二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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神様のノート 二冊目※打ち切り
日時: 2016/02/11 06:06
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0zbVOBmK)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=28346

ひょんな事から授けられたノートもついに二冊目。
新たな仲間も増え、そして、新たな物語の可能性も増えた。

さて、そんな奇妙奇天烈な世界の物語、今一度、書き綴ってゆこう…。

昴「それと、前と同じようにキャラ紹介をここのURLに張り付けましたので、キャラがつかめない場合は是非ご一読ください。」


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☆一冊目へのリンク
 ・一冊目への道しるべ >>1

☆料理対決
〔第四回・男女混合料理対決地獄編〕
 ・賢者に自愛を、愚者には罰を 愚者編

〔第五回・宝石所持者の料理対決!〕
 ・通算九回目の固定審査員の始まり始まり(By昴) >>474-482
 ・実食
  一番&二番 >>490-494 三番&四番 >>499-504
  五番&六番 >>509-514 七番&八番 >>604-614
  九番&十番 >>629-633 十一番&十二番 >>638-644
  十三番 >>648-656 十四番&三番 >>660-665
 ・結果発表…!? >>681-689
 ・裏回

〔番外編・審査員一新!? 選抜メンバーの料理対決!〕
 ・


☆学力対決
 ・成績不振から始まる物語 >>158-163
 ・テスト本番! その前に。 >>242-250


☆ノートの世界のTwitter事情
〔本編〕
 ・その九 >>728-732

〔物語リメイク〕
 ・その一 >>738-740 new!

〔番外編〕
 ・異世界の料理対決
  その二 >>181-189 その三 >>225-234 その四 >>363-372


☆マヨナカテレビ事件
〔烈編〕
 ・諸注意 >>2
 ・懺悔の菊 >>3-14
 ・クマにできるコトしたいコト >>23-26
 ・運命の船出 >>32-37
 ・悪魔の歯車 >>52-57
 ・手を延べる悪意 >>61-66
 ・見守る星々 >>89-94
 ・茜色の焔 >>200-208


☆時空越の勇者
 ・壊された平和 >>126-129
 ・仲間との別れ 姫との出会い >>136-140
 ・賞金稼ぎとの邂逅 >>143-145
 ・仲間を求めて >>292-295
 ・あの人の為に >>303-309
  ・少年の思い >>333-339
 ・亜空軍との戦い >>446-451


☆神様・悪夢相談室
 ・神様:ケース「緑谷 凪」 >>413-416
 ・神様:ケース「リュータ」 >>692-695
 ・悪夢・番外編:ケース「奏月 昴」 >>698-792


☆牡丹博士のSCP講座
 ・SCP-Lie
  第一弾 >>537-544 第二弾 >>580-587


☆ある神様の聖誕祭
 その一 >>98-104 その二 >>148-153
 その三 >>214-220 その四 >>256-265


☆うちの13班
 ・設定 >>621-624
 ・小話 その一 >>625-628


☆もしももしものちいさなおはなし
 ・料理対決りばーす >>169-170


☆林間学校
 ・いざ、林間学校へ >>346-350
 ・飯盒炊さんと温泉の時間 >>356-360
 ・林間学校の終わりに >>377-383


☆セブンスエンカウント
 ・セブンスエンカウンター >>550-566
 ・ノーデンスエンカウンター >>570-576


☆パロディ
 ・アンジャッシュパロ
  その1 >>440-441 その2 >>456-460 その3 >>522-531

 ・日和パロ
  その1 >>670-673


☆短編
 ・プチネタつめつめ >>18-20
 ・続・ほのぼの日和 >>43-45
 ・小ネタ >>60
 ・ある日の為の打ち合わせ >>71-74
 ・あるアイドルの一日 >>75-85
 ・続々・ほのぼの日和 >>122-125
 ・唐突に思いついた料理対決案コーナー >>197
 ・テストネタ・問題案 >>273
 ・秋の長雨 >>279-282
 ・逃走中未完成案 >>288
 ・夏休み残り一週間の聖域にて >>315-317
 ・Welcome to Lapistoria Academy >>320-328
 ・黒翡翠の逆襲 >>390-395
 ・神と猫の集会場 >>591-601
 ・忘れないでね〜 >>677-678
 ・烈とリリィの橙代替品探し。代替大体大成功! >>706-711
 ・年末出店祭り >>714-722
 ・年初め 波乱万丈 いつもの日 >>723-727
 ・今後加入予定メンバーの設定 >>743


★募集中の事柄
なし

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セブンスエンカウンター ( No.559 )
日時: 2015/10/31 22:58
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j62VnjSr)

ナビ専用のモニター前にて、風花は顔を覆っていた。

「あの子達、破竹の勢いで撃破しているわね。」
「うわー…。何か、敵に同情しそうになっちゃった…。」
「日頃から鬱憤溜まってんのか? 本社ので同レベル程度の人間の敵一体にかかる撃破時間の最速記録更新したんじゃねぇのか?(第一、ウサギ鍋って美味いのか?)」
(あぁ、もう、何かここにいる皆さんが遠い目浮かべちゃってる…。)

完全に遠い目を浮かべるジュリエッタ、澪、ナガミミに、風花はもう申し訳なくなる気持ちで一杯だった。

「おい、何かそうこうしている内に中ボス、ヘルクラウドが出る場所についたんだけど、あいつら。」
「あらやだほんと。凄いじゃないの。」
「うちのデバッガーもビックリじゃないかな?」
「あー、アイツ等もこれ聞いたら確実に腰は抜かさないにしても驚きそうだよな…。おい、あそこまで到達するのにかかった時間が社内記録を抜いたぞ。うちのデバッガー抜いたぞおい。」

どうやらあの三人が無双したお陰で、新記録が生まれたようだ。

「これ、ヘルクラウドも秒殺されるんじゃないかな?」
「だとしたら初期能力値どんだけ高ぇの? おい、こっそり数値上げといた方がいいんじゃねえの?」

何だか死んだ目を浮かべている澪とナガミミに、風花はもう何も言えませんでした。











戻って東京スカイタワー内。
由梨達は今まさに、そのヘルクラウドと呼ばれた眉毛のような形を取る炎が噴き出る、雲のようなモンスターと対峙していた。

「先手必勝! 食らえ!」

フランシスは素早い動きで氷の力を刃にまとわせ、【アイスソード】をヘルクラウドに向けて振るった。
ヘルクラウドはよろめく。どうやら致命傷を与えたようだ。そこでヘルクラウドの体は消えかけるも…。

「次はアタシが続くぞ!」

あの、消えかけてるの確認したの? と言いたくなるくらいに間髪入れず由梨が続いた。
由梨は既に抜き身の剣を大きく振るった。刃から風圧のようなものを感じた。サムライの抜刀スキル、【旋風巻き】だ。

「次は俺ーっ!!」

だから“消えかけてる=戦闘終了”なのに、何してるのこの兄貴も。
隙を1ミリたりとも許さないと言わんばかりに、紅刃は砲口をヘルクラウドに向け、砲弾を3連発した。炎属性の攻撃、【バーストアタック】だ。ヘルクラウドにはあまり効かないのだが、消え逝く定め故に無関係であった。

「はー、よし、中ボスは倒したし…。」
「またパーティーの始まりじゃあぁぁぁぁぁっ!!」

あーあ、もうこの先も進む気だよこいつら…。
そんな時、由梨めがけて炎が飛んだ。

「うわっち!」

由梨はすんでの所で避け、炎の出所を見た。

「」

が、見ない方がよかったかもしれない。だってそこには…。

「い・い・加・減・に・し・な・さ・い?」

いーい笑顔を浮かべて二発目の【フレイム】を準備している理乃がいたのだから。
これには同じように見てしまったフランシスと紅刃も固まるしかない。

「交代しなさい。」
「ハイ。」

年上である紅刃でも、黒理乃には勝てなかったそうな…。










再び戻って現実世界。

「ふえぇ…! こ、怖いよ…!」
(デスヨネー。)

澪が風花にくっつき、ガタガタと震えていた。

「おい、あのコムスメ何モンだ? あのチビっこい体からなんっつー殺気出してんだよ…。」
「モニター越しからも伝わってくるなんて、相当ね…。」

ナガミミもジュリエッタも、理乃の放つ殺気にもう怯えるしかなかった。
風花は一度通信を切り、死んだ目をモニターに向けながら言った。

「…理乃ちゃんを怒らせると死ぬから、あんまり逆鱗に触れる事はしない方がいいよ。特に、ナガミミちゃん。さっきのは禁句ワードだから、そこも気を付けといた方がいいかも。理乃ちゃん、身長を気にしてるから。」
「おう、もう二度と言わねぇ。」

モニター越しに伝わる殺気と死んだ目をした風花に、ナガミミは素直に言う事を聞く事にした。

セブンスエンカウンター ( No.560 )
日時: 2015/10/31 23:04
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j62VnjSr)

さて、再び戻って東京スカイタワー。
現在は3rdメンバーが前線に立っているようだ。

「でも、本当に僕達が前線に出ていいのー?」
「うん、だって、凪達はまだ一度も戦ってないでしょ?」

そう、ここに来るまで3rdメンバーは一度も戦っていない。一度戦った1stメンバーは快く凪達に前線を譲った。

「この子達とバトル馬鹿、どちらが大人か判りませんわね。」
「普段大人げない事する牡丹がそんな事言うなんて意外ー。明日は雨かなー?」
「失礼ですわね!」
「はいはい、次々ー。」

牡丹と凪はそんなやり取りの後、苦笑を浮かべている理乃と共に先へと進む。他のメンバーも、理乃達についていった。

『おっと、忘れてた。オマエ等が…いや、一部の馬鹿共が強すぎるから、セーフモードを解除した上で、敵の能力を上げといたぞ。フヒヒヒ、お手並み拝見だな。』
「何余計な事させてくれたのよ戦闘狂共。」
「さっきの奴ら手応えなかったし、丁度いいじゃん。」
「戦いが得意なのは君達だけじゃないんだけどねー。」

先程からひしひしと感じる敵の気配に、凪は銃を取りだし、牡丹はグローブをはめる。理乃も戦闘狂共を睨み付けてから、メイスを取り出した。

「山岸さん、敵の数は。」
『三体だね。うち一体は強そうだよ、気を付けて。』
「了解。」

風花との通信を終えた直後、中に浮いたミサイル砲のようなマシンと、青い蛾のような蝶のようなモンスター、それからラビが現れた。

『敵、出現! 新規の敵がスカウトポッドとブルーグラス! それからお馴染みのウサギ鍋…ラビだね。』
『ナガミミちゃん、ラビと一緒に煮込まれてみる?』
『コムスメ、後で本社裏来い。(※自主規制)してや』
『わーっ!』

澪の余計な一言に反応したナガミミがあらぬ事をいったので、風花は慌てて通信を切った。

「…? (※自主規制)とは…。」
「気にしなくてい」
「(※自主規制)とは、(※自主規制)や(※自主規制)をする事であって」

※しばらくお待ちください

「君が自主規制してよねー。」
「」

先程の通信を聞いていた理乃に要らぬ知識を教えようとした牡丹は、即座に凪によって銃を乱射され、戦闘不能にさせられました。ちなみに他の純粋組は戦闘狂によって耳を塞がれていたので会話は聞いていなかったようだ。

『って、戦う前から何で味方同士で争ってるのと言いたいところだけど、今回ばかりはナイスだよ、凪君。』

何故、凪が牡丹を戦闘不能にしているのか。その理由を察した風花は、そうとだけ言っておいた。

「え、えーっと…。【リザレクション】、かけておきますか?」
「僕達だけで大丈夫だよー。それに、いい夢見てるみたいだし。」

凪がちらりと牡丹を見ると、かなりのいい笑顔で眠っていた。

「ノーデンス…クトゥルフ神話…うふふ…。」
(あんな事やこんな事を期待して来たんだねー。そんなもの、全然ないのにー。)

ノーデンスとは、クトゥルフ神話の旧神であり、比較的人間の味方である。尤も、神の尺度でものを考えている為、完全に人間の味方という訳ではない。
牡丹の企みは完全に破綻した事を、彼女は後に知る事だろう。今は、戦闘の方が重要だ。

「数的に不利だねー。でも、なんとかしちゃうのが僕達なんだよー。見てみるー?」

そう言いながら、凪は鈍く光る二つのキーボードを出現させ、カタカタと操作した。

「操らせて貰うよー。」

プログラムコードの鎖が目の前の敵全てに絡みつく。【ハッキング】完了だ。

「行きます、着火!」

続いて理乃がブルーグラスに向かって【フレイム】を放つ。ブルーグラスは炎に包まれ、燃え尽きた。
攻撃を終えた後、敵は反撃した。ラビは勇敢に理乃に噛みついて来たが、スカウトポッドは何もしないでボーっとしていた。

『ハッキングの影響で攻撃の手が止まったね! チャンスだよ!』
「はいはーい。それじゃあ…。」

凪はラビに向かって指差した。

「全部出しなよー。」

【スケイプゴート.x】により、ラビからエネルギーのようなものが放出され、凪と理乃に入り込んだ。ラビにダメージを与え、スキルを使うのに必要な“マナ”を取り込んだのだ。
ラビは耐え切れず、消滅した。

「どう? 魔法使えそう?」
「はい。…とどめですっ、落雷っ!!」

残ったスカウトポッドに向かって、理乃は雷魔法【ショック】を放った。スカウトポッドは弱点を突かれ、何も出来ぬまま消滅した。

「わーい、勝ったー。」
「ほ、本当に黄木さん無しで何とかなりましたね…。」

凪は喜びつつも、指先で拳銃をくるくると回しながら遊んでおり、理乃は本当に二人だけで何とかなるとは思わず、ちょっとだけ驚いていた。

「さー、先に進もー。」

眠ったままの牡丹をズルズルと引きずりながら、凪はずんずんと先に進んだ。

『…さっきの中継地点で生き返らせる事ができるって教えてやった方がいいか?』
『言ってもどうせ凪君、寄らないからいいよ。』

ナガミミと風花の、その会話を聞き流しながら…。

セブンスエンカウンター ( No.561 )
日時: 2015/10/31 23:09
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j62VnjSr)

しばらく二人きりの前線のまま道なりに進むと、展望台のような所なのか、空が一望できる場所までやって来た。
途中にあった中継地点で回復し、ようやく牡丹も合流(?)となった。

「うぅ、背中が痛みますわ…。女の子を引きずるなんてどういう神経してますの、凪…。」
「え、牡丹って女の子だったんだー。熟し過ぎて腐っちゃったお姉さんだと思ってたよー。」
「いちいち言動が酷くありません事!?」

ここでまともな戦闘狂と通信をしている風花は、心の中で(自業自得だ。)と呟いたが、これ以上グダグダさせるわけにもいかないので、思うだけにしておいた。

「…。」

そんな中、理乃は一人その輪を離れ、外を見た。
外は落雷が鳴り響き、建物は朽ち、そこかしこにフロワロが咲き乱れていた。

(まるで、滅んでしまった世界みたい。)

そんな外の様子を見て、理乃は思わずそう思ってしまった。

「(まぁ、これはゲームだし、本当にある世界が滅んだ訳じゃないよね。でも、本当に凄い再現力ね。本当に滅びた世界だと思っちゃうくらいリアルすぎて…。)さぁ、休憩は終わりにしましょう。山岸さん、この先は…。」
『うん、とても強い反応があるよ。』

風花の言葉に、全員警戒を強めた。
そして、外周を道なりに進むと、そこには青くて小さな、どこか可愛らしいドラゴンがいた。

『敵、リトルドラグ! 見た目は可愛らしいけど、結構素早くて強いから気を付けて!』
「今までの敵とは違うものと捉えた方がいいですね。黄木さん、緑谷さん、来ます!」

理乃が警戒を高めるよう言ったのとほぼ同時に、リトルドラグが襲い掛かって来た。

「くっ…!」

辛くも避ける一同だが、リトルドラグは更なる猛追を理乃にけしかけてきた。

「(早っ!? 二回行動する敵なの!?)くっ、このっ!!」

何とかメイスで防ぐも、少しばかり深手を負ってしまった。

「理乃さん!?」
「牡丹、回復は次だ! 今は少しでもこいつの体力を削らないと! 理乃さん、それでも行ける!?」
「は、はい、あと一撃くらいなら何とかしのげるかと…。」

牡丹は理乃を心配するが、凪の激と理乃の言葉に後押しされ、すぐにリトルドラグに向き直った。

「えいっ!」

そして懐に飛びかかり、【ジャブ】を繰り出す。
リトルドラグは仰け反り、わずかにふらついたが、まだ元気なようだ。

「(かなりの強敵だねー。理乃さん自身が打たれ弱いとは言え、ここに来るまでにあの戦闘狂共の暴走でかなりの敵を倒したから、後ろにいた僕達も経験値を貰ってるからかなり強くなってるはずだけど…。やっぱ一筋縄じゃいかないって事かな。【ハッキング】は効くかわからないから…。)よーっし。」

【ハッキング】が必ず効くとは限らないと判断した凪は、拳銃を一挺のみ握りしめた。

「狙い撃ちー!」

相手に狙いを定めて一発の銃弾を放つ。銃スキルの【エイミングショット】だ。
それは見事にリトルドラグに当たるも、まだ元気そうだ。

「(やはり一筋縄ではいかないわね。さっきあの馬鹿共が戦ったヘルクラウドとはまったく違う強さのようね。)氷結!」

理乃は痛む体を押さえ、氷魔法の【フリーズ】を放った。
致命傷を与えたわけではないが、かなりのダメージを削れた。

「よし、このまま押しきりましょう!」
「はい! ですがその前に…!」

リトルドラグが再び攻撃してくる前に、牡丹は気を高め、それを放出する。

「しっかり!」

その気は理乃を纏い、その傷を癒した。ゴッドハンドの回復スキル、【カイロプラクティク】だ。

「ありがとう、黄木さん。」

理乃はお礼もそこそこに、迎撃に備えて体制を整えた。凪も油断なく構える。
すぐにリトルドラグが再び二回攻撃を仕掛けてきたが、油断なく構えていたので、今度は避けるなり受け流すなりする事ができた。

「もう一発、狙い撃ちー!」

リトルドラグが油断している隙に、凪はすかさずその銃口から銃弾を放った。

「行きます、落雷!」

とどめの一撃と言わんばかりに、理乃は持てる力を出しきり、【ショック】を放った。
だが、まだ倒れない。

「うー、しぶとーい!」
「やはり、一筋縄ではいかない相手のようですね。」
「ですが、次の一撃で終わりにして差し上げますわ。」

牡丹から、力強い何かを感じとる。それを信じた凪と理乃は、防御をしてリトルドラグの攻撃に備えた。
リトルドラグはうまく牡丹を標的から外してくれたようで、彼女に怪我はなかったが、流石の攻撃に理乃が片膝をついた。

「理乃さん!」
「くっ、私に構わず奴を!」

かなり深手なのが見てとれるが、治している暇がない。
牡丹は深く深呼吸をし、気を高めた。

「内なる力を…!」

そしてすばやくリトルドラグの懐へと飛び込む。

「本気のパンチ!」

リトルドラグの体内に抉り込むような感じで繰り出されたその【正拳突き】は、リトルドラグに致命傷を負わせ、消滅させた。

「お疲れさまでした! 何とか倒せましたね…。」
「いやー、今回は本当に冷や冷やしたよー。理乃さん、大丈夫?」
「はい、どうやらレベルが上がったのか、一気に傷が塞がりました。もう立てます。」

どうやらリトルドラグを倒した経験でレベルが上がり、理乃の傷はすっかり癒えていた。他の二人もすっかり元気になったようだ。

「よし、じゃあ先に進むとしよー! あ、こっから鏡達にバトンタッチするよー。」
「え、いいの?」
「まだまだ遊び足りないでしょー? レベルが上がって傷が癒えたとは言え、僕達三人も正直言ってクタクタだし、遊んできなー?」
「私達は後ろで休んでいますね。」
「大暴れしていらっしゃいな、鏡、リリィ、ローズ。」

だが、丁度切りが良さそうなので、このまま1stメンバーに先まで進ませるつもりのようだ。
鏡達はその申し出をありがたく受け取り、大喜びで先へと進んだ。

セブンスエンカウンター ( No.562 )
日時: 2015/10/31 23:16
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j62VnjSr)

戻って、現実世界。
いつの間にか、ギャラリーが増えている気がする。

「わわ、凄いお客さん…。」
「他ブースで途中でゲームオーバーになった客がまだ続いているこいつらを見に来たみたいだな。」

余談だが、セブンスエンカウントの試遊ブースはここを含めて三つあり、それぞれ手分けしてやっていたのだが、どうやらそれほど実力のない客ばかりが集まったようで、すぐにゲームオーバーになったのだろう。

「…だが、それが普通なんだが…こいつらの戦闘能力半端ねぇな。」
「本社の方でも、何度か周回プレイしてるならまだしも、ここまで初回で来る人なんていなかったよね。3rdパーティまで特例で解放しているとは言え…。」

ナガミミと澪は風花を疑いの眼差しで見る。
風花はただ、静かに、

「…ちょっとした事情で、戦いに慣れてるだけだよ。ここにいるみんな…死線を越えてきた、戦士みたいなもの、と捉えてくれればいいよ。」

と、言うだけだった。

「ふーん、歴戦の戦士、みたいなものねぇ…。」
「なんだよジュリエッタ。ニヤニヤしやがって。気持ちわりぃ。」

何かを思い付いたかのようなジュリエッタの顔に、変態的な笑みが浮かんだ。

「最後のステージでアレを出しましょ。」
「アレをか!? デバッグどころか調整すら済んでねえよ!」
「数値をいじれば大丈夫よ。」
「で、でも危険じゃないですか!? まだあの人達にデバッグというか、テストプレイをさせてないし…。いや、アレが実際に動いているところを見れるなら嬉しいですけど…。」

後ろでなにやら不穏な会話を繰り広げるノーデンス社員。風花はそれに嫌な予感を感じとるが、今は記憶にだけ止めて聞き流す事にした。

(…流石にこれ使う事態にならなきゃいいけど…。こんな大勢の前でペルソナ呼んだら…考えたくない。)

ポケットにしまってある召喚器を、不安そうに触れる。できれば、そんな事態にならないようにと、願いながら。











戻って、東京スカイタワー内。

「逃げたつもりっ!」
「【召喚:氷のマモノ】!」
「おやすみなさい。…私もこたつで眠りたい。」

各々スキルを放ちながら、敵を蹴散らしていく。使い慣れない獲物にもようやく慣れてきたようで、不自由なく振るえていた。だがおい最後。

「リリィ、飽きたのかー?」
「ううん。おやすみなさいばっかり言ってたら、こたつが恋しくなってきた。お布団でもいい。」

どうやらリリィはぬくぬくお布団かこたつの中で眠りたくなっただけで、飽きてはいないようだ。

「あはは…。あ、エレベーターがあるよ!」
『あのエレベーターを上れば、ゲームクリアみたいだよ。』
「ついにゴールかー。」
「まだまだ暴れたりないな。」
「貴方達はいい加減にしてちょうだい。」
「ハイ。」

戦闘狂が何かを言おうとしたが、即座に理乃の有無を言わさぬ圧にて黙った。
そしてエレベーターに乗り込み、最上階へと上り詰めた。

「はー、長かったー。」

そこから見える景色はやはり滅びた世界のようだったが、今はそんなのを気にせず、達成感を溢れさせていた。

「…!」

そんな時、だった。とてつもない威圧が、一同の肌に突き刺さった。

「な、なに、これ…!?」
「きょ、鏡、怖いよ…!」
「ジョーカー様のともまた違う…! なんだ、この威圧感は…!」

突然の出来事に、リリィとローズは怯えて鏡の後ろに隠れ、フランシスは油断なく短刀を構えた。

「何なんだよ、この鋭い殺気は…!」
「この出口と反対方向に、強い気配を感じます。」
「こんな装備で勝てるのかよ…。」
「大丈夫だ、問題ない。…といいたいところだけど、今回はこの殺気から察するに、多分無理かもね。」

鏡達よりも戦闘慣れしている理乃達は、相手の力量がその殺気だけで判別できたのか、会話はいつも通り繰り広げているが、余裕のない表情を浮かべている。

「あのタブー並みの緊張感ですわね…。」
「これもゲームの内なの…?」
「風花さーん。敵の正体、判るー?」

凪は武者震いしている牡丹と怯える鏡を他所に、風花に敵の正体を問いただした。

『敵は…確かに理乃ちゃんの言う通り、今君達のいる反対側にいるけど…。駄目…! 今の凪君達じゃ、勝ち目がないよ!』
「それは何となく察してましたが、あれを倒さない限り、ステージクリアにはならないんですよね?」
『その通りよ。アナタ達には悪いけど、ちょっとしたテストも兼ねてまだ調整中のモンスターを入れさせてもらったわ。』
「つまり、僕達は実験台なんだねー。ゲーム的にはテストプレイヤーって言った方がいいのかなー?」
『ボウヤはよくわかってるじゃない。安心なさい、死ぬ前にはちゃんと起こしてア・ゲ・ル。』

不安が残るジュリエッタの通信に、全員腹を括った。

「『死ぬ前』って…負けたら死んじゃうの…?」
「喩えだよ。多分…。」

喩え話である事を信じつつ、奥まで進む。
そこには、悪趣味な金色を持つ、巨大なドラゴンがいた。リトルドラグなんて目じゃないくらいの大きさを持ち、その威厳から放たれる威圧感が、まるで重圧のように鏡達に襲いかかった。

「まるで、王様がドラゴンになったみたい…。」
「クァハ、クァハ…巧い喩えを口遊むな、家畜の分際で。」
「あれれ? 風邪引いたのー?」

凪のその発言に、その場にいた全員ずっこけ、ドラゴンは固まった。

「挑発なのか素なのかわかんねぇなおい。」
「あれって、咳なのかな? 笑い声に聞こえたけど…。」
「どちらともとれるな。」

由梨が苦笑を浮かべつつ起き上がりながら、リリィと紅刃の会話を聞いていた。いや、聞き流していた。

『あれは竜王ニアラ! 病気に罹っていたとしても油断しないで!』
「風花まで何言ってる。」

フランシスは風花の通信に思わずツッコミをいれてしまうが、そんな場合ではない。

「クァハ、クァハ。家畜の分際で生意気だな。」
「そっちこそ、猫の癖に生意気。」

今度はリリィの発言が味方を転ばせ、ドラゴン—ニアラを困惑させた。

「え? 家畜、答えろ。どういう意味だ?」
「あれ? さっきと雰囲気が変わったぞ。こいつ、プログラムだよな? 仕様か?」

軽いキャラ崩壊が起こったであろうニアラを見た紅刃は、別の意味で困惑した。

「“にゃあ”って割には堅そうな身体。重くないの?」
「溶かして招き猫を作ったら御利益ありそうだね。」
「にゃあにゃあ! にゃあん!」

そんな紅刃を他所に、純粋な子供達が罵倒(?)する。これには全員固まりました。ええ、ニアラも固まりました。

『これが、ノーデンス社の人工知能なのかな? 様子が変わるなんて凄いです!』
「いや、風花ちゃん? これが本当に人工知能だったら俺色々と研究したくなるけど。つか様変わりしすぎっしょ!?」
(兄貴も適度なキャラ崩壊起こしてんな…。)

普段はセクハラをするギャグカオス大好物な兄も、これには妹同様ツッコミに回るしかない。

「く、クァハ、クァハ…。面白い家畜達だ。それでこそいたぶり甲斐があ」
「“にゃあ”って弱そうな名前。」
「ボク知ってる! あれって“死亡フラグ”だよね!」
「実は身体が“ふにゃあふにゃあ”って事はないよね?」

次々と罵倒(?)する純粋な子供達に、

『オイ、先に進めねえからさっさと戦いやがれ。』

流石のナガミミ様も先を促しました。

「はーい! さぁ、にゃあ! にゃあって鳴いてみろー!!」

鏡はすばやく剣を振るうも、まったく攻撃が効いているような気がしなかった。

「え、き、効かない!」
「クァハ、クァハ! さぁ、鳴くのはどちらの方か、思い知らせてやる!」

すっかり機嫌を取り戻したにゃあ、もといニャア…あれ?

「喧しく囀る家畜よ、後で貴様も喰らってやろう。」

名前忘れられたからってナレーターにも八つ当たりしないの、ニャア様。

「誰に向かって喋ってるんだ? あいつ。」
「バグでしょうか?」
「脳みそが金でできているんじゃないのか?」
『テメエ等そろそろその罵倒やめてやれ! 戦闘が進まなくなるだろうが!』

挑発なのか素なのかわからない罵倒が続いているので、流石のナガミミもそう叫んだ。

セブンスエンカウンター ( No.563 )
日時: 2015/10/31 23:20
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: j62VnjSr)

現実世界…。

「ったく…。何なんだよアイツ等。あれは挑発なのか? 地なのか?」
「う、うーん、この場合は無邪気故の残酷さかな?」

呆れて溜息をつくしかできないナガミミに、風花は苦笑を浮かべながらそう言った。

「まぁいい。あのチビスケの攻撃が効いてないんだ。どう考えたって無謀な戦闘だろうが。」
「そうねぇ、やっぱり強すぎたかしら。」
「それなんだけど、ニアラの能力値が何故か設定を大きく上回っているみたいです。」
「どういう事だ?」

ナガミミが聞くと、澪が困った顔をしてナガミミに話す。

「本当は、能力値はもっと低く設定していたし、データを入れる時も設定通りのはずだったの。でも、今のニアラの能力値は上限すら超えていて、その…。」
「ハッキリ言え。問題が分からなければ対処のしようがねえ。」
「バグが起きたの。ニアラの能力値が大きくなるバグが。」
「ごめん、それ確実に無理ゲーだよね。レベル1の勇者がいきなり隠しボスに挑むくらいに危険だよね。」

澪からハッキリと告げられた言葉に、風花は思わずツッコミを入れてしまう。

「これ、アイツ等連れ戻した方がいいんじゃねえのか? 強制的にログアウトさせるなりよ。じゃなきゃヤベェぞ。」
「そうね。今回ばかりはショックも大きいだろうし、ログアウトさせて…あら?」
「どうかしましたか?」

困惑するジュリエッタに、風花は不安になる。まさかまた問題がと、疑ってしまう。

「まずいわ! バグの影響か、強制ログアウトも無理になってる!」
「え、ええっ!?」

どうやら、強敵を前にして完全に逃げられない状況に陥ってしまったようだ。

「オイ! ログインはできるのか!?」
「う、うん! ログアウトはできないけどログインなら…。」

澪のその言葉を聞いたナガミミは、一瞬だけ考えた後に、告げた。

「…13班を呼ぶぞ。」
「! …そうだね。こうなった以上、あの人達に頼むしかないね。」
「13班?」

焦る風花の耳に聞こえた、“13班”という単語に、風花は首を傾げ、ナガミミに訊ねた。

「ノーデンス社の特別テストプレイヤーだ。アイツらなら、ニアラの脅威を退けてくれるだろう。安全を確保した後で、どうにかログアウトさせるしかねえ。」
「でもナガミミちゃん、13班が来るまで時間がかかるよ! その間にあの人達が…!」
「…攻撃が効かないなら、避け続けるしかないよね。」

風花は覚悟を決めたような表情を浮かべ、ポケットから召喚器を取り出した。

「みんな、聞いて。」

そして、通信を使い、一同に語りかけた。

「多分、通信を通じて状況は理解できたよね。」
『かなり絶望的な状況だって言うのは理解できたよー。バグで強くなったボスに、強制ログアウトも不可能。これ本当に詰みゲーだよねー。』
「うん。それで、助けを呼んでくれるみたいだけど、その人達がいつ来るかわからない。」

こうなってしまった以上、やる事は、ひとつ。

「テレビの外から中の干渉ができたから、多分今回もうまくいくと思う。…バックアップの仕方を切り替えるよ。」
『いつも通りにやるんだな。了解。』

由梨の声が通信越しに響いた後、

『僕にも、少し考えがあるんだ。時間頂戴。その間にみんなは風花さんの指示通りに避けてー。』
『私も、内側から敵の攻撃を読むのに専念します。何か変わった事があれば、山岸さんにお知らせしますね。』
「頼んだよ、凪君。それからありがとう、理乃ちゃん。心強いよ。」

何か考えがあった凪と、簡易的な察知能力を持つ理乃の声に安堵し、風花はこめかみに召喚器を当てた。

「オ、オイ、何をして」
「大丈夫。心配しないで。これが私の…ナビゲートの仕方だから。」

拳銃で自殺でもしようとしていると思ったナガミミは風花を止め、ジュリエッタは澪の目を塞いだ。
だが、何も心配はいらない。

「来て、ユノ!」

躊躇いもなく引き金を引くと同時に、風花の体がユノの球体の中に包まれた。

「え…!?」

始めてみるその光景に、全員呆然としていた。

「ナガミミちゃんと澪ちゃんはその人達を呼んでいて。ジュリエッタさんは何か変化があれば知らせてください。」
「わ、わかった! コムスメ!」
「うん!」

澪はナガミミに言われるがまま、携帯を持って走った。
ジュリエッタもパソコンの前にスタンバイする。

「みんな、これはもうゲームなんかじゃない。当たったら即死の実戦だと思って。」
『何を今さら。』

由梨の言葉に、風花は確かに、と心の中で思う。

「そうだね、数々の修羅場を潜り抜けてきたみんなだし、今更だよね。…来るよ!」

風花の言葉が響いた時、ニアラとの鬼ごっこが開始された…。


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