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†執事ゲーム†
日時: 2010/04/04 12:12
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

シリアスなのかギャクなのかパロディなのかコメディなのか分からないけど、多分・・・・全部。

<登場人物>

音葉サク──15歳 見た目は少年だが少女 まりあ家の守護者として契約された 『日本刀』

真白ノエル──16歳 根は優しい 幼い頃からまりあ家に仕える 『炎』

園崎ちの──15歳 負けず嫌いで頑固 誰に対しても敬語 『花』

菅野ナトリ──19歳 物静かで穏やか 執事の中では最年長 『水』

野沢ヒロヤ──16歳 自信家でナルシスト つっぱしっては失敗する 『風』

まりあナデハ──15歳 まりあ家次期当主 無口で淡々と喋る 

イルベーヌ──外見は十代半ば。 アプサの女王で全ての災厄の元凶。

アプサメンバー>>87  用語説明>>102

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Re: †執事ゲーム† ( No.90 )
日時: 2010/03/23 15:57
名前: 唄子 ◆pHAblsSAME (ID: kzK7vPH9)

題名にひかれて読みました。
ナデハが使用人を庇うなんて…執事の契約には「命をかけてナデハを守る」って書いてあるのに、逆にナデハが命をかけていますね。意外な展開です。
続きが楽しみです。更新頑張って下さい。

Re: †執事ゲーム† ( No.91 )
日時: 2010/03/23 16:02
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

ありがとうございます^^
ナデハにとってノエルは大切な存在なので、
そこは主人といえど立ち向かっていただきました。

Re: †執事ゲーム† ( No.92 )
日時: 2010/03/23 16:28
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)



           †



「キヨネ様の訃報は、すぐに志乃様にお伝えしました。 たぶん、明朝頃にここにお着きになると思います」
「……そうか。 もういい。 しばらく一人になりたい」
「御意」


ナトリはそれ以上何も言わず、部屋から出る。
心配そうなサクとヒロヤが立っており、

「ナデハさんは?」 「今は、一人になりたいとの事です」 「そうですか……」

悲しそうに目を伏せた。
ヒロヤが拳を握りしめ、 「糞野郎ッ。 次会ったら殺してやる……、絶対に殺すッ」
物騒な台詞を吐く。

場所を移動して、使用人室に着くと、待ちきれないようにサクが口を開く。

「紅の惨劇って、8年前に起こった、まりあ家を襲った事件ですよね……」
「ええ。 あの時はナデハ様もまだ7歳でした」
「あの日……何があったんですか?」

聞いてはいけないと思い、ずっと聞けなかった。
8年前、大量の死傷者を出した事件。
ナトリの表情も曇る。

「イルベーヌという女性は、知っていますか?」
「えっと、名前だけなら」

ヒロヤがその名前にピクリと眉を吊り上げる。

「200年ほど前、とある研究者達が集まり、新たな人種を作ろうという、人間を使った人体実験を行っていました。 色々な細胞を強化させたり、変形したりと、様々な異形の人間が生まれました。 その研究者が、まりあ家の先祖です」

アプサたちの言っていた、『まりあ家の犯した罪』の意味が分かった。
壮絶な実験内容に、思わず吐き気が生まれる。

「実験体は、孤児が多く、施設から連れてこられた子供で行われたそうです。 その中で、当時十代半ばの少女が、ヨーテという新人類の完成品だと言われています」
「それが……イルベーヌ?」

サクの質問に、ナトリが静かに頷く。

「残された実験ファイルによるとイルベーヌは、日々ヨーテ化する自らの体に恐怖心を抱き、強く生きたいと願ったそうです。 あまりの異常なまでの祈りで、細胞が徐々に変形し、その姿や意思は人間の原型のまま留められたと言います」

イルベーヌ。
彼女はどれほど強く、生きたいと願ったんだろう。
自分の体が醜く変化し、閉ざされた絶望の中、彼女は必死で、身体を作り変えた。

「ヨーテの開発は進み、やがて百を超えるヨーテ達が集まった時、イルベーヌは研究所から脱する決意をし、ヨーテを従えて研究所を抜けだしました。 そして、ヨーテは交尾を繰り返し、その繁殖を遂げたのです」

悲しげなナトリの表情に、サクの胸が締め付けられる。
今まで黙っていたヒロヤが、

「俺ら守護者は、そのヨーテを殺す為に血に異形の者を宿した種族だ。 ノエル、ちの、ナトリさん、俺の一族は、みんなまりあ家の為にあり、先代にも執事として仕えてきた」

機械的に喋りだした。

「でも、みんな8年前に殺された。 みんなだぜ?」
「8年前、そのイルベーヌが襲ってきたんですか?」

ナトリは静かに頷き、続ける。

「アプサというのは、どうやらイルベーヌ嬢の血を飲む事で、ヨーテから脱し、人間の姿や意思を保持できるらしいのです。 故に強力だ。 8年前、まりあ家で初めて先代主催のパーティが開かれた時……」

その時期を見計らい、イルベーヌ達はまりあ家を襲った。
まりあの血筋と、執事の血筋が全て集まっている時期を見計らって。

全員抹殺。


「その時生き残ったのは、ナデハ様とノエル、まだ幼くまりあ家に行かせてもらえなかった私たち執事とその家族、まりあ家を嫌っていた、志乃様と息子様のキヨネだけなんです」

唖然とする。

「そんな……じゃあ、ナデハさんは一気に家族を失った……?」
「元々、そんな大きい一族ではなかったのですが……。 表では、薬による大量殺人で片づけられました」

事の始まりを聞き、サクがどう返事していいのか分からなくなる。

「おい、もう一人生き残った奴いるじゃん」
「…………」 「え?」

ヒロヤがポケットに手を突っ込んで壁にもたれる。
その目が、サクを見つめる。

「………紅の惨劇で生き残ったのは、サクさん。 あなたもです」

Re: †執事ゲーム† ( No.93 )
日時: 2010/03/23 17:11
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

        第10話
        紅の惨劇


──8年前──



キレイな光がナデハの視界を明るくした。
煌びやかな大広間。 キレイな曲。 美味しそうなご馳走。

「お母さん、すごく楽しいっ」
「そう? 今日はまりあ家だけのパーティだから、大人しくしててね」
「うん。 あ、ノエルと見て回ってもいい?」
「いいけど、ちゃんと挨拶するのよ」

ドレスアップした姿を、幼馴染で執事であるノエルに早く見てもらいたかった。

「ノエルっ」 「あ、ナデハ」

執事らしく、タキシードを着こなしているノエルはいつになく恥ずかしそうに、頬を染めた。

「な、なんか恥ずかしいな……」
「よく似合ってる♪ ね、ね、ねっ。 私は?」

ピンクのドレスを翻しながら、ナデハが訪ねる。
その期待に溢れた顔をじぃっと見て、

「いつもと変わんねー、どぴゃっ」 ナデハがノエルをゲンコツで叩く。
「な、にすんだっ」 「デリカシー無いねぇ、やっぱり。 ノエルはもう少し紳士的にならないと」
「………あ、そう」

頭を擦りながら、ノエルが溜息をつく。
でも、その表情が穏やかだった。

「ね、ノエルのお父さんは来てるの?」
「ああ、うん。 さっきいた。 あの糞親父、俺に勉強しろーとかうっせーっての」
「ノエル、口悪ーい」

ケラケラと笑うナデハを見ながら、頬を染めるノエル。
金髪碧眼のフランス人形のようなナデハに、ドレスはとてもよく似合っていた。

「………かわいい、よ」 「ふぇ?」 「ドレスっ! 可愛いって言ってんのっ」

顔を真っ赤にさせて頑張って頑張って言った。
一瞬キョトンとしたナデハだが、

「ありがとっ」

満面の笑顔でお礼を言った。



まりあ家のお偉いさんの演説は長く、正直二人にとって退屈なものだった。

「あーぁ。 ヒロヤとかちの連れてこればよかった」
「ちのは小さいし、ヒロヤは……うるさそう」
「んーまあな。 んじゃ、ナトリさんとかどうだ?」
「ナトリさんはこういうの似合わないし、疲れさせちゃいそうじゃん」

そんな事を言いながら、時間を潰していた。

「んじゃー、サクは?」
「……サクは、人の言葉が分かんないんだから」
「あ、そっか」

美しい妖刀の姫を思い出しながら、なるほどねーとノエルが呟く。
モグモグとケーキを食べながら、ナデハが、

「もう夜かー。 ねえ、肝試ししな、」

窓ガラスが割れた。



数々の悲鳴が聞こえ、一気に人が逃げ惑う。
料理が床に落ち、皿の割れる音が聞こえる。

「まりあ狩りじゃーん♪」

楽しそうな無邪気な声。 
ナデハは何が起こったのか分からず、ノエルに引っ張られてテーブルの下に隠れていた。

「ノエル?」 「分かんないけど……、たぶんこうしなきゃいけないんだと思う」

テーブルクロスの隙間から、逃げていく人間の足が見える。
そして───どす黒い化け物の足も。

「ひっ」 「っ」 慌ててナデハの口を抑え、ノエルも心臓をバクバクさせながら化け物の足をじっと見つめた。

そして、次に二人が目にしたのは、

真っ赤な血肉と、飛び散る臓物だった。

ヨーテが人間を食らい、その血を貪る。
派手に臓物を食い散らかし、蛆虫のような赤い塊が落ちた。

「あ……、ああ  あ あ」
「っ」

あまりのショッキングな出来事に、ナデハは悲鳴を上げる事も出来ず、涙を流し、ノエルは静かに嘔吐した。

「逃げた奴らは僕らが追うから、お前らは派手に食っててー♪」

声がまた聞こえ、しばらくボキッという嫌な音が二人の耳に響いた。
しばらくして、大広間は静寂に包まれる。

テーブルから顔を出し、辺りを見回して出てみる。

「………ぉえっ」 散らばった死体をみて、ノエルがまた嘔吐した。
「ノエル、大丈夫……?」 「んぐっ、だ、大丈夫……」 「おかあ、さんたち、無事かな……」

ナデハが泣きながら母親の安否を尋ねる。
ノエルは答えずに、ナデハの手をそっと繋いだ。

「ここから、出よう」

Re: †執事ゲーム† ( No.94 )
日時: 2010/03/23 17:09
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

走る、必死で。 何も考えずに、ノエルはナデハを連れて走った。
怖かった。 恐怖心が先に出て、足がもつれそうになる。

バカみたいに広い屋敷の中で、あの化け物と出会わない事だけを祈りながら。

「ノエル、お母さんは?」 「今は後っ!」 「お母さん、無事かな……。 お母さん、無事?」 「分かんないよっ」

その口調で、ノエルにも余裕が無いのが分かる。
焦っている。
それが伝わり、ナデハの中で不安感が襲ってきた。

そのとき。

「ねえ、待ってよ」

澄んだ少女の声が聞こえた。 先ほど聞いた無邪気な声ではなく、キレイで心に届くような美声。
振り返る。

長い黒髪に、雪のような素肌の少女がいた。

年は二人よりも年上。 十代半ばほど。
少女は白いワンピースをきており、何故か裸足だった。

「あなたたち、ここの子?」

微笑みながらそう尋ねられたが、決して目は笑っていない。
ノエルは幼いながらも、常日頃言われてきた執事としての誇りと忠誠を思い出す。

「いいえ。 僕たちは違います」
「ノエル?」

少女は不敵に笑い、

「そちらの子は? キレイな服を着てるけど」
「この子は、」
「そのキレイな髪、まりあの証だよね」

外見の割に幼い口調で少女が訪ねる。
ナデハは恐怖で引きつった顔でコクリと頷いた。

「とっても……キレイな子……」

舌舐めずりをしながら、少女がそっとナデハの頬を撫でる。
あまりの体温の冷たさに、ぞっとする。

「教えて、くれない?」
「なに、を………?」
「サクの場所を」

サク。

ナデハが妖刀を思い出し、少女から目を逸らす。
「ねえ、聞いてる? サクを捜してるんだよ」
「っ、いや、です」
「え?」

ナデハは少女を突き飛ばし、

「絶対、教えないっ!」
「ナデハっ」

一人走った。 ノエルもその後を追うとしたが、

「動かないで?」 「っ」 そっと背後から抱き締められる。
首筋を撫でられ、鳥肌がたつ。
「ずっと、私も友達がほしかったの」
「え………あ………」
「あなたをアプサにしたいけど……止めとくね」

直後。 ノエルはがくっと力が抜け、その場に倒れた。
少女は立ち上がり、満足そうにノエルを見下ろす。

「可愛い子。 好きになっちゃいそう♪」

お茶目にそう言い残し、後ろにいつのまにか居たアプサの一人に命ずる。

「そのキレイな子を屋敷の外に置いといて」
「僕はイルベーヌのパシリかよぉ」
「ごめんね、ジフ♪ でもすっごく楽しいっ」

久しぶりに見せる親友の笑顔に、アプサがしょうがないなという笑みを見せる。



           †


ナデハは走っていた。
勿論、逃げているワケではない。

サクを、助ける為に走っていた。
地下室までの廊下を走り、階段を下りる。

どこか爆発したのか、窓から外を見ると、別館から炎が噴きあがっている。

「早く、しないと……」

そう呟き、ナデハは走った。
しかし、

「っ!!」 凄まじい轟音が響き、目の前が炎に包まれる。
液体火薬が爆発したかのような、嫌な臭い。

「か……っ」 空気の通りが悪く、有害な煙が体内に入る。
酷い頭痛を覚えながら、その場でナデハが倒れる。

ここで、死んでしまうのだろうか。
何も、できぬまま。

母親を恋焦がれる。

──お母さん……、お母さん……。

うっすらと開けた目。 視界に、黒ずくめの人間が映る。
右手が化け物のようで、ジリジリとこっちに近づいてくる。

──殺サレル………

ナデハは覚悟を決め、特に抵抗もなく自らの運命を受け止めた。

しかし、

「はあぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁあっっ!!」

黒ずくめは背後から別の何者かによって刺された。
少女はその光景に絶句しながら唾を飲む。


「……お母、さん……?」

ナデハが震える唇でその人影を呼ぶ。
キレイな金髪は焼けたのか、肩までになっており、ドレスは脱ぎ捨てていた。

持っているのは、

「………サク?」

あの、妖刀。

そこでナデハは気を失った。



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