黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。
作者/山下愁 ◆kp11j/nxPs(元桐生玲

『劇場版。黒影量は今日もお祭り騒ぎです!~空と海と未来の花嫁~』-4章
ここで少し銀視点です。つまり私です。
えーと、まず最初に気づいたのは、私は2人の女の子と一緒にベッドに寝かされているというところです。
何ででしょう? 私にも分かりません。
1人目の女の子は、茶色のセミロングが似合っているいかにも女の子っていう感じの女の子です。
もう1人は私と同じ銀色の髪をした、中学生ぐらいの女の子です。身長も私と同じぐらいです。
何をされるのでしょう。これから。
「ぅぅ……眠い」
「ふぁぁい。おはようございます~」
茶髪の女の子と銀髪の女の子が起き上がりました。
「おはようございます。あの、ここがどこだか分りますか?」
「全然。ねぇ、それよりも訊いていいかな。私の他に誰かがいたと思うんだけど、知らない?」
「知らない。うちも仲間がいたんだけど、見当たらないな。優羽ー、いねぇ」
それぞれ別の人を探している様子です。当然私も探しています。黒影寮の皆さんを。
ど、どこに行ってしまったのですか?!
「ま、いいか。あとで施設内を駆け回って探そう。君名前は?」
「お、じゃあうちも名乗っておいた方がいいのか? わーい、じゃあうちから最初」
銀髪の女の子はベッドから飛び降りますと、胸を張りました。
「うちの名前は八雲優奈! あだ名はやーさん。ちなみに独身よろしくね!」
独身なのは当たり前でしょう。あなた、未成年でしょ?
次に名乗ったのは茶髪の女の子です。
「私は相崎優亜。優亜って呼んでね」
「相崎って、あの薬品会社からおもちゃ会社を束ねるマルチ総合会社の?」
「そうよ。いや、正確には分からないけど、多分」
優亜さんはえへへ、と照れ笑いを浮かべました。
やーさんと名乗った女の子は、広い部屋を駆け回っています。
「それで、あなたは?」
「私は神威銀と言います。よろしくお願いしますね」
「銀ちゃんね。よろしく!」
お互いに手を取り合い、私達は笑いました。
その時です。
ドアが開きました。中から入ってきたのは、黒いスーツを着て黒いサングラスをかけたマッチョな男性です。怖いです。
「お目ざめになられましたか、クイーン」
「クイーン?」
***** ***** *****
翔が祀られている神社に一時的に避難し、全員で思考する。
これからどうするべきか。3000年の世界なんて行った事ないからな。
「で、テメェらはこれからどうするんだ?」
「どうするか考えてるんだよ。テメェも考えろ!」
過去と未来の翔が言いあいをする。ある意味シュールな光景である。
そこで、鈴が未来の翔へ尋ねた。
「失礼ですけど、今何歳ですか?」
「ん? これでも2700歳だ。そこの異世界の野郎どもは引くんじゃねぇよ。本当の事だ。死神は100年に1度しか誕生日が来ないからな」
「と言う事は、あなたは27歳なんですね?」
直人が未来の翔へストレートに訊く。それに頷く未来の翔。
「27ぁぁぁぁ?! 若ぁ! 今の翔ちゃんと変わらないし!」
「ハァ? これでも老けたなとか思うぞ。髭も生えるし」
「ひげぇぇぇ?!」
悲鳴のような声を上げて昴は倒れそうになる。そこで翔が鎌で昴の頭を叩いた。
「真面目に話を進めるぞ。年の話をしている場合じゃ――」
そこで、翔の声が途切れた。
何故なら緊張した空間に、まさかのA○B48が流れたからだ。ちなみに曲名は『ポニーテールとシュシュ』である。
「あ、俺だ」
「テメェか」
未来の翔が虚空へと指を滑らせる。すると、テレビの画面みたいなのが出てきた。
「ニュースを知らせるアラームだよ。1000年前の曲の方が温かみがあるからな。今は機械だ」
テレビの画面にはニュースキャスターロボが、紙を持ってニュースを読み上げている。
機械的な声で読み上げられたのは、こんなニュースだった。
『クイーン・涙様が近々婚約をされるとの事であり、政府はどこの国の王なのかを調べる事になり――』
「へぇ。涙が婚約か」
知らない名前を口にして、勝手に頷く未来の翔。
不思議に思った怜悟がその涙について未来の翔へ訊くと、
「神威涙って女だ。この国を再建させた神威家の娘」
「神威って、黒影寮の人が探してる神威銀って奴の娘とか?」
「銀は長生きだな。500年も生きていたのか。馬鹿かテメェ。人をよく学んでから言え」
翔汰の言葉を未来の翔は変わらぬ毒舌で一蹴する。
「銀の遠い子孫だ。神威家は続いたらしいな。再建の筆頭となりこの国を立て直したのさ。だからクイーン呼ばれるようになったんだろ」
全員でテレビ画面に目を向ける。
そこに映っているのは、まさに銀そのものだった。銀髪のセミロング、黒い瞳。これで服装が白いドレスじゃなければ完璧に銀だ。
真っ先にぶっ倒れたのは羅だ。
「ハゥ。銀ちゃんマジかわいい……」
「羅さん。あれただのドレスッスよ?」
でもかわいいな、と冷静な答えを返す白亜。兄である白刃も同調した。
次のニュースへ移るキャスター。
『涙様のご友人が入国されまして――』
「友人なんていたんだ」
『名前は相崎優亜様。おそらくアメリア平和国の姫と見られ、異国の言葉をしゃべり――』
「相崎優亜だって?!」
そこへ瀬野翔が食いつく。確かに画面に映っているのは優亜だった。こちらは青い色のドレスを着ている。
とりあえず無事だと言う事を知った瀬野翔と燐は、静かにその場へ座り込んだ。
『そしてクイーン特務警備隊が結束され、その筆頭となったのはわずか14歳の少女。名前は八雲優奈――』
「やーさん?!」
今度は優羽が食いついた。画面に映ったのは銀髪で青い瞳の女の子。穢れのない白い鎌を片手に、廊下を疾走していく。
『やーさん走っちゃ危ないですよ』
『大丈夫だって。うちは死なない♪ 銀ちゃんも走ろうよ』
「銀?! 涙じゃないのか!」
優羽を払い、黒影寮が画面を占拠する。あれ、でも何で? そこにいたのは涙じゃなくて、銀?
未来の翔はそんな3チームに、残酷な事を告げた。
「そいつらがどこにいるか教えてやろうか?」
「「「ぜひとも」」」
「あそこ」
神社から見えた高い建物を指す。
かなり遠い場所にあるビルのような建物――
「クイーンズ・オブ・キャッスル。あそこな」
「「「嘘だろ?!」」」
劇場版 5章
「何で銀はあんなところにいるんだ!」
蓮が未来の翔へ掴みかかった。いや、そう言われても未来の翔も答えようがない。
おそらく、こちらに来る際に銀だけ別のところに飛ばされた結果、クイーンズ・オブ・キャッスルだったのだろう。だがそんな事を話しても、聞き分けのいい(というか能力持ちである)黒影寮はいいけど、瀬野翔とか燐とかルーキーとか聞き分けなさそう。
――という作者の見解。いかがでしょうか?
「零点」
何だと。リオン、お前覚えておくがいい。
「蓮、落ち着け。何も銀を救えないと言う訳ではないだろう。空華、あそこまで飛べるか?」
「無理かな。さっきからやってるけど、結界みたいなのが張ってある」
空華は自身を転送する術、『終り空』の呪文を唱えている。が、成功していないらしい。
睦月の瞬間移動も距離の問題で無理だと判明。
「だったら空間移動術を使うか」
「無理だな」
これには未来の翔が否定した。
「まず建物には結界が張ってある。過去の俺と同様、面倒だから空間移動術を使ったが侵入者として捕まえられそうになった。処刑されてもいいのなら行けばいい。ただし、銀には多大なる迷惑がかかる」
「だったらどうしろって言うんだよ。強行突破か?」
蒼空が未来の翔に提案した。
羅が「結界なんか分解してやるぜ、待ってな銀ちゃん!」と言って駆け出してしまう。
「おい、誰かあの赤い娘を連れ戻してこい。撃たれて死ぬぞ」
「どうして? 物質分解でも難しいの?」
黒影寮でも強い方に位置する物質分解。相手がイケメンなら負けなしである羅にかかれば簡単に壊滅させられるだろう。
だが、未来の翔は首を振った。
「まず相手はロボットだろう。いくつでもスペアはある。しかも相手は何人いると思う? およそ1億体だぞ。それぐらい警備は厳しい。それに能力ブロッカーって言って、建物内では能力が使えないんだ」
「でも、やーさんは鎌を出せてたけど」
「それは特務警備隊だからだろ。身内にはブロッカーは効かない。ただし、外からの侵入者だと名簿に載ってないから適用される。1億の餌食になるのも時間の問題だと思うが?」
「昴ー! あの赤ビッチを3秒で捕まえて来い!」
「もう捕まえた!」
昴は羅を気絶させて担いで連れてきた。
「まぁ、気長に待つんだな。クイーンは婚約するし」
「こ、婚約? まさか、銀ちゃんが結婚しちゃうのか?」
「あほだな、空華」
未来の翔は鼻で笑う。
「まさか、本物が帰ってくればそれでOKって事ですか?」
「そう言う事になるな。ちなみに言うが、優亜の方も婚約の話が進められているらしいぞ。いらん世話だな」
瀬野翔の推理に余計な事を言った未来の翔。それで瀬野翔のスイッチは入った。
「早く本物の神威涙様を探しましょうか」
「え、翔さん?」
何をしてるの、と睦月が訊く前に、瀬野翔はニッコリとした笑みを浮かべて言う。背中からは般若が見えた。
やばい。これは本気で探そうとしている。
そして無理やりにでもキャッスルへ連れて帰るつもりだ。自分の主が危ないとなると、瀬野翔はとたんにスイッチを入れ替える。
「優亜様の為にも、一刻も早く!」
「ま、頑張れよー」
「あなたも協力するんですよ?」
「え」
瀬野翔に言われ、未来の翔はため息をついた。

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