黒影寮は今日もお祭り騒ぎです。
作者/山下愁 ◆kp11j/nxPs(元桐生玲

第12章『君と僕~オリジナルと亜種~』-3
うーうー、ばれるの怖いよー。怖いよー。
すると、あたしの携帯が鳴った。あ、相手は鈴だ。こっちに電話かけられるんだ。
「鈴! あたしを助けなさい!!」
『ごめん無理』
あっさり鈴に断られた。この裏切り者。
鈴が電話をかけてきたのは、あたしが無事か確かめる為だった。
『でも、無事でよかったよ。もう昴にばれて消えてるのかと思った』
「失礼な奴め。帰ったら真っ先にコロシテヤル……」
『ひ、ヒィ?! ここに凶暴な生物がいるよ!』
鈴は電話越しに飛び上がっただろう。にやにやと笑ってしまう。
ちなみに、あたしが今いる部屋は銀の部屋だ。これから銀の部屋に居候する事になる。
銀は今はいない。食堂で夕飯の支度をしている。
「と・に・か・く! あたしはオリジナルを崇拝する気なんてさらさらないの! あんなへらへらした奴が格好いいと思う?!」
『案外酷い事を言うんだな、すみれさん』
「あたし、こっちでは美鈴って名乗ったんだけど」
『そー呼ぼうか?』
「コロスヨ?」
『ごめん』
本当に殺してやろうか、銀ごめん。鈴を亡き者にしたらごめん。
あたしは鈴の電話を(一方的に)切り、床に転がった。明るい天井を見上げる。
あーぁ、どうしてこうなっちゃったんだろう。あたしがいけないんだろうな。オリジナルを崇拝していないし。
「っていうか、どうして崇拝しなきゃいけないんだろう。もう少し格好よく書けよ。技量不足作者」
失礼な事を言うんじゃねぇよ(By山下)
うぉ、神の声が聞こえてきた。ルテオ君の仕業かな?
「面倒だ。銀とお話してこよう」
えーと、確か部屋を出て左に曲がって真っ直ぐだったよね。
あたしは部屋を出て、左に曲がる。そして真っ直ぐ進んだ。
すると、とある1つの部屋の前から話し声がした。名札には『東翔』と達筆で書かれていた。なるほど、翔子ちゃんのオリジナルの部屋か。
少し興味の持ったあたしは、翔の部屋をノックした。
「ん? あ、美鈴ちゃんだっけ」
「あ、どうも……」
何でこんなとこにいるんだよ、オリジナル! テメェ部屋行けよ!
奥を見ると、どうやら翔が勉強を教えていたらしい。
「ほら、昴。問3をやってみろ、さっき教えた公式の類似問題だ」
「えー、それすごく難しい。もう1回やってよー」
「しゃーねーな。もう1回だけだぞ、よく聞いてろよ」
と、また勉強会が再開される。あたしはその間、部屋を観察していた。
必要最低限のものしか置かれていない。黒を基調とした部屋だ。本棚には洋書がぎっしり詰まっている。
ふーん。さすが翔子ちゃんのオリジナル。部屋もきれいだね。
「じゃ、お邪魔しましたー♪」
……他の人の部屋にも興味あるな!
よし、次は向かいにある部屋……『堂本睦月』の部屋だ。確か堂本美月ちゃんのオリジナルか。
ノックをする。
「誰やー?」
「どうも、突撃☆隣のお部屋です」
睦月は何の疑いもなくドアを開ける。おーおーおー、信じやすい事だ。
さすが男の部屋。翔よりは少し汚いけど、結構片付いている。おいおい、美月ちゃんは片付け下手だぞ?
全体が茶色でまとめられていて、ポスターとか貼ってある。アメリカの歌手……だよね。
「お邪魔しましたー」
「え、もうええの?」
「十分堪能させてもらいましたよ」
さてお次は……お、『月読怜悟』の部屋にしよう。月読怜奈ちゃんのオリジナルかぁ。
「突撃☆隣のお部屋!」
「?!!」
やっぱノックはした方がよかったか。
怜悟は結構驚いていたらしい。刀を構えている。
でも、殺風景な部屋だなぁ。ベッドと箪笥と机しかない。スチール製の。まさに侍の部屋だね。
「……何?」
「いや、タイトル通りですけど。お邪魔しました」
「?」
さてさて、お次は誰の部屋にしようかな。『二条蒼空』の部屋にしよう。
今度はちゃんとノックをした。
「どちら様ですかな?」
「突撃☆隣のお部屋です」
「OKいいよ」
ドアを開けると、うわ汚い。
お菓子の食べカスとかはないけど、本が散乱している。主に漫画。服も散乱しているし、汚ぇなこいつの部屋。
だけど、青系で統一された部屋は何だか落ち着いた。
「え、と。結構散らかってるけど?」
「見りゃ分かる。お邪魔しました」
おー、汚い。さてお次は……『篠崎蓮』の部屋か。
よしよし。あのヘタレでビビりな篠崎蘭ちゃんのお部屋は可愛らしかったぞ?
「誰だー?」
「お部屋をご訪問しに来ました」
しぶしぶ、と言った感じで蓮は開けてくれる。
わぁ、可愛いものだらけじゃん。主に猫のぬいぐるみがたくさんあるし! 可愛い! ベッドは肉球の柄をしている。
「可愛い部屋だね」
「好きでこんなになった訳じゃねぇ!」
尻尾を逆立てながら、蓮は吠えた。
おし、次じゃ。『祠堂悠紀』のお部屋へ。
「お部屋の訪問ですー」
「帰ってください」
「問答無用です」
ガチャリと開ける――すげぇ。何ここ、ジャンク屋?
あちこちにはステンレス製の棚があり、パソコンが置いてある。全て電源はついており、ディスプレイには動画サイトやホームページなどがあった。
「な、何?」
「小説家目指しているんだよね、頑張って」
おし、次は――『国枝つかさ』の部屋だね。
ノックをして開ける。
「どうしました?」
「……そう言えば、女の子だっけ」
赤で統一された部屋。あちこちには星形やらハート形やらが散りばめられている。ずいぶんとメルヘンな部屋だった。
そう言えば、つばめちゃんは男の子だったな。つかさは女の子だっけ。
「ちなみに女の子しか愛せません」
つかさはニッコリ笑顔で言った。怖いわ!
最後は『王良空華』の部屋。うーん、華奈ちゃんのオリジナルか。
「お部屋の訪問の時間です」
「ん? 冒険でもしに来たの?」
まぁいいよ、と空華は開けてくれた。
何だここ。本だらけじゃないか! 翔よりすごい持ってる。基本的に黒か灰色が多い部屋で、もう本だらけ。
「あ、呪術の本が多いからね」
「そ、そすか」
そう言えば……華奈ちゃんはそうだったよな。
よし、これでお部屋訪問は終わり――にしたいけど。
「オリジナルの訪問、忘れてた……」
忘れたい。でも見たい。好奇心が勝った。
オリジナルは翔の部屋から戻ってこない。そのすきにあたしはオリジナルの部屋を開けた。不法侵入。
「うわ……」
白とオレンジで統一された部屋。翔の部屋と反対で、明るい印象を見せる。
何だろう、ものすごい負けた感じがする。
「やっぱむかつくな。オリジナル」

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