複雑・ファジー小説

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スピリットワールド【合作】
日時: 2017/11/03 17:10
名前: 弓道子&日瑠音&凜太郎&雅 (ID: LCLSAOTe)

この作品は合作です!

こんにちは、あるいははじめまして!
雅と申します! 今回は弓道子さん、日瑠音さん、凜太郎さんとともに合作という形で、この物語を書いていきます
読んでくださる方も含めて、みんなで楽しんでやっていきたいです!
よろしくお願いします!                               雅

どうも、最近転んだだけで骨折した凜太郎です!
初めての合作で変な部分もあるかもしれませんがよろしくお願いします。
                           凜太郎

こんにちは、日瑠音と申します!
私も初めての合作でとても緊張してますが、よろしくお願いします!
日瑠音

遅れてすみませんでした…
弓道子です!! もう迷惑かけんよう頑張るので
みなさん 温かい目で読んでください!

弓道子


〜目次〜

登場人物

空編  >>001>>003>>006>>010>>014>>017>>019>>021>>024>>026>>028>>030>>032>>034
    >>036>>038>>040>>042>>044>>046>>048>>050>>052>>054>>056>>058
    >>060>>062>>064>>066>>068>>070>>072>>074>>076>>078>>080>>082
    >>084>>086>>088>>090>>092>>094>>096>>098>>100>>102
    >>104>>106>>108>>110>>112>>114
時雨編 >>005>>009
椿編  >>004>>008>>012>>016>>018>>023
伝斗編 >>002>>007>>011>>013>>015>>020>>022>>025>>027>>029>>031>>033>>035>>037
    >>039>>041>>043>>045>>047>>049>>051>>053>>055>>057>>059>>061
    >>063>>065>>067>>069>>071>>073>>075>>077>>079>>081>>083>>085
    >>087>>089>>091>>093>>095>>097>>099>>103>>105>>107>>109
    >>111>>113>>116>>118

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.39 )
日時: 2015/11/30 15:59
名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: KNtP0BV.)


俺は平和に町を歩いていた。
レトロな雰囲気の住宅街とか、にぎわう市場とか。
ちょっと、野原みたいなところを歩いていただけだ、何も悪いことはしてない。
……何で今、戦争に巻き込まれてるんだーッ!

街まで来て戦争、しかも俺観光に来たから武器も何も携えていない。
強いて言うなら、元の世界から持ってきたナイフ(錆びていたのをノームが研いでくれたらしい)ぐらい。
まさか、丸腰で戦えと? 無理無理。
というわけで、いつも通り、高いところへ。
うむ、ここは森じゃないから背の高い木がないな。
高いところには隠れられない。却下。
どうしたものか。
その瞬間、耳の横を何かが通り過ぎた。
間違いなく、刃。俺は幸運にも耳を切った程度で済んだが、次はどうか分からない。
その兵士が誰かの確認できないまま適当にその兵士を巻くように走っていると、
足元を気にしていなかった俺は、躓いた。

「わ、ぶっ」

そのまま近くの茂みに顔面からつっこむ。
いてて、まあ殺されるよりましだけど、今のかなりダサい逃げ方だよな。
立ち上がったとき、聞き覚えのある声が聞こえた。

「うぐぁあッ!?」
「…ッ!」

間違いない、ソラの声だ。
向こうに見える、白い髪。2本の刀。
そして、その相手をしている黒髪は。

「かわされたか」

サラマンダー。
俺の常識の欠けた頭で必死に考える。
サラマンダー、革命軍のリーダー。炎をまとったでかい剣で戦っている。
ソラ、元剣道部の主将。県大会優勝経験のあり。
そして俺、弱い。つまり、俺の出る幕じゃないよな! 隠れていよう!
……さすがに言い訳にもほどがあるか。でも事実だぜ。
そんなわけで、少し近いところで、木陰に隠れる。

「まさかまた会うなんてな」
「ん? 会ったことあったっけか?」
「……一昨日の戦地で会ったよね?」
「悪い。真面目に覚えてないんだ」

……あのポンコツサラマンダー。一昨日のことくらい覚えておけよ。
白い髪なんて珍しいのに、本当に人間に興味がないのか、何なのか。
って言うかあの二人、接触があったのか? 一昨日ってことは……あの夜か。
そういえば、あの時点でかなり強そうだったもんな、空。
あれ? もしかしてヤツはずっと前からこの世界にいる、言わばそっくりさんってヤツ?
だとしたらかなり俺が勘違いしてることになるけど……ま、いいか。
そんなくだらないことを考えていたら、俺の頭上に刀が舞った。
うわ、近距離って危ねー! 見つかったか!?

「えッ……?」

サラマンダーは驚いた顔をした。
ソラが刀を投げたことに、ではない。ソラの後ろに俺がいることに気づいたのだ。
もし彼が今周りに構わず叫べる状態だったら、間違いなくこういうに違いない。
「お前なんでここにいるんだ、バカ!」ってな。
当然、ソラはその隙を逃さなかった。

「サラマンダーッ! 危ないッ!」

お前が危ないだろ、アホ! ……サラマンダーの金色の目がそう言っている。
そうですね、でも俺戦いに来たんじゃなくて、巻き込まれただけなんで。
ソラはすばやく振りかぶった。
あの軌道は、あの手つきは、あの踏み込みは……面。
そんなこと考える間もなく、ソラの刃はサラマンダーを捉えた。
サラマンダーの肩が赤く滲む。
すぐそばの地面に刀が突き刺さる。
サラマンダーはもちろん、ソラも相当の体力を使ったのか、わずかに動作が鈍い。
今、俺がこのナイフで仕留めれば、いや、でもソラは……。
足が、動かない。
今俺が空を捉えるのは、容易い。でも、俺はきっとソラにそんなことはできない。

ふと蘇る、鮮やか過ぎる光景。
まだ髪の黒いソラ。彼の頭部から流れる、鮮血。
かすかに動いた唇。
加害者の俺に、被害者の彼の声は聞こえない。

「リーダーッ!」

ノームの声だ。
一体どれだけタイミングよく来るんだよ!
今、俺がするべき行動は一つ。
ノームの拳を、なんとしてでも、止める。
あっ、無理だ、止めるのは無理。せめて、軌道をそらす。
特に無計画に飛び込んだ俺は、ソラを突き飛ばすことだけを考えて、手を伸ばした。
驚いたノームは、狙いをはずし、その拳は間違いなく俺の肩にヒット。
俺はその力を受け流すようにゴロゴロと転がった。
まあ、ここまではある程度計算していた。よかった、俺の肩が砕けなくて。

「トライデントさん!?」
「伝斗だって……」

幸い、つっこむくらいの余裕もある。
少し肩を回してから、たった一つの計算ミスに気づく。

「あれ? 俺のナイフは?」

そう、俺は、ナイフを握ったままソラに突っ込んだ。
そしてナイフは、ソラの腹部に。
俺が刺した?

「ソラ、大丈夫か? 大丈夫……じゃないよな」

返事がない。まさか、死んでないよね?
その間にもノームはサラマンダーを担いでいる。

「……下ろせ、俺は一人で歩ける」
「リーダー、何やってるんですか 私がいなかったら、危ないところでしたよ」
「うるさい、このくらいの傷ならぜんぜん余裕だ」

……あいつ、まだあんなこと言ってるし。
俺もソラを担いで、2本の刀を回収する。

「おい、伝斗 そいつどうする気だ」
「つれて帰る 少し話がしたいし 別に手当てぐらいならいいじゃん?」
「……北の丘の拠点に行く、あそこならベッドが3つあったはずだ シルフも後で呼べばいい」

なに、ベッドが3つ!?
ついに俺もサラマンダーに添い寝しなくていいんだな! って言うかそこがダメでも前の拠点とかもあるし。

「私が運びましょうか?」
「ちょうどいい、俺は一人で歩ける」
「リーダーは安静です」

サラマンダーは頬を膨らませた。子供か。
せっかく街まで来たのに、ろくに何も分からなかった。
でも、とりあえず、今はソラの無事……あ、あとサラマンダーの無事が優先。

……ソラ、今度こそ俺、ちゃんと謝るから。

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.40 )
日時: 2015/11/30 17:20
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

 いつからだろう、痛みを感じなくなったのは。
 いつからだろう、完璧を求めたのは。
 分からない、分からない。
 でも、痛いんだ。
 久しぶりに痛みを感じたようだ。
 それは身体的なモノなのか、精神的なものなのか。
 僕には、分からなかった。

−−−

 ゆっくりと目を覚ます。
 戦地で意識を失ったはずなのに、気付けば目の前には木でできた天井が広がっていた。

「・・・・・・が・・・・・・だから・・・・・・」
「・・・も・・・・・・よ・・・・・・」

 扉の向こうから話し声が聴こえる。
 その声には聴き覚えがある。
 サラマンダーと、デントだ。
 僕は辺りを見渡し、何か武器になるものを探した。
 離れた場所に刀を発見した。
 あれは僕のものじゃないか。
 ということは、今僕は捕虜になっているということか。
 それなら逃げなければ。
 僕は静かに体を起こし、刀を手に取った。
 腹部がまだ痛むが、今は文句を言ってられない。

「あれ、ソラ・・・目を覚ましたのか。あのさ・・・」

 その時、デントが入ってきてしまった。
 僕の脳内で黄色信号が灯る。
 マズイ、いや。コイツはたしかかなり弱かったはずだ。
 むしろ、サラマンダーとか巨人に見つかることに比べたら百倍マシだ。
 僕は刀を鞘から抜く時間も惜しかったため、渋々そのままの状態を首元にぶつけた。

「いってぇ!何すんだよ!?」

 デントが抗議するがかまってられない。
 僕は開いたままになっていたドアから駆け出そうとした。
 直後、鋭い痛みが走る。

「がぁッ・・・?」

 その場に倒れてしまった。
 顔を上げると、デントが心配した様子で近くに来ていた。

「ソラ。大丈夫か?お前、もしかしてあの時のことまだ・・・」

 そう言ってすまなそうな顔をした。
 待って、あの時のことって?

「あの時は本当にごめん。まだ、謝ってなかったよな」
「いや、ごめん。あの時って?なんの話?」

 僕が率直に質問をすると、彼はキョトンとした顔をした。
 直後、茶化すようにヘラヘラと笑った。

「何言ってるんだよ。ほら、前に椿と時雨がさ」
「ツバキ・・・って、花の椿?綺麗だよね。時雨は、時々降ったりする雨のことかな?」

 僕が知ってる限りの情報で聞いてみた。
 すると、彼は目を見開いた。

「何言ってるんだよ・・・あ、もしかしてあれか?記憶喪失とかの演技してるのか?上手いなぁ。あやうく騙されかけたよ」
「演技っていうか、そうなんだけど。ごめん、何も覚えてないんだ」
「へ・・・?」

 彼は真顔でフリーズした。
 いわば静止画像みたいな感じで。
 あれ、どうしたんだろう?
 そう思っていた時、いきなり肩を強く掴まれた。

「えっと・・・?」
「じゃあ、じゃああの時のことは!?ほら、俺と二人で裏山に出掛けた時のこととか、あと4人で自転車で隣町まで出掛けたこととか!」
「待ってよ。落ち着いてってば・・・ホントに覚えてないんだって。えっと、僕と君は友達だったのかな?」

 僕の質問に彼は愕然とした表情を浮かべた。
 僕の肩を掴んでいた手はスルリと離れた。

「その、もう行ってもいい?怪我の治療、ありがとう」

 とりあえず感謝の言葉だけ述べて僕は部屋を後にした。
 名前を呼ばれた気がしたが、気のせいだろう。

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.41 )
日時: 2015/12/05 11:11
名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: KNtP0BV.)


「サラマンダー、あとシルフも。お前らはまだ安静。
絶対に動くなよ いいか、動くなよ!!」
「「ええーッ!」」

俺が念を押すと、二人の声が部屋に響いた。

「なんでぇ!? もう僕元気だよぅ!」
「口だけはな」
「俺だってこれくらいの傷ならまだ戦える!」
「腕上がらないヤツに何ができるって言うんだよ!」

まったく、こいつらは本当に怪我人かよ! 口ばっか達者!
心底あきれていると、ノームが部屋に入ってきた。

「騒がしいですね、
仮にも負傷しているんだから静かにしてください」

二人はふくれっ面のまま「はーい」と返事をした。
うん、ノームがいてよかった。俺一人じゃとても面倒見切れない。

「……ところでトライデントさん、ご友人の看病とかは、いいんですか?」
「あっ、そうだった。俺そろそろ行くわ」
「俺をおいていくな 暇すぎる」
「はあ? 無理に決まってるだろ シルフとでも遊んでれば(怪我人だけど)」
「そーだそーだ、お兄ちゃんは僕と遊ぼ!」
「……ちぇ」

サラマンダーは不満そうに頭から布団を被った。
お前、怪我してからなんとなく動作の一つ一つが可愛くなってるぞ?
こういうの、何て言うんだ? 幼児退行……?
……なんか違う気がするから黙っておこう。

「ハイハイ、あとでちゃんとお前の面倒も見てやるよ」
「……早くしろよ」
「はいはーい あとでなー」

まったく、子供なんだか何なのだか。
ソラのいる部屋をドアをそっと空けると、彼はゆっくりと立ち上がっているところだった。

「あれ、ソラ……目を覚ましたのか。あのさ……」

空はこちらを睨んだ。
何も言わずに立ち上がると、躊躇なく鞘を振り下ろした。

「いってぇ! 何すんだよ!?」

喚く俺にかまわず、空はスタスタと部屋を出て行く。
……やべぇ、ちょっと危なかった。ばれるかと思った。
ドキドキびくびくしながら空を追うと、急に彼は崩れ落ちた。

「がぁッ……?」
「ソラ。大丈夫か?」

———そんなこと、お前に言う権利なんてないだろ———。
じわじわとあのときの光景が浮かび上がってくるようで、吐き気がする。
ソラ、お前、もしかしてあのときのことまだ……。

「あのさ……あの時は本当にごめん。まだ、謝ってなかったよな」

さらっとその言葉が出たことに、自分で驚いた。
何今更言っちゃってんの? なんて嘲ってる自分がいることも否めないが。

「いや、ごめん。あの時って? なんの話?」

きょとんとするソラ。
俺の頬が少し引きつった。作り笑顔に必死だ。

「……何言ってるんだよ。ほら、前に椿と時雨がさ」
「ツバキ……って、花の椿? 綺麗だよね。時雨は、時々降ったりする雨のことかな?」

何言ってるんだよ……。
何そのボケ。笑えない。まじめで勤勉なソラらしいといえば、そうだけど。
あ、もしかしてあれか? 記憶喪失とかの演技してるのか?
上手いなぁ、あやうくだまされかけたよ。本気にしたじゃん。

「演技っていうか、そうなんだけど。ごめん、何も覚えてないんだ」
「へ……?」

嘘だ。嘘だ。
笑顔を保つことも忘れて、呆然と彼を見つめた。
嘘だろ? 何だよ、それ。
だったら、そんなこと……俺の決心はどうなるんだ?
俺はソラの肩につかみかかった。

「えっと……」
「じゃあ、じゃああの時のことは!? ほら、俺と二人で裏山に出かけたこととか、あと4人で隣町まで出かけたこととか! あと……」

何ムキになっちゃってんの?
……頭の奥がすっと冷えて、伝えたいことを見失った。
酸欠の金魚みたいにパクパクしていると、空は冷たく言い放った。

「その、もう行ってもいい? 怪我の治療、ありがとう」

こんなときでも律儀に礼を言っていく。やっぱり、ソラだ。
呼び止めることもできずに見送りながら、ふと、恐ろしい考えが頭をさえぎる。
もし———親しいと思っているのが、俺だけだったら?
ソラにとって俺は友達じゃないとしたら?
彼が俺を見捨てたとしたら?
……怖い。親しいことは、怖い。
相手を信用すればするほど、自分が弱くなる。
人はいとも簡単に裏切る。俺も、ソラも、誰であっても。
仲間意識は、我が身を滅ぼす。
もう十分分かっているだろう、そんなこと。
早く踏みとどまらなくちゃ、自分が傷つかないうちに。

———母さんのようになってしまう前に。


ーーーーーーーーーーーーー


「伝斗」

サラマンダーが部屋から顔を出した。ノームも見ていたらしい。
さりげなく覗き見してるじゃん、こいつら。
サラマンダーにいたっては、何アイツ逃がしてんだよ、って顔してる。
もともとずっと捕らえておくつもりもなかったんだけどね、俺は。

「ところで、私が作った刃のない刀、役に立ちましたか?」
「ああ、あれね。うん、すごくよかったよ 俺も見分けがつかなかったし」
              ・・・
……俺はタンスに隠しておいた本当のソラの刀をを取り出した。

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.42 )
日時: 2015/12/05 20:02
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

 なんとか拠点を脱出し、無事に森の中に姿を溶け込ませることができた。
 とりあえず刀の無事を確認するために、僕は鞘から刀を取り出した。
 直後、戦慄する。
 刃が、ない・・・?

「そん・・・な・・・」

 みると、自分の手が震えていることに気付いた。
 咄嗟に手で掴んで押さえる。
 仕方ないことなんだ。
 僕にとって、この刀は、僕が生きる意味の大部分を担っている。
 この刀がなければ、僕はただの『完璧を追い求めるだけのただの少年』になってしまう。
 ん?あれ?僕って完璧になりたいんだっけ?
 それは、まぁいいか。
 とにかく、この刀が使えなければ、僕は役立たずだ。
 記憶もない、何もない僕にとって、これは数少ない僕の長所ともいえる。
 この時代では、賢くても、なんでもできても意味がない。
 強くなければ、何も守れないんだ。
 なのに・・・それなのに・・・・・・。

「許さないッ・・・」

 体は動く。腹の傷は心配だけど、見た所内臓に支障はなさそうだし、傷さえ開かなければ大丈夫だろう。
 心の準備もできている。やる気も十分。殺る気も十分。
 あの刀は国の所有物と言っても過言ではない。
 聞いた話では有名な刀職人が作った代物らしい。
 それをあんな価値も分からないクズ共に渡すなんて、僕は馬鹿だ。
 でも、まだ間に合う。
 動け、体。今こそ、動く時だろう。
 そこで、今自分が武器を持っていないことに気付く。
 あぁ、やぱり馬鹿だな、としゃがみこんだ時だった。

「見回りめんどくせーなー」
「侵入者なんて、そういないだろうにな〜」

 見回りをしていた男二人がこちらに歩いてきたので、咄嗟に木の陰に隠れた。
 見れば、その二人はそれぞれ刀を所持している。
 やった、と思った。
 僕は足元にあった大き目の岩を手に持ち、二人の背後に近づく。
 そして、一人の後頭部にガツンッとぶつけた。
 その男は倒れた。

「侵入者かッ!」

 刀を抜こうとした男の顎を蹴りぬく。
 顎を揺らされ、男は倒れた。
 生かしておいてもこちらにメリットはないので、頭を岩で押しつぶす。
 念のため、最初の男も。
 そして刀を回収した。
 刃を見ると、少し安っぽいし手入れもちゃんとできていない。
 こんなのばかりな軍団の手に自分の刀がいってしまったなんて、泣きだしてしまいたいくらいの醜態だ。
 でも、使い捨ての刀はこれくらいで十分だ。
 切れ味が悪くても、力で押し切れば楽勝だし、長く痛めつけることができるからね。
 僕は刀を腰に提げ、拠点に向かい歩を進めた。

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.43 )
日時: 2015/12/13 22:12
名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: KNtP0BV.)



鋭くとがれた刃。くすみ一つない刀身。
なるほど、昔からこだわるソラらしい刀だ。
もっとも、今は彼が俺の知っているソラかどうかも怪しいが。

「伝斗、早く寝ろ お前が寝ないと俺も寝れない」
「先に寝ればいいじゃん」
「嫌だ。怖い」

サラマンダーの一言に思わずふきだしそうになる。
必死に笑いをこらえているが、サラマンダーにはバレているようだ。

「怖いって。怖いって何だよ 怖いって」
「怖いものは怖い そのまんまの意味だろ」

子供かよ。
コイツ怪我してからいろいろおかしい。
あれ? でも怪我する前もおかしいといえばおかしかったっけ?
でも、これでも革命軍のリーダーだろ。

「うるさい、リーダーでも何でも怖いものは怖い。
寝るということは、一番無防備になる
いつ攻められるか分からない いつ殺されるか分からない
だから寝るのは怖い できるなら寝たくない」

? よくわからないが、とにかくこいつがビビリってことでいいのかな?

「ビビリじゃない。俺は強い。
敵が多いだけだ」
「ああ、国王軍? あれは仕方ないだろ
大丈夫だって、お前人望圧そうじゃん」
「人望なんてない 革命軍の中でも俺を嫌うヤツは多い。
そもそも俺みたいな混血を受け入れるやつは少ないんだよ」
「……」

よくわからんが、なんか、めんどくさい。
たかが怪我したぐらいでいじいじしすぎでしょ。

「よくわからないけど、落ち込むなよ!
ほら、俺お前いいヤツだと思うし」
「……寝る」

寝るんかい!
この流れで寝る!? 寝ちゃうの!?
……って言う間にも、もう寝息を立てている。速い。
寝るのが怖いって、なんなんだよお前。マジ意味不明。
そういえば親とかっていないのかな。
あ、親の後次いで何とかって言ってたな。
死んだのか……まあ、この状況だしな。

「親いないなら、俺と仲間だな……」

もっとも、俺の場合死んでないけどね。
こんなこと考えてる場合じゃないか。俺も早く寝なきゃ。
ソラの刀を、少し迷ったのち、近くに置かれていた大袋につっこむ。
中に硬いものが入っていたようだが、暗くてよくわからない。まあ、いいよね。
この刀、まだしばらく返すつもりはない。
明日、これを持って町にいく。まだ聞きたいことは山ほどある。
忘れたって、何だよ。ついにお前まで俺の存在を否定するわけ?
隣町での冒険も、裏山の秘密基地も、全部忘れたって。
あの日傷つけたことも、手を取ってくれたことも、忘れたって言うのかよ。

「突き放すんだったら、最初から救ってくれなければいいのに……」

ダメだ、ちょっとナイーブになる。泣きそう。
……ああ、もう、なんて言うか、全部サラマンダーが悪い!
お前がなんかグチグチしてるから俺もマイナス思考じゃん! もう寝る!
サラマンダーから布団をひったくって、頭から被った。
……やっぱりこの布団は、狭い。


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