複雑・ファジー小説
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- スピリットワールド【合作】
- 日時: 2017/11/03 17:10
- 名前: 弓道子&日瑠音&凜太郎&雅 (ID: LCLSAOTe)
この作品は合作です!
こんにちは、あるいははじめまして!
雅と申します! 今回は弓道子さん、日瑠音さん、凜太郎さんとともに合作という形で、この物語を書いていきます
読んでくださる方も含めて、みんなで楽しんでやっていきたいです!
よろしくお願いします! 雅
どうも、最近転んだだけで骨折した凜太郎です!
初めての合作で変な部分もあるかもしれませんがよろしくお願いします。
凜太郎
こんにちは、日瑠音と申します!
私も初めての合作でとても緊張してますが、よろしくお願いします!
日瑠音
遅れてすみませんでした…
弓道子です!! もう迷惑かけんよう頑張るので
みなさん 温かい目で読んでください!
弓道子
〜目次〜
登場人物
空編 >>001>>003>>006>>010>>014>>017>>019>>021>>024>>026>>028>>030>>032>>034
>>036>>038>>040>>042>>044>>046>>048>>050>>052>>054>>056>>058
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>>084>>086>>088>>090>>092>>094>>096>>098>>100>>102
>>104>>106>>108>>110>>112>>114
時雨編 >>005>>009
椿編 >>004>>008>>012>>016>>018>>023
伝斗編 >>002>>007>>011>>013>>015>>020>>022>>025>>027>>029>>031>>033>>035>>037
>>039>>041>>043>>045>>047>>049>>051>>053>>055>>057>>059>>061
>>063>>065>>067>>069>>071>>073>>075>>077>>079>>081>>083>>085
>>087>>089>>091>>093>>095>>097>>099>>103>>105>>107>>109
>>111>>113>>116>>118
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.94 )
- 日時: 2016/04/01 16:17
- 名前: 凜太郎 (ID: eldbtQ7Y)
僕たちは、その日のうちに町を出た。
ラキは我が家の全財産と2,3着の着替え。僕は刀だけ持って。
軍服は置いて来た。だってあれは、国王が僕にくれたものだから。
とにかく人通りが少ない道を選び、途中で拾ったフードでトレードマークの白髪も、顔も隠して、僕たちは城下町を脱出した。
その後はしばらく歩いた後で馬車を発見したのでそれに乗って近くの村まで運んでもらった。
田畑が広がる少し小さな村についた時には、日は沈み辺りが暗くなる時間だった。
「ふぅ・・・・・・かなり暗くなっちゃったな。こんな時間に来たら迷惑だろうね」
「どうなんだろう。でも寝静まるような時間でもないし、大丈夫じゃないかな」
そんな会話をしながら村に入った時だった。
「おお!ロブ。帰って来たのか。今日の収穫はどうだった?」
村人の一人が僕達に寄ってくる。
僕は咄嗟に彼女の前に立って刀を抜き構えた。
その時別の男がランタンのようなもので僕たちの姿を映しだした後でその男の頭を叩いた。
「馬鹿野郎!旅人じゃねえかよ。すいませんねコイツ眼鏡してないと目悪いもので。村長〜。旅の人が来ましたぁ〜」
男がそう叫ぶと、村の中で一番大きな建物(と言っても城に比べれば雲泥の差である)から出てきた気難しそうな初老の男は叫んだ男からランタンをひったくると僕の顔を覗きこむ。
するとすぐに眉間にしわを寄せた。
「子供二人?こんな時間になんで外を歩いているんだい?」
「僕達は・・・・・・わけあって町を出てきました。良ければ、この村に置いてくれませんか?」
「わけありか・・・・・・わしの家に来い。理由を聞こう」
初老の男についていき、僕たちはその大きな家に入る。
お茶を出してもらったがすぐには手を出さない。毒が入っている可能性があるからだ。
ラキもそれを分かっているのか飲まずに、キッと村長の顔を見ている。
村長は自分にもお茶を入れて飲んだ後で、口を開く。
「君達を村に招き入れることは容易だ。ちょうど今一軒空き家があるからそこを使えば良い」
「ありが・・・・・・」
「しかし、さっき言っていたわけというものをきちんと聞かせてもらおうか」
僕とラキは顔を見合わせる。
しかし、ここで嘘をつくわけにもいかない。ばれれば、下手すれば村を追い出されるからだ。
なので僕は、自分が国王軍の兵士でラキは少し前に死んだ中将の娘であること、国王が酷い人で自分達に被害が来る前にここに逃げてきたことを細かく正確に話した。
全てを聞き終えた村長は二度大きく頷いた後で言った。
「国王が酷い人であることで、君はなぜ自分に被害が来ると思ったんだ?」
なるほど。彼は僕を試している。
ただ裏切られたからと身勝手に町を出てきたと思っているのだろう。
僕は姿勢を一度直し、静かに喉を震わせる。
「あの人は・・・国王は、あくまで城があるあの町だけを重要視しており、その他の村や町などは、最悪潰れても良いと思っています」
「ほう・・・・・・」
「そうすれば、いずれは全ての村や町は枯れ果て、潰れてしまうでしょう。そうすれば、次は城下町から自分のためだけに食料などを搾り取ろうと考えていると思います」
「その考えでは、いずれこの村も潰れるという結論に至るが?」
「いえ、この村は城にも近いですし規模も大きい方なので、少なくとも潰れるのは一番遅いでしょう。後のことは細かくは考えていませんが、とにかく国王から離れたかったので」
「なるほどな。それで恋人を連れて駆け落ちというわけか」
同じポットから出したお茶を村長がゴクゴク飲んでいたので安心してそれを味わっていた僕はそのお茶を空気中に吹き出す。
茶色のしぶきが家の中を照らす裸電球に照らされキラキラ光る。
あら綺麗。
「ゲホッゲホッ!恋人って・・・・・・え?」
「え?って、君達は恋人じゃないのか?」
「ち、違いますよ!」
多分今僕の顔は耳まで赤くなっていることだろう。
ラキも顔を赤くして俯いている。
「はっはっは。若い者はからかうと面白いものだなぁ。冗談だ、気にするな」
「気にしますよ・・・・・・」
悪趣味なおじいさんだ。とはいえ、こんな村だと僕達みたいな青春まっただ中という年齢の者は少ない、下手すればいないだろう。
そう考えればこうして若者をからかうという一種の娯楽を楽しませてあげられるのも今の内なのかもしれない。
いや、娯楽にするなよ。
「ところで、そこのお嬢さんは魔法は使えるのかな?」
突然話しかけられたラキはビクッと肩を震わせた。
まぁ年下の僕がずっと話してしまったので彼女に喋るターンは今まで回ってこなかったので、てっきり話すことはないだろうと思っていたようだ。
でも普通はむしろ年上の彼女が話すべきだと思うが、そこは割愛。
「えっと・・・・・・はい、使えます」
「ほぉ。あの城下町の人間は全員魔法が使えると聞いていたが本当のようだな」
グレンさんは使えなかったみたいだけどね。
しかしそれは口に出さない。
「たまに例外もいますけどね・・・・・・」
「そうか。まぁいい。君は農作業などの力仕事はできないだろうから、子供達に魔法を教えてやってほしい。この村で魔法が使える者はいなくてな」
「そうなんですか。良いですよ」
ラキは朗らかに微笑んでそう答える。
もし彼女が魔法使えなかったら何させられてたんだろう。この村の看板娘とかかな。
「とはいえ、歓迎するよ。二人とも。じゃあ他の者達にも早速紹介を・・・・・・」
「ロブが帰ってきたぞ〜!今日はなんとでっかいドラゴンを3匹も狩ってきたぞ!」
外から声がするので、村長はやれやれといった様子で家を出る。
ていうか、ちょっと待て。ドラゴン3匹を『狩って』きた?『買って』きたの間違いじゃないのか?
僕も慌てて村長家を飛び出した。
そこには首の無いドラゴンを担いだゴツイ男が一人、血に染まった斧を担いでそこに立っていた。
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.95 )
- 日時: 2016/04/01 18:10
- 名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: BnjQrs2U)
俺は空とラキの家にいた。
いや、空とラキのものだった家って言うのかな?
「や、やめろよ伝斗。中に入るのは、さすがに……」
「えー、ここまで来てそれ言う? サラマンダーもっと空気読めよー」
「そうだよー。僕が何度も確認して鍵まで壊したのにー」
俺とライヒェが遠慮なく侵入しているのに、サラマンダーはまだ玄関で渋っている。
まったく、踏ん切りのつかないヤツだ。
ライヒェはライヒェで勝手に物色してるし、俺も自由に動いてる。
「やっぱりあんまり残ってないねー」
「うん……本もねぇや」
「本? 読むの? 小説とか?」
「バーカ、魔法の勉強だよ。使えたほうが便利だろ」
ライヒェは、ラキの部屋から服を引っ張り出してファッションショーしてる。
サイズ大きすぎてぶかぶかだけど。
「なあライヒェ。本当に二人って出てったんだよな?」
「じゃないの? だって荷物全然ないし」
「じゃああいつらの行き先とか知らねぇの? 後つけたとかさ」
「……ううん、どこ行ったかはぜんぜん知らなーい」
一瞬手を止めたが、まったく悪びれた様子もない。
ライヒェのことだし、仕方ないか。
それぞれ(サラマンダーを除く)見たいもの見て満足したようなので、帰り際に適当に荒らしておいた。
まあこんなにたちが悪いのは向こうの世界でも俺ぐらいしかいなかったし、もし帰ってきたら気づくんじゃね?
みたいな。
サラマンダーはもう外に出ていた。
相変わらず臆病だなー。こんなのちゃっとはいってちゃっと出れば済む話なのにー。
「早く帰るぞ、俺はもうこんなところにいたくない」
「はいはーい。でも惜しかったなー、魔法の本」
「俺のがある」
「サラマンダーのところに禁断魔法の本ってある?」
「馬鹿か。
そんな本、学者みたいなヤツのところにしかあるわけないだろ」
あっ、そっか。
そうだよね、興味本位で真似するヤツとかいたら困るもんねー。
なるほどー、盲点だったなー。
じゃあどこで調べようかな。
「お城とかー?」
「おっ、ライヒェ名案! 早速行こう!
サラマンダー、こないだの鍵!」
「伝斗みたいなヤツに貸したくない!」
サラマンダーの機嫌がすこぶる悪い。
あららー、俺なんかやったっけ?
「お前この前俺のことチビって言ったし。だから嫌だ」
「何だよそれ! 子供かよ!」
流れでそのまま取っ組み合いになる。
いや、サラマンダーが刀抜いちゃってるあたり取っ組み合いで済んでないのかな。
でもさ、コイツ単純だからなんか最近攻撃パターンわかってきちゃったんだよね。
絶対気づいてないし、俺が勝てるようになったから気づかせる気ないけど。
「頑張れ〜」
ライヒェが他人事すぎてちょっとイラッとする。
手伝ってくれればいいのに。
そんなこと考えながら、避けきれなかったふりして上手いことふところに手を伸ばす。
金属の感触があった。
取った!
確信した瞬間、サラマンダーは再び飛び掛ってきた。
しかも、魔法付きで。
炎が俺の指先をかすめた。
「熱っち!」
鍵は綺麗な弧を描くと、小さな水音をたててどこかに消えた。
「あーっ、どうしてくれんだよ。サラマンダーのせいだぞ」
「だからなんだ。もともと俺たちには関係ないものだろ!」
サラマンダーがまだこちらを睨みつけていたが、俺はすぐに目を逸らした。
まったく、付き合いきれない。
彼のほうも唇を尖らせてノームたちのほうへ行ってしまった。
ライヒェはしばらく様子を見ていた。
らしくない少し動揺した口調で話しかける。
「えーとえーと。あ、そうだ。
ねえねえ、“愁い”って何?」
「愁い? 悲しいとか、そういう感じかな」
「悲しい? じゃあ悲しい顔ってことかなぁ?」
「誰が?」
「伝斗が」
ライヒェの右腕が宙を舞う。
それが地面に落ちるまでのわずかな間、二人は呆然としていた。
俺の中で一瞬、すごく嫌な感じが弾けて溢れる。
怒りのような、違うような。よくわからない感情に押された。
「ライヒェ、それ以上言ったらたぶん左腕も飛ぶ」
「……みたいだね」
「悪いけど少し一人にしてくれる?」
「うん、オッケー」
すばやく右腕を拾うと、ライヒェは二回くらい袖の辺りをはらった。
気づいてなかったけど、白色だからさっき盗ってきたやつかもしれない。
ライヒェの姿が見えなくなる前に、俺も歩き出した。
どこにも行き場がない。
仕方ないから、死体処理でもすることにしようっと。
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.96 )
- 日時: 2016/04/01 19:56
- 名前: 凜太郎 (ID: eldbtQ7Y)
日に焼けたのか、少し色黒な肌。黒い髪に鋭い眼光。
僕は無意識に刀に手をかける。コイツ、絶対ヤバい。明らかに他の村人とは違う。
身構える僕に対し彼はドラゴンを下ろし・・・・・・。
「・・・・・・誰かの子供か」
特に表情を変えずにそう言い、僕の頭を大きな手でくしゃくしゃと撫ではじめる。
一瞬毒でも塗られているのかと思ったが、その手に悪意がないことに気付く。
「えっと・・・・・・?」
「・・・・・・(ナデナデ)」
「おぉ。ロブ。その子ともう1人が新しく村に加わった住人だよ」
え、あ・・・・・・この人がロブさんですか!
ごめんなさい!頭の中でヤバいとか怖いとか考えちゃって!
ていうかずっと僕の頭撫でているけどなんなのこの人、子供好き?
「はは、気にしないでやってくれ。コイツ、こんな見た目で子供大好きなんだ」
わーい当たってた〜。嬉しい〜・・・・・・とか言うべきじゃないよね!
困惑する僕をよそに彼はひとしきり撫でまくって満足したのか撫でるのを止め、斧で豪快にドラゴン肉を捌き始めた。
その時、ラキが開け放たれたドアからぴょこんと首だけ出した。
「ソラ君、今のは・・・・・・?」
「さぁ。僕にも分からないよ」
僕は肩を竦めて見せる。
ちなみに髪型はいつも少し乱れていたのがボッサボサになりました。
−−−時間は少し遡り、城の王室にて−−−
兵士の手によって、先ほど僕に逆らった男は死刑台に連れて行かれた。
きっとすぐにでも僕に反抗したあの口が付いた首は斬り落とされるだろう。
全く・・・・・・なぜ人間というものはこうも僕の言う事を聞けないのだろうか。
村が終わる?どうでもいいさ。この町さえ、僕の生活さえ安泰ならば、それで良い。
それにしても、さっきから外がうるさいな。
僕は紅茶を入れてくれてる召使に何をしているのか尋ねてみることにした。
「さっきから外がうるさいようだが、何かしているのか?」
「ええ。どうやら昨日の戦いの際に鍵束が盗まれたらしく、現在城内を探しております」
鍵の束が盗まれただと?
僕は紅茶を落としそうになったが、なんとか堪える。
ここで冷静さを欠くな、考えろ、考えるんだ・・・・・・。
そこで、一人の少年の姿が脳裏に浮かんだ。そうだ、彼なら何か案を出してくれるだろう。
僕は一人の兵士を呼び出し、命令を出す。
「君、ソラ君を今すぐ城に呼んでくれないかな」
「ハッ、分かりました!」
年下に案を求めるのもおかしな話かもしれないが、ソラという少年は特別なのだ。
この国では希少とも言える白い髪を持った少年。15歳にして異例の中将へと出世。親のコネなどではなく、しっかり実力を持った上での出世だった。
グレンが死んだ時、空いた立場に誰か入れようという話になった時、兵士達、特にソラと一緒に戦った兵士たちは彼を中将にするべきだと主張した。
僕だってさすがに多少は否定したが、兵士たちの主張が強く、仕方なく彼に中将という肩書を与えた。
正直、驚いたよ。大人が子供を推薦するのだ。異例中の異例だろう。
中将になってからも、彼は素晴らしい成果を見せてくれた。
彼なら、もしかしたら僕の本性を見せても受け入れてくれるかもしれない。そんなことを暢気に考えていた時だった。
「ソラ君が・・・・・・いない・・・・・・?」
さすがの僕でも、紅茶を落とした。
兵士の話では、ソラはおろかグレンの娘までいないらしく、家を探してみると軍服だけ見つかったという。
あと、なぜか家の中が少し荒らされていたという話も聞いた。
僕はできる限り取り乱さないように深呼吸し、両手をグーパーしてから前を見る。
「命令だ。今すぐソラ君と、グレンの娘を探し出せ。手段は問わないが、命だけは保障しろ」
「はいッ!」
兵士が部屋を出て行ったのを確認してから、僕は横にあったテーブルを思い切りぶん殴った。
なぜだ・・・なぜ人間は皆僕に逆らうッ!
皆黙って僕の言うことを聞いていればいいのに!皆僕に反抗なんかしなければいいのに!
気付けば、僕は爪を噛んでいた。
親がいない寂しさからか、小さい頃からたまにこうして爪を噛んでいた。
精神科の話では、ストレスからくる行為だとか。
「僕に逆らう奴は、皆消えてしまえばいいのに・・・・・・」
僕は椅子の上で膝を抱える。
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.97 )
- 日時: 2016/04/05 13:07
- 名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: BnjQrs2U)
家族がある人が死んだ場合、その家に伝えに行かなければならない。
めんどくさいけど、こういうのもやらなきゃいけないんだよなぁ。
俺は大きく息をついた。
例え魔物彼らがであっても、大抵は知らせを聞いただけで目じりを押さえ、中には号泣する者もいる。
俺の母さんが死んだとき、あの男はむしろ笑みを浮かべたと言うのに。
あげく、その関係をなかったことにしてしまったし。
ああ、思い返すだけで反吐が出る。
「次は、女か……」
年は28。若い上に確か死体でも綺麗な人だったよなと思い返す。
そういう人でも容赦なく死ぬのか。
死は平等って、本当だな〜。
人間の姿をしていて、かつ手の甲とか、足とか、ところどころに鱗のようなものがついていて、
血が半透明の銀。
きっと死んでさえいなかったらすげぇ美人なのに。
一応籍に示されている洞窟を訪ねた。
上から落ちた雫が、足元で細い流れを作っている。
暗くて、じめじめしてて、冷たい。
なんか俺の家みたいで落ち着くなー。
「姉上……ではありませんね?」
奥から、声が響いて、心臓が飛び跳ねた。
水を書き分けるような音、闇から一人の少年が姿を現す。
「どなたでしょう?」
—————
彼は、なくなった彼女の弟らしい。
「姉上が……なくなりましたか」
「うん。
どーする? お前のねーちゃんの死体。別にこっちで燃やしちゃってもいいけど」
「ええ……お願いします」
しばらく黙った後、少年は恐る恐る視線を上げた。
「あの……小生のような者でも、軍に入ることは可能ですか?」
「は? ごめん、もう一回言って」
「小生のような者でも軍に加わることは可能でしょうか……?」
このやり取りを数回交わし、俺はようやく『小生』と言うのが一人称の一つであることに気づいた。
「この体では戦争向きではないとわかってはいますが、それでもお力になりたいのです」
「軍って言うかなんていうか、お前人魚だろ?
革命軍ははっきり言って軍っぽい軍じゃないし、入れると思うけど」
今まで消えそうだったのが、ぱっと光が差したような表情になる。
弟も、姉に似て綺麗な顔立ちだった。
ガラス玉みたいな目とか、銀に近い髪色とか。
ここでは暗いけれど、光を浴びたらよりいっそう輝きを増すに違いない。
「ありがとうございます!」
「いや、別にそういう仕組みってだけで俺関係ないし、礼とかいいけど。
あ、名前教えといてよ」
「名……あの、オンディーヌと申します」
「オンディーヌ、ね。
お前武器とか持ってるの?」
彼は一度闇に姿を消し、銛をもって出てきた。
長さが俺の薙刀と同じくらいで、先に大きな針みたいなのがついている。
なんかちょっと複雑な仕掛けになっているのは、一度刺さったら抜けないようにするためだとか。
「へえ、かっこいいな!
俺も似たようなのもってるし、一緒に戦えそうじゃん」
「……そのようなお言葉、非常に光栄です」
深々と頭を下げるオンディーヌ。
家族は姉と彼の二人きりだとか、本が好きだとか、そんな話題で盛り上がった。
彼の口調が妙に丁寧なのは、書物でしか言葉を得ないかららしい。
そんなことはさておき、なんかこの洞窟があまりにも居心地がよくて、つい長居をしてしまいそうだ。
「俺、この後まだ数件回らなきゃいけないんだよね。
また来るから」
「あ……はい」
ちょっと名残惜しいけど、洞窟を出る。
ずっと薄暗いところにいると、光がまぶしい。
数回瞬きをして目を鳴らすと、ふと前方に人が立っていることに気づいた。
男だ。若そうな。しかも、人間。
その人は真っ直ぐとこちらに向かってきている。
知っている顔だった。
確か、あの名簿に……。
「やあ。杜来……伝斗君、だったよね」
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.98 )
- 日時: 2016/04/05 13:15
- 名前: 凜太郎 (ID: eldbtQ7Y)
さて、僕達には一つの家が与えられた。
前住んでいた家に比べると小さいが、この際贅沢は言うまい。
それに、ラキは意外と気に入っている様子なので、僕がワガママを言っても仕方がない。
ただ一つだけ素晴らしいと思うことがある。
なんと、寝室が一つしかないことだ。
「異世界、万歳・・・・・・」
「あ、見て見てソラ君。暖炉があるよ」
ラキは暖炉を指差して微笑む。
たしかに今夜は一段と冷える。薪は置いてあるし、点けた方が良いだろう。
彼女もそれを察したらしく、薪をいくつか暖炉の中に投げ込み火を・・・・・・。
「待て待て待て待て待て!」
自分でも驚く素早さで火を点けようとした彼女の手を止める。
ラキはキョトンとした様子で僕の顔を見る。
その顔はすごく可愛いが今は冗談にならないことをしようとしていたぞ!
そりゃ前の家には暖炉も無かったので(ちなみにラキの風魔法と火魔法の混合魔法を暖房にしてました)暖炉の使い方なんて普通知らないだろう。
だがしかし、暖炉というものはただ薪を入れて火をつけるだけではすぐに火も沈下し一酸化炭素中毒で死んでしまうのだ。
僕は一度薪を出し、小さいものを下に、大きなものを上にして組み始める。
開閉弁を開き煙突を余熱で温め、ラキに頼んで窓を開けてもらい換気をする。
さぁ、これで準備は整った。
「つきますように・・・・・・」
少し祈りながら火をつける。
薪は燃え、しばらくしてパチパチと音を立てて燃え始めた。
ちなみになぜ暖炉の火の点け方を知っているかって?小説になぜか出てきたんだよ。
「わ、すごい・・・・・・あ、上に毛布あったから、取ってくるね!」
自分があまり役に立てなかったことを気に病んでいるのだろうか。
彼女は窓を閉め、すぐに2階に上がり、しばらくしてベージュ色の毛布を1枚持って来てくれた。
暖炉の前で温まっていた僕は素直にそれを受け取る。
わお、なにこれすごいモフモフだ。僕は無意識に毛布をギュッと握りしめた。
毛布を体に巻いている僕の姿が微笑ましかったのか、ラキはニコニコと僕を見ている。
「温かい?」
「ああ。ラキが抱きしめてくれればもっと温かいかな」
冗談でそんなことを言ってみた。
やれやれ、彼女相手にこんなジョークを言えるようになるとは。僕も成長したな。
そんなことを考えていた時、後ろから彼女が抱きついてくる。
僕の情けない脳みそはそれだけで思考を停止する。
「ふぇ?」
「これで温かい?」
ラキはふにゃりと微笑み、僕の背中に頬を付ける。
鼓動が早くなる。彼女には勘付かれているだろうか。多分、気付いているだろう。
「・・・・・・ラキ」
何か話さないと。僕はそう思って脳みそを働かせる。
僕にとって唯一の才能だった脳みそ。優秀なはずの脳みそを働かせる。
「ごめんね・・・・・・勝手にこんな所に連れてきちゃって」
最初に謝罪が口から零れた。
昔からこうだ。いつも謝るのは僕から。
相手から謝ってきたのは、多分伝斗のやつくらいかな。いや、あれは僕は悪くない。
「ううん。気にしてないよ。この村良い所だと思うし、あの家はお父さんとの思い出が詰まってるから、あそこに住んでると少し辛かったんだ」
ラキの今の表情は分からない。
でも、なぜか微笑んでいると、確信していた。
「ラキ」
僕は体を捻り後ろを見る。
見つめ合う僕達。しばらくの静寂。そして僕は・・・・・・・・・・・・。
ダァンッ!
銃声が響き渡る。僕たちは立ち上がり、窓から外を見た。
そこには、何人かの国王軍の兵士がいた。
「なんで・・・・・・」
「今、国王軍の兵士の一人と国民一人が行方不明である。兵士の方は白い髪を持っている少年だ」
僕は絶句した。国王はそんなにも僕をあの町に縛り付けておきたいのか?
行方不明者は僕が初めてじゃない。僕が知ってる中でも何人か行方不明になった者もいる。
なのに、僕たちの時だけこんなこと・・・・・・異常としか言いようがない。
「なんだなんだ、こんな時間に」
その時村人たちが出てくる。皆寝間着姿だ。
あの人たちが会ったばかりの僕たちのために命がけで嘘をついてくれるかどうか。
荷造りをした方が良いだろう。
そんなことを考えている間に兵士たちが僕たちの説明を終えたらしい。
ばれるのも時間の問題か、と俯いた時だった。
「そんな少年は知らん」
窓の外から聴こえた声に、僕は顔を上げた。
「白い髪なんてこの村にはいねえよ」
「それは本当か?嘘だったらどうなるか分かって・・・・・・」
「ロブ〜お客さんの相手をしてやりなさい」
(ドラゴンの)血に染まった斧を担ぎ、ギロリと兵士たちを見下ろすロブさん。
それだけで兵士たちは怯えて、去っていってしまった。
全く、同じ軍にいたのが恥ずかしくなるくらいの弱虫だ。
って、今はそんなことよりもっと重要なことがある。
僕は家を出て走って皆の所に行った。
「あの、今のは・・・・・・」
「あぁ。いやはや、まさかこの村まで来るなんてな」
「そうじゃなくて、その・・・・・・なんで、嘘をついてまで・・・・・・」
「は?何言ってるんだお前」
男はニカッと笑い、
「この村に住んでいるやつは皆家族!それが、この村の唯一の決まりさ」
この村に来て良かった。心の底からそう思った。
僕の居場所はここにある。ラキがいて、家族のように大事な人達がいて、僕がいる。
僕の人生はここから始まるんだ。仮面も、鎧も、メッキさえ剥がされ、自分を偽ることすらやめた今から、始めよう。新しい家族と共に・・・・・・。
「・・・・・・ソラ」
「は?急にどうしたんだ?」
「僕の・・・名前です」
僕は微笑む。
頬を伝う液体の名前を、心に刻みながら。
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