黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。

作者/山下愁 ◆kp11j/nxPs(元桐生玲

第6章『俺達の管理人がこんなに可愛い訳がない』-1


「何でしょう、これ?」

 私の兄から何か不思議な液体が送られてきました。
 香水――の、ような感じが、しますね? いい匂いがします。フローラル?

「試しにつけてみる事にしましょう!」

 ――まさか、それがあんな事になるとは、夢にも思いませんでした。


翔「第6章」

空華「俺達の管理人が」

全員「「「「「こんなに可愛い訳がない!!」」」」」

白刃「はーじまーるーよー」


 ~空華視点~

「――――――――」

 俺様は指の先を睨みつけながら思案する。
 次の技は、指の先に雲を生み出す術。それの暗唱をどうしたらいいのかを考えているのだ。俺様は暗唱しないと発動されないのだ。
 そりゃ木の葉隠れとかは呪文はいらないけど。自作の『涙雨』や『散り桜』は呪文の詠唱が必要になってくる。
 あーぁ、他の奴らがうらやましい。呪文の詠唱をしなくていいんだから。

「王良ー、大丈夫か?」

「うーっ! テメェ、俺様を苛めて楽しいか? 国語の弱い俺様は呪文を考えるのにも一苦労な訳!!」

 そう言って俺様の顔を覗き込んできたのは、憎き担任・渋谷零。
 読みは『しぶたに/れい』だ。しぶや、と言うと怒られるのは謎。

「国語が弱いと言われてもなー。お前、我流忍者だろ? その当主だろ? なのに呪文の1つも考えられないのかよ」

「うぜー、こいつうぜー。【花よ。散り逝き終われ。夢へと咲け】――」

 教室内に風が起こり、渋谷の周りに花弁が生まれる。桜の花弁だ。

「我流忍術――散り桜!!」

「うぉぉおおお!!」

 バンッと音がして、術が弾ける。
 いつの間にか、この渋谷の周りには壁みたいなのが出来ていた。空気の壁だ。
 そう。特別クラスが能力者の集まりなら、担任も能力者だ。こいつの場合は空気使い(エアリアルマスター)という。

「チッ。死ね!! マジ死ね渋谷!! 俺様を苛めるなら翔に裁かれて死んでしまえ!!」

「はっはー! 俺は簡単には死なねぇぜ! 何せ俺は空気を操る――」

「ほう。だったら俺の技も簡単によけられちまうよな? そうだよな????」

 翔が鎌を渋谷の首に突き立てた。ザマミロ。
 さて、そろそろ本格的に暗唱を考えなきゃ――。

 うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 廊下から野太い声がして、俺様達はひっくり返った。
 ヘッドホンをしていた悠紀すらも顔をしかめ、廊下を睨みつける。

「何。この野太い声」

「さぁ? 女子のパンチラでも見たんじゃないの?」

 蒼空が適当な答えを返した。
 え、それだったら超見たいんだけど。
 だけど、その次に聞こえた悲鳴で分かった。

「きゃぁぁぁああああ!! 来ないでくださいー!!」

「ぎ、銀ちゃん?!」