ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- †執事ゲーム†
- 日時: 2010/04/04 12:12
- 名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)
シリアスなのかギャクなのかパロディなのかコメディなのか分からないけど、多分・・・・全部。
<登場人物>
音葉サク──15歳 見た目は少年だが少女 まりあ家の守護者として契約された 『日本刀』
真白ノエル──16歳 根は優しい 幼い頃からまりあ家に仕える 『炎』
園崎ちの──15歳 負けず嫌いで頑固 誰に対しても敬語 『花』
菅野ナトリ──19歳 物静かで穏やか 執事の中では最年長 『水』
野沢ヒロヤ──16歳 自信家でナルシスト つっぱしっては失敗する 『風』
まりあナデハ──15歳 まりあ家次期当主 無口で淡々と喋る
イルベーヌ──外見は十代半ば。 アプサの女王で全ての災厄の元凶。
アプサメンバー>>87 用語説明>>102
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29
- Re: †執事ゲーム† ( No.85 )
- 日時: 2010/03/22 16:19
- 名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
†
「んで? 僕を呼び出しといてノイズの奴。 出かけちゃったワケ?」
「お前はやり過ぎだ。 いくらサクを覚醒させるにしても、焦り過ぎもよくない」
「でも……でもいつイルベーヌが起きるか分かんないのにっ、そんな呑気な事言ってていいのぉ?」
少女の声に、少年の声が押し黙る。
「俺らも、行ってくるか」 「紅の惨劇にはまだ遠すぎるけどねぇ」 「イルベーヌに従うワケじゃないけどな」
†
客人用のルームで、
「メェメェーメェー」 と聞こえる謎の鳴き声。
そして、
「羊だろ! もっと鳴けっ!」
「いやだから、羊じゃなくて執事だって言ってるのに………」
「ちょ、キヨネくん」
サクが止めるのも聞かず、ちのにおぶられたキヨネはわっしゃわっしゃと暴れる。
「つ、疲れました………」 「羊!」 「だから執事ですって……」
ちのも流石にヘトヘト。 「つまらん。 よしっサク!」 「わ、私!?」
──まさかちのみたいに、羊みたいにして鳴け! とか…………???
そんなサクの想像は違っていた。
「刀を、見せてくれ」 「か、かたな?」
こくりとキヨネが頷く。 突然の頼みに、もちろんサクは躊躇した。
こんな簡単に、戦闘の無い場所で妖刀を出していいのか。 それに、キヨネの目に晒していいのだろうか。
「ちょっと無理、です」 「何故だ?」 「ヨーテが、いないから……。 戦いの時じゃないと、刀は出さない事にしてるんです」
キヨネの目つきが鋭く変わる。
先ほどの無邪気な少年のような目とは違う、ナイフのような鋭い目つきだった。
「俺はまりあ家の人間だ。 執事であるお前が簡単に逆らっていいと思うな」
スッと手を出すキヨネ。 その変貌ぶりに、サクとちのが顔を見合わせる。
──キヨネくん、なんか変だ……。
「た、例えまりあ家の人であっても、刀は見せられない。 不本意に妖刀は出さない事にしてるんです」
きっぱりとサクが断る。
出した手を引っ込めたものの、それでもキヨネの目はサクを睨んでいる。
「キヨネ様……サクさんの気持ちも、分かってあげてください」
「妖刀に気持ちなんてあるワケないんじゃないかな」
冷たく言い放たれた言葉に、サクが打ちのめされる。
妖刀に、気持なんて無い。
心も、感情も、空っぽ。
「今の言い方は酷すぎますよっ、キヨネ様」
「アンタも守護者か」
「え………?」
キヨネの右腕が変形し、ヨーテ化した。
ちのの首を握り、持ち上げる。
「かはっ」 「ちの!」
──どうして、キヨネくんがヨーテに!?
- Re: †執事ゲーム† ( No.86 )
- 日時: 2010/03/22 17:00
- 名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
第9話
大切だから護りたい
首をきつく締められ、ちのが生理的な涙を溜める。
サクがすぐさま妖刀を体内から取り出す。
「それガ、妖刀カ……」 「キヨネくん、ちのを放してっ」 「守護者殺シたら……アプサに褒めラレるんダろうナ……」
──ジフたちの事だ。
最早キヨネの人格ではなくなっているヨーテに抜刀など躊躇わない。
刀を抜き、キヨネを斬ろうとする。 が。
「ダメですっ! サクさん!」
「っっ」
ちのが必死で叫び、サクを止めた。
「どうしてっ」 「キヨネ様はっ、ナデハ様の大切な家族の一人です! もう、あの人を一人にはさせたくないっ!」 「…………っ」
泣きそうな顔でサクがちのを見る。
「でも………でも、ちのがっ!」
──それに、ヨーテ化した人間は、もう元には戻らないって………っ。
「ウギィエ─────ッッ!!」
凄まじい奇声を上げるキヨネ。 既に鋭い牙が見え、両腕がヨーテ化している。
ちのが苦しそうに息をし、もう限界という時。
「伏せてくださいっ、サク!」
「っ!」
背後から声が聞こえ、サクは刀を捨ててその場に伏せる。
その頭上を、本来ならば浮く事のない水が波動となって過ぎて行った。
「???」
水の波動はヨーテに直撃し、怯んだヨーテがちのを放す。
「大丈夫かっ!」 「かはっ」 ちのを抱きかかえ、ノエルが声をかける。
「すい……ませ、ノエルさ……」 「いい、喋るなっ」
ナトリがサクに駆け寄り、
「アレは………キヨネ様、ですか?」
「……はい。 突然ヨーテ化が始まって……」
「たぶん、何らかでヨーテに接触し、その血を体内に吸収したのでしょう……嘆かわしい」
怯んだヨーテが牙をむき、こちらに襲いかかる。
「消え去れっ!」
ナトリが宙で右手を左右に振ると、そこから水が波動となって現れる。
「ナトリさん……あなたは、『水』 の守護者だったんですね……」
サクが驚きで目を見開いた。 ヨーテは水圧でその華奢な少年の体に穴をあけ、大量に血を拭きだす。
「アレはもう、キヨネ様ではありません。 我々の敵です」
歯ぎしりをしながらナトリが悔しそうに、
「それでも、ナデハ様が警戒を解く唯一の人でしたのに……」 「そうだった」
ちのも言っていた。 キヨネは、ナデハにとって家族の一人なのだと。
家族を失った悲しみは、サクにも分かる。
義理ではあったが、そのぬくもりを失った時は心に穴があいたようだった。
「おいっ、みんな無事か? キヨネはっ?」
遅れてヒロヤとナデハが部屋に入ってくる。
その血塗れの半ヨーテ化したキヨネを、ナデハは茫然と見ていた。
「っ」 ヒロヤが慌ててナデハの目を両手でふさぐ。
「こんなモン、見るなっっ!!」
珍しく怒りで肩が震えているヒロヤ。
ナデハは、想像していたよりもパニックにはならないが、逆にそれが、どうしようもなく哀れに見える。
「いいか!? お前は一人じゃねぇからなっ」
「…………ヨーテは、これだけか?」
ナデハの言葉に、全員が動きを止めた。
「手を放せ、ヒロヤ」 「………え」 「現れたヨーテは、“アレ” だけか?」
淡々と、無機質な目でヨーテとなったキヨネを見つめるナデハ。
ヒロヤも言葉を失い、ナデハを見つめる。
「いーや。 それだけじゃないんだよなぁ」
「っ!!」
突如聞こえた声に、全員がその声のした方向に向く。
いつの間にいたのか、部屋の中央に黒いフードを被った青年がいた。
「……アプサか」 「いかにも。 まりあ家現当主のナデハ様……」
恭しく会釈し、フードが外れる。
スラリとした背に、キレイな金髪のがかった茶髪をしている。
キレイな顔立ちで、全てを見透かしているような金色の瞳。
年齢はナトリぐらい。
「ま、俺にはこんな社交辞令似合わないけどな」
「テメ、誰だっ! お前がキヨネをヨーテに変えたのかっ!」
ノエルの怒鳴り声が響く。
「俺はアプサの一人、ノイズ。 先日はジフが無理に妖刀を覚醒させようとして、参ったよ」
そう言い、ノイズがチラとサクを見た。
「んで、そっちのキヨネくんの事だけど……。 実はここに来る数週間前に血を分けたんだ♪ 良い子だったよ」
「貴様……、許さねぇぞっ!」
ヒロヤがキツく拳を握りしめる。
「そんなに怒らないでよ。 俺はただ妖刀を盗ってこいって頼んだだけなのにさぁ」
「戯けっ! それ以上抜かすとマジで殺すぞ」
ノエルが怒りに震え、その右ほおに赤い紋章が浮かび上がる。
「本当だよねぇ〜。 自分だけ楽しい事しちゃってさぁ」
「うげ……」
ジフの後ろに、煙のように現れた4人のアプサ。
皆黒いフードを被っている。
「なんで来たのかねぇ」 「僕に退けっていっときながら、自分だけズルいじゃないのさぁ」
そう言ったのは、何度もサクを襲いに来たジフ。
ぺロリと舌を出し、
「ハロー。 また会ったねぇ、サーク♪」
「ジフ………っっ」
いつもの挑発的な態度でサクに手を振る。
「んで、なんでお前らが来てんだよ」
「言いじゃん、べっつに♪ 俺楽しー事だぁい好きだし? 暇つぶしに守護者狩ってやろうじゃんっ♪」
そう言ったのは、銀髪で左の目に眼帯をしている少年。
整った顔をしているが、どことなく危ない雰囲気が漂っている。
「おいおいジャネス。 お前ゲームでもやってろよなぁ」
「あんなスリルのない玩具なんて、やってるだけ無駄っつーじゃん。 ンなのよりもこういう方がいーっつーの」
「……あっそ。 で、ディシアは何しに来たワケ」
ディシアと呼ばれた、茶の長髪を持つ精悍な顔つきの少年がチラとノイズを見て、
「……一人で留守番、悲しい………」
「イルベーヌが居るだろ」
- Re: †執事ゲーム† ( No.87 )
- 日時: 2010/03/23 13:29
- 名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)
<アプサたち>
ジフ
赤い短髪に十歳ほどの外見をしている。 一人称が「僕」。 幼い割に、アプサの中では最年長。
ノイズ
飄々としており、金髪がかった茶髪に、金色の瞳を持つ好青年。 19歳。 アプサのリーダー的存在で、ジフのお守やく。 彼女が年上である事は認識している。
ジャネス
特徴的な語尾で話す、銀髪で眼帯をしている少年。
十代後半。 人間を玩具と考えている。
ディシア
茶の長髪を持つ精悍な顔つきの少年。 無口で、ヌボーとしている。 17歳。 寂しがり屋。
- Re: †執事ゲーム† ( No.88 )
- 日時: 2010/03/23 13:44
- 名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)
「ここに、何をしに来た?」 ナデハは緊張感を含んだ口調でそう尋ねた。
「何って……そりゃあ、まりあの人間を根絶やしにして、そこにいるサクも壊しに来たんデショ」
ノイズがサクを指差す。
歯ぎしりをしながら睨み返すサク。
「ダメだってぇ。 サクは覚醒させてからイルベーヌに渡さなきゃあ♪」
クスクスと無邪気にジフが笑い、サクの方に歩み寄る。
ナトリが前に出て、ジフを見下ろす。
「へぇ。 『水』 の坊やだね」
「直ちにお引き取り頂きたい。 ここはまりあの聖域ですっ」
「なにが聖域なんだか……。 お前らの犯した罪は、ヨーテを生んで、更に災厄の種、イルベーヌも生みだした……。 そんな奴らを根絶やしにする僕らの方が正しくねえ?」
「黙りなさいっ!」
ナトリが珍しく声を荒げる。 怒鳴られたジフは目をパチクリさせた。
「お嬢様は先祖の罪を拭うしか、その存在理由がなくなったのです! あなた方は、今ここで必ずっ」
「僕らを、殺すってゆーの?」
高い少女の声だが、確実に冷たさを含んでいる。
静かにそう言い、ジフが口角を上げた。
「守護者如きに、僕らが殺せるのかなぁ」
そう言うが早いか、ノイズが右手をヨーテ化させ、いきなりノエルを吹き飛ばす。
「ノエルさんっ!」 ちのが起き上がり、床に手を当てる。
床を突き破って、大きなツルがノイズに襲いかかる。
それを鋭い爪で引き裂き、ノイズが楽しそうに言う。
「ゲームに似た感覚だな、コリャ」
ノイズの先手から、まるで一瞬のように戦いが始まった。
ヒロヤは背中から、黒い羽根を伸ばし、突風を起こす。
窓ガラスが割れるほどの風圧が部屋を襲う。
「ナデハっ、俺の後ろに隠れていろっ!」
言われた通りにナデハがヒロヤの後ろにつく。
サクは刀を取り、一人ボーッとしているディシアを背後から斬りかかろうとしたが、
「させるかよっ」 「っ」
ジャネスに見事に突き飛ばされる。
サクが血の混ざった唾を吐き、刀を構える。
「おい、ディシア。 お前何しに来たんだよ」
「………別に」
「ちゃっちゃと終わらせようじゃん。 こんなの」
- Re: †執事ゲーム† ( No.89 )
- 日時: 2010/03/23 15:10
- 名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)
「だあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁっ!!」
サクがジャネスに突進するのを見て、ナトリが叫ぶ。
「ダメだっ、サクさん! 無鉄砲に行くなっ」
しかし遅く、サクの刃は簡単にジャネスに手で抑えられる。
「!!!」 刃を掴まれたサクは驚きで目を見開いた。
サクが刀を動かすたびに、ジャネスの手が切れて血が流れる。
「気をつけた方がいいよ、妖刀女。 俺らの血は、体内に入るとソイツをヨーテ化させる」
「っ!!」
赤く目を滾らせ、サクが刀を引こうとするが、今度はジャネスがそれを許さない。
血が流れているのに、放そうとしない。
血が刀を伝って流れていく。
「ダイジョブ。 皮膚に触れたぐらいでヨーテ化はしないから♪」
「だぁっ!!」 思い切り片足を振り上げ、ジャネスの横腹を蹴り上げる。
「っ、キョーボーだねぇ。 さすがに」
「ちょっとジャネスぅ。 女の子に手ぇ上げたら最低だかんねー」
ポケーと戦闘を見ているジフがからかう。
「上げてねーじゃん。 ……どわっ」
いきなり水の波動に身体が押され、ジャネスが刀を放して壁に激突する。
「だっせーのー」 「うっせぇ、ジフ!」
「ありがとうございます、ナトリさん」
「いえ。 どうやら、素直に帰ってはくれないようですね」
苦い顔でナトリが水を操る。
その後ろでは、ノエルとちのがノイズと応戦していた。
「ちょいコラ。 ジフ! アンタも手伝ってくれよ」
「えー。 だってぇ僕この前も一人で頑張ったじゃーん」
「アレはアンタ個人で動いてたんじゃねぇか」
呆れ気味にノイズが溜息をつく。
「テメーちょっとは集中しやがれっ!」
ノエルがそんな彼の態度が気に食わないらしく、発動させていた炎が一層激しく燃え上がる。
それを個々の火の玉にして、ノイズに食らわす。
その全てを避けて、ノイズが笑いながらノエルのすぐ目の前に迫った。
「っ」 「まだ子供だね。 そんなんじゃ無理だよ」
両手をヨーテ化させ、それが一気にノエルに振り下ろされる。
「ノエルさんっっ!」 ちのが急いでツルを伸ばし、ノイズを止めようとするが、
間に合わなかった。
「………ノエ、ル………」
初めて、ナデハが信じられないといった口調で彼の名前を呼ぶ。
その肩が少し震えていた。
他の者も動きを止め、ノエルが倒れる瞬間を見つめる。
茫然と、唖然と。 まるでスローモーションだった。
「ノエル、ノエ……ノエルっ」
ガクガクと膝を震わせながら、ナデハが走る。
「ナデハっ!」 ヒロヤが止めるのも聞かず、ナデハは走り、無防備のまま倒れたノエルの前に立った。
そして、そのまま両手を広げ、ノイズを睨みつける。
「???」 「ノエルは殺させないっ。 お前たちが憎らしいのは私だろっ! なら私だけ殺せっ」
「あのバカっ」 ヒロヤが舌うち混じりに呟いた。
ナデハは唇を噛みしめ、ノイズを睨む。
「まりあ家当主がその威厳を忘れて、使用人の為に自らの命を捨てるなんて……、聞いた事ないけど」
あまりの前例の無さにノイズも苦笑する。
ナデハは動かず、気を失ったノエルを庇う。
「ああ、そうか」 ノイズがニヤリと笑い、思い出したように、
言ってはならない事を言った。
「キミにとって真白 ノエルは、たった一人の家族も同然だしね。 キミはあの日、紅の惨劇で何もかもを失った。 キミはあそこで何か見たんだろう? おぞましい、記憶から消し去りたくても絶対に消える事のできない悪夢を」
ナデハの焦点が、ずれる。
ナトリが何かを叫んでいるが、聞こえない。
「人は、どれくらい死んでいた? キミはそこで何を見た? 可笑しいくらい人の体がバラバラで、怖かったんじゃない? 真っ赤、まっか、真っ赤、」
ナデハの脳裏に、絶対に思い出さないようにしていた記憶が蘇る。
それは蛆虫が這いあがるよりもおぞましく、恐怖心で満ちていて、勢いよく吐き気が込みあがってくる。
「う……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
長々長々とナデハの鋭い絶叫、声というよりは音のような奇声が響く。
あまりの五月蠅さに、ジフが耳を塞いでいる。
「ナデハ様っ!」 ナトリがナデハに駆け寄るが、
「うっ、ごほっ! ………がほっ、おえっ」
あまりの強烈な記憶のフラッシュバックに、ナデハが嘔吐する。
肩で息をし、苦しそうに咳き込む。
「そんな風になるぐらい、悲しい思い出なんだね」
「消え去れっ!」
ナトリが怒りを露にして怒鳴りつける。
「てっ、めぇぇぇぇぇぇっっ!!」
ヒロヤが物凄いスピードで、素手でノイズを殴りつける。
不意打ちにノイズがよろめき、ヒロヤが足りないというように突風を巻き起こす。
今まで以上に強力で、ジフが慌ててフードを抑えつける。
「やっべー飛んでいきそうっ」
「惜しいトコだけど、帰ろう。 まりあの当主はどうやら発狂のようだしさっ」
アプサ達が割れた窓から煙のように消えていく。
ようやく突風がおさまり、ヒロヤが息をつく。
「大丈夫か、ナデハっ」 「………」
膝を床についたナデハからは、反応がない。
ナトリが震える肩に手を置くが、
「触るなっ!!」 ナデハに払われる。
サクが刀を体内に戻し、愕然とした様子でナデハを見つめる。
「…………ちの、ノエルの手当てをしろ」
「あ、はい。 あの、ナデハ様は………」
「私は、いい。 もう、なんともない……」
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29
この掲示板は過去ログ化されています。