複雑・ファジー小説

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『受拳戦争』
日時: 2020/06/10 10:58
名前: 四季彩 (ID: EZ3wiCAd)

彩都さんと四季の合作です。

合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。

よろしくお願いします。

スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20

プロット停止のため連載停止 2020.3.17~2020.3.23 2020.6.11~

Re: 『受拳戦争』 ( No.103 )
日時: 2019/08/12 22:18
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: idHahGWU)

 どんな力も無力化する力——。

 伊良部の発した言葉を聞き、多々良は「力が入らない原因はそれか!」と理解する。

 だが、理解して何になるのだろうか。
 理解できても、そんなことには何の意味もない。
 何にもならない。

 多々良はそんな風に思考し、静かに、『伊良部には勝てない』という絶望の淵に落ちる——。

 伊良部の背後を見ながら、多々良と同じく絶望する三殊。

 そんな時だった。
 三殊と多々良以外の3年1組メンバーたちがすっと起き上がる。

「ぼっ、ボクには効いていませんっ……!」
「オレにも効いていないんだぞ」
「このぼくも……平気でんな」

 半天、枯淡、永保が言う。

「私にも聞いてないよ!」
「事実もまだまだー」
「わたし、負けません……」

 麗、事実、灯も述べる。

「さほど効いてないですな」
「ここはかっこよくいくんだカン……!」
「あてぃしも!」

 翡翠、環視、小坂も発する。

「ミーには効いてないネ!」
「アマゾンやジャングルの生活に比べたら、このくらい!」
「わ、わたくし……実は今も怖いのです……」

 鈍器、十六、黄銅も放つ。

 彼ら彼女らは、まだ折れきっていなかった。いや、それどころか、全員が無意識に能力を発動させていた。

 一斉に伊良部へ攻撃を仕掛ける。

「煩いぞ、ザコ共!」

 だが、伊良部は全員に対して無力化の能力を発動。
 よって、全員を地に這わせた。

 圧倒的な伊良部の能力に、3年1組メンバーらは「どうして勝てないんだ……?どうして……どうして……」と絶望してゆく。彼らに与えられた道は、それしかなくて。

 けれども、一人だけ、絶望しきっていない者がいた。

 そう、三殊だ。

 彼も最初は絶望しかけた。けれども今は、絶望の海に沈むだけの彼ではない。三殊は探そうとしていたのだ、伊良部の隙を。

(伊良部は絶対に隙を見せる!その隙を見つけないと!)

 それが、今の三殊の気持ち。

 だが、何事も、そう簡単にいくはずはなく。
 伊良部の隙は、なかなか見つけられなかった。

Re: 『受拳戦争』 ( No.104 )
日時: 2019/08/19 03:03
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: eso4ou16)

 何もできない自分に苛つきを覚える三殊。

 どうして、自分には何もないのだろう?
 平凡で普通で、平坦な人生を、送っているからか?

 そんな思いを感じ、三殊は怒りを覚える。

 その時、突然、周りの人の声が聞こえてきた。三殊は最初、何が何だかよく分からなかったのだが、そのうちに気づく。

 ——そう、それは『3年1組メンバー』の声だったのだ。

(きゅ、急にどうしたんだ……!?)

 そう思う三殊。

 すると、「誰か……誰か、伊良部を倒してくれ!」と聞こえてきた。三殊は「分かった!でも、体が動かないんだ……」と思い返す。それに対し謎の声は「えっ?俺の声、聞こえてんの?」と不思議がる。

 その声の主は、多々良だった。

 声が聞こえていることに驚く多々良に対し、三殊は「うん……少し前から……」と返答する。すると多々良は「そうか……」と言ってくる。さらに多々良は続ける、「分かった。それじゃあ、今はお前に賭けるしかない。おい、お前、他のやつにも会話しろ。そして、作戦を考えろ。いいな?」と。三殊は「うん……」と返し、頷く。

 それから三殊は他の3年1組メンバーたちに話しかけていくことにした。

『誰かー聞こえるー?』

 三殊は問う。

 すると「聞こえるぞー」「聞こえます」などと返ってくる。

 安堵する三殊。
 彼はまず、一人一人から力を借りることにした。

『誰か力を貸して?』

 三殊がそう頼むと、一人が「いいぜ!」と言ってきた。

 直後、三殊の体に力が入る。三殊の体が、あれよあれよという間に軽くなる。そして三殊は、そのまま立ち上がった。いきなり、だ。

 まさかの出来事。
 三殊、多々良、伊良部は驚く。

「力を貸してくれてありがとう!何だか体が軽いぜ!」

 三殊は3年1組メンバーらに向かって叫ぶ。
 そして、伊良部を睨む。

Re: 『受拳戦争』 ( No.105 )
日時: 2019/08/26 19:47
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: 3edphfcO)

「ど、どうして立ち上がって……!?」

 愕然としながら震えた声を発するのは伊良部。
 精神的にも身体的にも力を失わせたはずの三殊が立ち上がったことに、伊良部はかなりの衝撃を受けているようだった。

「知らない!」

 動揺している伊良部の問いに、三殊ははっきりとそう答えた。

 なぜなら、それが事実だったからだ。

 三殊自身にさえ、何が起きてこんなにも立ち上がれるようになったのか、確実な理由は分からない。分かっているのは、3年1組の皆が力を貸してくれているということだけである。

 それから三殊は、一人で、3年1組メンバーの前へ移動を始める。

「枯淡くん。力を貸してくれるかい?」
「もちろんだぞ!協力したい気持ちだぞ!」
「春夏冬くん、力を貸してくれるかい?」
「我が輩も協力する」

 三殊は仲間たちに協力を頼んでいるのだ。

「半天くんも力を貸してくれるかな?」
「は、ははは、はいっ」
「冷褪さん、頼むよ」
「うん。いいよ。私、応援してるからね」

 歩き回り、言葉を交わす中で、三殊は3年1組メンバーの繋がりを改めて感じていた。それはとても温かいもの。積もり硬くなった雪すら溶かすような温もりが、そこにはある。

「真実坂さん。力を貸してくれるかい?」
「いいよー!事実、力貸すー!」
「四六時中さん、力を貸りてもいいかい?」
「は、はい。もちろんです。わたし、奈緒さんを信じています」

 思い出すのは、皆で協力してきた日々。
 皆が協力して弱点を補おうと頑張った、あの日常。

 それはきっと、いつまでも宝物になる。

「永保くん、力を貸してくれるかい?」
「このぼくの力でいいなら、貸すでんな」
「隠岐さん、力、貸してくれる?」
「奈緒氏のためなら色々頑張っても良いですな」

 隠岐さんこと隠岐 翡翠は、3年1組の女子生徒の中で一番胸が大きい。

「環視くん。今こそ……力を貸してくれる?」
「貸すカン」
「多美浪さん、力を貸してくれるかい?」
「あてぃし、応援してるカン!」

 多美浪さんこと多美浪 小坂は、環視に淡い恋心を抱いている。それゆえ、環視の口調を少し真似しているのだ。

「鈍器くん。力を貸してくれるかい?」
「ミーの力を借りたいとは贅沢だネ!でも、たまにはそういうのもいいネ!」

 鈍器は少々海外かぶれだ。

「土居さんも力を貸してくれるかい?」
「よし。今だけは協力してやる」
「黄銅くん、協力してくれるかい?」
「わ、わたくしで……良ければ」

 黄銅は少しばかり気が弱いところがある。
 だが、クラスメイトを思う気持ちは、皆と同じだ。

Re: 『受拳戦争』 ( No.106 )
日時: 2019/09/03 07:08
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: jtELVqQb)

 三殊は皆に力を貸すよう求めて回る。

「王城さん、僕に力を貸してくれるかい?」
「あたいはもちろん協力する!だって、クラスのためじゃん!」
「ありがとう。……土豪くん、協力してくれる?」
「ええで!」

 3年1組メンバーは皆温かい心の持ち主だった。
 癖の強い人物が多いが、根っからの悪人はいない。

「白神さん。力を貸してほしいな」
「我の、か?……貸してやっても構わない」
「ありがとう。本当に」

 喋り方だとか、性格だとか、普通とは少し違った者も多いが、誰もが優しさの欠片を持っている。

「冥さん、協力してくれるかな?」
「うんなの!まよいは協力するなのなの!」
「牛歩くん。力を貸してくれるかい?」
「ぎゅうぎゅう、応援するかなかな」

 三殊は心から思った。
 このクラスで良かった、と。

「芳澤さん、力を貸してくれるかい?」
「調子乗ってんじゃねぇよ!情けねぇ!……でも、協力はする。クラスの一員だからな」

 芳澤さんこと芳澤 蜂窩は、口が悪い。
 口を開けば、愚痴・悪口・暴言ばかりだ。

「芳隆くん、力を貸してくれるかい?」
「はい。力を貸します」

 芳隆はメガネでいかにも優等生風の容姿。だが、優等生と呼ぶほど頭は良くない。見た目だけ、というやつである。

「桃井さん、応援してくれるかい?」
「はななの応援?贅沢っ!」

 桃井さんこと桃井 花園は、可愛らしい名前をしているわりには残念な目鼻立ち。ただ、とても器用な面があり、一週間も続ければ大概のことはマスターする。

「陸羽くん。力を貸してほしいんだ。3年1組のために」
「何のために、なんて言わなくても、協力するよ。男子にならね」

 陸羽は自称女嫌い。
 でも、エロ本は好き。

「目盛さん。クラスのために、力を貸して」
「いいぜ」
「飛翔くん、力を貸してくれるかい」
「俺ら、名前で呼ぶほど親しかったか?でもま、気にしたら負けだなっ」

 飛翔はサッカー部のキャプテンだが、サッカー以外は苦手。

「教さん、力を貸してくれるかい?」
「はい」
「海斗くんも力を貸してくれるかい?」
「あぁ」
「藤原さん、力を貸してほしいな」
「三殊様のためなら」
「大江戸さん、力を貸してくれるかい?」
「ウティ、協力するっちょ!」

Re: 『受拳戦争』 ( No.107 )
日時: 2019/09/09 14:10
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: u5fsDmis)

 三殊は3年1組メンバー皆から力を借りていく。

 対する伊良部は『無力』を発動するが、三殊はピンピンしていた。
 無敵かとも思われた伊良部の能力『無力』だが、今の三殊には、まったくもって効いていない。

「なっ……」

 どんな力も掻き消してしまう自身の力がまったく効かないことを不思議がる伊良部。

 三殊は多々良以外の全員から力を借り、伊良部を攻撃する。

「伊良部!どれだけお前が『無力』を発動しても、俺たち『3年1組の絆』は無力化されない!俺たち『3年1組の団結力』を舐めるな!」

 威勢よく言いながら、三殊は伊良部への攻撃を続ける。

 伊良部は何もできない感覚を覚え、絶望。

「俺に力を貸してくれ、多々良くん!」
「あぁ!」

 三殊が差し出す手に、多々良の手が重なる。

 二人の心が、今、二つになる。

 すると、急に全員が立ち上がった。
 3年1組メンバー全員が、だ。

 それまでは皆力を奪われているような様子だった。気絶しているとか、命を落としかけているとか、そういうことではないけれど、戦いはできないような状態に追い込まれていた。

 ——でも、それは変わった!

「皆で伊良部を倒そう!」

 今こそ、決着をつける時。

 これまで頑張ってきた日々が。苦しみもがいた経験が。協力し合って積み上げた努力が。そのすべてが、3年1組メンバーたちの力となる。一つ一つの努力は小さなものだったかもしれないけれど、それが重なって、今この瞬間に前へ進む力を生み出す。

 三殊は伊良部を殴る。

 想定外の連続パンチを食らった伊良部は、怒りと動揺のあまり、能力の持続を途切れさせてしまっていた。

 なので『無力』は消えていた。

 追い込まれた伊良部は、尻餅をつき恐怖する。そんな彼を、3年1組メンバーは全員で攻撃し、何とか伊良部に勝利を収めた。


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