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†執事ゲーム†
日時: 2010/04/04 12:12
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

シリアスなのかギャクなのかパロディなのかコメディなのか分からないけど、多分・・・・全部。

<登場人物>

音葉サク──15歳 見た目は少年だが少女 まりあ家の守護者として契約された 『日本刀』

真白ノエル──16歳 根は優しい 幼い頃からまりあ家に仕える 『炎』

園崎ちの──15歳 負けず嫌いで頑固 誰に対しても敬語 『花』

菅野ナトリ──19歳 物静かで穏やか 執事の中では最年長 『水』

野沢ヒロヤ──16歳 自信家でナルシスト つっぱしっては失敗する 『風』

まりあナデハ──15歳 まりあ家次期当主 無口で淡々と喋る 

イルベーヌ──外見は十代半ば。 アプサの女王で全ての災厄の元凶。

アプサメンバー>>87  用語説明>>102

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Re: †執事ゲーム† ( No.105 )
日時: 2010/03/25 15:39
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

「ノエル……」 「俺は8年前、お前を守ってやれなかった」

ノエルの口から、『8年前』 の事が出るのは初めてだった。
今まで、その話題になると機嫌が悪くなり、自分からは決して口に出さなかった忌々しい記憶。

「あの時、俺はお前の執事だったのに。 なのに、お前を守ってやれなかった」
「小さいお前に、私は命令など下せられない」

当時は執事といえど、ノエルはまだ幼い。
守護者としての傾向が見えていたとはいえ、ナデハ一人をヨーテから守る事は敵わないはずだった。

「ガキの俺は、あの時からお前に誓ったんだ。 絶対にお前を守るって。 だけど……このザマじゃあ、」
「言うなっ!」

ナデハがノエルを抱きしめる。

「お前は、いつも私と居てくれたっ。 一人だった私にも付いてきてくれた。 心が枯死していた私を慰めてくれた……。 それだけで、十分だ」

きつく、きつく。 ノエルが消えてしまわないように、抱きしめる。

「大切な家族一人護れないで、何が守護者だよ」

笑いながらそう言い、ノエルがナデハの頭を撫でる。
家族──あたたかい響きに、ナデハの震えが止まる。

「俺は、お前の為なら命捨てる覚悟ぐらいある」
「そんな事、言うな」
「俺だけじゃない。 あいつらみんな覚悟してる。 お前も、覚悟を決めろ。 まりあ当主として」

悲しみの中で、いかに辛い覚悟を受け止めなければならないのか。
幼い当主は悩む。

ヨーテ滅亡の為、執事たちを戦わせるか、それとも。

執事たちを優先させ、ヨーテを解放したまま終わるのか。

「………できるワケない」

自分の一族の犯した罪だけに、責任感もある。

「ノエル、着いてきて。 私と一緒に」
「ああ。 当たり前だろ」

Re: †執事ゲーム† ( No.106 )
日時: 2010/03/25 21:25
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

          †


翌日。


屋敷の前に黒い車が止まった。
中から慌てたように、一人の女性が降りてくる。

「こちらです、志乃様」

出迎えたナトリに、志乃と呼ばれた女性が詰め寄った。
表情は怒りと、悲しみで溢れている。

「キヨネは……、あの子は?」
「こちらです」

ナトリに案内されたのは、あの日襲撃された、接客用の部屋。
窓ガラスは直されているが、壁はまだ戦闘の傷が残ったままだった。

そこには執事とナデハ、そして

「キヨネ………?」

ヨーテ化した幼い少年の死体があった。
志乃が震えを抑えながら、両手で口を抑える。
涙を溜めながら、ヨロヨロと近づいていく。

「キヨネ……本当に、キヨネ、なの?」

そっとヨーテ化した右手に触れる。 すると、脆く崩れてしまった。
あまりの衝撃に、志乃が泣き崩れる。

「ヒロヤさん、あの人キヨネくんのお母さんですよね」
「ああ。 志乃さん、だろ」

サクが震える肩を見つめながら、そっと目を伏せた。
自分は、キヨネを殺そうとした。 刀を抜き、斬りかかろうとした。
自分の行いを悔いていると、

「お前のせいじゃねーよ」

ヒロヤが小声で声をかけてくれた。

「誰も、悪くねぇんだよ」
「ヒロヤさん……」

志乃は一通り泣いた後、顔を上げ、ナデハに近づく。
凛としたナデハの無表情を睨みつけ、唇を噛みしめた。

「どうして……? どうしてなの? なんでキヨネがっ、あんな化け物になって死んでるの!!」
「ヨーテの血を飲まされた。 もう、人間に戻る事はできない」

淡々と言うナデハにカッとなったのか、志乃が手を振り上げる。
そのままナデハをぶとうとしたのだが、

「止めてください」 「っ」

ちのが止めた。

「何するのよ……っ、使用人如きがっ!」

ちのがしっかりと志乃の手を掴む。
序列上、まりあ家を捨てて外に嫁いだ志乃と、まりあ家当主であるナデハとでは、圧倒的にナデハの方が身分的に高い。

それをちのは認識していた。

「執事だからこそ、ナデハ様を護ります」
「なによ……あなた達まりあはそればっかり! どうせあなたも、キヨネの事は助けてくれなかったんでしょう!?」

志乃の怒りに、

「それは聞き捨てなりません」

ちのは引き下がらない。

「確かに僕らはナデハ様に忠誠を誓った身。 だけど、ナデハ様が大切に思う方も、それ同様です」
「………っ、………」

志乃は上げていた手を下ろし、その場に崩れた。

「返して……っ、キヨネを返して……」
「……遺体は、そちらに引き渡す」

今まで黙っていたナデハがポツポツと呟く。
そして、キヨネを見て、

「……………」

悲しそうに目を伏せた。

Re: †執事ゲーム† ( No.107 )
日時: 2010/03/25 21:45
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

        第12話
       紅い咲く紅い華




英国のとある屋敷にて──


紅いドレスを着たジフが、どんよりとした空を見上げていた。
溜息混じりに。
燃えるような紅い髪が、ドレスとよく似合っている。

「こんな所に居たのね、ジフ」
「お母様……」

声をかけられ、振り返る。

「もうすぐでノイズも来るんでしょう。 ちゃんと挨拶なさい」
「……わーってるって。 でも、こんな天気じゃさぁ」
「早く中入りなさい。 風邪、引くわよ」

優しい口調で注意され、ジフが頬を膨らませながら窓から離れる。

「いつイルベーヌは起きるんだろう……」

呟きながら、溜息をつく。
自分がアプサとしてイルベーヌと行動を共にして早200年が経った。

「ハロー、ジフ♪」 「うげっ、ノイズ……」

いつの間にか扉にもたれていたノイズに、あからさまに嫌な顔をする。

「なに、その嫌そうな顔」 「レディの部屋勝手に入るな〜。 マナーなってなーい」 

頬をまた膨らませながらノイズの脇腹に鉄拳を食らわせるジフ。
苦笑しながら、白いスーツを着たノイズが、

「薔薇みたいだねー俺ら」 「ん? ああ、色ね」

ジフの赤髪を引っ張りながら遊ぶ。

「………イルベーヌは、まだ起きないの?」
「ずっと眠ったままって言ってたよな」
「うん。 疲れちゃったみたーい。 ノイズ達、全然会話した事ないからさぁ」
「俺と彼女が会ったとき、俺はまだガキだったから」

ノイズが軽く伸びをしながら、ソファに腰掛ける。
ガラステーブルの上にあった菓子を摘まみながら、

「んで? イルミナは元気?」
「お母様は普通かな」
「お前もいい屋敷に養女にしてもらえたな」
「ふふふ、 玉の輿ってやつかも〜」

ジフがクルクルと舞う。
華のように紅いドレスが揺れ、ぴたりと止まった。

「……なに?」
「……聞こえる」
「なにが?」

ジフが慌てたように窓に駆け寄り、外を見つめる。
曇天が空を覆い、今にも雨が降りそうだ。

「……イルベーヌの……彼女の声が聴こえたんだよ」


──嘘だろ?


ノイズが目を見開いてジフを見る。
ジフはゆっくりと空を見上げ、右手を宙に差し出す。
その表情は微笑んでいた。

「イルベーヌ……やっとまた、一緒にお喋りできるんだね」

涙で潤んだ目を光らせ、恍惚を浮かべながら呟く。

「僕らはさぁ、本能的に人間見ると食い殺したくなるよねぇ」
「ん………、まあそうだな」
「それってある意味……拷問だよね」

ふいに呟かれたその言葉がやけに不気味だった。
自分より遥かに年上で、幼い少女を見ながら、

「イルベーヌはなんて?」 ノイズが訪ねた。

微笑んだまま、ジフが振り向く。

「もうすぐで、全てを終わらそう」

Re: †執事ゲーム† ( No.108 )
日時: 2010/03/26 09:13
名前: アキラ (ID: BLbMqcR3)

おはようございます(^▽^)ノ
コメを頂いたアキラというものです。
読むのが遅いので、昨日の夜全部読みました。
ナデハさんの苦痛とか、よく伝わってきます!

更新、がんばてください(^v^)

Re: †執事ゲーム† ( No.109 )
日時: 2010/03/26 12:03
名前: 朝倉疾風 (ID: BLbMqcR3)

ありがとうございます^^
更新がんばります。


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