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†執事ゲーム†
日時: 2010/04/04 12:12
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

シリアスなのかギャクなのかパロディなのかコメディなのか分からないけど、多分・・・・全部。

<登場人物>

音葉サク──15歳 見た目は少年だが少女 まりあ家の守護者として契約された 『日本刀』

真白ノエル──16歳 根は優しい 幼い頃からまりあ家に仕える 『炎』

園崎ちの──15歳 負けず嫌いで頑固 誰に対しても敬語 『花』

菅野ナトリ──19歳 物静かで穏やか 執事の中では最年長 『水』

野沢ヒロヤ──16歳 自信家でナルシスト つっぱしっては失敗する 『風』

まりあナデハ──15歳 まりあ家次期当主 無口で淡々と喋る 

イルベーヌ──外見は十代半ば。 アプサの女王で全ての災厄の元凶。

アプサメンバー>>87  用語説明>>102

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Re: †執事ゲーム† ( No.30 )
日時: 2010/03/06 15:59
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

「野良犬なんて………ひどいな」

ぞっとするような声だった。
冷たく、でもまだ幼い少女の声。

林の茂みから現れたのは、黒いフードを深く被った小さな少女だった。
ニヤリと八重歯を覗かせ、満足そうにこちらを見ている。

その少女───ジフはナデハを睨みながら、クスクスと笑った。

「やっぱ、まりあの人間だね。 目つき悪いし、禍々しいったらありゃしないもん」

木にもたれかかり、挑発的な態度をとる。

「やっぱお前ら、あの日に根絶やしにしとけば良かったあ」
「貴様………ッ、失せろ!」

見たこともないノエルの怒りの迫力に、サクが言葉を失う。
目の前にいる少女は、一体誰なのかそれさえも分からなかった。

「あの日さあ、一族でお前だけ逃げれたんでしょう?可愛そうだよねー。 両親もみーんな逃げちゃってさあ。 残された気分はどう? 幼くしてまりあの称号を全て獲得できた気分はどうかなぁ? やっぱ興奮するよね〜」
「貴様ッ!!」

馬鹿にしたようなジフの笑いに、ノエルが掴みかかる。
それを軽々しく避け、ジフの目にサクが映った。

「あれ………見たことない子だけど、誰?」
「え、えっと」

面喰ってサクが後ずさりする。

「キミは守護者になるには早すぎるよ」
「は?」
「僕が教えてあげようか? キミの全てを」

いつのまにか目の前にジフが立っている。
そっとサクの頬に手を添える。 ヒヤリとした冷たさがあった。
抱きしめられる。

「……………血なまぐさい戦場にキミを連れ戻してあげるよ」
「せ………んじょ?」

囁かれる。
静かな、心の中で眠っている個所に、そっとコトノハは注いでいく。

そして、触れてはいけない場所に触れてしまう。



「ノエル! あいつを始末しろっ!」

ジフが何をしようとしたのかを察し、ナデハノエルに命令を送る。

「契約だっ! 私に従えっ!」

ナデハが執事に、『命令』 を下す。
すると、
ノエルの右手が燃え始めた。

正確に言えば、右手から炎がでている。

「………………え?」
「炎の使い手か」

茫然とするサクを突き放し、ジフが素早くのけ反る。
尻もちをつき、サクはこれまで体験した事のないような激痛を覚えた。

──なに、この感じ………。

──なにかに体を、焼かれるみたい………。

視界がぼやける。 
目をこすって見ると、

「…………ノエル?」

そこには、燃え盛る炎を操るノエルの姿があった。

Re: †執事ゲーム† ( No.31 )
日時: 2010/03/06 20:25
名前: 嵐猫 (ID: ZSo5ARTM)

カッコイイっ。
炎だ! そういうの大好きです。

Re: †執事ゲーム† ( No.32 )
日時: 2010/03/07 10:40
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

××使いっていう感じ好きなんで
出してみました。

Re: †執事ゲーム† ( No.33 )
日時: 2010/03/07 11:11
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

轟々と燃え盛る炎。 それに包まれるノエル。
今自分が見ている光景全てのワケが分からず、サクは茫然と腰を抜かしていた。

「え………ノエル………?」
「サク」

ナデハに初めて名前を呼ばれ、サクが驚いて振り向く。
自分を見下ろすナデハは、きつくサクを睨んでいた。

「お前は、私の執事だろう?」
「………え」
「なら、どうして戦わない」

──戦う? なにを、どうして、誰と?

自分の置かれた状況とナデハの言葉の意味が分からずに混乱するサク。
ジフはそんなサクを見てニヤリと八重歯を覗かせた。

「お前ら、あの女を狩れ」

彼女が何者かに命令すると、途端に辺りが静まり返る。
風はおさまり、ノエルから発せられる炎の揺らめきだけが動いている。

「………なんだ?」  不思議そうに空を見上げるノエル。

「獣の血が騒いでるんじゃない?」
「ああん?」
「誤魔化さないでぇ」

辺りの異様で威圧的な気配に、ナデハとサクも気づく。

「なにか………くる?」

そうサクが呟いた時、
ナデハの体が宙に浮く。

「???」 「あ?」

サクとノエルの視界に、黒い大きな何かが映る。
先ほど、ナデハを突き飛ばした獰猛な何かが。

「なに………コレ」

赤く光る目。 堅そうなどす黒い皮膚。 その外見から2メートルはある体格。
人間とは到底言えないような異形の化け物がいた。

「ナデハさんっ!」

サクが倒れているナデハに駆け寄る。
「ぐあ………っ」
鋭い爪で引っ掻かれたのか、腕から血が出ている。

「てっめ………、手ぇ出すんじゃねぇっ!」

その怒りでノエルの炎が大きく揺らぎ、その化け物にむかって走り出した。
それを見たジフが、間に入る。

「!?」 「駄目だよ。 僕はサクが目覚めるのを待ってるんだからさぁ」 「っ」

ジフの腕が、化け物のように変形して勢いよくノエルの体を貫く。

「かはっ………」 

飛び散る血。 茂みの中に倒れていくノエル。
サクはひどく震えている自分の体をおさえ、自然に出た涙を拭く事もせず、ただただ茫然としていた。

「………サク」

下で声がし、サクが視線をナデハに向ける。

「サク、私の血を飲め」 「………え?」 「契約だ。 お前は、私の執事だろう」

気高い嬢様ではなく、どこか頼るような、縋るようなナデハの口調。
血を飲むという行為。 サクは流石に躊躇した。

「あ、あの………でもっ」 「うるさいっ! 何も言わずに私の血を飲めっ! お前の使命は私を守る事だろうっ」

契約、覚醒、使命。

何もかも分からずに、だけども必死なナデハを見てサクは、流れ出るナデハの腕に口を持って行った。
傷口を、少しだけ舐める。

ナデハに鈍い痛みが走った。

少量の血を口に含み、鉄の味と吐き気を抑えて一気に飲み込む。
ただ、それだけだったのに。


「…………あ?」


サクの中で、何かが暴れまわった。
何かが内臓を貫くような感覚。 鋭い痛み。
気を失ってしまいそうなほどの、苦痛。

脳裏に浮かんだ、赤い景色。

心臓が高鳴り、鼓動が増す時、サクの目が赤く光った。

Re: †執事ゲーム† ( No.34 )
日時: 2010/03/07 11:37
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

        第4話
       血の契約者



腹部に鋭い痛みが走り、ノエルは目を開ける。
タキシードを脱ぐと、白いシャツに赤色がしみ込んでいるのを見て、歯ぎしりする。
傷は、もうふさがっていた。

「あの化け物、ヨーテか………。 まだ、生きてたのか、化け物」

ゆっくりと立ち上がり、辺りを確認する。

「………サク?」

そこで見たのは、赤い目を光らせて、手に刀を持っている執事だった。


ノエルが起きる数分前、

ナデハの血を飲み、体に苦痛と何かの記憶を呼び覚ましたサク。
体を貫かれるような、内臓を破かれるような壮絶な痛み。

そして、彼女は体から一本の刀を取り出した。

傷や血などは出ず、痛みこそあったものの、今は何ともない。
彼女の体内から生まれた刀を構え、本能のままにジフとヨーテと呼ばれる化け物を睨みつける。

「覚醒したんだね、サク」

嬉しそうなジフの囁き。
ナデハは禍々しい殺.気を放つサクを見て、

「ごめんなさい」

呟いた。

ノエルはすぐさま立ち上がり、右手に炎を灯す。
気配をできるだけ消し、ヨーテの背後を狙い、突進した。
ジフはそれに気づいていたが、あえて何もせずにそれを見届ける。

ヨーテは不意打ちの攻撃に避ける事ができず、真っ向からノエルの炎をうけた。

「ギャァァァァァァァァアァァァァアッ!」
「俺の炎は、内臓も骨も梳かすっ」

焦げた匂いと、鼓膜が破れそうなヨーテの叫び。
やがて、骨まで灰になったヨーテが倒れ、ノエルが安堵した時、

「っ!」 「………」

背後からいつのまにか忍び寄っていたもう一体のヨーテを、サクが斬り付けた。

「さ……?」

返り血を浴びる中、茫然とサクを見るノエル。
サクは我を忘れているのか、ヨーテの腹を引き裂き、奴がもう動いていないのにも関わらず、その内臓を裂き始めた。

「おはよう、サク」

ジフの挨拶に、サクが動きを止めて彼女を睨みつける。
その殺.気に身震いしたノエル。
サクの事はナデハから聞いていたが、ここまでの迫力だとは思っていなかったのだ。

「ヨーテだとヤられちゃうか。 当たり前だよね」
「…………………」
「でも、匂うなぁ。 鉄さびのいい匂い」

刀を構えなおし、サクが無表情でジフを見る。
しかし、その目は赤く光っていなかった。

「………ノエル?」

ハッとしたように刀を落とすサク。 振り返り、倒れている異形の死.体を目にして、恐怖のあまり絶句する。

「なぁーんだ。 一時的な覚醒なのかぁ」

その変貌を見て、ガックリした表情で肩を落とす。

「覚醒のないお前に用はないんだけどさぁ」
「か、くせ………、なに………血?」

混乱が表情に浮かぶ。 
「サクっ」  「いや……いやぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあっっ」
絶叫と奇声が混じり合ったような叫びをあげ、サクが気を失う。

「僕も帰ろっ。 今日は下見って事だもんね」
「っ、テメ!」
「早く止血しないと、君のお嬢様がタヒんじゃうよ?」

腕を抑えているナデハを見て、ノエルが駆け寄る。
ジフは気絶しているサクに微笑みかけ、

「ばいばい、サク」

煙のように、スッと消えた。


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