黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。

作者/山下愁 ◆kp11j/nxPs(元桐生玲

『劇場版。黒影量は今日もお祭り騒ぎです!~空と海と未来の花嫁~』-1


登場人物&プロローグ


・黒影寮より
神威銀……黒影寮の管理人。銀の鈴(他人の能力を増強及び回復。そして神降ろしにも使われる)であり、今回は未来の女王になるとか?!
王良空華……黒影寮の住民。飄々としていて掴めず、何かと色々できる王良家当主。
東翔……黒影寮の寮長。炎の死神であり、女嫌いが目立つ。統率は取れるが、常に俺様態度。
椎名昴……黒影寮の副寮長。翔の幼馴染でもあり、呪いの踊り子と言われている。今回は非常に役に立つ?
二条蒼空……重力操作を得意とするムードメーカー。天性の明るさと馬鹿発言で今日もみんなを和ませる。
堂本睦月……超能力者。飴玉が大好きな関西人。だけど容姿は外人。少しM気もある。
月読怜悟……シャーマン。無口で方向音痴。だが幽霊とは会話する。かなりの怪力。
篠崎蓮……肉体変化ができる少年。短気だがへたれな一面もある。ビビりやすい。
祠堂悠紀……言葉使い。小説家を目指している奴だが、性格はひねくれもののあまのじゃく。
国枝つかさ……女装した女の子。レズビアン。ナイフでの攻撃が得意でキレると爆発的に戦闘能力を上げる。
轟白亜……相手を洗脳するのが得意な女の子。銀の友達でもあり、何かと色々協力したりする。
高梨羅……物質分解。銀の友達でもあるが、本人いわく『銀(鈴)の恋人』
神威白刃……銀の兄。鏡で相手の心理を読む鏡の来歴探知。天然なところもあるが妹思い。零とは先輩と後輩の間柄。
渋谷零……空気使い。英学園の先生で、怜悟と同じく方向音痴。動物が嫌いで蓮を敵視。
神威鈴……銀のもう1つの人格であり、神降ろしを担当。何でもバッサリ物事を切り捨てる。今回は銀と離れ離れに。

・俺様メイドより
相崎優亜……相崎家のお嬢様。じゃじゃ馬なところが目立つおてんば娘。銀の友達として認識される。
瀬野翔……相崎家のメイド。優亜の事をしっかりと考えている完璧メイドだが、実は男。
久遠燐……秋崎家の執事。何かと翔の事を敵視しているようだが、いつもにこにこしている。紳士。

・2の2くえすとより
八雲優奈……2の2くえすとの白銀の死神。ルーキーでもあり奇声を発して駆けまわる程の変人。今回は女王近衛兵として活躍。
八雲優羽……2の2くえすとの案内人でもあり、優奈の実兄。実際は生きているが今回は生き霊として登場。案外真面目な奴。
水無月彩佳……2の2くえすとルーキー。メイド服を常備着ているが、メイドではない。性格はドS。
武藤美影……2の2くえすとのルーキー。毒舌なところもあるがそれが彼女なりの優しさ。頭がいい。
崎守翔汰……2の2くえすとのルーキー。馬鹿な性格が目立つ奴。蒼空と同類?
榎本直人……2の2くえすとのルーキー。世話好きで人情家なお兄ちゃん的存在。
天城翼……2の2くえすとのルーキー。いつもボケーとしている奴でお父さんみたいな奴。昔口調を使う。
リオン・アバランチ……夜桜の武人。少し自己中でS気質なところもあるが本当は仲間思い。

・今回オリジナルキャラ
神威涙……銀の遠い子孫。脱走癖がひどく、今回もどこかへ脱走し行方不明に。日本の第1000代目女王。
東翔……未来の東翔。現在2700歳。若干女嫌いは治りつつあり、死んだ黒影寮の子孫を見守る役目を担う。神社に祀られているだとか。
王良閃華……王良家の第100代目当主。空華とは違うが過去の空華と記憶を共有している。


 とあるお嬢様の家には、招待状が届く。

「優亜お嬢様。これは一体――?」

「さぁ。分からないわ」

「開けてみたらよろしいのでは? 優亜様宛てですし」

 1人の女の子と2人の召使が、女の子が開けた招待状を見る。


 せせらぎ町では、とある中学生の集団が新たな話に出会う。

「うわ。また2の2くえすとが始まった」

「今度は何だよー」


 そして白雪町では、黒影寮のみんなが招待状を見やる。
 銀は眉をひそめて文章を読んだ。

「この物語は、未来の花嫁を決める物語である」

 訳が分からない、と思っていた矢先だ。
 彼女の体が横へ傾く。何故か? 意識を失いかけているからだ。
 そのまま銀は意識を手放す。




劇場版 第1章


 黒影寮ども+白刃、零、白亜、羅が目覚めた場所は森だった。どこの森かもわからない森。ただ1つ言える事は、黒影寮の森ではない事だ。
 空華は立ち上がって辺りを見回す。

「……ここは一体?」

「さぁな。人の気配が見つからない。異次元の空間か――創造主系の奴らが一斉にせめてきたか?」

 翔が怪訝そうに眉をひそめ、空中から炎の鎌を取り出す。一瞬で死神スタイルになると、森の奥へ消えていった。
 その背中を見て、昴は一言。

「迷うなよ。怜悟みたいに」

「人を何だと思っている」

 怜悟が恨めしそうな声を上げる。

「あの、すみません。何で私らまで呼ばれたんスかね? 私、何もしてないッスよね。黒影寮にも行ってないし」

 そこで、白亜が手を挙げて発言した。
 全員「さぁ?」と台詞を返す。当たり前だ。自分達だって理由が分からない。とりあえず森で寝ていた理由が知りたい。

「まぁとりあえず、俺も散策してこようかな?」

 と、零が伸びをして立ち上がる。瞬間に睦月と蒼空に腕を掴まれた。

「何をする2人とも」

「「死にたいなら行ったら?」」

 2人同時に言う。しかも真面目な顔で。
 零はしぶしぶ散策を諦めた。自分が方向音痴だという事を理解していないのだろうか?
 すると、今度はつかさが声を上げた。

「ねぇ。銀ちゃんは?」

「ハァ? 銀ちゃんならどっかに――」

「いないんだけど」

 ん? と全員は首を傾げる。
 銀はみんなの近くで白い封筒を開いていた。それを見た時、全員は寝てしまったのだ。
 だからてっきり銀が近くにいるものだと勘違いしていた。

「ちょ、昴! 翔を連れてきて!」

「もう連れてきた」

「何をするーっ!」

「一大事! 銀ちゃんがいないの!!」

 全員輪になって作戦会議を開始する。

「銀はどこに行きやがった?」

「とりあえず、ここら辺にはいないと思う。銀髪なんてそうそういないじゃん? 蓮。においとか分かる?」

「ダメだ。色んなにおいと混じってる――ん? 待て。人がいるぞ」

 肉体変化のおかげか、人の数万倍の嗅覚を持つ蓮が何かを嗅ぎつけたらしい。
 蓮を頼り、森の中を歩く。そこには案の定、人がいた。しかも結構な人数が。どうやら何かいい愛みたいなものをしているらしい。
 1つのグループはメイドと執事のグループだった。メイドの方は黒いつややかな髪で、ポニーテールに結んでいる。身長は高め。執事の方も黒い髪だった。腰には金色の懐中時計を吊るしている。
 もう1つのグループは中学生の軍団だった。メイドやら制服やら色々な個性豊かな奴が勢ぞろいしている。

「おいおい、何を言いあいしてるんだよ」

「蒼空」

 黒影寮1のおせっかい、蒼空が2つのグループの衝突に首を突っ込んだ。
 ぐりん。グループ全員の視線が蒼空に注がれる。

「「「「「テメェが俺らの――――!!」」」」」

「どぉわ!」

 そして一斉に攻撃される。
 蒼空は寸前で回避して黒影寮の全員のもとへ戻った。

「テメェが優亜を……。とっとと返せ! 首と胴体を離れさせたくなければな!」

「何を言ってるのさリアルメイドさん! こいつはあたしらがやるんだよ、やーさんの居場所を訊かないと!!」

「何をおっしゃっているのです? あなた方をお相手するのは僕です。翔さん、今のうちです。そちらの集団はやってください」

「ハッ! 終わるのはお前らの方だよ! おいら達は最強なんだからな!」

 そして2つのグループが戦い始める。当然その飛び火は、黒影寮にも振りかかった。
 主にメイドから。

「テメェらから先に始末してやる。遺言すらも許さない。命乞いもするな。ただ――くたばれ!」

 メイドはその綺麗な姿に似合わず、大きな鎌を振り回してくる。それはまさしく、翔が使っている鎌と同じだ。
 チッと舌打ちをした空華は、苦無でメイドの鎌を受け止めた。ガキンと拮抗する音が生まれる。

「ほう、やるじゃねぇか」

「あのね……メイドさんが! そんな物騒なものを振り回しちゃダメでしょー!」

 メイドに足払いを食らわせ、転ばす空華。だが、その首筋にはしっかり鎌の刃が突き立てられていた。

「……メイドを馬鹿にするなよ」

「やるねぇ。怖い」

「こっちも忘れるな!」

 メイドと空華は素早く反応し、襲ってきた雷龍を回避する。
 どうやら茶髪の中学生が撃ったらしい。その手には巨大な棒が握られている。

「やーさんはどこにやったんだー!」

「誰だよ、やくざかよ」

「ちげー! おいら達の仲間だよ!!」

 ギャーッと叫んだ茶髪の中学生は、構わず雷龍を撃ってくる。
 黒影寮もさすがに我慢の限界に達したらしい。
 それはそうだ。自分達も己の管理人・銀を探しているのにもかかわらず、いきなり犯人扱いをされて「返せ」と言われた挙句戦いを挑まれたのだ。
 これはもう、買うしかあるまい。

「まとめて相手してやるぜ、この弱者ども! 黒影寮を舐めるなよ!」

 翔の号令1つで黒影寮は動き出す。
 3つの軍勢が互いの力を駆使して戦って――――


「ディレッサ。奴らの力を奪い取れ」


 3つの軍勢が、一瞬で地を這う。何者かに体力と自分の能力を奪い取られたらしい。

「な、お前……!」

 空華の目が見開かれる。
 彼らが見据えた先には、ディレッサともう1人――銀に似た少年の姿。

「鈴?!」

「よぉ。喧嘩するなら止めといた方がいいぞ。今度はルテオを呼ぶ」

 鈴は緋色の扇を弄びながら、そう答えた。

「ルテオ? 神と通話できるぐらいの能力しかない天使を何で――」

「この世界を司る神(作者)と通話し、この世界を終わらせる」

 つまりこの小説のエンドを示す。
 全員はプライドとかそのほかもろもろをゴミ箱に捨て去り、こう告げた。

「「「「「ごめんなさい」」」」」