黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。
作者/山下愁 ◆kp11j/nxPs(元桐生玲

第9章『本当にあった黒影寮の怖い話』-4
「思い出したんスけど、私もそう言えば怖い話を体験したんスよね」
「え、白亜さんも?」
「そうッス。これは私が14歳の時、中2の時に」
皇学校2年F組4番目~白亜視点~
その日はバスケ部が遅くまであった。私はスタメンに選ばれていて、遅くまで居残って練習していた。
先輩に声をかけられて、私は制服に着替えていた。
「あ、忘れた」
そう言えば、今日は宿題が出てたっけ? そんな事を思い出した。
忘れたら廊下に立たされる。そんなのはごめんなので、私は教室まで取りに行った。
辺りは暗い。廊下は非常灯しか電気が点いていない。
「うー、暗い」
何とかして教室にたどり着いた時に気づいた。
隣のクラスの電気が点いている。誰かが教室に残っているのだろうか。
「誰かいるんスか?」
教室の中を覗くと、誰もいなかった。消し忘れか。
私は教室の電気を消すと、ドアを閉めようとした。
「閉めないでください」
声が教室の中から聞こえた。誰かが残っていたのだ。
私は急いで電気をつけて、教室の中を確認した。だけど誰もいない。
聞き間違いか、と思って電気を消した。教室のドアは閉めないでおこうと思い、そのままにしていた。
パチン
何かが弾かれる音がした。明らかにそれは電気をつける音だ。
私は教室の中を覗くと、誰かが椅子に座っていた。
壁際前から4番目。うつむいてじっと座っている。さすがに怖い。
「あの、誰ッスか」
「……」
その人は答えなかった。
私はもう限界が来て、さっさと宿題を取って帰ろうとした。
「行かないで」
「?!」
4番目に座っていた子が、いつの間にか前にいた。
私は鞄で攻撃して、その場から逃げだしたんス。怖かった。
あとで調べたら、その教室はすでに立ち入り禁止になっていた。元々、そのクラスは身体障害者を集めたクラスだったらしく、その4番目の子が自殺したらしい。
「怖い! マジで怖いんだけど!!」
「羅さんビビりすぎッスよ」
「だって怖いです白亜さん何でそんな怖い体験を――!!」
「じゃ、次は俺! これは俺が体験した話なんだけどさぁ」
黒の少年~蒼空視点~
俺は当時、仲の良かった奴らがいた。織川理央、木崎音緒、浅比奈奏人っていう奴らな。
その4人で色々馬鹿やったりしたな。
で、これは14歳の時なんだけど。その日は遅くまで学校に残って怒られてたんだ。
「蒼空、テメェのせいだ」
「何で俺なの?!」
いたずらに失敗して、俺はその3人と怒られてた。主に俺のせいにされてたけどな。
教室に帰り、さっさと家に帰ろうとした。その時、
「教室に誰かいないか?」
理央がそんな変な事を言いだした。
いや、誰もいないだろうよ。いたとしてもそいつは部活の野郎だ。まぁ6時だけど。
教室を覗くと、全身黒ずくめの奴が黒板の方を向いていた。
「……誰?」
「俺が知るか」
「知らない」
「知る訳ねぇ」
いや、この野郎。俺も知らないけど。
とにかく全身黒ずくめは嫌だな。気味悪いし。早く荷物持って帰ろう。
「……ねぇ」
「ハイ!」
呼ばれて思わず返事した。そんで奏人に殴られた。メッチャ痛い。
黒ずくめの奴が、こっちを振り向く。のっぺらぼうだった。顔がない。
「遊ぼうよ」
「…………」
俺は静かに理央達へヘルプの視線を送った。だけどあいつらも奴を見て固まっている。
役に立たねぇぇぇえ! 何だこいつら、固まってんじゃねぇよ!!
「じゅ、重力操作――減少!」
近くにあった机を軽くし、持ち上げる。そして奴に向かって投げつけた。
「重量操作、増加!!」
ガァンと盛大な音を立てて、奴へ当たる。
そのすきに理央達を起こして、俺らは教室を飛び出した。
「あいつ誰だ?」
「さぁ?」
「知らない」
「知る訳がねぇ」
「ですよねー」

小説大会受賞作品
スポンサード リンク