複雑・ファジー小説
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- ＩＦ＝全国中学生能力者選手権編＝ 再開してみました。
- 日時： 2011/11/16 21:40
- 名前： 狒牙 （ID: tDghPMhC）
コメディ、ライトの方で違う名前で
違うもの書いてる者です。
えーと、ざっくりと説明するとですね、
闘いまくります。
そして今ちょっとしたピンチ、詳しくはこの>>0の下の方を見て下さい。
あと、大阪編と東京編に分かれて、同時進行します。
東京編書いたら大阪編って感じで。
メイン主人公が大阪編、メインストーリーが東京編だと
思ってください。
大阪編は東京編の一年前のストーリーです。
長編予定です。
ってなわけで、東京編行きまーす。
プロローグ
今朝起きたら、父親がいつも通り、新聞を読んでいた。
「早くしないと二年生の新学期早々遅刻よ」
キッチンから母さんの声が聞こえる。
ふと時計を見ると、七時半を指している。
「あっそ、入学式は八時半からだ」
朝食を取った俺はすぐに着替え、カバンを用意し、
八時十分ぐらいになるのを待った。
するといきなり、インターホンが鳴った。
「ターカシーン！まだかーーーーーー！」
白石の呼ぶ声が聞こえる。
どうやらシンスケも一緒にいるようだ。
「来るの早いんだよ」
ブーブー言いつつも、いつも通り学校に行く支度をする。
とりあえず、俺は外に出た。
四月だから、吹く風も心地よく、日差しも柔らかく、穏やかだ。
そして、超平凡な、この俺、高木新羅（たかぎ しんら）の
超非凡な物語が始まる。
今回だけ、大阪編も一緒にします。
プロローグ
大阪のある市立中学に通っている白山 後（しろやま こう）には、
もう一つの顔があった。
それは、芸能人としてのじぶんである。
そんな華々しい自分に、少なからず誇りを持っていた。
ある日突然白山は、クラスでも浮いている男子から
声をかけられた。
「俺のいるチームで、全中に出ないか？」と。
※大阪編の主人公は浮いている男子です。
謎や秘密は頻繁に出てきますが、ちゃんと後々
明かしていくので、気にせず読んでください。
質問は気軽にしてください
答えますんで
そして、一つピンチです。能力が足りません。
誰か心優しい方はここを見て下さい。>>34
ついでいうとキャラクター募集、という形に変わりました。
- If ｔhere are …… ( No.4 )
- 日時： 2011/05/15 11:26
- 名前： 狒牙 （ID: gzQIXahG）
大阪編第二話 マスキタ
「頼むってマスキター、俺疲れた。あいつらの勧誘やってくれよ。
お前リーダーだろー？」
目は半開き、さっきからあくびを連発している
寝ぐせだらけで髪ボッサボサの少年は目の前にいる
天パの背がやや高めの少年に話しかけた。
「勝手にリーダー押しつけたくせに・・・」
それに対してあきれたような返事をして、本の世界に再び入りこんだ。
「だってガラじゃねーんだよ。あとたまには文学的な小説も
読もうぜ」
写真集や、音楽雑誌、それにマンガやオタクくさい本ばっかが
山積みにされている光景を見つつ、代介はため息をついた。
その前に座っているのは鱒字輝大（ますじ きた）。
特徴は今言った通りだ。
通称というより、略称としてマスキタと呼ばれている。
「で？反応は？」
「全然。シードの説明しようとしたらどっか行っちまった」
ったく面倒くせえなあ、と言って鱒字は立ちあがった。
ポケットからベルトにかけてチェーンが伸びており、
歩くたびにチャラッという音がする。
「言ってくれるのか？」
「しゃあねぇからな。どうせ眠いから今日はもう行かねえんだろ？」
ご明答とでも言いたいのか、瞬く間にすやすやと寝てしまった。
あいかわらずの就寝っぷりである。
「なんでこんなやつが賢いんだろ？」
爆睡する学年トップにそう言い残して部屋から出て行った。
正直こいつは授業中も爆睡している。
塾も行ってない。
本人いわくヒマつぶしに教科書読んだら内容全部入っちまったらしい。
「肝座りすぎだろ。やっぱお前がリーダーでよくね？」
聞いてはいないと思うがそれだけ言い残して
白山たちのところに向かった。
「芸能人にはあんまし話しかけたくねえんだけどなあ」
廊下にハァとため息が反響した。
「しかも取り巻きは学年最強とか勝手にほざいてる金田だし・・・
ヤンキーはうっとおしいんだけどなあ」
ま、あいつも一回やったんだし俺も一回しとくかと
無理に自分を納得させてやつら三人の溜まり場に向かった。
「とりあえず、断る時は寝る邪魔だけはしない方がいい」
金田は、春と後にさきほどの自分の体験を伝えた。
恥ずかしながらオーラみたいなのに気圧され、委縮して
身動きが取れなくなったことも告げた。
「島美ちゃんでもそうなるのか・・・じゃ、気をつけよう」
簡単に言うけどそれはかなり辛いということは体験した
金田本人にしか分からない。
いつものように春は現状を楽観的に見ている。
「ちゃーす」
後ろから誰かがやってきた。鱒字だ。
金田はスッと振り向いた後、すぐさま立ちあがり、
即座に間合いを詰めた。
「てめえなんのようだ？」
ここは私達の領地だ、とでも言わんばかりに因縁をつける。
代介なら、
「ハァ？ここ学校の土地だし？あんたら何様ですかー？」
と、嫌味ったらしく言うんだろうなと鱒字は考えた。
でも、そんなん言ったら確実にバトル勃発。
学年最強と思いあがっているザコを片すのは訳ないけど
無駄に疲れたくない。ここは穏便に話し合いで・・・
「シードについての説明だ」
それを言った瞬間、金田は一歩踏み出してきた。
ジャリッと砂を蹴り、さらに間合いを詰める。
腕を振りかぶり、全力で殴りに行こうとした。
「どんだけキレてんだよ？」
首だけひょいと動かして顔への攻撃を回避する。
耳すれすれのところで回避したせいか、拳が空を切る
シュッという音が聞こえた。
「あいつの仲間か？」
怒りを押し殺しているような声で、つぶやくように聞いてきた。
だが、金田は返答を待たずに、踏み出した左足を軸にして、
グルンッ！と左向きに回転した。
一周した後に、鱒字のみぞおちを目指して右足が向かってくる。
それに瞬時に反応した後、腹だけを後ろに退け、
海老反りのようなフォームで回避した。
「ま、そんなもんだ。形式上は俺がリーダー」
そうかよ、というつぶやきが聞こえたような気がした。
「今になってリーダーの登場かよ。あんたは、あんたたちは
何様や！」
回し蹴りが回避されたその瞬間、軸足にしていた左側の足の力で、
トンっと高めに跳びあがった。
跳びあがった今もなお、回転は続いている。
バランスを崩しかけた鱒字の頭に容赦ない空中からの回し蹴りが
ヒットする。
重い一撃を喰らった鱒字が、今にも倒れるかと思ったその時。
鱒字の姿がゆらいだ。
ゆらゆらと、まるで蜃気楼のように揺れている。
たちまち、鱒字の姿はただのオレンジ色の光に変わった。
そして、そのオレンジもすぐに消えてしまった。
「なっ！！」
一体どういうことだ？今確かに当たった感覚が・・・
「ったくこれだから血の気の多い奴ははんとに・・・」
さっきのようにまた、後ろから突然現れる。
こっちが本人だとすると、さっきのはＳＯＥを固めた分身、
いや、スキルによって作られた分身か・・・
（注）ＳＯＥ・・・ソース オブ エナジーの略
力の源という意味
「話を・・・聞くつもりになったか？」
悠々とこっちに近づいてくる。
「やなこった」
突然、三人の気配が、鱒字の意識の外に消える。
手始めに音、そして姿、最後に気配が消えた。
「ちっ、シャドーキラーか」
—————厄介なもん使いやがって。
「代介のところに戻るか」
もうここに用は無い。
タンっという軽い足音だけ残してそこから去った。
- Re: If ｔhere are …… ( No.5 )
- 日時： 2011/05/15 11:47
- 名前： 狒牙 （ID: gzQIXahG）
東京編第三話 全中
「もう一つ連絡だ。六月の末に全中の地区予選が始まる。
面倒くさがらず、誰か勝ちぬいて、学校の評判上げてくれ。
期待してるぞ、神道」
冗談をいりまぜて佐藤先生はシンスケに呼び掛けた。
ウィっすとだけ言ってシンスケは俺に向かって
「タカシンも出るよな？」
と聞いてきた。去年はシンスケを大将にしたらいいものを
バカが思いあがってリーダーになったから即敗退したんだっけな。
そのときシンスケはまあタカシンさえ一緒にチームにいたら
別にあとはどうだっていいと言っていた。
まあつまり俺がいないとあいつは出るつもりはないわけだ。
「あと五人どうすんだよ？」
「みっしゅん入んねーか？」
みっしゅん呼んだら陸上部からクレーム来るぞ。
てかどんだけ今年のチーム強くする気だ？
「そこのチビもどうだ？」
「誰がチビですか！」
ああ、そうそう忘れていた。トーゴーは相手が動物であろうと
ですます口調で話す、筋金入りの真面目君。
だから、ヤンキー狩りなんて目立つことをしてる。
「その話はあとにしろ。まず校内予選を勝ち抜けよ。
一人か二人なら他中のやつもチームに入れて良し。解散！」
ってなわけで今日は放課後になった。
隣の席に転校生がいるので、一旦俺は席から離れた。
なぜなら・・・やっぱり来たよ人の群れが。
ワイワイガヤガヤうるさくなるであろう所から
脱出できるうちに逃げておく。
とりあえずは部室行くか。
部室に着くと、すでに白石がいた。
「白石、あいつについてなんか分かったか？」
「あいつすげーぞ！」
何がだよ。俺は思いっきりしかめっ面をした。
「腕力Ｂ＋、走力Ａ、知識Ｂ、賢さＢ＋の能力ランクＳ＋だ！」
「能力以外俺より全てあいつの方が上？」
正直言ってこれは称賛に値する。
全部Ｃを上回ることなんて滅多にない。
こんなのシンスケと・・・
「シンスケと城崎以外見たことねーな！」
白石はそう叫んだ後、ハッとなって申し訳なさそうに
俺に謝った。
「別にいいよ」
昔の話だし、な。
なんか東京編メインの割に短いな・・・
- If ｔhere are …… ( No.6 )
- 日時： 2011/05/15 15:07
- 名前： 狒牙 （ID: gzQIXahG）
- 参照： 二話連続で大阪です
大阪編第三話 トラブル
「ふう、これで逃げ切れたかな？」
放課後の今、鱒字から逃げるために金田はシャドーキラーを使った。
シャドーキラー、使用者の気配を消すことができる能力。
慣れてくると自分の姿や発する声を聞こえなくしたり、
近くにいる人間の気配も消すことが出来る。
ひとたび使えば停止させるまで認知は不可能。
この能力があるからこそ金田は学年最強と謳われている。
これが無ければホ—ネット（雀蜂）の能力を持つ春の方が
圧倒的に強い。
ホ—ネット、拳闘技強化能力。
特に脚力が強化される。その針のような蹴りは一撃で
相手を地に伏せる。ゆえに雀蜂。
「これ以上しつこく来るんやったら私も加勢するわ」
その春の戦闘スイッチが入った。
実際春は経験を積んでおり、かなり強い。
経験といっても喧嘩ではなく、ムエタイの試合だ。
「ごめん、私かく乱させることしか・・・」
後の能力は劇団、あらゆる境遇、人物になりきることができる。
これのおかげで芸能界でも成功している。
他にも、劇団員構成ということができる。
ＳＯＥを練って固めて人型にして、自分の意のままに操る。
「別にいいよ。また同じ手口で逃げるだけだし」
まともにぶつかったら三人がかりでも負ける。
もしかしたらさっきも逃がされただけかもしれない・・・
「にしてもじめっとしてんねー」
確かにここは湿気が多くて蒸し暑い。
今いるこの場所は学校のすぐ隣の廃れた、元々家だった物。
よからぬ連中が隠れ家にしているからそう長居はできない。
カツッ ガシャン コツコツ ジャラッ
いくつかの足音が聞こえてくる。
少なくとも四つはある。少々まずい状況下にある。
「誰やお前らあぁ！！」
まずいゴロツキだ。手にバットやスタンガンを持っている。
できれば後のいるこの状況では前からぶつかりあうのは避けたい。
人一人かばいながら大人と闘うほど、自分たちはバカじゃない。
「後、逃げて」
ボソボソッと耳打ちした。
後は一瞬ためらったがすぐに頷いて、裏口から出て行った。
「で、誰やお前ら？」
首領と思われるやつが出てくる。
肩に刺青を入れたスキンヘッドの眉なし。
暴走とでかでかと描かれた典型的な不良のような格好をしている。
「二中の金田や」
「同じく春」
「別に名前覚えんでもええで」
「あんたらは」
金田と春が交互に会話する。
そして最後に一緒に叫んだ。
「ここでちょっと気絶でもしといて！」
まず、金田がシャドーキラーを発動する。
ふっとあいつらの視界から私達の存在は認識できなくなる。
こちらからしか見えないという利点を生かし、一旦背後に回りこむ。
先に仕掛けたのは春。
「らあっ！」
躊躇なくひざ蹴りを、一番近くにいた下っ端に決める。
ミシミシと喰い込むように鋭い蹴りは入った。
肉体が軋むような音が聞こえる。
相手は大人、それも男なので、手加減は不要。
一旦距離を置き、第二撃のためにタイミングを計る。
残っているのはあと四人。
「どこや！？」
目の前のあいつらは無様にも動揺する。
その隙を突いて今度は金田が踏み込んだ。
壁をつたって高く飛ぶ。一番動揺の激しいザコに目いっぱい
反動をつけたかかと落としを脳天にたたきこんだ。
今履いてる靴は柔らかい素材でできていて、このかかと落としも
見た目ほどの威力はない。
それでも、喰らったやつは両方の穴から鼻血を出して小さいこぶを
作って倒れた。
もう一度攻撃しようと春が駆けだしたとき、さっき後が出て行った
裏口の扉が、大きな音と共に開いた。
バァンッ！！！
入ってきたのは片手にナイフを持った男。
しかし、注目すべきはそこではなく、もう片方の手だった。
「後！！！」
そう、いつの間にか外で後は捕まっていた。
がっしりと捕まえられており後の筋力では抜け出せそうにない。
「誰だか知らんけどこの娘が無事で終わりたいんやったら
下手に抵抗せんと出てこい」
人質を取られたら打つ手は無い。
シャドーキラーを解いた。
「それでいい」
万事休す、袋のねずみ今の状況ではその言葉が最も適している。
四人の人間に囲まれ、後が囚われているこの状況、ピンチであることは
言うまでもない。
「なあ、俺こいつテレビで見たことあんで」
残ったやつらの一人が後を指差してそう言った。
「俺も俺も。えっと白山だったっけ？」
面倒くさいから後は本名を芸名にしている。
「ま、とりあえずここまでこけにしてくれた分、返させてもらおか」
バットを持ったやつらがジリジリと詰め寄ってきた。
そして、金田の手前でバットを思いっきり振りかぶった。
- If ｔhere are …… ( No.7 )
- 日時： 2011/05/15 15:37
- 名前： 狒牙 （ID: gzQIXahG）
大阪編第三話後編
「喰らえ！」
振りかぶられたバットが金田に向かって振り下ろされようとしていた。
「島美！逃げて！！」
後が腕の中から叫ぶ。
だが、そんなことしたら後が危険にさらされる。
金田は覚悟を決め、歯を食いしばった。
バキィッ！！
奇妙な音が廃屋に反響した。
誰もが無残な金田の姿を想像したであろう。
しかし、金田は一切の傷を負っていなかった。
さっきの音はバットが弾きとばされた音だった。
棒状の金属が紅い光に包まれ宙を舞う。
「人の勝負に手ぇ出すのは嫌いやねんけど・・・」
入口から光が差し込んでいる。
誰かが扉を開けたようだ。逆光でそれが誰かは分からない。
段々と扉は閉まっていき、逆光は弱くなっていく。
完全に逆行が遮断されたとき、そこにいたのは鱒字だった。
「仕方ないか」
天パを指でクリクリといじりながらこっちに歩いて近づいてくる。
「誰やねん、お前？」
「ただの中坊」
さらっと適当に質問を受け流す。
多分これは挑発だろう。あいつらもあまり気にしていない。
「まあ、なんにせよ」
後を捕まえている男が鱒字の方を向いた。
「帰らんかい！」
さっきまで後に付きつけていたナイフを鱒字に投げつけた。
「おいおい、危ないだろ？」
鱒字は左手を前に出した。
コオオォと、何かしらのエネルギーが溜まっていく。
赤に近いオレンジ色に輝いている。
「紅！！（くれない）」
左手から炎が放たれた。
炎は、一直線に飛んでいく。ナイフの刃を溶かし、木製の柄を
燃やし、灰にし、なおもまだ突き進む。
「ぎゃぁっ！」
後を捕まえた男が、赤炎に包まれる。
火が消えた時にはそいつはもう気絶していた。
服も黒く焦げている。
「まだやんのか？」
「なめんな！」
すぐに次の奴が駆けだす。
今度は、右手を前に出した。またしてもエネルギーが充填される。
「紅二の型・火の鳥！」
さっきとは違い、今度は炎が形を持っている。
技名の通り火の鳥が、走るザコを射抜いた。
「があっ！」
射抜いたと言っても、炎だから単にすり抜けたというような感じだ。
「次、来いよ」
右手に左手を添えるような形で、両手に炎が溜まっていく。
今までの比ではない熱量が放散されている。
「紅三の型・フェニックス！（不死鳥）」
巨大な鳥が、天を翔ける。
近くにいるだけでもかなり熱いこの鳥は、
やつらのボスを飲み込んだ。
「ぼ、ボス！」
残った一人が駆け寄る。
「さっさと帰れよ」
三の型と同じフォームで、さらに巨大な鳥を錬成する。
完全に戦意を打ち砕いた。
「紅終型・ゴッドバード（神鳥）。喰らいたくなかったら
そいつら連れて帰れ」
「はっ・・はっ・・はいぃ！！」
残った一人は何往復もして仲間を廃屋から連れ出したんだとか・・・
続きます
- Re: If ｔhere are …… ( No.8 )
- 日時： 2011/07/09 23:04
- 名前： 狒牙 （ID: Z807Ua8T）
- 参照： 友達に厨二って言われたけど自分では悪ふざけのつもり
東京編第四話 解禁 前編
の、前に・・・全中の説明
全国中学生能力者戦闘大会のことを全中と言います。
でもある条件を満たしていればノーマルでも参加可。
条件については後々ストーリー内にて明かします。
では、本編どーぞ。
夕焼けが空を赤色に染める。
徒然草にあるように、烏の集団が散り散りに、
各々の巣へと帰っていく。
まだ四月なのでこの時間帯になると風は冷たい。
部活を終えた生徒たちもみな家へと向かっているところだ。
部活を終えた者たちに一人の帰宅部の少女が混じっている。
彼女は転校の手続きで帰るのがすっかり遅くなってしまった。
「なあタカシン、あれ君吉じゃね？」
新聞の、新学期初の原稿を提出しさっさと帰ろうとしていた二人は
今日転入してきた君吉という名のクラスメートを発見した。
だが、なんだかそわそわしているように見えた。
数歩歩くごとにきょろきょろと辺りを見回す。
何かに警戒するように、慎重に辺りを探っている。
突然、驚いたように目を見開いて、瞬時に駆けだした。
「ん？なんだあいつ？」
さっきの気の配り方、身のこなし、そして睨みつけるような目は
常人のそれとははるかに違っていた。
ふと、君吉の見ていた方向を見ると黒いスーツに身を包んだ
長身で、がっしりとした男がいた。
「Ｓ地点へと向かった。ただちに急行してくれ」
「おいおい、何者だ？あいつオールＢだぜ」
白石が感嘆するようにひゅうっと口笛を吹いた。
大の大人の方が基本的に身体能力は高い。
だからオールＣとかはけっこうザラだ。
だがそれでもオールＢはそうそういない。
オールＢというと、君吉の方が数値が高いように思えるが、
君吉は女性での、黒服は男性の基準値を使っているので
結局の話あいつの方が強い。能力は君吉だが。
まあそれよりシンスケの方が強いが・・・
そんなことより、なんだか不穏な気配を感じた俺たちは、
黒服の男を尾行した。
男は大通りを真っ直ぐと進んで行く。
途中にある細い道に向かって入りこんだ。
「あいつ、町はずれのビルに行くつもりだ」
ビルといっても何年か前から取り壊しの工事をしているので、
今は一階と二階しかない。
怪しい連中の行き先を知った俺たちはこの辺の土地に強いことを
利用し、別ルートで先回りした。
「あ、マジで先回りしちった」
潰されたビルの非常階段を使い、ビルに入った高木たちは
走りながら入ってくる君吉を上から見届けた。
それに続き、次々とスーツの連中が攻めてくる。
「ここなら大丈夫そうね」
君吉の凛とした声が廃墟の中をこだまする。
いつの間にか、君吉の手には一本の刀剣が握られていた。
「ウエポンブロック！なんであいつがあんなもの・・・」
ウエポンブロック、特に警官や自衛隊が戦闘目的のために使用する。
いろんな武器の姿形をアップデートすることによって、
いつでもどこでも多彩な武器を操ることが出来る。
「言いたいことは分かるよな？小娘」
スキンヘッドでタトゥーを入れた体中に大火傷のあとが残った、
十人の中でトップと思われる男が出てくる。
「あら？何のことかしら？」
「とぼけんなよ」
ネクタイなど、衣類のたぐいを緩めていく。
おそらく、動きやすいようにするためだろう。
手をポキポキと、、肩をコキコキと鳴らす。
「てめえを人質に、じいさんから俺に、その地位を譲ってもらう」
なんだあいつら？どういうことだ？
人質を使うことで手に入れられる地位があるのか？
「去年大阪で中学生に惨敗した哀れなあなたにできるのかしら？」
どうやら君吉は連中を知っているようだ。
「できたかどうかは・・・」
「おい、タカシン」
横の白石が裾を引いて呼びかけてくる。
「あいつの能力、そこそこ強いぞ」
緊張したような顔つきで、白石が震えている。
下で、乱闘が始まった。
「戦ってから決めろ！！」
続きま〜す
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