キラキラと舞い散るように粉々になった氷の欠片は宙を泳いでいる。
 そのことに対して呆然とし、我を忘れていた白山は襟首を掴まれて引っ張られた。一瞬代介にやられたかと思ったが、まだ彼は目の前にいた。それに、代介の強大な気がまだそこにあると感じられる。
 首が締まり、息が詰まった彼女は苦しそうに咳をした。それを見て流石にやりすぎたと、後ろにいる金田は謝った。

「一応、間合い取らないとさ」

 そのことに対して彼女に非は一切無い。気を緩ませた自分の責任であると、心中の旨を伝えて向き直った。
 あまりに電圧に全身の毛・・・といっても髪の毛ぐらいだが、が逆立っていて、それはまるで怒り狂う猛獣のようだった。いつもの眠気と倦怠感はどこかに吹き飛んでいて、目は吊りあがって苛立ちを見せつけている。
 バチバチと常時線香花火が燃える時のような音が周囲に響いている。その音に合わせて体の周りで太陽からプロミネンスが飛びだすように電撃は奔っていた。

「おい・・・本気、出せって言ってんだろ?」

 雷でコーティングされた方の掌を握りしめる。電気エネルギーをその手の中に圧縮するように。途端に手掌の中で弾けるように急上昇するSOE。不味いと感じた金田は、前に代介が言っていてことを思い出す。
 水は電気に弱いとか思ってるけどそんなことは無い。完全に蒸留された混じりっ気の無い水は通電しない。
 それを思い返した金田は、目の前に薄く広げたクリアな水の膜を押し広げる。悟られないように視認不能な程に透明にしたつもりだった。だが彼女と春は忘れていた。唯一の問題点を後が急いで指摘する。

「島美!春!代介は感じられる人間!」

 そう、白山は同じようなことができるから指摘出来た。周囲のSOEを感知することのできる補助系の特技から、そこに水が展開されているのなんて最初からばれていた。
 慌てて対処しようとするももう遅い。真正面からしかけても無駄と分かっている代介はどこからかまでは分からないが、回り込もうとその姿を消した。
 この超高速は本当に厄介だった。目で追うことすらできないような速度に対応できるほどの実力はまだない。
 だが、一番可能性が高いのは後ろ側であると、定石を読んだ春が金田に膜を避けさせることなく後ろに向かって鎌鼬を仕掛けた。
 本来目に見えぬ真空の刃は相当のスピードで確かに進んだが、そこに代介はいなかった。場馴れしているだけあって、代介の方が戦闘時の機転は効く。定石など使う由も無い。
 春は不審がって目を地面に向かって下ろして気付く。影が出来ている、ようするに頭上にいると。

「ライトニング・ドライブ(雷神の三又槍)」

 力の凝縮されたその爪を振り下ろす。人差し指、中指、薬指に特に凝縮されていた電圧は一気に空気中に炸裂し、三本の落雷の槍と化した。
 まだ当たっていないのに刺すような痛みが肌を走り抜ける。意識するよりも早く条件反射で三人は上に能力を押しだした。
 荒れ狂う大気は轟く水流に勢いを与え、鋭利な氷の刃はその水に殺傷力を付与させた。核となる水はその量と流れの強さで、落雷の槍と衝突する。
 その組み合わせは思っていた以上の力を発揮し、攻撃を払いのけた。これは自分でも信じ難い。必死でその理由を思いだそうと考える。


—————また、気を緩めてしまった。



「後!後ろいるよ!」

 振り向いた時には代介のLV2は解けていた。なぜかを考えているとその手元に雷撃を全て集めたような球体が目に入り、さっきまでの力は全てそこにあった。この技が何かは白山は知らない。一つだけ分かることは喰らってはいけない。
 半分自暴自棄になって周囲の空間をまるごと凍結させる。自分が巻き込まれることにもお構いなしに。その火事場の馬鹿力には代介も予想外だったようで、集めた雷エネルギーを残さず周りに爆散させた。
 不幸中の幸いと、そこで間合いを広げた。しかし代介のさっきの実力から察するに、またしても一瞬でLV2に戻る。自分がLV2になるための十分な時間を得ることもできぬままにそうされると不利になる。

「少しは『らしい』顔つきになってきたな。でも、まだ足りないな」

 そこで彼の取った行動は、再度レベルを上げるのではなく、サブである能力の発動だった。
 手元に、本来ストロンガーに使うための気を纏めて球に仕立て上げる。何の変哲も無い覇気弾だが、それが百個も中空に浮いている姿は初めて見る上に壮観だった。

「防ぎきれよ!」

 それら全てが一斉に放たれた、白山では無く春と金田に向けて。だがもうそろそろこの闘いに集中してきた二人は瞬時に対応した。

「トルネード・ディ・タグリアーロ!(真空波の乱舞)」

 内部で鎌鼬が数え切れぬほど走り回る巨大な竜巻が現れる。中に侵入した覇気弾は、一つたりとも無事な姿では外に出てこなかった。
 そしておよそ半数はまだ金田に向かって突き進んでいる。

「オラ・グランデ・ナンブロ・エル・ミステリオ(海龍神の舞)」

 土地をそのまま洗い流せるような量の莫大な水流が当たり一帯を包み込む。それに巻き込まれた覇気弾も全て消滅する。
 そのまま術者本人にも当ててやろうとしたがいとも簡単にそれは止められてしまった。

「・・・爆気弾」

 十発ほどの爆気弾を一瞬のうちに錬成し、発射。並みに衝突する前の瞬間に轟音を響かせて大爆発を起こした。
 それに吹き飛ばされた水滴はビシャビシャと辺りに飛び散り、地面をぬかるませる。足場が悪くなり、場数の少ない三人はさらに深刻な立場に置かれた。




                                       続きます



______________________________________________



予想以上に金田と春が強いなあ・・・
白山はちょっと足引っ張ってる感あるかな?
代介強すぎと思うけど、彼はちょっとやる気出したらこんなものです。
では、次回に続きます

Re: IF=全国中学生能力者選手権編= キャラと能力募集中 ( No.129 )
日時: 2011/10/09 10:08
名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Q9sui1jr)

大阪編続き






 この状況は早く打開しないといけないとずっと白山は考えている。LV2にならないと、確実に決定打を与えることはできない。でも、自分のレベルを上げるためには少なくとも十秒以上の溜め時間が必要となる。
 それに加えてもう一つ窮地に立っている理由がある。さっきの百発の覇気弾、加えて十発の爆気弾を放ったにも関わらず全く疲弊していない代介に対してそれを払いのけた二人には代介以上に体力を使っている。
 闘いが長引けば長引くほど危機的な状況下に加速して行く。LV2へと移行するための時間も確保しづらくなり、向こうの攻撃も返すことができなくなる。

「本当にお前たちやる気あんのか?防戦一方で一切手は出してこない。死にたがってるなら早く言えよ」

 痛いほどの殺気がさらに飛んでくる。鳥肌が立ち、身震いがする。ぞくぞくとした悪寒のような寒気すらが、走る。
 今度はLV1状態のまま高速で移動し、その姿が消えたように錯覚した。これはおそらく、サブであるファスターの使用。おそらく限界数値の100などすでに達しているだろう。
 白山は即座に意識を集中させて代介の気を感じようとする。翻弄するように辺りを動きまわっているのか至るところから同じような濃度のSOEの残像が気取られる。
 急に、自分の真横でその動きは止まり、大きな力の塊が現れた。捕捉完了と、その方向に氷の刃を放つ。割れたガラスのように透明で、鋭利な刃はさくりと雪を踏みしめるのに良く似た音を立てて地面に突き刺さった。
 またしても代介の気は動きを始めていて、その刃は簡単に回避されたようで、氷が捉えたのは先ほども言った通り大地。

「散爆気弾」

 自分の調度真上に代介が現れる。おそらくこれはジャンパーで跳躍力を増幅してこうなるようにしたに違いない。そして、一発の気弾を放つ。
 それは、発射の次の瞬間に急にいくつもの弾丸に分かれた。これは散気弾の性能で、発射の瞬間に分岐することで広範囲に弾丸を放つことを可能とするものだ。
 だが、それだけでは終わらないとは、技名を聞いた時に分かった。散『爆』気弾と言ったのだ、爆発するに決まっている。それを押さえ込むように白山は全力で、全霊の力で凍結させようとする。
 その上からさらに衝撃を吸収できるように金田が水を上塗りする。春はというと、地に降り立つ代介を攻撃する。

「ラ・パロトラ・デッラ・ラマ・デル・アスピラポルヴェーレ(真空波の弾丸)」

 さっきの竜巻を細くして横向きにしたような、レーザー状の斬激の竜巻を真っ直ぐ代介に向けて飛ばす。
 空気の奔流なので目には見えない。だが、代介はそこにあるSOEを感じ取ることが可能。どこにそれがあるかの予測はすぐにできる。
 右手に周囲から集め取った電撃を集束させ、狙いを定める。狙うは竜巻の中心。そこで爆散させて見当違いの方向に飛ばす。

「ジ・エレキトリック・ショック・オブ・ア・ホーリー・スペース(聖域の稲妻)」

 台風の目のように中心が何の効力も及んでいない空洞部分を直線状に黄色い閃光が射抜く。突き抜けると同時に内部で大きく雷撃は炸裂する。

「もう一回行くぜ、雷獣憑依Verアルティメット」

 落雷が起きたような衝撃が戦闘会場一帯を取り囲む。もう一度、雷神の化身のように代介は黄金色の波動に包み込まれる。
 三人の脳裏に戦慄が走る。もう一度あの状態を解除させないといけない。方法はおそらく一つ、さっきのボルテック・エクスプロージョンを使用させて爆散させることだ。
 だがそうそうそんなものを使うかと訊かれると、答えはノーだ。自分から使ってくるようなことは二度としないと容易に予測できる。
 使わせるしか方法は無い。LV2にならなくても威力の高いものをぶっ放す方法はさっきのまぐれ当たりを使えばできる。

「さあ、島美、春、ちょっとしたいことがあるんだけど」

 同じことを考えていたのか、全てを理解したように頷く彼女らを見てアイコンタクトを取る。そして代介が動く前にこちらから仕掛ける。
 あいつの言い分から察するにかかって来いということだろう。そういうことなら躊躇せずにやってやる。
 冷気、水気、大気が隷属されるように三人の元に集まり、従う。白山、金田、春の三人がそれらを一つずつ攻撃用に錬成して行く。

「万象凍結の雪冷儀礼!」

 あらゆるものを凍てつかせるほどの凍気、そういう意味を込めて付けた万象凍結のいう物は、彼女の全力の一撃、それに合わせるように自分なりの最強を二人も放つ。

「エル・イノージョ・デル・レイ・デル・ドラゴン・デル・マー(海流神の逆鱗)」
「ラリト・デル・ディオ・デル・ヴェント(風神の吐息)」

 三つの光は重なり合い、黄金色の少年に襲いかかる。




                                                  続きます



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次回、VS代介は終了です。


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