複雑・ファジー小説
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- 『受拳戦争』
- 日時: 2020/06/10 10:58
- 名前: 四季彩 (ID: EZ3wiCAd)
彩都さんと四季の合作です。
合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。
よろしくお願いします。
スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20
プロット停止のため連載停止 2020.3.17~2020.3.23 2020.6.11~
- Re: 『受拳戦争』 ( No.48 )
- 日時: 2018/08/27 23:35
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: YJQDmsfX)
それからも、一色の殴る蹴るの猛攻は続いた。そこに環視が反撃する隙なんてものは、爪の欠片ほどもない。
「それっ」
「ぶっ!」
「はいっ」
「カンンンッ!」
「ほいっ」
「カンンンッ!」
「いくよっ」
「ぶべっ!」
環視の凄まじいやられぶりには、見守っていた琢磨たちも驚きを隠せない。
「へぇーっ、まだ頑張るんだねっ」
「ま……負けるわけにはいかないカン……」
「そっか。ま、そうだよねっ」
一色はくすっと笑う。
そして、右腕から強烈なパンチを繰り出した。
「ぶべへっ!」
環視は口から出血して倒れた。身構えていない時に殴られたため、口内のどこかを噛んでしまったものと思われる。
「とりゃっ」
「ぐふっ!」
「はっはいっ」
「べっ!べぼっ!」
一色と環視。二人の戦いの明暗は、もはや誰の目にも明らかだ。だがそれでも、環視は諦めようとはしなかった。それは、「3年1組のため」という強い意思があったからだろう。
しかし、そんな努力も虚しく——環視は敗北してしまった。
「決まりィ!第四戦勝者は、桃園ちゃん!」
一重が、相変わらずの軽いノリで、一色の勝利を告げる。
「ちゃんとフルネームでお願いしますっ」
「そゥ?じゃ、第四戦勝者は、桃園一色ちゃん!」
一色に文句を言われた一重は、ちゃんとそう言い直した。
これで3年1組は二勝二敗。
激しい戦いは、いよいよ、最終戦となる第五戦へともつれ込むこととなった。
「はい!じゃ、次な。第五戦、競技は総合格闘技!」
次の審判は二重。褐色の肌で、背は低く、胸のない女性だ。一重や三重と比べると、だいぶまともな人である。
「出場者はー……最後一人だから決まってるな。早速始めよう」
二重はどんどん話を進めていくタイプだ。
「あたしは、だらだらするのが嫌いなんだ」
彼女らしいと言えば彼女らしい発言である。
「さ、両者名乗って!」
第五戦に挑むべく立ち上がったのは、3年1組側は琢磨だった。
「あたいは、王城 琢磨(おうじょう たくま)。こう見えても女。よろしくな」
対するは、あまり勇ましさは感じられない少年。
「戸棚 恵良(とだな えら)だよ。よろしくお願いします」
恵良は、戦いという言葉の似合わない、温厚な印象を与える少年だった。総合格闘技なんて、彼は経験したことがないだろう。
「よし。準備はいいな?」
二重の言葉に、琢磨と恵良はそれぞれ頷く。
「第五戦。よーい……始め!」
- Re: 『受拳戦争』 ( No.49 )
- 日時: 2018/09/03 06:41
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: fQORg6cj)
いよいよ第五戦が始まる。
王城 琢磨と戸棚 恵良による、総合格闘技での対決だ。
「よっしゃ!いくぜっ!」
「が、頑張るよ」
開始とほぼ同時に、琢磨は一気に飛び出した。まだ動き出していない恵良は、防御体勢をとる。
「とりゃあっ!」
琢磨の蹴りが恵良の胸元へ突き刺さる。恵良は咄嗟に腕で防ぐも、そこに追い討ちをかけるように拳が飛んできて、それを顔面に受けてしまう。床に倒れ込む恵良。
「ふっ!」
倒れ込んだ恵良を掴み上げる琢磨。
「とりゃあっ!」
そこから、勢いよく放り投げる。だぁん、と大きな音を立て、恵良は床に転がった。彼は何とか立ち上がりはしたものの、立ち上がった瞬間に鳩尾へ蹴りを入れられ、力なく床に倒れ込んだ。
「勝者!王城 琢磨!」
二重が勇ましい声色で告げる。
一分ほどしかかかっていない、琢磨の圧倒的な勝利だった。
「これで決まったネィ!!」
乱入してくる一重。
頭の上で両の手のひらを合わせ、合わせた手と腰を左右に動かすという動きをしている。どうやら彼は、この動作を気に入っているようだ。
「3年1組の勝ちィッ!」
三章二敗で、3年1組が何とか勝利した。
「オメデトゥーッ!熱い戦いだったぜィ!予呂姿苦ぅ!」
「どっちも頑張ってたと思うよ」
「ミナサンオツカレサマデシタ!アツイタタカイニオモワズフルエテシマイマシタヨ!ウフフフフ!」
一重、二重、三重、それぞれからのコメントがあった。三人とも、熱い戦いに対する感想を、素直に述べていた。
こうして、戦いは終幕。
かなりの激戦ではあったが、3年1組は、無事、勝利を収めることができた。
「よし!」
「よっしゃーっ!勝ったー!」
「やりました!」
「やったなのー!わぁいわぁい!」
3年1組メンバーは、声をあげ、みんなで勝利を喜んだ。
だが、3年1組の戦いは終わりではない。
先の見えぬ試練は、まだまだ続く——。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.50 )
- 日時: 2018/09/09 00:40
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: sE.KM5jw)
好きな料理のカテゴリ
安芸井 春夏冬(あきい あきなし) 男 焼く
牛阪 牛歩(うしさか ぎゅうほ) 15歳 男 煮る
皇崗 黄銅(おうおか おうどう) 15歳 男 茹でる
王城 琢磨(おうじょう たくま) 15歳 女 焼く
大江戸 芳野(おおえど よしの) 炊く
隠岐 翡翠(おき ひすい) 女 煮る
教 鏡花(おしえ きょうか) 15歳 女 焼く
音張坂 環視(おとはりざか かんし) 15歳 男 茹でる
時雨野 芳隆(しぐれの よしたか) 15歳 男 炊く
釈迦医師 多々良(しゃかいし たたら) 15歳 男 焼く
白神 神黒(しらかみ かみくろ) 15歳 女 燃やす
四六時中 灯(しろくじちゅう あかり) 15歳 女 茹でる
袖槻 半天(そでつき はんてん) 男 15歳 焼く
空井 飛翔(そらい ひしょう) 15歳 男 茹でる
田井中 鈍器(たいなか どんき) 15歳 男 焼く
多美浪 小坂(たみなみ こさか) 15歳 女 炊く
筒岡 陸羽(つつおか りくう) 15歳 男 茹でる
土居 十六(どい いざよい) 15歳 女 焼く
呶呶 土豪(どど どごう) 15歳 男 蒸す
呑道 枯淡(どんどう こたん) 男 15歳 炊く
奈緒 三殊(なお みこと) 15歳 男 煮る
冷褪 麗(ひやさめ うらら) 女 15歳 蒸す
不二 海斗(ふじ かいと) 15歳 男 焼く
藤原 芳香(ふじわら の よしか) 15歳 女 電気は何なんでしょう……?
宝永 永保(ほうえい えいほ) 15歳 男 揚げる
真実坂 事実(まみさか ことみ) 女 15歳 炒める
冥 魔宵(めい まよい) 15歳 女 蒸す
目盛 秤(めもり はかり) 15歳 女 揚げる
桃井 花園(ももい はなぞの) 15歳 女 炊く
芳澤 蜂窩(よしざわ ほうか) 15歳 女 焼く
- Re: 『受拳戦争』 ( No.51 )
- 日時: 2018/09/10 01:42
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: 0llm6aBT)
第八章 十一の競技と、十一の遊戯、十一の奥義と、十一の出来事、十一の勝負、十一の勝敗
三殊たちは、さらに先へと進む。
残してきた海斗らを心配する気持ちがないわけではないが、そんなことを考えてばかりいても意味がない。
だから、とにかく先へと歩き続けた。
そんな彼らの前に現れたのは『ただの校舎』だった。
何と特徴もない、どこでも見かけるような、本当に『ただの校舎』である。
「みんな、よく来たねぇ」
誰かの声が聞こえ、三殊たちは声がした方向へと視線を向ける。
そこに立っていたのは、身長がかなり高い女性だった。その身長といったら、二メートルは優に越えているだろう。髪はくるくると縮れており、五十代くらいと思われる顔をしている。
「あたしゃ、鬣 展翅(たてがみ てんし)っていうんだよ。よろしくねぇ」
悪い人ではなさそうだが、不思議な人だ。
三殊たちは戸惑う。
「次に進みたかったら、この箱の中のボールを取ってもらえるかねぇ?」
展翅はまったりした口調で言う。
それには多々良が反応した。多々良は展翅の前まで進むと、彼女が持っている箱の中へ、その腕を突っ込む。箱の中で少しばかりゴソゴソと手を動かし、比較的早く、ボールを取り出した。
その白いボールには、マジックペンで書いたような黒文字で、『ゲーム喫茶』と書いてある。
「じゃあ、ゲーム喫茶まで案内しようかねぇ」
展翅は穏やかな表情のまま、そんなことを言った。
彼女は常に穏やかな表情だ。ゆえに、周囲はその心が読めない。展翅は、何を考えているのか誰にも分からせないような、そんな不思議な人である。
そんなこんなで、三殊たちは、展翅に『ゲーム喫茶』まで案内してもらうこととなった。
歩くことしばらく、『ゲーム喫茶』へ到着する。部屋の中へと入り、三殊たちは驚愕した。なぜなら、色々なゲームが置いてあったからである。この部屋は、もはや、物凄いゲーム好きの人の自室のような状態だ。
「ここでは、ゲームで戦ってもらうよ。先に進みたかったら、五人選んで、他の学校のメンバーに勝つこと。いいね?」
展翅はこの部屋ですべきことを簡単に説明した。
こうして、またしても五人選出しなくてはならないことに。
話し合いの結果、袖槻 半天(そでつき はんてん)、宝永 永保(ほうえい えいほ)、多美浪 小坂(たみなみ こさか)、四六時中 灯(しろくじちゅう あかり)、安芸井 春夏冬(あきい あきなし)が選出された。
- Re: 『受拳戦争』 ( No.52 )
- 日時: 2018/09/17 22:44
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: 5VUvCs/q)
五人を選出した後、観戦しようとしていた選ばれなかった三殊らに対し、半天が述べる。
「残りの方々は先に進んで下さい。ボクたちは大丈夫ですから」
半天の発言に、三殊らは一瞬戸惑う。だが、半天の真剣な表情を見て、先へ進むことを決めた。半天の顔には、それほど、真剣な色が浮かんでいたのだ。
「おいおい、半天。どんなジャンルの戦いにせよ、応援があった方が強いんだぞ。本当にいいのか?」
「はい、枯淡。行ってください」
「……負けたら駄目だぞ」
「もちろん。ボクらは、負けたりしません」
枯淡と半天——親しい二人は、別れしな、そんな風に言葉を交わしていた。
かくして、ゲーム喫茶での戦いが幕を開ける。
「まず一人目には、テトリスで戦ってもらおうかねぇ。さて、誰が出る?」
展翅がゆったりとした調子で尋ねると、3年1組からは、多美浪 小坂が出た。
「あてぃしが頑張るカン!」
小坂の髪はうぐいす色。肩くらいまでの丈で、ふんわりと膨らんでいる。柔らかな髪質で、女の子らしさ満点だ。
ちなみに、彼女が語尾に「カン」をつけるのは、環視に恋愛感情を抱いているからである。
「テトリスなら、お兄ちゃんの彼女の高校の女友達の叔父さんの家で、やったことあるカン」
小坂は拳を小さく握り、やる気に満ちている。
「いいねぇ。じゃ、相手を紹介するからねぇ」
展翅がそう言った時、一人の少年が現れた。
「春原 十里(すのはら とおり)だよぉ〜。よろしくぅ〜」
十里は、展翅が紹介するより先に、自己紹介してしまう。少々気が早い質のようだ。
「よろしくカン」
「君ィ、十里の魅力にメロメロぅかなぁ〜?」
「あてぃし、もう好きな人いるから興味ないカン」
小坂にばっさりいかれた十里は、頭を抱えて、地面に突っ伏した。かなりショックを受けているようだ。
「じゃ、テトリス開始!」
二人が位置につくと、展翅が始まりを告げた。
こうして、いよいよ一つ目の戦いが始まる。
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