二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 神様のノート 二冊目※打ち切り
- 日時: 2016/02/11 06:06
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0zbVOBmK)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=28346
ひょんな事から授けられたノートもついに二冊目。
新たな仲間も増え、そして、新たな物語の可能性も増えた。
さて、そんな奇妙奇天烈な世界の物語、今一度、書き綴ってゆこう…。
昴「それと、前と同じようにキャラ紹介をここのURLに張り付けましたので、キャラがつかめない場合は是非ご一読ください。」
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☆一冊目へのリンク
・一冊目への道しるべ >>1
☆料理対決
〔第四回・男女混合料理対決地獄編〕
・賢者に自愛を、愚者には罰を 愚者編
〔第五回・宝石所持者の料理対決!〕
・通算九回目の固定審査員の始まり始まり(By昴) >>474-482
・実食
一番&二番 >>490-494 三番&四番 >>499-504
五番&六番 >>509-514 七番&八番 >>604-614
九番&十番 >>629-633 十一番&十二番 >>638-644
十三番 >>648-656 十四番&三番 >>660-665
・結果発表…!? >>681-689
・裏回
〔番外編・審査員一新!? 選抜メンバーの料理対決!〕
・
☆学力対決
・成績不振から始まる物語 >>158-163
・テスト本番! その前に。 >>242-250
☆ノートの世界のTwitter事情
〔本編〕
・その九 >>728-732
〔物語リメイク〕
・その一 >>738-740 new!
〔番外編〕
・異世界の料理対決
その二 >>181-189 その三 >>225-234 その四 >>363-372
☆マヨナカテレビ事件
〔烈編〕
・諸注意 >>2
・懺悔の菊 >>3-14
・クマにできるコトしたいコト >>23-26
・運命の船出 >>32-37
・悪魔の歯車 >>52-57
・手を延べる悪意 >>61-66
・見守る星々 >>89-94
・茜色の焔 >>200-208
☆時空越の勇者
・壊された平和 >>126-129
・仲間との別れ 姫との出会い >>136-140
・賞金稼ぎとの邂逅 >>143-145
・仲間を求めて >>292-295
・あの人の為に >>303-309
・少年の思い >>333-339
・亜空軍との戦い >>446-451
☆神様・悪夢相談室
・神様:ケース「緑谷 凪」 >>413-416
・神様:ケース「リュータ」 >>692-695
・悪夢・番外編:ケース「奏月 昴」 >>698-792
☆牡丹博士のSCP講座
・SCP-Lie
第一弾 >>537-544 第二弾 >>580-587
☆ある神様の聖誕祭
その一 >>98-104 その二 >>148-153
その三 >>214-220 その四 >>256-265
☆うちの13班
・設定 >>621-624
・小話 その一 >>625-628
☆もしももしものちいさなおはなし
・料理対決りばーす >>169-170
☆林間学校
・いざ、林間学校へ >>346-350
・飯盒炊さんと温泉の時間 >>356-360
・林間学校の終わりに >>377-383
☆セブンスエンカウント
・セブンスエンカウンター >>550-566
・ノーデンスエンカウンター >>570-576
☆パロディ
・アンジャッシュパロ
その1 >>440-441 その2 >>456-460 その3 >>522-531
・日和パロ
その1 >>670-673
☆短編
・プチネタつめつめ >>18-20
・続・ほのぼの日和 >>43-45
・小ネタ >>60
・ある日の為の打ち合わせ >>71-74
・あるアイドルの一日 >>75-85
・続々・ほのぼの日和 >>122-125
・唐突に思いついた料理対決案コーナー >>197
・テストネタ・問題案 >>273
・秋の長雨 >>279-282
・逃走中未完成案 >>288
・夏休み残り一週間の聖域にて >>315-317
・Welcome to Lapistoria Academy >>320-328
・黒翡翠の逆襲 >>390-395
・神と猫の集会場 >>591-601
・忘れないでね〜 >>677-678
・烈とリリィの橙代替品探し。代替大体大成功! >>706-711
・年末出店祭り >>714-722
・年初め 波乱万丈 いつもの日 >>723-727
・今後加入予定メンバーの設定 >>743
★募集中の事柄
なし
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- あるアイドルの一日 ( No.79 )
- 日時: 2015/05/30 01:05
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
中にいたショルキーに楽屋へ通じる場所に掛かっているロックを解除してもらい、烈達はりせの楽屋まで案内してもらう。
「りせ!」
「りせちゃん!」
楽屋の扉を開けた烈達は、愕然とした。
「うわ、何だよ、これ…!」
「ひ、ひでぇや…。」
鏡は破壊し尽くされ、衣装は切り裂かれ、中は原型を留めぬ程荒らされていた。
その中心には、呆然と立ち尽くすりせがいた。
「りせ!」
「りせちゃん、大丈夫!?」
声に気がついたりせは、ゆっくりと千枝達の方に振り向いた。
その顔は今にも泣きそうで、弱々しい。
「せん、ぱ…烈…! ふぇぇ…!」
見知った顔に会って安心したのか、りせは泣き出した。
千枝はその体を抱き締め、あやしてやる。
「…。」
「リリィ?」
その間に、リリィがふよふよと烈達から離れ、どこかに飛ぶ。ローズはその後ろをついていく。
「…!」
やがて、何かを見つけたのか、リリィは唐突に目の前にあった、無惨にも壊された機械をいじる。
「お、おい、リリィ、何やって!」
「…! やっぱり、カメラ…。」
無惨に壊されたそれは、監視カメラだった。
「そうか、監視カメラに何か映ってるかもな。」
「リリィ、でかした。千枝、お前はここでりせを宥めててくれ。アタシ達より長い年月一緒にいるお前の方が安心するだろ。…ローズ、お前も一緒にいてやれ。何かあったら、アタシ達を呼びに来い。」
「わかった。」
「任せろ!」
千枝とローズは、由梨の指示に頷く。
「烈、リリィ。お前達はアタシと一緒に守衛室に。あのカメラの映像、見ないとな。」
「ああ、わかった。」
「うん。」
そして烈、リリィと共に、由梨は守衛室へと向かった。
■
「昨日の監視カメラの映像なら、全部壊されちまったぞ。」
「はぁっ!?」
守衛室に辿り着くなり、そう言われる由梨達。勿論これには同時に驚くばかり。
「朝来たら、守衛室に置いてあるディスクが全部割られてるんだよ…。まったく、誰だよ…。」
「早期解決は無理だったか…。」
「まぁ、監視カメラの存在を知ってるなら、カメラだけでなく映像も消しちまおうとか考えるだろうからな。」
烈は悔しそうに悪態をつく。その横で、由梨は胸元に手を当てた。
(すー姉、かなり怒ってんな、こりゃ…。何か、何かできないか? アタシの力で、何か…。)
自分は何かできないか、それを思案する由梨。だが、現段階では、何も浮かばなかった。
トボトボと、三人は守衛室を後にする。
「…あ。」
「どうした、リリィ。」
その途中、リリィが声をあげた。
「…りせさん、サーチ、できるかな? 犯人の、痕跡とか…。」
「あ。」
烈も由梨も、それを聞いて口を開けた。
すっかり、忘れていたのだ。りせの能力を。
「…け、けど、かなり動揺してっし…難しいんじゃないかな? ペルソナって、心の力だろ?」
「…それなら、難しい。」
「いや、でも、落ち着いたら…しっ!」
「むぅっ!?」
何か言葉を聞き届け、烈の口を塞ぎながら、物陰に潜む由梨。
「せ、先輩、何すっ」
「静かにしてろ。…ちょっと、気になる単語が聞こえてきたんだ。」
「えっ?」
烈は、リリィを自分の元に引き寄せながら、注意深く耳を済ませた。
- あるアイドルの一日 ( No.80 )
- 日時: 2015/05/30 01:10
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
「…や、よかったよかった。うまくいったみたいでさー。」
「今売れっ子のアタシ達を前座にしたからさー。腹いせ腹いせ!」
「見た? りせちーの泣き顔! あれウケルー!」
「次は電源だっけ? センパイ達、うまく壊してくれてるといいけど。」
由梨はそこまで聞いて、ゆっくりと物陰から顔だけ出す。
「赤い制服…。」
「なぁ、先輩、それって…。」
「今話題の、何とかってグループ…。興味ないから、忘れた。」
「何だっけか、俺も覚えてねぇや。って、先輩、あいつら、電源がどうとか…!」
「ああ。まだ何かやるつもりだな。楽屋破壊も、あいつらの仕業だ。」
物陰からこっそりと移動しながら、烈達は話す。
「だが、物証がないのが痛い。何か証拠があれば言及できるが…。」
「私達の話だけじゃ、難しい。何とか、ならないかな?」
「…あいつらをギャフンと言わせるには、ライブを成功させるしかない。だが、衣装は…。」
「それなら心配無用だよ。」
楽屋まで戻った所で話しかけてきたのは、ウィザウだった。
由梨は初めて見る彼に、ちょっと驚きつつも、リリィの目を塞いだ。塞がなければいけない気がした。
「えっと、ウィザウさん、何で?」
「実はね、以前にも、あいつらが関わったライブで被害があったと聞いたから、衣装をわざと遅らせたんだ。楽屋にあったのは、使う衣装に近い素材で作った、偽物だよ。」
「じゃあ…!」
「うん。ライブはできる。今、りせちゃんも支度中だよ。」
「だから、ボクはこの人と一緒にいるんだー♪ 千枝に追い出されたよ…。」
ウィザウの頭の上から、ローズがひょっこりと出てくる。
ローズはふよふよと漂い、由梨の肩で落ち着いた。
「メイク道具とかは、何とかなったのか?」
「うん! 連絡を受けたりせの事務所のスタイリストさんが、自分用のメイク道具持って来てさ、それで代用してる!」
「良かった…。次は、電源破壊か。」
安堵も束の間、先程聞いた、更なる問題。それを口に出すと、ウィザウは困ったように頭を掻いた。
「やっぱり僕ら用の電源壊したのもあいつらか…。困ったな、それは僕らじゃどうしようも…。」
「…そっちは、アタシが何とかできる。」
由梨の発言に、ウィザウと烈は驚いた。
「えっ!?」
「本当かい?」
「ああ。…壊された電源の電圧が分かれば、微調整できる。」
「あ、そっか! 由梨先輩は雷属性も…!」
由梨達は、二種類の属性を操る事ができる。そして由梨は炎の他にも、雷属性を扱う魔導師なのだ。
「ああ。…だが、アタシもライブ終了まで魔力が持つとは限らない。だから、アタシの代わりにアイツにやって貰うさ。」
アイツ? と言いた気に首を傾げる烈。
「…とにかく、電源前に案内してくれ。そこで呼ぶから。」
「わ、わかった。こっち。」
ウィザウの案内で、由梨達は舞台袖へと向かった。
- あるアイドルの一日 ( No.81 )
- 日時: 2015/05/30 01:15
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
「ここ。アンプとかの方のコンセントは無事だったけど、ここがこうじゃ、流石にこれじゃ使い物にならないよ…。」
ウィザウが指差した場所には、原型を留めていないコンセントの差し込み口。完全に破壊されており、今から修復するのは難しそうだ。
「…うん、アンプとかが無事なら、行けそうだ。」
「由梨さん…何、するの?」
「“精霊召喚”さ。」
「まさか、確か…ヴォルトを?」
「ああ。全員、危ないから少し離れてろ。」
由梨の指示で、全員少し離れる。
それを確認した由梨は、目を閉じた。
「威き神が振るう紫電の鎚よ。火の司(ファイア・コンダクター)、野上由梨の名において命ず。」
由梨の周りに、魔力だろうか、輝きが放たれる。
「出でよ、ヴォルト!」
そう締め括ると同時に、由梨の背後に紫電を纏った球体が出てくる。恐らく、これがヴォルトだろう。
「す、凄い力…!」
「分かる。こいつの力、半端ないよ…!」
リリィとローズは、ヴォルトの出す力の流れを感じ取ったのか、烈の後ろに隠れてしまった。
「由梨先輩、こいつ…!」
「ああ。雷の精霊、ヴォルト。アタシの使役する精霊の一体だ。ヴォルト、悪いな、戦闘以外で呼んで。」
『…。』
ヴォルトは体を横に振り、由梨に向かって何かを言っているようだが、全く分からない。
が、恐らく、気にしてないと言ったような旨だろうか。それは何となく分かった。
「ありがとな。…“火の宝珠”を通じて聞いてたな? お前はライブ終了まで、ちょっと頑張って貰いたいんだ。頼めるか?」
『…。』
今度は、体を縦に振る。了承の合図だろう。
「電源の供給は、ヴォルトに頼む。本来なら、アタシの魔力で具現化するが、こいつ、今は自分の魔力で具現化するよう切り替えてくれた。遠慮なく使ってやれ。ヴォルトも、お前達のライブ、楽しみにしているそうだ。」
「よくわかるな、先輩。何言ってるか俺らにはさっぱり…。」
由梨は耳についた赤い宝石のイヤリングに触れた。
「この“火の宝珠”のお陰。詳しい事は後で話すさ。さて、そろそろ開場じゃないのか?」
「あ、う、うん! そうだった!」
開場時間の事を思い出したのか、ウィザウは慌てて楽屋へと戻っていった。
「アタシ達も行こうか、烈。」
「おう! MZD、何気にいい席用意したよなー。」
「何の計らいだろうな。まぁ、いい。あ、リリィ、ローズ。ヴォルトの魔力が辛いなら、アタシの鞄に入るか? 魔力を遮断する効果あるから、少しは楽だと思うが…。」
由梨は小さなショルダーバッグを指差し、未だに後ろに隠れるリリィとローズを気遣った。
が、彼らはふるふると首を横に振った。
「りせのステージ、見たいからいいや!」
「同じく、見たいからいい!」
魔力に当てられるよりも、りせのステージが大事らしい。
そんな二人に、烈と由梨は顔を見合わせ、微笑んだ。
- あるアイドルの一日 ( No.82 )
- 日時: 2015/05/30 01:20
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
「あ、烈くーん! 由梨ちゃーん! こっちこっちー!」
先に行っていたらしい千枝が二人を招く。
烈が先に座り、その横に由梨が座る。簡単に言えば、烈を挟むように千枝と由梨が座っている。そしてローズは由梨の頭に、リリィが千枝の頭に乗った。
「…お前、これ氷海に見られたら凍らされるな。」
「えっ? 何でだ?」
「…ほんとお前って…。」
「由梨ちゃん、多分、何言っても無駄。」
千枝がそう言うと、由梨はそれ以上何も言わなかった。
「…?」
烈はただ、首を傾げるしか出来なかった。
「…あ、始まった!」
舞台の幕が上がり、早速前座であるアイドルグループが現れる。
だが、盛り上がりはいまいちな気がする。BEMANI楽曲を聞きに来たファンか、りせのファンか、どちらかが楽しみで、所詮前座には興味がないのだろう。
『みんなー! 今日は私達の為に来てくれて、ありがとー!』
「…私達の為、か。自分のライブと勘違いしてんじゃねぇよ、ブスが。」
リーダーらしき人の挨拶に、ぼそりと返す由梨。
周りの人々も、口々に何か言っている。表情はみんな、嫌そうだ。
「まぁまぁ、由梨先輩。前座だし、一曲だけらしいから、許してやろうぜ。おっ、始まっ…!?」
鳴り響いた音楽を聴いて、烈は驚愕する。
流れていたのは…そう、このライブでりせが歌うはずの、“紅焔”だった。
「ね、ねぇ、これ、烈君の!? りせちゃんが歌うんじゃなかったの!?」
「ああ、その筈だ。葉月から今日の為にボイトレしてたって聞いた。くそっ、あいつら、ライブをすると分かって楽曲を被せてきやがったな!」
「嫌がらせかよっ! 最悪だなあいつら!」
「…。」
周りの客に迷惑にならぬよう、小声で怒りを露にする千枝、由梨、ローズ。そして、静かに怒りの感情を見せるリリィ。
「…。」
烈は黙ってそれを聞いていたが、歌い出した直後、左側にいる由梨の手を握った。
「烈?」
「先輩には、炎は効かないんだよな?」
「ああ。」
「…そのまま、握ってくれねぇか? じゃねぇと俺…暴走、しそうだ。」
必死で、昂る心を抑えているのか、息が荒い。
無理もない。彼女らの歌は、心のこもっていない、下手くそな歌だった。
自分の中では誇り高い楽曲を、こんな形で汚されるとは思わなかった。
りせは、自分の楽曲を汚さずに歌ってくれる、そう思ったから、烈は彼女に歌う許可をした。それなのに…。
「…千枝、少し離れろ。お前は炎が苦手だろ?」
「う、うん…。」
「…リリィ、いざとなったら烈を宝石に閉じ込めろ。一時的でいい。烈が怒りをぶつけたら、出していい。」
「わかった。」
もしもの保険を掛けながら、由梨は自身の昂る感情を抑える。
この曲は、由梨にとっても大好きな歌。まさかこうして最悪の形で聞くとは思ってもいなかった。
- あるアイドルの一日 ( No.83 )
- 日時: 2015/05/30 01:25
- 名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 4BMrUCe7)
そう思っているのは、由梨だけじゃなかった。
—…自分の好きな歌が、変な人に歌われるのって、最悪だよね。それが、一番好きな歌なら、尚更だよ。
(お姉ちゃん…。)
楽屋にて、創造者は、りせの手帳越しに静かな怒りをぶちまける。
—りせちゃんは、私の誕生日を覚えていて、プレゼントになればと、烈君に頼んで、葉月ちゃんと頑張って…。楽しみにしてたんだよ、りせちゃんの紅焔。それを…っ!
「熱っ…!」
怒りに呼応し、手帳が熱くなる。りせはその熱に、思わず落とした。
—あっ…! ご、ごめん、りせちゃん!
(大丈夫。火傷とかはしてないよ。…でも、困ったな。これじゃ私が歌うと…。)
—楽曲かぶり、って言われそうね…。ん?
何かを見つけたのか、創造者は暫くりせの言葉に答えなかった。
—…りせちゃん。
(何?)
—外、出てみてよ。舞台袖。
(えっ? わかった。)
りせは手帳を閉じ、舞台袖へと向かった。
■
舞台袖に出ると、騒がしい事に気がつく。
(えっ!?)
あまりの騒がしさに、りせは思わず舞台袖から舞台を見る。
「よく担当してる本人を前にそんな下手くそな歌が歌えるな!」
「耳障りだ! 前座の癖に出しゃばるな!」
「烈に謝りなさいよ!」
開場では今、観客とアイドル達が一触即発の状態だった。
烈が来ていた事に気が付いた観客達が不満を爆発させ、アイドル達を責め立てていた。
『わっ、私達はこの曲、初めて歌ったんです〜。だから、下手なのは仕方』
「言い訳すんじゃねぇよ!」
烈の声が、よく通る。分かる。誰が聞いても分かる。これは相当、怒っていると。
「俺は、この曲をりせに歌ってほしかった。厳しい先輩と一緒に頑張っている姿を見る内に、こいつの歌を、実際にライブ会場で聞きたい、そう思った。」
「烈…。」
「だから、俺はこのライブ、楽しみにしてたんだ。それなのに…。」
悲しげな烈の声が響くと同時に、突然、紅焔の出だしが鳴り響く。
「りせちゃん、行くよ!」
鳴らしたのは、チュナイだった。彼は走りながらシンセサイザーを弾き、りせを促す。
「あんな友達の顔、見たくないだろ!? 歌ってやろうよ、りせちゃん!」
「い、いきなり…!?」
狼狽えるりせ。そんな彼女の背を、ウィザウがぽんと叩いた。
「いきなり歌うのが怖い? ばっかお前、“俺達がついてるだろ!”」
「! …はい!」
心を突き動かされたりせは、マイクを持つ。
『烈っ!』
マイクで拡声されたりせの声が、前奏に乗せて響き渡る。
『そこまで言うなら歌ってあげるよっ! 烈の誇りである、この曲を!』
不思議と、不安はなくなっていた。
今はただ、烈に聞いてほしかった。
『さぁっ、いっくよー!』
りせは舞台に立ち、歌い始める。
観客のボルテージは最高潮だ!
(お姉ちゃん、見てる? 私、烈の誇りを、お姉ちゃんが大好きな曲を、歌ってるよ。えへへっ、何か、ドキドキする。)
りせは歌う。下手かも知れない、ただ、気持ちは込められていた。
(…おめでとう、神様。私達の為に生まれてきてくれて、私達を生み出してくれて、ありがとう…。)
彼女の言葉は、創造者に届いたのか…。
それは、創造者のみぞ知る…。
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