複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

『受拳戦争』
日時: 2020/06/10 10:58
名前: 四季彩 (ID: EZ3wiCAd)

彩都さんと四季の合作です。

合作といっても、企画や世界観・キャラクターの名前や原形、プロットなどは、彩都さんです。
四季はキャラクターの口調を考えたくらいだけのもので、執筆係です。

よろしくお願いします。

スレ立て 2017.11.19
投稿開始 2017.11.20

プロット停止のため連載停止 2020.3.17~2020.3.23 2020.6.11~

Re: 『受拳戦争』 ( No.73 )
日時: 2019/01/28 01:30
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: Bf..vpS5)

 花園と蜂窩、聯轟と清起。
 二試合目はまだ終わらない。

「はなっ!」
「ホイ!」
「はななんっ!」
「ホイ!」

 聯轟はまたしても花園ばかりを狙う。それは恐らく、花園が強くないことに気づいているからなのだろう。

「そっちばっかり狙ってんじゃねぇよ!」

 しかし、今度はさすがに、蜂窩が割って入る。
 蜂窩がすぐにサポートしたため、点数を入れられることは何とか防いだ。

「せいっ!」
「ホイ!?」
「とりゃっ!」
「ホホイ!?」

 今度は、蜂窩と聯轟の打ち合いだ。

「相手が誰でも負けへんで!ホイッ!」
「叩き潰すっ!」
「ホイッ!」

 がっちりした体つきの聯轟はパワーがある。それゆえ、彼の攻撃は、一撃一撃が高い威力を誇っている。

 だが、その程度で諦める蜂窩ではない。

「ゴリラみたいな体型してれば勝てると思ってんじゃねぇぞ!」
「そんなこと思ってへんわ!」
「せいっ!」
「ホイホイッ!」
「とりゃ!」

 聯轟と蜂窩の打ち合いは続く。

 その光景を、花園はじっと見つめていた。二人のあまりに激しい応酬に、入っていくタイミングが掴めなかったからだろう。

 一方、聯轟の相棒である清起は、ニヤリと笑みを浮かべていた。

「せいっ!」
「ホイ!」
「とりゃっ!」
「ホイホイッ!……あ。嘘やん」

 激しい競り合いの結果、蜂窩が点を入れた。

「嘘やああぁぁぁぁーんっ!」

 点を入れられた聯轟は、両手を額に当てて絶叫する。
 素人に点を取られるとは、まったく想像していなかったのだろう。だからこんなにもショックを受けている——といったところに違いない。

 こうして蜂窩に点を取られた聯轟は、ショックのあまり立ち上がれなくなってしまった。

「よし!」

 蜂窩は小さくガッツポーズ。
 しかし、聯轟を倒せば終わりではなかった。

「聯轟だけだと思うなよ」

 清起が静かに言う。
 信じられないくらい、冷ややかな声。

 ——本当の戦いは、そこからだった。

 聯轟は確かに強かった。彼が羽根突きに慣れていたことも、確かだ。しかし、聯轟清起ペアの本当の武器は、聯轟ではなかったのだ。

 そう、真の実力者は清起だったのである。

 貧乳の少女、強貴 清起。彼女は不思議な力を持っていた。それは、『地面に落ちるシャトルを手元に寄せられる』という力。羽根突きにおいては、否、全ての球技において、かなり意味のある能力だ。

Re: 『受拳戦争』 ( No.74 )
日時: 2019/02/04 21:44
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: 07aYTU12)

 その後は、花園蜂窩ペアと清起との戦いになった。

 ちなみに、清起の相棒である聯轟は点を取られて以降、絶望のあまり何もできず。両手両足を床についた体勢のまま、びくともしなくなっていた。羽根突きに参加するしない以前の問題で、生きているのかさえ分からないような状態になっていたのである。

「勝たせてもらう」

 しかし清起は、聯轟が何もしなくなったことなどまったく気にしておらず、淡々と勝ちを狙いにいく。

「一対二で勝てると思うなよ!」
「はなな頑張るぅん!」

 数では優位に立った3年1組。
 しかし、相手が悪かった。

「せい!」
「ふっ」
「とりゃ!」
「ふっ」

 蜂窩は、右へ左へ、翻弄するように打ち続ける。
 しかし、シャトルのような物は、必ず清起の方へと飛んでいく。

「はななっ!?」

 その様子を見ていた花園は、両手を顎の前辺りに揃え、わざとらしく驚いた動作をする。恐らくは、可愛い子がびっくりしている、という設定なのだろう。

「調子に乗んなよ!」
「ふっ」
「このクソがっ!」
「……騒ぐな。ふっ」
「クッソ!!」

 徐々に点差が開いていく。
 清起の不思議な力の前には、誰も為す術がない。

「かっこつけに負けるわけにはいかないんだよ!」
「ふっ」
「テメェ!ザケンナ!」
「ふっ」

 そして、やがて決着がついた。

「クッソォォォ!!」

 蜂窩は悔しさのあまり、雄叫びをあげる。

 隣で見ていた花園は、瞳を潤ませ、「ふぇぇ……負けたぁ……」などと、いかにもぶりっこな発言をしていた。

「はい。試合終了ですね」

 清起が十点目を入れたのを確認した丹花は、落ち着いた声で言う。

「では、改めて結果発表を。二試合目は、秋春 聯轟&強貴 清起ペアの勝利です!おめでとうございます」

 丹花は柔らかく微笑みつつ、二試合目の結果を告げた。

「次の試合が最終戦になります。頑張って下さい」

 いよいよ最終戦。
 羽根突き対決の勝敗は、続く三試合目の結果で決まる。

「3年1組は……」
「呑道 枯淡!」
「では、対戦相手を紹介しますね」

 丹花は笑顔を崩さない。穏やかで柔らかな笑みは、決して消えることがない。

「雫月 焔(しずくつき ほむら)さんです」

Re: 『受拳戦争』 ( No.75 )
日時: 2019/02/11 15:23
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: yOB.1d3z)

 丹花に紹介され、現れた女子生徒、雫月 焔。

 彼女は、繊細な美しさのある容姿を持つ女の子であった。

 紺色の髪はさらりとしていて直毛。まるで絹糸のよう。また、肌は透き通るように瑞々しく、頬だけがほんのりと赤みを帯びている。唇は大きすぎず小さすぎず、柔らかな桜色。

「雫月 焔ですわ」

 化粧をしている感じはないのに睫毛は長く、まばたきする度、煌めきが散る。また、そんな長い睫毛に彩られた瞳は真っ黒だ。微かな傷も汚れもついていない宝石のような、真っ黒な瞳である。

「よろしくお願いします」

 それに、先ほどの清起はかなり貧乳であったが、彼女はそうではない。巨乳と言えるほどの大きさではないものの、胸はそれなりにある。

 そんな焔を前にして、枯淡はぶるぶると震える。
 恐怖ゆえではない。武者震いでもない。ただ、素敵な女子を前にして平静を保つことに必死なだけだ。

「これが最終戦になります」

 溢れる喜びを放出してしまわないよう努力する枯淡。彼がそんな風に戦っているとは知らず、丹花は淡々と進めていく。

「では、三試合目。呑道 枯淡VS雫月 焔。……開始!」

 丹花が開始を告げた。
 こうして、最終戦の幕が上がる。

 最初は、枯淡から。

「い、行くぞ!」
「お待ちしていますわ」

 枯淡の羽子板を握る手は震えていた。

 その理由は、もちろん、目の前に美しい女性がいるということもあるだろう。慣れないことに動揺しているのだ。
 しかし、理由はそれだけではない。
 親友の半天が近くにいないこと、というのもあるはずだ。
 いつもなら、緊張するような場面でも、彼と喋り合って気をまぎらわせていた。が、今はそれができない。

「おりゃ!」

 震えを振り払い、枯淡はシャトルのようなものを打つ。

 焔は構える。
 その黒い瞳は、宙を舞うシャトルのようなものの動きをじっと捉えていた。

「はいっ」

 羽子板を振る焔。
 彼女の羽子板は、シャトルのようなものに確実に当たった。

「うわわっ」

 返ってくるということを忘れていた枯淡は、対応しきれず、シャトルのようなものを落としてしまった。打ち返せず、いきなりの失点。

「やりました……!」

 先制した焔は、胸の前で小さくガッツポーズをした。

Re: 『受拳戦争』 ( No.76 )
日時: 2019/02/18 02:39
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: 32zLlHLc)

 先制したのは焔。
 しかし、対決は始まったばかり。

「行かせていただきますわ」
「も、もう待ってるぞ!」

 次は焔からだ。

 焔はシャトルのようなものを羽子板で打ち、枯淡に向けて飛ばす。シャトルのようなものは、枯淡に向かって直進する。飛ぶ速度もそこそこ速い。

「おりゃ!」
「はいっ」
「おりゃりゃ!」
「はいっ」
「おりゃりゃおりゃ!」

 ラリーは続く。

「おりゃりゃおりゃりりゃ!」
「はいっ」

 枯淡はシャトルのようなものを落とさないよう、確実に打ち返していく。彼にしては慎重だ。

「おりゃりゃおりゃりりゃおりゃ!」
「せいっ」
「おりゃりゃおりゃりりゃおりゃりゃ!」
「はいっ」

 かなり頑張っている枯淡だが、焔も負けてはいない。
 シャトルのようなものは、比較的、彼女から離れた位置に飛んでいく。が、そんな状態でもまったく慌てず、着実に打ち返していっている。

「おりゃりゃおりゃりりゃおりゃりゃお!」
「くっ……はいっ!」
「おりゃりゃおりゃりりゃおりゃりゃおりゃりるか!」

 枯淡は決めにいく。
 シャトルのようなものを確実に捉え、凄まじい勢いで打った。

「……っ!」

 今度は枯淡に一点目が入った。

「やりますわね」
「ま、負けないぞ!」
「さすが。そのくらい勢いのある殿方との方が、やる気に満ちますわ」

 焔の桜色の唇。リップを引いているのかしっとりと濡れたそれに、枯淡は釘付けになる。

「早く始めて下さい」

 ぼんやりしていた枯淡に、丹花からの注意。
 枯淡は慌ててシャトルのようなものを打った。

 ——が。

「ああっ!」

 焔の強力な打ち返しにまったく反応できず、枯淡は二点目を入れられてしまった。
 だが、今のは決められるのも仕方ないかもしれない。
 もちろん、ぼんやりしていた枯淡にも非はある。しかし、焔の返しが強烈であったことも確かだ。

「ここからは本気でいきますわよ」
「ぐ……」
「覚悟して下さいませ」

 焔の真っ黒な瞳が枯淡を捉える。

「頑張頑張る頑張るぞっ!」

 枯淡は気合いを入れ直す。

「ふふ。言葉だけなら誰でも言えますわよ」
「もう取らせん!」
「お手並み拝見、ですわね」

Re: 『受拳戦争』 ( No.77 )
日時: 2019/02/25 02:57
名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: xPtJmUl6)

 枯淡と焔の激しい戦いは終わらない。既に結構な激戦になりつつあるが、それでもまだ、実際のところは序盤だ。

 枯淡は一点。
 焔は二点。

 現時点では、焔が一歩リードしている。

「参りますわよ。お覚悟を」
「来い来いっ!」

 次は焔からだ。
 焔は美しい手でシャトルのようなものを持ち、羽子板を構える。

 ——そして、打った。

 シャトルのようなものは、華麗に飛ぶ。だが枯淡もそう易々とはやられない。シャトルのようなものの動きを見て、すぐに体を動かした。

「おりゃっ!」

 確実に捉え、打つ。
 シャトルのようなものは、今度、焔の方へ飛んでいった。

「なっ!」

 焦りの色を浮かべる焔。

「あれ?変な方に飛んでしまったぞ?」
「……くっ」

 焔はすぐに地面を蹴り、自身から離れた位置に飛んでいくシャトルのようなものを追いかける。

 そして、最後はジャンプして羽子板を振った。

「おりゃっ!」
「はい!」
「おりゃりゃっ!」
「せい!」
「おりゃりゃのりゃっ!」

 その後も、枯淡と焔のラリーは続いた。

「負けるわけには……参りません!はっ!」
「それはこっちもだぞ!おりゃりゃっくす!」
「ふっ!」
「おりゃりゃっくすみすっ!」

 ——激しいラリーの末。

「よし、キタ!」

 枯淡が二点目を奪った。

 シャトルのようなものがなぜか自身の体から離れていく焔が、ついに打ち返せなくなってしまったのである。とても頑張って走り回っていただけに、彼女としては悔しい失点だろう。

「なかなか……素晴らしいですわ……」
「このまま勝たせてもらうぞ!」
「何を……舐めないでいただきたいものですわ」

 それ以降というもの、勝利の女神は枯淡へ力を貸し始めた。焔も懸命に戦ってはいたのだが、疲労のせいもあってかミスを頻発するようになっていき。流れは完全に枯淡に向いていく。

 ——そして。

「頑張頑張る頑張るぞっ!」

 枯淡は九点。
 焔は四点。

 もし次の攻防を枯淡が制すれば、3年1組の勝利だ。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。