複雑・ファジー小説
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- 『受拳戦争』
- 日時: 2020/06/10 10:58
- 名前: 四季彩 (ID: EZ3wiCAd)
彩都さんと四季の合作です。
合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。
よろしくお願いします。
スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20
プロット停止のため連載停止 2020.3.17~2020.3.23 2020.6.11~
- Re: 『受拳戦争』 ( No.98 )
- 日時: 2019/07/08 16:31
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: /ReVjAdg)
第十二章 僕たちは『受拳』する 新武っ器の春 五月の五月蝿い五月雨の体育教師 禄でもない奴等が集まる六月の碌でもない戦いと陸の戦い 七月の七竃の大運動会 八月の八派の八策と八課なる課題と血祭りの夏祭り 九苦しみの運動会、九九とざわめ九運動会、九球の九級なる資格九持ち 十大なる十の競技と、十全たる仲間達による、十全な行動と、十重なる競い合いと、十項なる規則と、十二分に楽しむ心、十分に、十極の、十級な、十勝たりえる秋祭り 十一の競技と、十一の遊戯、十一の奥義と、十一の出来事、十一の勝負、十一の勝敗 十二ん十色の戦いと、十二人の戦闘者達、十二色の彩り、十二(とに)かく、強い強者 一から始まる新年と一々煩い人間共、一年中盛り合う世界、一巡しても、変わらない世界、一周しても、変わらない世界 十一回の終わり、十一回の始まり、十一回の敗北、十一回の勝利、十一回の戦闘、十一回の結果、十一回の希望、十一回の絶望、十一回の人生、十一回の、運命、十一回の転生、十二回目の今 十二回目の未来、十二回の希望、十二回の思い、十二回の明日、十二回目の──
3年1組メンバーは全員揃った。いよいよ、次が運命のステージだ。3年1組メンバーの誰もが、日頃より少し固い、どことなく緊張したような顔をしている。
そんな中、三殊は『次はどんな部屋なのだろうか?次はどんな戦いが起きてしまうのか?次は、次は……』と考えていた。
だが、三殊がそんなことを考えていることなど、誰も気づいていない。
ただ一人を除いて、誰も。
「おい、落ち着けよ?」
考え込んでしまい悶々としていた三殊に声をかけたのは、多々良。
「まだ戦うと決まったわけじゃあない」
多々良は多々良なりに、三殊を元気付けようとしていて。三殊はそれを察したから、ほんの少しだけ笑みを浮かべて「ありがとう」と返した。
三殊はまだ、元気いっぱいにはなれない。
だが、多々良の励ましのおかげで、少しは元気になれた気がした。
悩ましい時。憂鬱な時。
一人では苦しい場面でも、励ましてくれる仲間がいるから、歩んでゆける。
三殊の心に、感謝の花が咲いた。
「頑張ろう」
「あぁ。そうだな」
三殊と多々良。
今の二人には、強い絆がある。
そして、絆があるのは二人だけではない。
3年1組メンバー、皆の絆。
それは確かに存在している。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.99 )
- 日時: 2019/07/15 18:29
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: J1W6A8bP)
とある部屋を発見した三殊ら3年1組。彼らは、少し緊張した面持ちながら、心を決め、その部屋に入ることにした。
もしこれが一人や二人であったなら、入る勇気は出なかったことだろう。ただならぬ空気が溢れている部屋だから。
けれど、今は3年1組の皆がいる。
だから大丈夫、と、誰もが思えた。
全員で部屋に入る。
するとそこには、『たった一人で足を組んで微笑む』伊良部が存在していた。
「待っていましたよ?多々良さん?そして皆さん?」
静かに微笑む伊良部に、多々良はジャンプして迫り、パンチを放とうとする。
——そう、多々良には『暴力』という、特殊能力のようなものがあったのだ。
だが、伊良部とて常人ではない。彼は多々良の拳による攻撃を、簡単に受け止めた。さらにそこから、地面へと叩き落とす。そして、多々良の手を足で踏む。
「落ち着けよ、ザコ風情が?」
伊良部は、多々良に冷酷な眼差しを向けながら、そんなことを言った。
踏みつけられている多々良の手が、床にめり込む。
まさかの行動。
圧倒的な強さ。
伊良部の人離れした言動に、多々良はもちろん、3年1組メンバーらも愕然とする外なかった。
それほどに、伊良部は特別だったのだ。
彼はもはや、人間とは思えぬような存在であり。3年1組メンバーらはもちろん、三殊にも、多々良にさえも、理解できる存在ではなかった。
室内が静まり返る。
誰も何も言わないし、呼吸すらまともにできない。3年1組メンバーたちは、それほどに恐怖心を抱いていた。もう少し具体的に表現するなら、得体の知れないものへの恐怖心、というところだろうか。そのせいで、気軽に言葉を発することなどできない状態だった。
そんな中、伊良部は静かに告げる。
「さて、最後です。この試験を突破すれば、貴方たちは晴れて、『文武学園』に入学することができます」
それに対し、三殊は問う。
「試験、とは?」
- Re: 『受拳戦争』 ( No.100 )
- 日時: 2019/07/22 22:21
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: bUOIFFcu)
三殊の「試験とは?」という問いに、伊良部は「試験?あぁ、簡単なことです」と返す。伊良部はそれから、口角を持ち上げ、道端の花のような可愛らしい笑みを浮かべる。
「私を倒すことです」
少年のような可愛らしい笑顔のまま、伊良部は一度手を叩く。
直後。
3年1組メンバーは全員一瞬にしてボコボコにされてしまった。
もちろん、三殊も巻き込まれた。3年1組メンバーは全員痛い目に遭わされ、『地に伏せる』という言葉の似合う盤面となってしまっている。
「……っ」
想定を遥かに超えた素早さに、驚きを隠せない多々良。
伊良部は、驚愕する多々良の前へ、ゆったりとした足取りで移動する。
「今回も無理でしたね?」
伊良部の顔面に浮かぶは、邪悪な笑み。
悪魔のような、黒い笑み。
「くそっ……!」
多々良は激怒し、再び立ち上がる。そして、目の前の伊良部に向かって拳を放つ。気合いを込めた一撃。だが相手は伊良部、そう上手くはいかない。多々良の全力の拳は、あっさりと受け止められてしまった。
「君は何故、私に歯向かう?何故立ち向かう?何故?何故?」
大袈裟に不思議がる伊良部。
「お前みたいな邪悪をこの世から消すためだよ」
多々良は静かに言い放ち、頭突きを放つ——その一撃は、伊良部の顎にクリーンヒット。初めて伊良部にダメージを与えることができた。
予想外の攻撃を受けて苛立った伊良部は、多々良を集中攻撃し始める。もう二度と立ち上がることができないように、と。何度も何度も何度も何度も、攻撃する。不気味なくらい、何度も何度も。多々良は、受け止めようとしたり何とか回避したりしつつ凌ぐ。が、そうしていられるのも時間の問題。体力が尽きれば終わり、と思われた。
——その時、そんな伊良部の背を殴る存在が現れる。
「……?」
伊良部は少し戸惑ったような顔をしつつ振り返る——そこにいたのは、三殊だった。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.101 )
- 日時: 2019/07/29 22:16
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: REqfEapt)
背を弱々しく殴る存在に気がつき、伊良部は振り返る。その瞳に映ったのは、他の誰でもない、三殊だった。
三殊には弱い力しかない。伊良部とやり合うどころか、多々良にさえ勝てないであろうくらいの、非力。にもかかわらず、三殊は伊良部の背に拳を叩きつけ続ける。
そんな、三殊のまさかの行動に、伊良部も多々良も愕然とする。
空気が直前までと少し変わった。
驚きと戸惑いの混じったような空気が、場に漂う。
蚊に刺されたかな?という程度の攻撃に段々苛ついてきた伊良部。ここまでは冷静さを失わなかった彼だが、苛立ちを堪えきれず、ついに三殊に攻撃を仕掛けた。
が、三殊はそれを受け止めた。
しかも、ただ受け止めただけではない。そこからさらに、伊良部に抱き着いていく。
「今だ!多々良くん!」
三殊は伊良部を懸命に抱き締めながら、多々良に向かって叫んだ。
「よくやった!」
多々良は、少し救われた、というような顔で叫び返す。
そして。
両腕を拘束されている伊良部の頭部を、全力で蹴り飛ばした。
その蹴りは、能力を使用しての蹴りであった。それゆえ、威力は常人の蹴りの威力を遥かに超えていて。伊良部の体は、三殊諸共吹っ飛んだ。
だが、多々良は少し違和感を覚える。
——刹那、急に脱力感が襲ってくる。
「……っ!?」
急な脱力感に焦る多々良。
彼はそのまま、脱力感によって倒れ込んでしまう。
蹴った時に負傷したわけではない。もちろん、戦意だってまだある。体力とて、まだ残ってはいるはず。
なのに、みるみるうちに、体から力が抜けてゆく。
これは一体何なのか。
何が起きたというのか。
多々良の心は乱れている。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.102 )
- 日時: 2019/08/05 15:11
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: eso4ou16)
倒れ込んでしまった多々良。
呼吸は何とかできるものの、体を動かしたい気持ちがみるみるうちに消滅してゆく。
「な、何だ……?」
しかも、奇妙な現象はそれだけではなかった。体を動かしたい気持ちが消えてゆくのみならず、指一本すら動かせないようなことになってしまっていたのだ。意味が分からない状況に陥ってしまった多々良は、静かに首に力を加える。すると、首だけは動いた。
多々良は、伊良部と三殊を見る。
三殊も、多々良と同じように倒れてしまっていた。目がガクガクと動き、動揺しているのが容易く見てとれる。
そんな中、伊良部だけが肩を脱力させたまま立ち上がった。
「あ、危なかったなぁ……?あの攻撃を受けていたら、さすがに私でも死んでいたかもしれないなぁ?」
焦ったように、髪を片手で掻き上げている。
多々良は『えっ?どういうことだ?』と思いつつ、伊良部を見る。すると伊良部は返す。
「あれっ?気付かない?なぁに、簡単なことですよ?私は『能力』を発動しただけですよ?貴方と一緒、能力者です」
伊良部のその発言に、『まさか……お前を倒すために手に入れたこの能力と同じ概念を!?』と驚愕する多々良。
「私の能力は今まで誰にも破られたことがない!」
さらに宣言する伊良部。
多々良は「はぁっ!?」と叫びたい衝動に駆られる。が、叫べない。叫びたくて仕方がないのに、大きな声を発する力がどうしても出なくて。
「それもそのはず、何故なら私の能力は『無力』ですから?『どんな力でも無にする』力、それが私の『能力』です!」
邪悪な笑みを浮かべながら高笑いする伊良部。
彼の発言はまだ止まらない。
「更に更にぃ!どんな『力』でも『無力化』するんですよぉ!それはもちろん『筋力』でもねぇ!アハハハハハ!」
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