複雑・ファジー小説
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- 『受拳戦争』
- 日時: 2020/06/10 10:58
- 名前: 四季彩 (ID: EZ3wiCAd)
彩都さんと四季の合作です。
合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。
よろしくお願いします。
スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20
プロット停止のため連載停止 2020.3.17~2020.3.23 2020.6.11~
- Re: 『受拳戦争』 ( No.53 )
- 日時: 2018/09/24 02:08
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: LLmHEHg2)
小坂と十里は、それぞれ大きな画面の前に座り、目の前にある大画面を凝視しつつ待つ。
少しすると、様々の色をした図形が、上から降ってきた。
二人は上手く操作し、図形を確実に消していく。小坂と十里の腕は、互角といったところだろうか。二人とも、並の人間より上手だ。
「やるじゃないカン。でも、あてぃしは負けないカン!」
隣の十里を一瞥し、小坂が言った。
「君ィ、なかなかいい腕しているねぇ〜。でも、十里の方が、少し上かなぁ〜」
鬱陶しい猫なで声で十里は返した。
それに対し小坂は、眉間にしわを寄せ、顔をしかめる。
「キモいカン」
「何それぇ〜?嫉妬かなぁ嫉妬かなぁ〜?」
「普通にキモいカン」
「えぇ〜っ。酷いなぁ〜」
小坂と十里はそんな風に言葉を交わしつつも、慣れた手つきでテトリスを続けている。
だが、勝敗はまだ分からない。
二人の実力は今のところ互角だ。
「べつに恥ずかしがらなくていいんだよぉ〜?素直になってよぉ〜?」
「あてぃしはキモいとしか思わないカン」
小坂にばっさりと吐き捨てられ、十里は怒りで席からガタンと立ち上がる。
「どこがキモいってんだよぉ〜っ!!」
その様を見て、小坂はくすっと笑う。
「何必死になってるカン?ばっかみたい。そんな小さなことで怒って、恥ずかしくないのカン?」
「どこがキモいか言ってみろぉ〜っ!!」
十里はらしくなく取り乱している。自身を「キモい」と言われたことが、どうしても納得いかないらしい。
だが、小坂の作戦は、そんなこととは関係なかった。
「テトリス、放っておいていいのカン?」
「……あ」
キモいと言われたことに憤慨していた十里は、テトリスのことをすっかり忘れていたのだ。いつの間にやら、小坂と大差がついていた。
「終わり、だカン」
ペロリと下を出す小坂。
「やってしまったぁ〜!」
憤慨するあまりテトリスを忘れていたことを後悔する十里。
「一人目、テトリス対決は、多美浪 小坂の勝ちみたいだねぇ」
展翅が落ち着いた調子で告げた。
かくして、3年1組は一勝を収めたのである。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.54 )
- 日時: 2018/10/01 22:21
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: HPUPQ/yK)
「じゃあ次、二人目には、テニスゲームで戦ってもらうよ。3年1組は誰が出る?」
テトリスの次は、テニスゲーム。
それを展翅が告げるや否や、安芸井 春夏冬(あきい あきなし)が前へ歩み出た。
「我が輩がやってみせよう」
それに対し、展翅はニコッと笑う。そして、「早くて助かるよ」と述べていた。感情の読めない、不思議な笑みだ。
「対するは、猪姓 瞳(ししかばね ひとみ)ちゃんだよ」
現れたのは、長い白髪の儚げな少女だった。陶器人形のように滑らかな肌、付け睫毛などしていないだろうに長い睫毛。まるでこの世のものでないかのような、幻想的な容姿をしている。
「我が輩は負けぬ」
「…………」
春夏冬が言葉を発しても、瞳は何も答えない。ただ、春夏冬をじっと見つめている。
「両者、リモコンを持ってねぇ」
展翅が二人にリモコンを渡した。
それは、テニスゲームに使うリモコン。
つまりこのゲームは、プレイヤーが実際に動くタイプのテニスゲームなのである。
「よーい……始め!」
展翅の合図でテニスゲームは始まった。
「うりゃあっ」
「…………」
「とりゃあっ」
「…………」
「せいっ!」
瞳は一切声を発さない。だが、儚げな外見に似合わず、動作は素早い。春夏冬のスマッシュを、確実に返している。
「はっ!」
「…………」
「はっ!」
「…………」
「せいっ!せせいっ!」
「…………」
春夏冬と瞳のテニスゲームによる戦いは、まだ続く。
「そりゃ!」
「…………」
「なぬっ!決められたっ!」
「…………」
「ほいっ!ほいっ!ほいいっ!……よし!」
長いラリーが連続するにつれ、瞳の動きは、徐々に遅くなってきた。はっきりとした理由は当人に聞かねば分からないが、少し疲れてきたのかもしれない。
「よし!決まったっ!」
「…………」
「せいっせいっとりゃ!」
「…………」
「よしよし。……ふふふ。我が輩の速さについてこれなくなってきたようだな」
少し余裕が出てきた春夏冬は、何やら偉そうなことを言い出した。
「終わらせてやろう……はあっ!」
すぱぁん、と、春夏冬のスマッシュがきまった。
「二人目、テニスゲーム対決は、安芸井 春夏冬の勝ち!」
- Re: 『受拳戦争』 ( No.55 )
- 日時: 2018/10/08 20:45
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: z2eVRrJA)
春夏冬と瞳のテニスゲーム対決は、激闘の果て、春夏冬の勝利で幕を下ろした。途中まで両者の実力は拮抗していたのだが、春夏冬の方が体力的に少し勝っていたようで、彼の勝利となったのである。
だが、これで終わりではない。
ゲーム喫茶での戦いは、まだ続いていく。
「次、三人目は、ブロック崩しで戦ってもらおうかねぇ。3年1組は誰が出る?」
展翅は相変わらずの感情が掴みづらい笑顔で、先ほどと同じようなことを述べた。
「このぼくが出るでんな」
3年1組メンバーの中で、ブロック崩し対決に挑むことを希望したのは、宝永 永保(ほうえい えいほ)だ。
頭部と同じくらいの大きさの、赤茶色チェックのベレー帽。赤みを帯びたジーンズ生地のオーバーオール、その下にはアースカラーのボーダーのポロシャツ。
なかなか個性的な格好をしている。
「宝永 永保でんな。宜しくお願いするでんな」
「面白い子だねぇ」
「そうでんかな?」
「姉の息子の彼女の妹が小学校の頃好きだった田村 澤ノ助くんに似ているんだよ」
対する相手は、滞氷 伍夢(とどこおり いつむ)という、青っぽい髪を四箇所でお団子にした少女。
「あれぇ?あれっあれっ、あれん?あれあれあれれっ?」
彼女が場に現れるや否や、展翅が妙な動きを始めた。まるで磁石に引かれるかのように、伍夢へと近づいていっているのだ。
「あれっ?あたしゃ、まだ頭は大丈夫なはずなんだが……あれあれっ?あれ?」
理由は不明だが、妙な動きを続ける展翅であった。
「そしたら二人とも、あれっ、持ち場に、あれんっ、ついてねぇ」
展翅は妙な動きを続けながらも、今すべきことをこなす。
「はいでんな」
「はーい」
永保と伍夢はそれぞれ返事をし、指定された席につく。そこには、大きなモニターと、一本のバーがあった。
「よーい……あれんっ!?……気を取り直して。よーい……始めっ!あれんっ!」
色々苦労しながらも、展翅は始まりを告げた。
こうして、ブロック崩しによる戦いが幕を開けたのだった。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.56 )
- 日時: 2018/10/15 18:03
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: z2eVRrJA)
始まった、ブロック崩し対決。
それは、開始早々、凄まじい戦いとなった。
「いくでんなぁぁぁぁぁっ!」
「負けないぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
頭部と同じくらいの大きさはあるベレー帽が特徴的な永保は、普通の人間の目では到底捉えられないような速度で手を動かし、ブロックをどんどん消していく。プロゲーマーとして世界大会に出場しても問題なく戦えるかもしれない、と思うくらいの、人間離れした技術だ。
「まだここからぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「負けないよぉぉぉぉぉっっ!!」
対する伍夢も、かなり超人的な腕前だ。狙った獲物は逃さない、凄腕スナイパーのような器用さで、永保と見事な対決を繰り広げている。
ブロックはみるみるうちに消滅していく——そして、ほんの数分にして戦いは終わった。
「ただいまの対決、宝永 永保の勝ち!」
展翅がそう告げる。
だが、伍夢はすぐには納得しない。
「どうしてこっちが負けなの」
不満を漏らす伍夢に、展翅はモニターを取り出して見せる。
「録画していたからねぇ、良く見て欲しい。実は永保君が君より少し早く終わっているんだ」
展翅がモニター脇の再生ボタンを押すと、映像が流れ始めた。二人のプレイしている様子が同時に表示されている。なので、非常に分かりやすい。
「ほらねぇ」
最後の瞬間、モニターを指差して展翅は言った。
「スロー再生すれば、もっとよく分かると思うけどねぇ」
「……分かった。もういいよ」
「そうかいそうかい。なら、決まりだよ」
「べつに、いいよ」
こうして、永保は勝った。
「よっしぃ!」
伍夢もかなり善戦した方だが、さすがに永保が上だったようだ。見事、としか言い様のない、完全勝利である。
「これでぼくは勝ち。あと二戦でんな」
「次はわたしで良いですよね、宝永さん」
嬉しそうな永保に声をかけるのは、灯。
——そう、四六時中 灯。
「いいと思うでんな!」
「ありがとうございます。……必ず勝ちます」
「勝てるでん!勝てるでん!」
永保と灯は、そんな風に、あっさりと言葉を交わしていた。
「よし、じゃあ次。四人目は、メダルゲームだよ」
いよいよ後半戦。
既に三勝している3年1組は、かなり有利だ。
あとは、駆け抜けるだけ。
「3年1組からは、わたしです。四六時中 灯といいます。なんということのないわたしですが、よろしくお願いします」
- Re: 『受拳戦争』 ( No.57 )
- 日時: 2018/10/23 02:32
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: GudiotDM)
四戦目、灯の対戦相手として現れたのは、与那国 新多(よなぐに あらた)という少年だった。
黒い髪に焦げ茶の瞳、身長や体型は平均的、という、極めて平凡な容姿をしている。が、頭部にネクタイをハチマキのように巻いているところだけは、個性があった。
「ぼくは与那国 新多!よろしく!頑張るゾ!」
また、話し方も少々普通でない。
「よろしくお願いします。与那国さん」
「こちらこそ!」
「お互いに頑張って、良い戦いにしましょう」
「頑張るゾ!頑張るゾ!」
灯と新多がある程度言葉を交わしたところで、展翅が説明を始める。
「まず最初に、それぞれにメダルを二十枚ずつ配るからねぇ。それを使って十五分ゲームを続けて、終了時に、メダルを多く持っていた方の勝ち。いいかな?」
展翅の簡単な説明に、灯と新多はそれぞれ頷く。
その後、両者にメダルが配られた。二十枚ずつ。
「それじゃ……開始!」
展翅が対決の幕開けを告げる。
こうして、メダルゲームによる対決が始まった。
二人の戦術は対照的だった。
灯は、堅実にゲームに挑み、メダルを徐々に増やしていく。塵も積もれば何とやら、といった戦術だ。
一方、新多はというと、上手くいけば一気に枚数を増やせる大勝負に、連続で挑んでいく。負けた時の損失は大きいが、勝った時にはメダルを大量に増やせる、そんなスタイルである。
安定感のある灯。波のある新多。
しかし、両者とも、メダルを増やしていくことには成功していた。
——残り、三分。
——残り、二分。
——残り、一分。
「止めて!」
開始から十五分、展翅がはっきりと終了を告げた。
灯と新多の手が止まる。
「では、メダルを数えるからねぇ」
その結果、灯は百二枚、新多は百一枚だった。つまり、一枚差という僅かな差で灯が勝利したのである。
「やりました!」
勝利を知った灯は、可愛らしく喜びを露わにする。
「頑張ったんだけどナ」
対する新多は落ち込んでいた。
顔を俯け、肩を落とし。
物凄く分かりやすい落ち込み方である。
「ただいまの対決、四六時中 灯の勝ち!」
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