ダーク・ファンタジー小説
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- 白と黒の境界 【CONNECT】
- 日時: 2013/02/16 20:48
- 名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)
はじめまして、和里と申します♪
小説書いてみました!
どこーにでもありそうなタイトルであることは承知しております・・・
で、内容も何処にでもありそ(以下略
・・・・・・・。
初心者なので、色々だめなところがあると思うのですが、どうぞよろしくお願いします
なお、更新が遅く、内容が複雑だったりしますがご容赦ください
誤字、脱字あれば教えてください。すぐ直します(多分結構多いと思います(焦))
中傷、荒らしなどは止めてください
あと、私は学生だったりしますので、成績が落ちると更新できなくなる可能性があります!
感想、アドバイスなどのコメントよろしくお願いします!!
最後に・・・・・・・
私なりに頑張っていきたいと思うので、よろしくお願いします♪
- 白と黒の境界 ( No.54 )
- 日時: 2012/11/07 12:33
- 名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)
数分前
——ダアァンッ
派手な音と共に、目の前の建物が瓦礫の山と化した。
危なかったな。
大砲はおれを狙ったつもりらしいが、その軌道は大きくそれ、おれの左てにあった建物をぶち壊した。狙撃手の腕が悪かったわけでもましてや突風が起こったわけでもない。理由は、弾が発射されるその瞬間、狙撃手はそこには居なかった。だから弾の軌道は大きくずれた。では、何故誰もいないのに弾が発射されたのか。それは狙撃手がちゃんとそこにいて、おれを狙っていたから。狙うには不向きな大砲ではあったが。でも、弾が発砲されたときには狙撃手は居なかった。そう、おれが殺ったから。とは言っても直接手を加えたわけではないが。
おれは瓦礫の山に目を移す。此処には人が住んでいたはずだ。生活してきた証が沢山あったはずだ。それを、こんな簡単に木っ端微塵にしていいのだろうか。
壊すのは簡単だ。
どれだけ一生懸命やってもどれだけ長い時間をかけても、壊すときにはその半分の時間も要さない。
そんなことを考えながら、先ほど崩れた建物の下敷きになっている人はいないかと探す。
——ジャリ
何かがこすれあう音がした。
おれはその音がしたと思われる場所に視線を移した。すると、そこには予想だにしなかった物が眼に飛び込んできた。
淡い薄水色の髪。透き通るような白い肌。他の人間からは感じられない<白>の霊気。
セトラ?
さっきの衝撃でだろうか。傷だらけの少女の横にかがむ。
まだ幼い。10歳そこそこに見える。
おれは少女に手を伸ばし、髪で隠れた顔を見ようと少女に触れた。その瞬間——
——バチッ
「——っ!」
感電したような感覚とともにその手が跳ね返された。まるで見えない壁に衝突したかのように。
ああ。と原因はすぐに思い至った。
すぐに自分の属性を<空>へと変える。
と、少女の口から微かな細い声が漏れた。意識があるわけではないが。
「——……ぜ………ぁ……ル…………?」
——!!
ゼアル、だと?
おれは、知っている。その名前を。よく。とてもよく、……知っている。
まだ、生きているのか………?
取り敢えず、この少女を安全な場所へ運ばなければ。
おれが再び少女に触れようとしたその時。空気の僅かな乱れを感じた。異常な……。
とっさに異常を感じた方向に上半身だけ向ける。左だ。
数十メートル先に、黒い粒が確認できた。おそらく銃弾だ。減音器でも使ったか、音が聞こえなかった。それとも周りの音に紛れて聞き取り損ねたか…。
次の刹那、おれは手をその方向に突き出した。
——ピン
と、軽い音がして、銃弾はその場所で静止。その後、重力に従って、石造りの地面に吸い込まれるように落ちていき、乾いた音を立てた。
すると、小銃を抱えたひとりの男が瓦礫の背後から姿を表した。青を主とした軍服。リオネルの兵士だ。
「貴様ッ!何者だ!」
何者、か。
術徒と言っても間違いではないが、コイツに教えてやる筋合いはない。
「…………教えてやらない」
小さく答え、口元に獰猛な冷笑を浮かべる。
そして、右手を今度は左の肩口まで持っていき、何かを引っ張るように、素早く正面へ引いた。
ガラスが割れたような音と共におれの周りに、5本の剣が出現する。それぞれ形は違っていて統一感は無いが、ひとつひとつが強力そうな外見の武器だ。勿論外見だけではないが。
その5本は一直線に青の兵に向かって飛んでゆく。
「うあぁ——!!」
そりゃあ驚きもするだろう。きっとこんな魔法は見たことがないだろう。
しかし、その剣が青の兵に届くより前に、青の兵は胸元から何かを取り出し、口に当てる。
——ピイィィィー!
笛だった。小さい笛。人差し指の長さほどもないであろうその笛を、青の兵は許す限りの音量で高く鳴らした。その直後、剣たちが青の兵を斬り刻む。新しい血だまりができ、その上に赤く染まったものが落ちる。
ただの笛ではないことはすぐに分かった。きっと仲間、魔物を呼ぶ笛だろう。青の奴らは魔物を手懐けられる、と聞いたことがある。土地が痩せているかわりにそのような特殊なことが出来るらしい。クリスタルによって齎される平等、とか何とか。くだらない。奴はどうも皆からとてもよく見られているらしい。腹立たしいことこの上ない。
笛は鳴らされたが大して問題はない。
まとめてやればいいことだ。
だが、敵が増えることはなく、そのまま3分ほど経過しただろうか。
『あるじ、そちらに何か参りませんでしたか?』
そう後ろから声がかかった。
振り返ると、虎のような容貌をもつ獣がこちらに向かって来ていた。ただし、その毛は白い。そして、その声は頭の中に直接響く。
「ん…、平気だったぜ。何かあったか?」
『いえ、その……青があるじの方へゆこうとしていたものですから…』
「あぁ、それか。別によかったんだぜ。それくらい、おれ一人でもできる」
背にある白い縁取を施してある黒い鞘に収まっている直剣の柄を手にし、高い摩擦音と共に抜きはなった。その刀身は、夜の空より深い漆黒。それを右上から斜め下に高速で斬り下げる。その漆黒の刃は空気を斬り、低い唸りを上げた。
『承知しております。…………?その娘は?』
白い獣は、おれの足元で気絶している少女を見つけると、首を傾げた。
「あー、んーっと。セトラの、生き残りかもしんねぇと思ってな。それも生粋血統のな……」
『………………』
その言葉に驚きつつも黙って、見定めるような視線を少女に向けている。じっくり眺めたあと、近寄り、においを嗅ぎ始める。
「この子を安全なところまで運びてぇんだが、手伝ってくれるか?」
『もちろんでございます。あるじ』
- 白と黒の境界 ( No.55 )
- 日時: 2012/11/12 19:16
- 名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)
と言うわけで今に至る。
一応治癒魔法はかけたが、目を覚まさない。
セトラの末裔なら、これくらいで死にはしないはずだが……。
セトラというのは、黒龍族とは対の性質を示す種族だ。どちらも、神と呼ばれる存在がつくりし物だと伝えられている。そして、下記のように。最初に生まれたのは黒龍族。制御のための力。だったそうだが、あまりにいきすぎた力を与えてしまった。誤り、だそうだが、その誤りがなければおれはここにいないのだ。そのすぎた力。言うなれば兵器だ。その力を抑制し、釣り合いがとれるようにと、神が生んだのがセトラ。神が生んだ罪、とでもいうべきか。過去の文献によれば、その2種類の殺戮が行われたという。人間が、その量の多さをもって神の創りし存在を圧倒したのだ。2つの種族、黒龍族とセトラはそれぞれ黒と白を司る。黒龍族は名の通り黒。セトラは白。目の前で気を失っている少女は、その白、セトラの末裔なのだ。先程触れようとしたとき、拒否反応で手を弾かれたのはそのせいだ。白と黒は相容れない。だそうだ。最も、昔はそうじゃなかったらしいが。
ここは西南に位置する、今は使われていない倉庫のような場所だ。埃っぽいのが気になるが、我慢するしかない。
遠くから、叫び声や銃声が風に紛れて聞こえてくる。その中に、異質な音がひとつ。近くから聞こえた。出入り口の方だろうか。
——パサッ…パサ
鳥が羽ばたくような音がしていると思われる方に顔を向けた。そこにはペールブルーのふさふさした毛を纏う、少し大型のオウム科のような形をしている。その尾は長く、風に乗ってふわふわと宙を漂うように身体について舞う。
「……お帰り、ゼロ」
『うん』
おれがゼロと呼んだ生き物は、静かな落ち着いた声で短く答えると、近くの木箱に静かに着陸。この生物は、幻獣と言う。神の眷属とでも言おうか。その姿は様々な容姿を持つ。獣や虫、鳥など様々だ。だが、その形をそのまま、と言うわけではなく、皆どこかが異様だ。そして、それぞれは魔法のような能力を使うという。そして、幻獣界のルールと言うものには絶対に逆らわないのだそうだ。これらは教わった事だが、この身でもって立証済みだ。たとえば弱肉強食。弱いものは強いものに従う。実際におれは、数多くの幻獣を従えている。
『あの人は居るよ。ひとりでも、頑張ってる』
雪の結晶のような儚さを連想させる澄んだおとなしい声。
「そうか。ご苦労様」
『行くの?』
「もう少ししたらな」
『気をつけてね。………あと、アインが呼んでた』
静かに告げると、箱の上をとてとて、と移動し、徐に翼を広げる。そして、そのままパサリ、と羽ばたき、少女の元に降り立つ。しかしすぐに横になり、丸くなった。
「その子のこと、頼んだぞ」
背を向けながら言った。了承したかは知らないが、取り敢えず任せた。
おれの足は一直線に出口まで向かう。
そして、外に一歩を踏み出したと同時に、すぐ側に居るであろうアインに声を飛ばした。
「何かあったか?」
案の定、右手にアイン——おれと少女をここまで運んでくれた白い虎みたいな幻獣——がお座りの要領で座っていた。
『はい。……赤についてですが、南西部に大量に待機しているようです』
西側か。青は国境側、つまり北から堂々と攻めいってきた。そうすると、当然のごとく白は南側から応戦する。今のところ互角のようだが、いずれ白がおされてくるだろう。そこに挟み撃ちの
『場所を移さないと………此処もおそらく攻撃されます』
「そうだな…。じゃあ5分後、攻撃開始だ」
『はっ』
「そン時は、………あー…どうするか…。取り敢えずアインはあの子を頼む。……んー…此処はツヴァイとドライに任せるか……」
後半は独り言のように言いながら、おれは倉庫の中に戻った。
埃っぽい風が横を通り過ぎる。と、そこへ風と一緒に飛んでくる物が。その色はペールブルー。
『うあぁ!』「なっ——!」
ゴツっ——。
『「〜〜〜〜っ」』
額に衝撃が…。思わず右手を額に当てる。
よけれる分けがなかった。こいつを視認したのは接触まで50センチのところだった。しかも、相当のスピードが出ていた。
なぜ室内でスピードを出すんだ…。
地味に痛いんだが。
「何なんだよ、そんなに急いで」
『ごめんなさい…。あの子が起きたから伝えようと思ったんだけど、スピード出しすぎた…』
「ん、起きたか」
おれはへなへなと地上に落下するゼロは置いといて、少女の方へ駆け寄る。少女の前で、視線を合わせるために片膝を付いてしゃがむ。
低めの木箱に腰掛けた少女を眼にしたとき抱いた印象は、儚げ、だった。身体を形作る線がかなり細い。紺青の大きな瞳は、子供が持つ真っ直ぐさというか、純粋さとかそういう物が比しひしひしと感じられる。おれはこの子を10歳そこそこかと思っていたが、もっと下なのかもしれない。
そんな少女をみて、なんと声をかければよいものか、数瞬悩んだが、結局ありきたりな台詞が発せられた。
「大丈夫か?」
と。
少女は照準のあっていなかった視線をおれの眼に合わせると、ボーッとしたような顔のまま、カクッ、と首を傾げた。そういう可愛らしい姿を見せられると余計に幼く見えてくる。しかし、何故か大人びて見えるのは何故だろうか…?
「だれ……?」
だれ、と聞かれても、どう答えろと…?
おれの名前。何個もあるんだが…。
眼の前の少女はおれの顔を覗き込んでくる。
当たり前だとは思う。おれは今、黒いローブのフードを深く被って顔を隠している。
しかし、どう答えたものか。あまり間を空けすぎると不審がられる。だからといってこの答えが正しいのか分からないが、少女が浴びせてくる微妙な視線に耐えかね、それを答えた。
「おれは<レン>だ」
レン、と名乗った。
「君は?」
「名前?」
「ああ」
「シアン。シアン・セトラン」
「……(セトラン、か。やはりセトラか。しかも生粋血統)」
少女はシアンと名乗った。その容姿にぴったりの可愛らしい名だ。
セトラン。セトラの一族が使っていた姓だ。今その姓を名乗れるのは、特別セトラの血が濃く、セトラ同士の間に産まれたものだけと聞いた。
シアンか。シオンと一文字違いだな。
「ここ、どこ?みんな、どこ?」
1単語ずつ切って喋る独特な喋り方は、言葉を覚えたての幼子のようだ。
『……皆って言うのが一緒の建物にいた人たちのことなら、……絶望的だよ』
「…………シアン、だけ?」
おれは何も答えず、シアンの隣で毛繕いしているペールブルーの生体に視線を移し睨みつける。しかし、鈍いのか何なのか、全く気にする様子もなく毛繕いを続けている。そんなゼロに思わず——。
『お前は馬鹿なのか!?少しくらい言い方考えらんねーのか!』
『ご、ごめん。でも、それも思いっきり聞こえてると思う』
「あ……『すまん』」
しまったッ——!
シアンがゼロの声聞けてるってことは、シアンにも聞こえてた、………。だよな…。なんか、おれの方が悪いこと言った気が……。
「大丈夫。みんな、ボクと、血、繋がってない。でも、よくして、くれた」
「………(アイツらはいつも)…」
『レンも、ボクと、おんなじ?』
——え?
シアンはおれの眼を覗き込むように見つめながら問いかけてきた。
そのすぐあと、刺さるような陽光が目に入り、視界が驚くほど開けた。眼の前にいるシアンの顔もよりはっきりと見えた。おれが深く被っていたフードを誰かが取り払ったのだと気づいたのはそのあと。
「な、何をッ——!」
シアンだった。シアンが、おれが眼深く被っていたフードを両手でそっと持ち上げたのだった。
「綺麗」
「は、はい?な、何のことだ?」
- 白と黒の境界 ( No.56 )
- 日時: 2012/11/10 09:59
- 名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)
フードを脱がせるなり、いきなりそんな事を言ってきたので、心底驚いた。
しかも、心のそこからの思いに聞こえた。何故だかは分からないが。
答えながらフードを奪い返そうとするが失敗。
「レン、綺麗、聞こえる」
綺麗?何が?おれが?おれは音じゃねーぞ?
「…………」
「生命の、音。綺麗」
「………?なんだそれ?」
「……うまく、言えない。…生きてきた……人生の………んー……音……色……?」
必死に当てはまる言葉を探し、なんとか紡いだ言葉だったが、おれには理解し難かった。
「すまないが、おれには理解できそうにないな」
「………こんな感じ」
話を聞いていなかったかのように、会ってから一度も変えていないその表情のまま、噛み合わない台詞をふわりと発した。徐に右手を動かし、隣で丸まり、小さな寝息をたてているゼロにそっと触れた。その後、おれを見、「さわって……」と一言言うと、ゼロに視線を戻した。安心しきっているのか、目を覚ます様子はない。コイツには動物の本能と言う物が無いのだろうか。天敵に襲われるー、とか。いや、天敵って言うか、こいつが動物たちの天敵か?
などとくだらない事を頭の端に置きながら、恐る恐る手を近付け、気づかず眠るゼロの背中部分にふれた。呼吸をするたび動く小さな身体。その動きが確かな温かさが手を介して伝わってくる。
「眼、瞑って」
言われるがまま、何の疑いもなく眼を閉じ、視覚機能を遮断する。
遮断した、はずなのだが。眼を閉じているはずなのだが、眼の前には淡い光が……。色のない虹の中にいるような、不思議な感覚だ。
そこに、高く美しいフルートのような音色が頭の中に響いた。
その音楽は強弱、長短、緩急を織り交ぜ、流れていく。それとも同時に、どこからか、大小様々な金のシャボン玉のような物がどこからか浮き、微かな燐光を放っている。それは音楽に乗るように、一方向にふわふわと流れている。
これが生命の音、なのだろうか。
おれは流れる音楽に耳をすます。
綺麗、と言うことはこういうことだろうか?ゼロもおれと同じく、日向で、綺麗な世界で生きてきてはいないはずだ。負の部分というのは現れないのだろうか。
と、そこまで考えたときだった。急に、耳に届く音楽にノイズが混じった。美しかった音楽も不協和音へと徐々に変わる。そして眼の前の風景も墨を投げ込んだ水面のように揺らぎ、白から黒へ。
しかし、それはすぐにもとの美しい音色へと戻り、ノイズも消えた。
それが不規則に何度か繰り返された。
どうも、あの不愉快なノイズと不協和音は、負の感情や、負の事柄から来るようだ。これは記憶によるものなのだろうか?そうだとしたら、かなり高等な魔導師だろう。
と、そこまで考えたところで、接続が途切れたかのように音と光が途絶えた。
「なんとなく、わかった?」
「……」
おれはその問いに答えることなく、閉じていた眼を開き、ゼロから手を離した。
「この子も、綺麗」
「よく分からないな。アレがそうなら、おれは綺麗なわけ無いしな」
「……違う。音、だけじゃ、ない。質……音色……イメージ………全部……」
「よく分からない」
「多分、レン、勘違い、してる」
「………かもな」
- 白と黒の境界 ( No.57 )
- 日時: 2012/11/10 21:26
- 名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)
何をどう勘違いしているのかは詳しく分からないが、おれには理解できない領域の問題だと悟り、諦める。思考、精神的なことだとすれば、綺麗、と言う言葉を全否定する。するほかない。
「………ねぇ。あっち側、いいとこ?」
いきなり話を変え、遠くを見るような目つきでシアンはおれから眼を離す。
シアンの言うあっち側とは、下界のことだろう。下界とは<こっち>の人間にとって、この世界の裏にあるとされる世界だ。強力な魔物がはびこり、生活出来ないほど厳しい環境であるとされる。そして、そこに棲むのは、黒龍族。こっちでは存在すらも危ういものになっている。あくまでも上界ではの話だ。実際に下界はある。おれも棲んでいた。しかし、上界が思っているような場所ではないが。確かに、影の側であるため、強い魔物が蔓延っているのは事実。しかし、生活出来ないほど厳しい環境、と言うわけではなく、厳しい環境だが生活できなくはない。住めば都というものだ。無論暮らしているのは黒龍族だけではない。黒龍族は多いが、普通の人間もいる。しかし、その殆どは黒龍族と血の交わりがある。そして、上界との一番の違い。戦争がない。下界に暮らす人々は皆一カ所に集まり、助け合って生活している。統率者は黒龍族。クリスタルではない。
おれは下界をこの上なく気に入っている。何の救いも与えてくれなかった上界よりもよっぽど。
「ああ。こっちなんかより、ずっとな」
「……行ってみたい」
「身体がもたないだろ?」
『お話ちゅう申し訳ないんだけど、5分たったよ』
そう言ってきたのはシアンの横で眠っていたはずのゼロだった。眠そうに小さなあくびをしている。
5分だけ寝るって、逆に疲れないのか?しかも、何で知ってるんだ。
そんな事が頭の端に浮かんだ。
「そうか。じゃあ、行動開始っ」
一回言葉を切り、シアンに付いてくるように合図する。そしてそのまま出口へ向かい、横でスタンバイしてあるであろうアインへと声を飛ばす。
『アイン、仕事』
『はっ』
「シアン、これからコイツが安全な場所まで連れてくから、コイツから離れるなよ」
「うん」
「じゃあ、行け」
「あっ——。レンは?」
不安そうにこちらに視線を送ってきたので、心配させまいと笑顔を作り、言った。
「大丈夫、またすぐ会える。さあ、行け」
おれがそう促すと、アインはヒョイとシアンを背に乗せ、走り出した。
その姿が完全に見えなくなった頃——
『おはようございます、………えっと、主…………?』
時間的に遅すぎる挨拶をして、おれの肩に這い上がってきたのは、小さな栗鼠。名はフィーア。おれの幻獣の一匹。
「今まで何処にいた?それに、何故疑問符?レンでいい」
言いながら手を動かし、肩のフィーアをひょいとつまんで手のひらに乗せ、胸の前あたりまで持ってきた。
『今まで、ポケッ、トで寝てましたっ!りぇ、レン様のポケット寝心地いいですから!』
おれはコレを地面に思い切り投げつけたいという衝動に駆られたが、寸でのところでなんとか思いとどまった。しかし、その衝動は完全に抑えきれず、フィーアを乗せている手がピクリと震えた。
『えっと、何するんでしたっけ?』
「位置情報のマッピングしろ」
『りょうかい、しましたっ』
- 白と黒の境界 ( No.58 )
- 日時: 2012/11/10 22:53
- 名前: 和里 (ID: uwZWw1uD)
一回息を吐き、360°をぐるりと見渡す。最南端のため、林と隣接していて、木が多い。
ここは狭いな。
ちょうど、100メートルほど先に開けた場所を見つけたので、そこへ急ぎ足で移動する。
ここなら大丈夫か。
「さて」
そう呟くと、腰に吊ってある革製のケースから透明な半径1センチほどの球体を2つ取り出した。そのひとつには白い2対の翼を持つ龍が中に描かれていた。もうひとつにも、同じく龍。その色は黒。
そして、ケースの中からもうひとつ取り出す。それは全長4センチ程の鍵。幾つもの鍵をひとつの大振りなリングに通したものだ。その中から透明な球体の中の模様と同じ柄の付いている鍵を素早く2本選び抜く。そして、両方同時にそれを球体の模様のど真ん中に差し込む。
その途端、透明な球体が閃いた。
その光が一瞬の後に消えたとき、足元に全長50メートル程の黒い平面魔法陣が出現する。黒い輪の中に星を描き、それに何やら複雑に描き込んだような模様。
その魔法陣が鋭い光を放つ。そして分裂するように縦に増えおれを閉じ込めるように立体になる。そのひとつひとつは大小を変え、巻き付くようにくるくると回る。(端から見れば芸術物なのだが、そこまで表現しきれない筆者の実力不足が思い知らさせる。ごめんなさい)
鍵を差し込んでからここまで3秒弱。
俺は突き刺していた鍵をふたつ同時に右へ90°回した。
その瞬間、魔法陣が派手な音と共に消滅、拡散し、稲妻が走ったかのように周囲が明るく照らされ、ガラスが割れたような鋭い音と共に、巨大な影がふたつ出現した。
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