複雑・ファジー小説
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- 『受拳戦争』
- 日時: 2020/06/10 10:58
- 名前: 四季彩 (ID: EZ3wiCAd)
彩都さんと四季の合作です。
合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。
よろしくお願いします。
スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20
プロット停止のため連載停止 2020.3.17~2020.3.23 2020.6.11~
- Re: 『受拳戦争』 ( No.78 )
- 日時: 2019/03/04 17:59
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: 1Fvr9aUF)
シャトルのようなものを片手に握っているのは、枯淡。
枯淡は少し力んでいる。
なぜなら、ここで点を取れば勝利だからである。
あと一点ゆえ、あっという間に取ってしまえそうではある。しかし、だからこそ緊張するというものなのかもしれない。少し、ほんの少しだからこそ、である。
「行く行くよ行くんだぞっ!」
枯淡は顔をやや引きつらせつつ、シャトルのようなものを打った。
——こうして、ラストになるかもしれないラリーが始まった。
「おりゃっ!」
「はい!」
「おりゃりゃっ!」
「せい!」
「おりゃりゃりゃっ!」
シャトルのようなものは、やはり、焔から離れた位置に飛んでいく。嫌がらせか、というくらいに。
それでも、焔は諦めない。
「くっ……はいっ!」
「うお!?」
「せいっ!」
「ここまで来たんだ!負けないぞ!」
激しいラリーは続く。
丹花はその様子を穏やかに見守っている。
「はいっ!」
「負けないぞ!」
「……それはこちらも同じことですわ」
シャトルのようなものの奇妙な飛び方に翻弄されつつも、焔はコートを懸命に駆け、何とか打ち返す。
「おりゃりゃっ!」
「はいっ」
「おりゃりゃっりゃりゃっ!」
激戦は続く。
「はいっ」
「おりゃりゃっりゃりゃっりゃおりりゃっ!」
「せい!」
「おりゃりゃっりゃりゃっりゃおりりゃっおりゃりゃっ!」
皆が見守る中、激しいラリーが続く。
「おりゃりゃっりゃりゃっりゃおりりゃっおりゃりゃっおりおん!」
「ふっ……!」
「おりゃりゃっりゃりゃっりゃおりりゃっおりゃりゃっおりおんおりゃりゃっ!」
「せいっ!」
「おりゃりゃっりゃりゃっりゃおりりゃっおりゃりゃっおりおんおりゃりゃっりやりやっ!」
——五十分後。
ついに、勝敗が決まった。
「……っ!」
枯淡が叩き込んだシャトルのようなものが、見事、焔側のコートに落下したのである。
これは、完全な勝利だろう。
「はい。試合終了ですね」
- Re: 『受拳戦争』 ( No.79 )
- 日時: 2019/03/11 00:45
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: 96KXzMoT)
「三試合目の勝者は、呑道 枯淡!」
丹花が枯淡の勝利を告げる。
はっきりとした声で。
「そして、これにより、3年1組の勝利が決まりました!」
待ち望んだその言葉が、ついに発された。
「やった!あたくしたちの勝ちね!」
「はなな頑張ったかいがあったぁーん!」
「いや、頑張ってないない。無能でしかなかったって。ま、勝てて良かった」
鏡花、花園、蜂窩は、それぞれ喜びの声をあげる。だが、彼女らが喜びの声をあげるのも、当然と言えば当然だろう。なんせ、勝ったにせよ負けたにせよ、激戦を戦い抜いたのだから。
「勝った勝った!やったぞ!」
少し遅れて、枯淡も喜びの声を発した。
「頑張頑張り頑張った!やったやったねやったぞーん!」
彼は、結果を決めると言っても過言ではない、三試合目の担当だった。それだけに、精神的な負担も大きかっただろう。勝たなければ、という重圧があったに違いない。
ただ、そういった重圧があったからこそ、勝利を掴めたことが大きな喜びになっているとも言える。
「素晴らしい戦いぶりでしたよ、3年1組の方々」
丹花は、勝者となった3年1組メンバーたちに、祝福の言葉をかけた。
鏡花は少し恥じらいつつ「ありがとうございます。嬉しいです」と丁寧に返す。無難な返し方である。
一方、花園はというと、鏡花とは対照的に調子に乗っているようだった。相手を馬鹿にしていると受け取られる可能性もあるような声色で、「やぁーん!はなな、お祝いされて幸すぇですぅーん!」などと言っている。ふざけているわけではないのだろうが、端から見れば、どう考えてもふざけているようにしか聞こえない。
その横にいる蜂窩は、呆れ顔。
もはや突っ込みを入れる気にさえならないようだ。
ちょうどその時——枯淡、鏡花、花園、蜂窩、多々良、三殊以外の戦っていた3年1組メンバーが現れた。しかし、ここにも皆がいないことが分かり、落胆する。
現れたメンバーたちは、その後、戦いを終えた枯淡たちと共に、次の部屋へと向かうのだった。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.80 )
- 日時: 2019/03/12 00:08
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: GTJkb1BT)
欲しい家族
安芸井 春夏冬(あきい あきなし) 男 欲しい家族 姉
牛阪 牛歩(うしさか ぎゅうほ) 15歳 男 欲しい家族 兄
皇崗 黄銅(おうおか おうどう) 15歳 男 欲しい家族 姉
王城 琢磨(おうじょう たくま) 15歳 女 欲しい家族 兄
大江戸 芳野(おおえど よしの) 欲しい家族 機械で解決出来る
隠岐 翡翠(おき ひすい) 女 欲しい家族 弟(10歳以内)
教 鏡花(おしえ きょうか) 15歳 女 欲しい家族 弟(8歳以内)
音張坂 環視(おとはりざか かんし) 15歳 男 欲しい家族 兄
時雨野 芳隆(しぐれの よしたか) 15歳 男 欲しい家族 母
釈迦医師 多々良(しゃかいし たたら) 15歳 男 欲しい家族 要らない、一人で生きれば良いから。
白神 神黒(しらかみ かみくろ) 15歳 女 欲しい家族 兄
四六時中 灯(しろくじちゅう あかり) 15歳 女 欲しい家族 父
袖槻 半天(そでつき はんてん) 男 15歳 欲しい家族 妹
空井 飛翔(そらい ひしょう) 15歳 男 欲しい家族 サッカーボール
田井中 鈍器(たいなか どんき) 15歳 男 欲しい家族 弟
多美浪 小坂(たみなみ こさか) 15歳 女 欲しい家族 姉
筒岡 陸羽(つつおか りくう) 15歳 男 欲しい家族 父
土居 十六(どい いざよい) 15歳 女 欲しい家族 妹
呶呶 土豪(どど どごう) 15歳 男 欲しい家族 兄
呑道 枯淡(どんどう こたん) 男 15歳 欲しい家族 妹
奈緒 三殊(なお みこと) 15歳 男 欲しい家族 兄
冷褪 麗(ひやさめ うらら) 女 15歳 欲しい家族 妹
不二 海斗(ふじ かいと) 15歳 男 欲しい家族 兄
藤原 芳香(ふじわら の よしか) 15歳 女 欲しい家族 妹か姉か、弟か兄(ただし全てアンドロイド)
宝永 永保(ほうえい えいほ) 15歳 男 欲しい家族 兄
真実坂 事実(まみさか ことみ) 女 15歳 欲しい家族 姉
冥 魔宵(めい まよい) 15歳 女 欲しい家族 妹か弟(僕(しもべ)扱い)
目盛 秤(めもり はかり) 15歳 女 欲しい家族 両親
桃井 花園(ももい はなぞの) 15歳 女 欲しい家族 妹
芳澤 蜂窩(よしざわ ほうか) 15歳 女 欲しい家族 姉
- Re: 『受拳戦争』 ( No.81 )
- 日時: 2019/03/18 08:20
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: jFPmKbnp)
第十一章 十一回の終わり、十一回の始まり、十一回の敗北、十一回の勝利、十一回の戦闘、十一回の結果、十一回の希望、十一回の絶望、十一回の人生、十一回の、運命、十一回の転生、十二回目の今
多々良、三殊の二人は、静かに前へ進み続ける。
それはあまりにも長い道だった。
終わりなどないのではないか——そう不安になるほどに、長い道。
それでも、二人は歩く。
そんな道中、多々良が唐突に口を開いた。
「おい、奈緒」
何の前触れもなく名を呼ばれた三殊は、その地味な顔に戸惑いの色を滲ませながら、静かに返す。
「何だい?多々良くん?」
静寂の中、二人の足音と声だけが空気を揺らしている。
「こんなのをお前に問うのはおかしいとおもうが、それでも聞いてくれ」
多々良は淡々とした調子で続ける。
「お前は『前世』を信じるか?」
三殊は「コイツは一体何を言っているんだ?」と内心戸惑う。多々良が発した問いが、予想外のものだったからである。
いつもそういった類いの話をしている相手に問われたのなら分かる。だが、多々良とそういった話をしたことはないし、彼が話しているところも見たことがない。むしろ、彼はそういった話に一番関心がなさそうなくらいである。
だが、いきなり本心を言うのも気が引けるので、三殊は「いや」とだけ返答した。
すると多々良は述べる。
「そうか。それじゃあ、言うか。俺、実は前世の記憶があるんだ」
多々良の口から飛び出したまさかの発言に、三殊は思わず「はぁっ?」と言ってしまった。
前世の記憶?
何を言っているのか。
突然そんなことを言われて、理解できるわけがないではないか。
——それが、三殊の心。
「ま、そうなるよな。無理もない」
「よく分からないよ」
「だろうな。……聞いてくれないか、過去を」
言葉を交わしつつも、二人は歩き続ける。
「いいよ」
「そうか。ありがとう。じゃあ、聞いてくれ」
多々良はゆっくりと言う。
「俺と伊良部の——因縁の話を」
- Re: 『受拳戦争』 ( No.82 )
- 日時: 2019/03/25 00:26
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: UruhQZnK)
突如、前世の記憶を語り始めた多々良。
彼の前世の記憶——それは、伊良部との切っても切れない縁の話だった。
「一回目はな、シュラベ・フォラという若い国王が治める国だったんだ」
多々良の話によれば、そのシュラベ・フォラという若い国王こそが、伊良部だったらしい。
唐突過ぎて、三殊は、多々良の話がいまいちよく分からなかった。が、それでも真剣に聞いた。それは、三殊にとって多々良が仲間だったから。同じクラスで協力しあってきた、大切なクラスメイトだったからである。
「俺はサーシェルテ・ドムという男だった。若いうちに王室に奴隷として買われてな」
「ど、奴隷っ!?」
現代人にとってはあまり馴染みのない言葉を聞き、三殊は驚きの声をあげる。しかし多々良は冷静だった。驚かれることは分かっていた、というような顔をしている。
「そうだ。王室だけあって、環境自体はさほど悪くはなかったと記憶している」
「へ、へぇ……」
「だが、ある日知ってしまったんだ。若き国王シュラベの邪悪な企みを」
多々良の話は、まるで、小説の中の話のようだった。
「企み?」
それでも、三殊はきちんと聞いた。
「そう——『全人類奴隷計画』だ」
多々良は低い声で言う。
その声は決して大きなものではなかったけれど、はっきりとしていた。
「全人類を奴隷に……?」
三殊は眉をひそめる。
多々良は静かに頷く。
「そういうことだ」
想像の遥か斜め上をゆく多々良の話に、三殊は、どう返せば良いのか分からなくなる。今は、驚きばかりが心を支配しいる。
「……それで?」
「俺は、数人の奴隷と数人のシュラベの部下を説得し、革命を起こそうとしたんだ」
少し空けて、多々良は続ける。
「だが、革命は成功しなかった」
「え!そんな!」
「わざと情報をバラし、裏切り者を浮き彫りにしようとした。それがシュラベの企みだったんだ。俺らは結局、やつの手のひらの上で転がされていただけだったんだ」
相応しい言葉を見つけられない三殊は、少し俯き、黙る。
「で、俺たちに協力してくれた者たちを除くシュラベの部下によって、俺は殺された。サーシェルテの人生はそこで終わりだ」
多々良は淡々と話す。
「あの時、俺は、死ぬ直前に誓った。『来世では絶対に殺す!』ってな」
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