複雑・ファジー小説

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スピリットワールド【合作】
日時: 2017/11/03 17:10
名前: 弓道子&日瑠音&凜太郎&雅 (ID: LCLSAOTe)

この作品は合作です!

こんにちは、あるいははじめまして!
雅と申します! 今回は弓道子さん、日瑠音さん、凜太郎さんとともに合作という形で、この物語を書いていきます
読んでくださる方も含めて、みんなで楽しんでやっていきたいです!
よろしくお願いします!                               雅

どうも、最近転んだだけで骨折した凜太郎です!
初めての合作で変な部分もあるかもしれませんがよろしくお願いします。
                           凜太郎

こんにちは、日瑠音と申します!
私も初めての合作でとても緊張してますが、よろしくお願いします!
日瑠音

遅れてすみませんでした…
弓道子です!! もう迷惑かけんよう頑張るので
みなさん 温かい目で読んでください!

弓道子


〜目次〜

登場人物

空編  >>001>>003>>006>>010>>014>>017>>019>>021>>024>>026>>028>>030>>032>>034
    >>036>>038>>040>>042>>044>>046>>048>>050>>052>>054>>056>>058
    >>060>>062>>064>>066>>068>>070>>072>>074>>076>>078>>080>>082
    >>084>>086>>088>>090>>092>>094>>096>>098>>100>>102
    >>104>>106>>108>>110>>112>>114
時雨編 >>005>>009
椿編  >>004>>008>>012>>016>>018>>023
伝斗編 >>002>>007>>011>>013>>015>>020>>022>>025>>027>>029>>031>>033>>035>>037
    >>039>>041>>043>>045>>047>>049>>051>>053>>055>>057>>059>>061
    >>063>>065>>067>>069>>071>>073>>075>>077>>079>>081>>083>>085
    >>087>>089>>091>>093>>095>>097>>099>>103>>105>>107>>109
    >>111>>113>>116>>118

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.44 )
日時: 2015/12/14 15:16
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

 目の前が真っ赤になる。
 斬れ、斬り殺せ。
 視界に入るもの全てを。
 殺せッ!

『なんでお前は完璧じゃないんだ?』

 うるさいうるさいうるさいッ!
 もう全てがどうでもいいッ!
 お前なんか消えろッ!
 僕の記憶にお前なんかいらないッ!
 斬り崩せッ!

『お前なんか、さっさと死ねばいいのに』

 なんでだよッ!
 お前なんかッ!
 友達じゃないッ!
 数少ない記憶のなかで唯一思い出せたお前なんか知らないッ!
 僕を利用するだけ利用しといて何もせずに捨てていったお前なんかッ!

「ぁッ・・・」

 視界が揺らぐ。
 背中にすでに3本の剣が刺さった状態だ。
 激しい痛みと血の気が引く気配を体中に感じる。

『やっぱり、お前は、完璧になんかなれなかったんだよ』

 今のこの状態を見られたらそう言って彼は笑うに違いない。
 黙れよ。お前に僕の何が分かるって言うんだよ。
 お前なんかにッ!

「ぁぁああああッ!」

 叫んで意識を強引に引き戻し、目の前にいる兵士を切り刻む。
 すでに疲労困憊。
 とっくの昔に傷は開き、アドレナリンの効果も切れ、痛みだけが脳内を支配する。
 知らないよ、そんなこと。知らない、知らない、死なない、死なない。

「がぁぁあああッ!」

 気付けば目の前に生きた兵士は誰もいなかった。
 自分が持っていた刀に目を移す。
 それらも、やはり手入れがちゃんとできていないせいで根元から綺麗に折れていた。
 僕は足元に落ちていた刀を拾う。
 僕が先ほどまで使っていた物に比べれば、多少はマシな様子だった。
 鞘に納め、走る。
 どこだ?刀はどこだ?
 僕は目を閉じて思考を巡らせる。
 僕がやつらだったら、どこに隠すだろうか?
 地下か?はたまた水中か?
 その時脳裏に浮かんだのは、デントの顔だった。

「くはっ・・・」

 自分を笑ってしまった。
 ああ、なんで気付かなかったんだろう。
 彼らは、僕より明らかに単純思考だ。
 そうでもなきゃ、刀を盗るなんていう策も思い浮かぶわけがない。
 武器を取られれば、僕、もしくは軍が、取り返しに来ると考えるはずだろう?
 自分で言うのもなんだが、僕個人が来ただけですでに地獄絵図じゃないか。
 それを、自分と同等、もしくはそれ以上の知能をもつヤツが考え付かないはずがない。
 僕は地面を強く蹴り、建物に入る。
 音を聴き、部屋から飛び出して来た兵士を斬り殺しながら僕はほくそ笑む。
 刀がある場所はただ一ヶ所。ここのリーダー、もしくはデントの部屋だ。
 自分で持っておけば安心とか考えてそうだし。
 多少頭が良ければ、せめて部屋の地下くらいは思いつきそうだけど。
 そう考えれば、行動は一つだ。
 一番兵士が周りに密集している部屋。
 少し立派なドアの部屋。
 革命軍リーダー、サラマンダーの部屋ッ!
 僕は思い切り、ドアに体当たりした。

「なッ!?」

 そこでは、デントとサラマンダーがいた。
 サラマンダーの方は、刀を構えている。
 そしてデントの手には、強く、しっかりと、僕の刀が握られていた。
 鞘からは抜かれていない。
 僕は正確に、しっかりと、刀を構えた。

『さっさと、死んじまえよ。空』

 ・・・・・・うるさいよ。

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.45 )
日時: 2015/12/19 23:22
名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: KNtP0BV.)

「あーっ!」

サラマンダーの大声が頭にガンガン響いた。
半分眠ったままの頭がくらくらする。

「おまっ、伝斗、バカ!」
「なっ、お前にだけは言われたくねぇよ! 大声出すなって!」

サラマンダーは大袋を片手に、こちらを睨んでいる。
……ああ、刀入れたことか?
そう考える前に彼は俺に飛び掛った。

「穴が開いたじゃないか! 穴が! もし中の物に傷でもついたらどうする気だったんだよ!」
「わっ、ごめんって! 中身が何か知らなかったんだって!
痛いから叩くな! お前けが人!」
「うるさい!」

うわあ、コイツだいぶ本気だ。激おこだ。
地味にコイツけが人なんだよな。どうやって止めようか。

「もう二度としない! 今日一日言うこと聞く! 何でも!」
「今日だけじゃ足りない、3日間だ!」
「わかった! 分かったから叩くな!」

やっと彼は手を止めた。
手首握ったときといい、今日といい、こいつは本当に手加減ってやつを知らないのか。
それにしてもこの中身って……?
やつの目を盗んで、そっと大袋を空けて中身を取り出した。

「骨……?」

大きな頭蓋骨だ。人間のものじゃない。
例えるなら、昔見た蛇の頭蓋骨。でもそれにしてははるかに大きい。
何でこんなもの保管してるんだ? そもそもこれ何の生物だよ?

「触るな! バカ!」
「いでっ」

サラマンダーの容赦ない蹴りが俺のみぞおちにクリティカルヒット。
そのまま骨も没収。
それにしても痛い。俺、細いから折れちゃうよ。

「サラマンダー、これって何の骨?」
「黙れ」
「なあ」
「黙れ これは命令だ」

3日間何でも言うことを聞かなきゃいけない俺は従う。
サラマンダーは勝手にソラの刀を拾い上げて物色している。

「いい刀だな」
「だってソラの刀だぜ 当たり前じゃん」

ソラは昔から完璧にこだわる。道具も、自分自身も。
そして完璧じゃない俺は見切りをつけられたってことで。

「……来る」
「ん? 何が?」

俺が考え事をしている間に何かサラマンダーは感じ取ったらしい。
俺には何もわからない。え? なになに? 敵?
サラマンダーは窓に目をやった。俺もつられる。
白い髪の少年。

「ぁぁああああッ!」

獣のような叫び。
普段の彼ではない、たびたび見せるその表情。
ああ、知ってる。
そうそう、アイツ、こんな顔もするんだよな。
サラマンダーはソラの刀を投げ捨てた。あわてて拾い上げる。

「おい、投げるなって……」
「……殺す」

静かに言い放った。
その横顔は、いつかの幼さはなく、その瞳には、怒りにも忠誠にも似た闇を宿していて。
———はじめてみる表情だ。
彼は刀を抜いた。その刃は瞬く間に炎に包まれる。

「穢れた人間に、生きる価値などない」

ああ、何言ってんだ、こいつ。
あきれながら、でも、熱いものがこみ上げて、吐きそう。
おい、俺。冷静になれ。ここで高ぶったところで、何ができる?
言い聞かせるように、大きく息を吐く。

「殺す、確実に」

とにかく、サラマンダーをとめなくては。
そのためには? まず俺一人では止められない。ノームを呼ぶ?
空も近づいてきている。今の空を止めるのは……無理そうだ。
そもそもノームは今どこにいるのだろう?
他に頼れるのは? 今窓の外に確認できる人影は……死体ばかり、あと少女が一人。
……八方ふさがり。少女しかいないし、彼女じゃ戦力にならない。
足音は近づいてきている。数秒でこの部屋に着く。
俺の所持品は刀2本。まずそれをソラに返して、そして……!
足音が、部屋の前で止まった。

「ダメだ……ッ」

扉がゆっくり開いた。
その向こうにソラが立っている。
蔑むような目に、思わず動けなくなった。
せっかくの作戦も、白紙へ帰る。
俺は刀を抱きしめる。
間髪いれず、サラマンダーが飛びかかった。
一瞬だった。生暖かい風が吹いて、サラマンダーの体が宙を舞った。
さすが、ソラはそのまま体を捻ってうまく着地。だが当然隙はできる。
再びサラマンダーはソラに飛びついた。ガギッと鈍い音がして刃が交わる。

「チッ」

また、ソラが間合いを取り、サラマンダーが攻撃する。
ソラのほうがしっかり間合いを見切れている。が、サラマンダーの動きは尋常になく早い。
サラマンダーの勢い、力強さがソラの正確でスマートな動きより勝っている。
見たところ、互角。動きの大きさからしておそらくソラのほうが有利じゃないか。
……違う。サラマンダーのほうが押している?
先ほど戦っていた疲れだけじゃない。
サラマンダーの勢いにのまれている。振り回されている。
ソラの動きには、乱されてはいるが多少の制御がある。サラマンダーには、それがない。
となると、サラマンダーが少しでも制御をかけて動きができれば、より互角に近づく。
互角であれば、より止める戦力を呼びやすくもなる。仲裁を入れるのも今より易くなる。
あと、二人とも優しい。
逆手に取るなら、俺じゃダメだ。もっと、か弱いヤツじゃないと。

「……すぐ戻る!」

誰も聞いていないことはわかっていたが、大声で叫んで駆け出した。
外には誰がいるかって? 少女が一人。
当然、彼女を利用しに行く。

—————

水色の髪をした少女。その瞳は赤い。
一瞬目があった。思っていたより強気な印象を受けたが、それでも武装はしていない。
この子でいい。彼女が巻き込まれれば……。

「あの……」
「すみませーん!」

何故だか知らないが、俺が様子を窺う前に少女は向こうから駆け寄ってきた。
遠くから必死に走ってくる彼女に、少し申し訳なくなった。
……やっぱり頼むのやめようかな。普通に可愛い子だし。

「その刀、どこで拾ったんですか!?」
「刀……これ?」

やばい、そういえばソラに返すの忘れた。
息を切らして、彼女は続けた。

「これは……私の……大切な人のもので……」
「大切な人……ソラ?」
「! お知り合いですか!?」
「うーん、なんていうか……」

この少女は、ソラの知り合い。よし、完璧だ。
彼女の言葉も耳に入らないまま、手首を取る。

「ごめん! ちょっと一緒に来てほしいから!」

さすがのソラも自身を見失ったって、関係のない人間、少女を傷つけるわけがない。
サラマンダーは……思ったより優しそうだから、それに賭ける。
頼むからまだ決着がついていませんように!
転がり込むように二人を残した拠点へ駆け込んだ。

—————

あまりにもその女の子が疲れているように見えたので、一度呼吸を整えてもらう。

「どういうことですか!? あなたは、いったい……!」
「ソラがいるんだけど……喧嘩中って言うか……俺一人じゃ止められないし、連れ帰ってもらおうと思って」
「あの……ソラさんとはどういう関係ですか?」
「……いやぁ、ちょっと仲がいいって言うか、俺が頼ってるだけでソラには嫌われてるって言うか」

しどろもどろになる俺に、彼女は小首をかしげた。
……この状況でこんなこと言うのもなんだが、なかなか美少女だ。
髪もすげぇサラサラ、折れそうなほっそりとした身に合わずその目は凜として、きれい。
俺のほうが気になってきた、この子ソラとどういう関係だろう。

「あ、そうだ、ちょっと危ないけど、大丈夫かな?」
「はい。私こう見えても『氷の中将』の娘ですから」

……氷の中将?
とにかく、大丈夫といってくれたので、あの部屋に突撃!

「お、おい、お前ら!」

扉を開けると、まずソラが持っていた目の前に折れた刀があって、
サラマンダーの刀はドアに突き刺さってて、火も消えてるし。
ベッドからは、ワラやら羽やらがばら撒かれているし、タンスも扉が一つ焦げている。
そして、二人はという遠くのほうでサラマンダーが馬乗りになっているというか。
……なんかわからんが壮絶な戦いがあったんだな。

「ソラさ……っ」

少女が声をあげて、そのまま息をのんだ。
部屋にいる二人も動きを止めた。
時間が止まったかのように、静寂が生れた。

「さー、くん……」

少女がかすかに唇を震わせた。
サラマンダーは彼女を見つめ、奇妙に、眼を大きく見開き、
泣きそうな表情をしたかと思ったら、そのまますごい勢いで窓から飛びおりた。
それにつられ、魔法が解けたように俺と女の子が窓に駆け寄る。

「バカマンダー!」
「サー君!」

ソラだけが意味が分からないといった様子でこちらを見ていた。
はっきり言って俺も展開の速さについていけない。
……この子、サラマンダーの知り合い?

「……可愛いね。このあと、時間、ある?」

ナンパのような台詞に、ソラが俺をキッと睨みつけた。

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.46 )
日時: 2015/12/21 12:43
名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)

 何度目かになる、刀がぶつかり合う音がする。
 サラマンダーは、とにかく強かった。
 まるで彼の掌で踊らされるかのごとく、無理に力で攻めようとすればかわされ、速さで挑めば力で押し切られる。
 そのせいか僕の動きも大振りになり、体力を削がれる。
 これが革命軍リーダーの力かッ・・・。

「はぁッ!」

 強引に振った刀は、根元からポッキリと折れた。
 こんな時にッ・・・。

「殺す!」

 サラマンダーは勝負を決めようと刀を振り上げた。
 僕は咄嗟にその手を蹴る。
 すると、それは運よく弾かれ、タンスに突き刺さる。
 扉の一つが燃え、その後火は消えた。
 僕は咄嗟にその刀を抜き、サラマンダーに向けた。

「何のつもりだ?」
「何のつもりもなにも・・・君達がやったことと同じことをしてるまでだ。君達も、人の刀を勝手に奪ったじゃないか」
「あぁ。あれか。良い刀だな」
「そんな言葉が聞きたいんじゃないッ!」

 僕は斬りかかる。
 しかし、慣れない刀のせいか、あっさり彼の鋭い蹴りで弾かれ、扉に刺さる。

「お前、ずっと色々なやつからもてはやされてたみたいだけど、実際はただの弱者だな」
「僕に斬られたくせに・・・何言ってるんだよ・・・」
「お前は伝斗なんかに刺されたみたいだけどな」
「ッ・・・」

 怒りが沸点に到達し、僕は彼に飛びかかった。
 しかし、彼の方が力は上で、すぐに彼に馬乗りにされる。
 彼は拳を振り上げ、僕の顔面にぶつけた。
 僕はその腕を握りしめて、爪を食い込ませる。

「ソラさ・・・・・・っ」

 その時、世界で一番大切な人の声が聴こえた。
 サラマンダーも動きを止めたので、僕も止める。
 見ると、ラキとデントがいた。
 ラキの姿に、喜びと驚きの感情が湧いた。
 なぜ彼女がいるんだ?
 なぜ彼女はデントといるんだ?
 そう思った時だった。

「さー、くん・・・・・・」

 血の気が引く。
 そうだ、彼女とこの男は知り合いだったんだっけ。
 と思いきや、いきなりサラマンダーは窓から飛び降りた。
 え?えぇ!?
 2人は窓に駆け寄ったが僕は行かない。
 何が起きてるか分からないし、体が痛い。

「……可愛いね。このあと、時間、ある?」

 と思いきや、急にデントがラキにそう言うので、僕は睨む。
 とはいえ、この状況はどうすればいい?
 僕は悩んだ末に、窓から飛び降りた。
 ここは一階なので、ダメージはない。
 その時、背後でデントとラキもついてくる。
 僕はラキの手を取り、全速力で走った。

−−−

 しばらく走ると、ちょうど森の中にポッカリ空間ができたような場所に出る。
 その中心に、サラマンダーが立っていた。

「サー君!」
「来るなッ!」

 駆け寄ろうとしたラキを大声でサラマンダーは止まらせる。
 僕は慌てて彼女の手を引く。

「なんで?なんで急に何も言わずにいなくなったりしたの?」
「お前に何が分かるッ!俺にない物をたくさん持ってるお前がッ!」

 サラマンダーはそう言って乱暴に息を吐いた。
 ラキは困惑の表情を浮かべる。

「なんのこと・・・?私は何も・・・」
「この際だから言ってやるよッ!自分を愛してくれる両親に温かい家。しまいには恋までしてさぁッ!俺はそんな物何も持ってねえんだよ・・・なんでお前ばかりッ・・・」

 そこまで言って俯く。
 理不尽だと思った。
 そんなの、勝手な嫉妬じゃないか、と。
 でも僕は何も言えなかった。
 昔からそうだ、自分の気持ちを伝えるのはどうも苦手で・・・。

『お前なんかと友達にならなければよかったよ』

 あの時何か言い返してたら、何か変わったのかもしれない。
 そういえば、他にもあったような・・・。
 たしか、デントとも・・・。

「恋って・・・まさか、好きな人いるの・・・?」

 背後から聴こえた声に振り返ると、デントがあからさまにショックを受けた表情をしていた。
 長い間考え事をしていたような気がしたけど、実際は大した時間は経っていなかったようだ。

「えっと・・・好きっていうか・・・その・・・」

 質問を投げかけられたラキは顔を赤らめながら俯く。
 その姿がこれまた可愛らしくて僕の心臓は高鳴る。
 というか、視線がこちらをチラチラ見てるような気がするけど、気のせい?
 もし、もしそういう意味だったらすごく嬉しいけどさ?

「もうどうでもいい・・・。伝斗、帰るぞ」
「え!?あ、えっと・・・分かった!」

 急に帰っていくサラマンダーと伝斗。
 それを見送る僕たち。
 気付けば目的の刀は足元に転がっていた。
 僕は静かに天を仰いだ。

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.47 )
日時: 2015/12/24 22:45
名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: KNtP0BV.)


「次は殺す……絶対殺す……」

サラマンダーは物騒なことをつぶやきながら足を引きずるようにして歩く。
大丈夫か? コイツ。とり憑かれたみたいに表情をころころ変えるし。
さっきのクールさは何処に消えた!?

「ソラなんてお前なら、それこそ怪我が全快したら簡単に、その……」

言葉を切った。どうしてもその先を言うのが怖くなった。
殺せるよ、って?
今更、俺は何を戸惑っているのか。
こんな簡単に誰かが死んでしまう世界で、何を躊躇しているのか。
あんなに簡単に言えた言葉なのに、なぜ。

「あの少年は興味ない ほっといてもああいうのは自分からくたばる。
守るものが大きいものほど、その身を滅ぼす。
俺は……失うものも何もない」
「……うん? ならいいじゃん? 別にそんなに執着して殺そうとしなくても……」
「違う、違う。俺は……強い。強い、強いから……」

……熱でもあるんじゃないか?
足取りも不安定だし、なんかわけのわからないことブツブツ言ってるし。
これだから情緒不安定は!

「あ、そうそう、そういえば、ほら、あのラキちゃんとか何とかって子、知り合い?
知り合いなら紹介してよ。俺可愛い女の子の友達ほしいからさ」

女の子はいい。優しいし、面倒見がいい。あと雰囲気が柔かいし、温かい。
それに、女子にとって俺はイレギュラーになれる。だって異性だもん。
イレギュラーであればあるほど、相手に自分を強く刻み付けられる。
例え深い関係にならなくても、相手にとって自分はある程度の特別になれる。
……そう、俺がどんなに相手を気にしていなくても。

「違う……殺す。殺す。絶対に、次会ったら殺す。殺さないと、俺が弱くなる……」
「大丈夫かよ? お前言ってることが支離滅裂だぞ?
ほら、ちょっと休もう。この洞穴でいいだろ?」

—————

洞穴に腰を下ろす。
意外と狭くて、でもひとりで生活するには十分な広さだ。
地面に誰かが焚き火でもしたような焦げ付きが残っている。
俺もこれからここで布団敷いて寝ようかな。……いや、冗談だよ?
サラマンダーは膝に顔を埋めたまま、虚ろな眼をして何やらぼそぼそボソボソ言っている。

「殺す、殺す、殺す……絶対に、殺す」
「ハイハイ、で? お前は強いから、別に今更悩むことないだろ」
「殺す……俺は……あいつを殺せない……」

搾り出すような言葉。
ン? 殺せない? 誰を?
妙な引っかかり。こいつ、何を言って……まさか、ね。

「殺す……絶対に殺す……弱くなりたくない……俺は弱くない……」
「……なあ」

答えがわかっているのにそのままなのは、あまりにも歯がゆい。
サラマンダーにとってそれを認めるのは相当嫌なんだろうけど。
言ってほしくないと言えばそれまでだ。
でも、どうしても確かめておきたい。
サラマンダーのためにも……彼女のためにも。

「……ラキちゃん、でしょ。お前が今一番恐れている人」
「うるさい、恐れてなんかない。恐れてなんかない! 俺は……っ」

サラマンダーは顔を上げた。
ああ、やっぱり嘘だ。目には溢れんばかり透明な涙が溜まって、肩を小刻みに震わせて。
相当の見栄っ張りだ。敵相手に張っていた
何でたった一人の少女相手にこんなにビビッてんのかわからないけど。

「俺は……俺は、ラキを殺せない。彼女さえ殺せたら、俺は……強くなれる」
「……どういうこと?」
「俺は彼女を殺せない……ラキが憎い、憎い。憎いのに、殺せない。
何故? 何で俺は殺せない?……苦しい……ラキが憎い……!」

……。
それって……あれじゃん?
ちょっと頭をよぎった考えは、サラマンダーの口元を見て吹っ飛んだ。
口元から、手のひらへ。べっとりと張り付いた、朱。

「ってお前! なに吐いてんだよ! 血ィ!? うわっ、大丈夫かよ!?」

ノームを呼ぶか!? 俺じゃ、手当てできない……っ。
立ち上がって、思い切り頭をぶつける。頭の奥ががつんとした。
どうやらこの天井の低さ的に、ここは俺が生活するには向いていないようだ。
慌てて走り出そうとしたら、急にぐっと手を引かれた。

「……嫌だ……一人にしないで」

“置いていかないで、置いていかないで。一人ぼっちは、嫌……”

……同じだ。
本当に嫌な光景。俺まで何かに執着してるって言うのか?
そんなことない、雑念を振り払うように俺は首を振った。

「サラマンダー、とりあえず、拠点に帰ろう」

なんとか彼を抱えあげて、走り出した。
思っていたより、彼は軽くて、小さい。
サラマンダーは、実年齢よりも精神年齢がはるかに幼いと思う。
自分のコントロールもできない。後先を考えずに衝動で動く。超がつくほど寂しがりや。
……俺とそっくりだ。

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.48 )
日時: 2015/12/25 21:47
名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)

 僕は、弱い。
 あの時、ラキがいなかったら、僕は死んでいた。
 僕は、彼女を守りたいだけなのに。

「どうして・・・」

 自分の手を見る。
 まめだらけ。
 これは、努力の証だと思ってた。
 でも、違った。
 努力は、報われて初めて努力なんだ。
 報われなかったら、それはただの・・・———徒労。

「うッ・・・」

 何かを吐きそうになった。蹲る。
 こんなことを考えながらも、僕はずっと町を走っていた。
 すでに、5時間くらいかな。

「もっと・・・強くならないと・・・」

 フラフラと立ち上がり、また走り出す。
 強くならないと、守りたい物も守れない。
 気付けば、家の前に着いていた。
 安心からか、気が抜けて一気に吐き出す。
 あぁ、ラキが折角作ってくれた朝ごはんが・・・。

「朝から盛大に吐いているね」

 頭上から声がしたので顔を上げると、黒い短髪に垂れ目な男性が立っていた。
 見おぼえないな、この顔。

「誰ですか、あなたは」
「おっと、自己紹介が遅れたね。僕は福田龍之介」
「ソラです。この辺りじゃ、そんな名前聞いたことないですけど・・・」
「何を言っているんだい?君も同じような名前だろ?」

 彼はそう言った。
 え?同じような名前って?

「あの、一体なにを・・・」
「晴太 空」

 そう言っていきなり僕のことを指差してくる。

「それが君の名前でしょ?」
「はぁ?」

 彼は一体なんなんだろうか。
 僕は誰かに苗字なんて名乗った覚えはないんだけど。
 そもそも覚えてないし。

「ふふ、研究所の近辺に住んでいた人の顔と名前は暗記しておいたからね」
「研究所って、あの、なんの話してるんですか?」
「なにって、もしかして君・・・」

 急にズイッと顔を寄せられて僕はたじろぐ。
 な、なんなんだ?

「あぁ、君もしかして記憶喪失かい?」

 もしかしなくてもそうだよ!
 と、脳内で反論する。
 しかし、それは口にしない。
 その時、頭がズキンと痛む。

『生きたい?』

 そう語りかける声。
 あぁ、そうだ、この世界に来る前か来た後。
 朦朧とする中で、聴いた声。

「もしかして、どこかで会ったこと・・・」
「やっと思い出したか」

 そう言って優しく微笑む。

「命の恩人を忘れるなんて、ひどいじゃないか。頭から大量に血を流す君をこの町の適当な家まで運ぶのに苦労したよ」
「その節はどうも。それで、結局何の用なんですか?」
「クールだねぇ。今日は君に見せたい物があってね」

 そう言うと、スマホを見せる。
 へぇ、この世界では初めてみた。

「あの、それは?」
「前に君を助けた場所で見つけたのさ。雨で水没してたけど、さっきなんとか直ったからね。渡しておこうと思って」

 そう言って僕に投げて渡す。
 慌てて僕はそれをキャッチした。

「それじゃ。また縁があったら会おうね」
「はぁ・・・分かりました」

 福田さんが立ち去るのを見送ってから僕はスマホに目を向ける。
 久しぶりに持ったような気がする。
 というか、これは動くのか?
 僕は恐る恐る電源を付けた。
 次の瞬間、画面が光る。
 それは画像フォルダだった。
 それを見た瞬間、背筋が凍る。
 様々な情景が、脳内を巡る。

 笑う美少女。       僕をからかう小学生(?)
     僕を軽く叩くデント      笑い合う4人
   裏山の秘密基地       柵から落ちそうになるデント
           隣町で迷子に       電車の中で居眠りしてイタズラ書きされるデント
        頭から血を流す僕       立ち尽くすデント
 ・・・違う。伝斗。椿。時雨。
 僕の大事な友達。
 あぁ、なんで忘れていたんだろう。
 僕の名前は、晴太 空だ。


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