複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 『受拳戦争』
- 日時: 2020/06/10 10:58
- 名前: 四季彩 (ID: EZ3wiCAd)
彩都さんと四季の合作です。
合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。
よろしくお願いします。
スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20
プロット停止のため連載停止 2020.3.17~2020.3.23 2020.6.11~
- Re: 『受拳戦争』 ( No.38 )
- 日時: 2018/06/18 00:47
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: xDap4eTO)
第七章 十大なる十の競技と、十全たる仲間達による、十全な行動と、十重なる競い合いと、十項なる規則と、十二分に楽しむ心、十分に、十極の、十級な、十勝たりえる秋祭り
三殊を含む3年1組のメンバーは、次の部屋へと向かっていた。残してきたクラスメイトらの身が心配ではあるが、今はそのような余計なことを考えている暇はない。『文武学園』に受かるためだ、多少の心配くらい乗り越えられる人間でなければ。
歩くことしばらく、ようやく次の部屋の入り口が見えてきた。
三年一組メンバーは、改めて気を引き締めつつ、洞窟の入り口にようなぽっかりと開いた穴へ入っていく。
その部屋の中には、驚くべき光景が広がっていた。
なんと信じられないことに、無残な姿になった者がたくさんいたのである。
素人が見てもはっきり分かるほど豪快に骨折したもの。歯が欠けてしまっている者。そして、欠けたり折れたりした歯が散乱している砂場まであった。
もはや、地獄のような光景である。その迫力といったら凄まじい。
「これは一体……」
ぞくっとするような光景を目にし、三殊は思わず漏らした。
三殊だって馬鹿ではないので、簡単にクリアできる内容だとは思っていない。厳しい内容だろうということは、もちろん予想していた。けれども、まさか、こんなになるような内容だとは思っていなかった。
中学生の受験生相手にこんな仕打ち……あんまりだ。
想像を遥かに超えた光景に、3年1組のみんなが動揺していると、そこへ、三人の大人が現れた。
一人は男性で、四角い眼鏡にドレッドヘアーという、珍妙な組み合わせ。しかも白衣を羽織っているものだから、なおさら珍妙なことになっている。
そして、残りの二人は女性だ。
一人は褐色の肌とぺたんこの胸元が印象的。背も三人の中で一番低い。一方もう一人は、三人の中で一番背が高い。
謎の人物の登場に、三殊ら3年1組メンバーは身構える。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.39 )
- 日時: 2018/06/25 17:37
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: a4Z8mItP)
「それでは今からー……」
前振りするのは、一番背の低い女性。
「「「『死ぬ気の秋祭りを行う』!!」」」
後の『死ぬ気の秋祭りを行う』の部分は三人全員での発言。
ぴったり揃っているところが、プロっぽさを感じさせる。これほど揃うというのは、少なくともぶっつけ本番ではないだろう。見事なものだ。
だが、三殊たちからすれば、「何だそれ?」という感じである。
自己紹介もなく、いきなりそんな発言が飛び出したのだから、誰もが首を傾げるばかりだ。
「——と、その前に、軽く自己紹介を」
背の低い女性がそう言った。
その後、四角い眼鏡をかけたドレッドヘアーの男性が口を開く。
「オレィは、四重院 一重(しじゅういん ひとえ)!婚活ナウの理科教師!ヨロピク!」
奇妙な格好の一重は、やや古い言葉を使いつつ、簡単な自己紹介を行った。
いい年してこのノリというのは、正直厳しい。
「あたしは四重院 二重(しじゅういん にじゅう)だ。よろしくな」
「アチシ、シジュウイン ミエ。ピチピチノニジュウヨンサイデスカラ、ヨロシクオネガイシマス」
先に述べたのは、褐色肌で胸がなく背が低い方の女性。
そして、後から述べたのが、三人の中で一番高身長な方の女性だ。
「ここからはオレィが話す!ヨロピコォッ!!」
両手をそれぞれピストルのような形にし、バキューンと撃つような動きをする。そして、それと同時に、片目をつむりウインク。傍から見れば、完全にイタイ人である。
「今までは三人だったがなぁ、ここでは——」
「ゴニンヒツヨウデス」
「おいぃ、三重!良いとこ取るのは止めてくれよ!そこ重要!予炉詩区ぅ!」
これまでは一つの部屋につき三人が基本だったが、今回選ばなくてはならないのは五人。選べる選択肢が減りつつある中で、五人を選択するというのは、なかなか難しい。しかも、いかにも危ない内容のようだから、なおさら慎重に選ばねばならない。
三殊たちは悩みに悩み、だいぶ時間が経ってから、ようやく五人を選び出した。
選出されたメンバーは、音張坂 環視(おとはりざか かんし)、皇崗 黄銅(おうおか おうどう)、王城 琢磨(おうじょう たくま) 、冥 魔宵(めい まよい)、不二 海斗(ふじ かいと)の五人だ。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.40 )
- 日時: 2018/07/02 04:17
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: ZFLyzH3q)
音張坂 環視、皇崗 黄銅、王城 琢磨、冥 魔宵、不二 海斗。
今回選ばれたのは、この五人だ。
これまでは三人だったが、今回は五人。選ばなくてはならないのが予想より二人多かったということもあり、三殊たちは選択に苦労したが、何とか決めることができた。
五人が決定した後、海斗が言う。
「お前らは先に進め。俺たちは後から合流する」
迷いのないしっかりとした声。
けれども、抜けた歯が散らばっているなどの、この部屋の惨状を見ていしまっているからこそ、三殊らには不安があった。
「本当に大丈夫ですか?内容もまだはっきり分かっていないのに」
口を開いたのは半天だった。その瞳は不安げに揺れている。鼻血を噴出し続けていた時とは大違いの、真剣で、心配そうな顔つきだ。
「俺たちを信じろ。信じて、先へ行くんだ」
心配の色に染まる半天に、海斗ははっきりとそう述べた。
3年1組のために戦う——その強く頑なな意思が、海斗の双眸には宿っている。
「で、でも……ボク心配ですよ……。もしクラスメイトに何かあったらと思うと……」
両手の人差し指を擦りあわせ、もじもじとした仕草をしながら、半天は言う。今の彼は、誰が見ても小心者だ。それほどに、この部屋の惨状は衝撃的だったということであろう。
「置いていくなんて……心配です……」
涙ぐむ半天。
そこへ、枯淡が口を挟む。
「大丈夫だぞ。心配するな、半天」
「こ、枯淡……」
「オレたちのクラスメイトなら、きっと大丈夫だぞ。ちょっとやそっとで負けるほど、弱くはないからな」
枯淡は筋肉質な腕をグッと曲げ、二の腕の筋肉をグイッと隆起させる。男らしくはあるものの、暑苦しいポーズだ。
「そ、そうですよね……」
直後。
半天は突然カッと目を開き、「ならば!」と声をあげる。
みんなの視線が半天に集中する。
「せめて行く前に、応援の舞を披露します!!」
そう宣言すると、半天は踊り始めた。
今にも転びそうな怪しい足取りでステップを踏む。両腕は規則正しくぐるぐる回転させる。そして上半身は、海の中で揺らめく海藻のごとく、ゆらりゆらりとくねっている。
信じられないほどに珍妙な『応援の舞』だった。
半天の奇妙な『応援の舞』は、十分程度続いた。半天自身も汗だくになり、それでも踊り続けていたのだ。
そして、ようやく舞が終わった後、三殊たちは海斗らを残して、先へと歩き出した。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.41 )
- 日時: 2018/07/09 01:19
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: hZy3zJjJ)
三殊らが先に進んでいった後、口を開いたのは、珍妙な格好の男性教師である一重。
「今から五人には、五つの競技に挑んでもらう!三勝すればオーケーだっ。分かったな!?」
海斗たち五人はこくりと頷いた。
やる気は十分だ。
「まず一人目は相撲だ!ヨロピク!」
最初の競技は相撲。ということで、ここに残った3年1組メンバーの五人は、誰が出るかを話し合った。この後どのような競技がくるか分からないため、あまりしっかりとした計画は立てられないが、取り敢えず相撲に挑む者を決めなくてはならない。
そして、話し合いの末、不二 海斗に決まった。
相撲に挑むため、海斗は服を着替える。元々着ていた服はほぼすべて脱ぎ、まわしだけという相撲ルックにチェンジした。
「おぉ!似合ってんじゃん!」
裸にまわしだけという相撲ルックになった海斗を目にし、琢磨は盛り上がって言った。彼女は男性的な精神を持つゆえに、かっこよく見えるのかもしれない。
「そうか?」
「いい感じじゃん。頑張れ」
「よし!」
琢磨に褒められ自信がついた海斗は、しっかりとした足取りで、土俵へと向かった。
海斗の向かいに立つのは、少女のような生徒だった。まわししか装着していないところを思えば男子なのだろうが、その顔つきといったら、完全に可憐な少女である。
「花咲枷 織々(はなさかせ おりおり)です。よろしくお願いします」
織々の声は、声変わりした後の少年、といった雰囲気だった。
だみ声や極めて低い声ではない。ただ、少女にしてはやや低い、純真無垢な少年といった声質である。
——と、そのうちに、試合が始まった。
勢いよくぶつかり合う海斗と織々。その押し合いは、なかなかのものだ。二人とも、相撲の経験はあまりないだろうに、結構それらしく見える。
「そらっ!そこだ!いけいけっ!」
海斗を一番応援しているのは、意外にも琢磨。
彼女は熱い戦いが好物のようだ。
「あぁっ、あっぶね!いや、いける!まだだ!よしっ。勝てそうじゃん!」
海斗と織々の試合は白熱している。
だが、それよりも、琢磨の応援が白熱している。
「そこだ!いけ!いくんだ!余裕で勝てるって!」
そこへ加わる黄銅。
「そうですよ!そのままいけば、間違いなく勝てるのです!」
「勝てそうじゃん!迷わず押せ押せ!」
「頑張って下さいよ!3年1組のためにも、勝つのです!」
琢磨や黄銅らの、熱の籠った声援に、海斗は徐々に有利な位置へついていく。
それと同時に、織々は追い込まれつつあった。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.42 )
- 日時: 2018/07/16 12:39
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: 0llm6aBT)
今回の第一戦、織々と海斗の相撲対決は、最終的に海斗の勝利で終わった。
海斗は織々を見事に土俵から押し出したのだ。文句無しの完全な勝利であった。海斗が頑張ったことはもちろん、琢磨や黄銅の必死の応援が実を結んだとも言えるだろう。
「一人目、相撲対決は、不二 海斗の勝ちィ!オメデトゥー!」
勝者を告げる一重は、妙に盛り上がっていた。
それはもう、素晴らしいスポーツの試合を観て興奮している人のような、盛り上がりぶりである。
「やったじゃん!」
「勝ちましたね。お見事なのです」
戦いを終えた海斗を迎える琢磨と黄銅は温かかった。
だが、戦いは始まったばかりだ。まだ一勝である。
この一勝によって、3年1組が精神的にだいぶ有利になったことは確かだ。けれど結果はまだ出ていない。だから、まだまだ気を緩めるわけにはいかない。
「はい、次!すぐに二人目行くからな!」
口を開いたのは二重。
褐色の肌をした、背の低い女性だ。貧乳だが、気は強そうである。
「二人目はボクシングで戦ってもらう!さ、出るやつを決めてくれ!」
相撲の次はボクシングで勝負ということになった。
3年1組メンバーでここへ残った五人は、誰を出すかを話し合う。あまり時間がないため、素早く、しかししっかりと考えて決めなくてはならない。難しいところだが、何とか決定した。
「えぇ!?わたくしですか!!」
ボクシングに挑むことに決まったのは、皇崗 黄銅だった。
まさかの展開に、黄銅はかなり動揺している。
「さ、さすがに無理なのです!わたくしはそんな、ボクシングなんて!」
必死になって首を左右に動かす黄銅だが、決定事項が変更になるはずもなく、結局彼が二人目となった。決まってしまったのだから仕方がない。
「それじゃあ、試合開始前に名乗ってもらおうか!」
二重がそう言ったので、黄銅は嫌々ながらも彼女の前へ行く。
相手チームからも一人出てきていた。
「わたくしの名前は皇崗 黄銅。よろしくお願いするのです」
すると、相手チームから出てきた少年も口を開く。
「鬼塚 播磨(おにづか はりま)でっす。よろしくでっす」
茶髪にピアスというやんちゃそうな格好のわりには落ち着いた声だった。顔つきは案外しゅっとしていて、足が速そうな印象を受ける少年だ。
「よし!じゃ、試合開始っ!」
二重が開始の声を放つ。
こうして第二戦となるボクシング対決が始まった。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30